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閃きと見切りで異世界を征服する ~ロ〇サガステータスでほぼ最強だけど魔族のステータスなので人間だけど魔族の味方をします~
第3話 地球での話
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ワタルが魔都アーティエリに来てから1週間……彼は兵士として雇用され「期待の大型新人」として鬼教官による徹底した訓練を受けていた。
ただ彼は予言の子にふさわしいパラメータのせいか、教官すら圧倒する力を持っており、周りの者たちは「さすが予言の子だけある」と一目置かれる存在となっていた。
訓練が終わり、ワタルは城へと戻ってくる。ここにきてからは城内の客間の1室を与えられ、衣食住を国側が全面的に負担してくれている。
食事をとり後は寝るだけとなった時、シェラハが訪ねてくる。
「おかえりなさいワタル。今日は術を憶えるために研究所へと行ったんだって? どんな術を覚えたの?」
「えっと……「ファイアーボール」と「ヘルファイア」と、あとは「シャドウサーバント」っていう術を覚えたよ」
「へぇ。シャドウサーバントって冥術最高の術じゃない。それを覚えるなんてやるじゃない」
ワタルはシェラハに2人だけの時は自分には敬語は使わないで接してほしい。と言われているので敬語抜きで話している。
ふと、彼女がワタルの過去を詳しく聞きたいのか立ち話からテーブルに備え付けのイスに座り話題を切りだす。
「ねぇワタル、あなたの故郷の話をしてほしいんだけどいいかな?」
「……聞いてもつまんないだけだよ?」
「いいじゃない。教えてよ」
「分かった、聞かせるよ。つまんない話だけどな」
ワタルはシェラハと対面するようにイスに座って話を始めた。
◇◇◇
「おいワタル、2000円ほど貸してくれねえか?」
「もう4万円以上貸してるじゃないか! まずは返してからだろ!?」
「知るかよ。ガチャを回してるとカネはいくらあっても足りねえんだよ。貸せっつってんのが分かんねえのかよ!」
宮本は俺の腹に蹴りを入れる。崩れ落ちた俺のポケットから財布を取り出し、1000円札5枚を出す。
「テメェ……2000円だって言ったじゃないか!」
「ハァ!? 俺は最初から5000円貸してくれって言ったんだぞ? もしかしてテメェ俺が嘘つきだっていいってのか!?」
それにキレた宮本に蹴りを入れられてうずくまって下がった俺の頭を全体重をかけて踏みつぶす。
「俺が嘘をつくなんていう卑劣な事をしたと言いたいのかお前は! 俺を悪人にするつもりなのか!? ええ!? 何か言ってみろ!!」
「さっき2000円貸してくれって言ったじゃないか!」
「はぁ~? 聞こえませんねぇ。もっと大きな声で言っていただかないと」
「俺のカネを返せ!」
「うるせえ! 耳障りだ!」
宮本は俺の顔面にサッカーボールキックを食らわせた。これが地球における橋沢 ワタルの日常であった。
その日のホームルームはよりによって「いじめについて」だった。みんな俺が何をされているのか知ったうえで先生が望む答えを平然とした表情で吐きだし続けている。
「いい加減にしろお前ら!!!!!!」
俺は立ち上がりみんなに罵声を浴びせる。
「宮本が俺の頭を踏みつけているのを見てクスクス笑ってたやつはどいつだ!? お前らだ!!
便器に突っ込まれた俺の上履きをみて雑巾投げつけた奴はどいつだ!? お前らだ!!
俺の机に落書きして! 遺影を置いた奴はどいつだ!? お前らだ!!
お前ら全員俺の事をいじめてるじゃないかああああああ!!!!!!!!!!!!」
俺は溜まったものを全てぶちまけた。
「空気読めないやつ」
「イキってんじゃねえよワタル」
クラスメートは全員、俺を汚物や嘔吐物程度にしか見ていない。そんな中宮本は立ち上がり、俺の腹に1発を入れた。
「ワタル、これは『いじめ』じゃねえよ。誓っても『いじめ』じゃねえ。これは『躾』だよ。オメーの親の代わりに『躾』をしてるだけだ」
「そうだ! 宮本さんの言うとおりだぞ」
「宮本君がいじめをしているだって!? 宮本君をそんな酷い犯罪者にしたいわけなの!?」
「ワタル! お前が我慢すれば全て丸く収まるんだ! 宮本君を困らせるんじゃない!」
教室にいるクラスメートも、教師も、全員敵だった。
容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能、高いコミュ力、生徒会長、おまけに祖父が学校の校長。と全てにおいてパーフェクトな才児、それが宮本だ。
スクールカースト最底辺の俺……橋沢ワタルは一方的な虐殺をされる相手だった。俺は学校生活で、何度も、何度も、軽く100回以上は死んだ。
先生に話しても無駄だった。宮本の祖父は校長だから彼の権限で全てもみ消されるし、逆らった先生は「文字通り」生きていくことはできなかった。
警察に話しても無駄だった。学校が一丸となってもみ消しをしたため有益な証拠は得られなかった。
国家権力と言えどまさか学校全体、トップである校長から末端である生徒1人1人に至るまで関係者全員がグルになって事件をもみ消しているとは夢にも思わない。
昔、海外の野球チームがマフィアと手を組み球団ぐるみで八百長試合をやっていたのと一緒で、まさかマフィアが球団を丸ごと買収していたとは夢にも思わなかったのと一緒だ。
結局証拠不十分で警察ですら何もできなかった。
◇◇◇
「……あのさ、それって全部犯罪だよね? なんでその、ワタルの言う「ニホンのガッコウ」って言ったっけ? そこでは犯罪を黙認するの? どう考えたって変よ?」
「は、犯罪?」
「うん。暴力を振るうのは犯罪だし、お金を巻き上げるのも犯罪だし、犯罪をもみ消すのも犯罪よ? 何でそれがまかり通るの? おかしいじゃない」
「……シェラハ、お前みたいなやつがたくさんいれば良かったんだけどな。学校じゃあどいつもこいつもウケが良くて優等生のフリをできた宮本にコロッと騙されてたんだ。
それこそトップの校長から末端の生徒1人1人にまで至ってな。誰も助けてはくれなかった」
「ワタルのお父さんとお母さんは?」
「アイツらもクズだったよ……」
◇◇◇
「ワタル! いいか! 学校に行かないと大学に入れないんだぞ!? 今時大学の進学率がどれだけだと思ってるんだ!?
大学に入れない奴なんてゴミクズのカスだ! ウジ虫未満だ! そんな奴俺の息子じゃない!」
「どんなことがあっても学校に行きなさい! 世界には学校に行きたくてもいけない子供が山のようにいるのよ!? 大学に入れなかったら人生おしまいなんだからね!
大学に入れなかったら人間じゃなくなるんだからね! 大学に入れない奴は人間じゃないんだよ!?」
「お前ら自分の息子が殺されてもいいのか!? 自分の息子が学校に殺されてもいいのか!?」
「死ぬ気になればなんだってできる! 死ぬ気になればどんな困難でも乗り越えられる! お前は世間を見てない! 甘ったれんな!」
もう誰に話しても無駄だ。日本語を使っているにもかかわらず意味が理解できない。死ぬ気になれば……死ぬことだってできるはずだ。
俺はズボンからベルトを取り出し、部屋の照明の電源から伸びるコードの部分にひっかけて輪を作り、首を吊った。だが……
バキッ!
という音とともに照明をつなぐ金具が壊れて、俺は一命を『とりとめてしまった』……俺は『死ぬことすらできない』のか。ただただ情けなくて、惨めで、ひたすらに涙が止まらなかった。
◇◇◇
「父親も母親も学歴主義者で学校を辞めたらお前なんて捨ててやる! って言って俺の言う事は一切聞かなかった。学校に行きたくないって言ったらぶん殴ってでも行かせてたよ」
「……」
シェラハが黙り、1分ほど沈黙がその場を支配する。
「……つらかったでしょ?」
「ああ、つらかった。でもなぐさめなんて要らないよ。されたところでどうこうできるわけじゃないし過去も変わらないからな」
「強いのねワタル。やっぱりあなたは『予言の子』だけあるわ」
シェラハは話し相手を尊敬するような目で彼を見つめる。
「悪いけどもう寝る時間だから今日はこの辺にしてくれないか?」
「あらやだもうそんな時間? じゃあお休み、ワタル」
シェラハは部屋から出ていった。それを見送った後、ワタルはベッドに入って眠りについた。
【次回予告】
訓練を終えついに実戦デビューを迎えたワタル。戦場では憎むべき相手と再会する。
第4話 「教師渡辺」
ただ彼は予言の子にふさわしいパラメータのせいか、教官すら圧倒する力を持っており、周りの者たちは「さすが予言の子だけある」と一目置かれる存在となっていた。
訓練が終わり、ワタルは城へと戻ってくる。ここにきてからは城内の客間の1室を与えられ、衣食住を国側が全面的に負担してくれている。
食事をとり後は寝るだけとなった時、シェラハが訪ねてくる。
「おかえりなさいワタル。今日は術を憶えるために研究所へと行ったんだって? どんな術を覚えたの?」
「えっと……「ファイアーボール」と「ヘルファイア」と、あとは「シャドウサーバント」っていう術を覚えたよ」
「へぇ。シャドウサーバントって冥術最高の術じゃない。それを覚えるなんてやるじゃない」
ワタルはシェラハに2人だけの時は自分には敬語は使わないで接してほしい。と言われているので敬語抜きで話している。
ふと、彼女がワタルの過去を詳しく聞きたいのか立ち話からテーブルに備え付けのイスに座り話題を切りだす。
「ねぇワタル、あなたの故郷の話をしてほしいんだけどいいかな?」
「……聞いてもつまんないだけだよ?」
「いいじゃない。教えてよ」
「分かった、聞かせるよ。つまんない話だけどな」
ワタルはシェラハと対面するようにイスに座って話を始めた。
◇◇◇
「おいワタル、2000円ほど貸してくれねえか?」
「もう4万円以上貸してるじゃないか! まずは返してからだろ!?」
「知るかよ。ガチャを回してるとカネはいくらあっても足りねえんだよ。貸せっつってんのが分かんねえのかよ!」
宮本は俺の腹に蹴りを入れる。崩れ落ちた俺のポケットから財布を取り出し、1000円札5枚を出す。
「テメェ……2000円だって言ったじゃないか!」
「ハァ!? 俺は最初から5000円貸してくれって言ったんだぞ? もしかしてテメェ俺が嘘つきだっていいってのか!?」
それにキレた宮本に蹴りを入れられてうずくまって下がった俺の頭を全体重をかけて踏みつぶす。
「俺が嘘をつくなんていう卑劣な事をしたと言いたいのかお前は! 俺を悪人にするつもりなのか!? ええ!? 何か言ってみろ!!」
「さっき2000円貸してくれって言ったじゃないか!」
「はぁ~? 聞こえませんねぇ。もっと大きな声で言っていただかないと」
「俺のカネを返せ!」
「うるせえ! 耳障りだ!」
宮本は俺の顔面にサッカーボールキックを食らわせた。これが地球における橋沢 ワタルの日常であった。
その日のホームルームはよりによって「いじめについて」だった。みんな俺が何をされているのか知ったうえで先生が望む答えを平然とした表情で吐きだし続けている。
「いい加減にしろお前ら!!!!!!」
俺は立ち上がりみんなに罵声を浴びせる。
「宮本が俺の頭を踏みつけているのを見てクスクス笑ってたやつはどいつだ!? お前らだ!!
便器に突っ込まれた俺の上履きをみて雑巾投げつけた奴はどいつだ!? お前らだ!!
俺の机に落書きして! 遺影を置いた奴はどいつだ!? お前らだ!!
お前ら全員俺の事をいじめてるじゃないかああああああ!!!!!!!!!!!!」
俺は溜まったものを全てぶちまけた。
「空気読めないやつ」
「イキってんじゃねえよワタル」
クラスメートは全員、俺を汚物や嘔吐物程度にしか見ていない。そんな中宮本は立ち上がり、俺の腹に1発を入れた。
「ワタル、これは『いじめ』じゃねえよ。誓っても『いじめ』じゃねえ。これは『躾』だよ。オメーの親の代わりに『躾』をしてるだけだ」
「そうだ! 宮本さんの言うとおりだぞ」
「宮本君がいじめをしているだって!? 宮本君をそんな酷い犯罪者にしたいわけなの!?」
「ワタル! お前が我慢すれば全て丸く収まるんだ! 宮本君を困らせるんじゃない!」
教室にいるクラスメートも、教師も、全員敵だった。
容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能、高いコミュ力、生徒会長、おまけに祖父が学校の校長。と全てにおいてパーフェクトな才児、それが宮本だ。
スクールカースト最底辺の俺……橋沢ワタルは一方的な虐殺をされる相手だった。俺は学校生活で、何度も、何度も、軽く100回以上は死んだ。
先生に話しても無駄だった。宮本の祖父は校長だから彼の権限で全てもみ消されるし、逆らった先生は「文字通り」生きていくことはできなかった。
警察に話しても無駄だった。学校が一丸となってもみ消しをしたため有益な証拠は得られなかった。
国家権力と言えどまさか学校全体、トップである校長から末端である生徒1人1人に至るまで関係者全員がグルになって事件をもみ消しているとは夢にも思わない。
昔、海外の野球チームがマフィアと手を組み球団ぐるみで八百長試合をやっていたのと一緒で、まさかマフィアが球団を丸ごと買収していたとは夢にも思わなかったのと一緒だ。
結局証拠不十分で警察ですら何もできなかった。
◇◇◇
「……あのさ、それって全部犯罪だよね? なんでその、ワタルの言う「ニホンのガッコウ」って言ったっけ? そこでは犯罪を黙認するの? どう考えたって変よ?」
「は、犯罪?」
「うん。暴力を振るうのは犯罪だし、お金を巻き上げるのも犯罪だし、犯罪をもみ消すのも犯罪よ? 何でそれがまかり通るの? おかしいじゃない」
「……シェラハ、お前みたいなやつがたくさんいれば良かったんだけどな。学校じゃあどいつもこいつもウケが良くて優等生のフリをできた宮本にコロッと騙されてたんだ。
それこそトップの校長から末端の生徒1人1人にまで至ってな。誰も助けてはくれなかった」
「ワタルのお父さんとお母さんは?」
「アイツらもクズだったよ……」
◇◇◇
「ワタル! いいか! 学校に行かないと大学に入れないんだぞ!? 今時大学の進学率がどれだけだと思ってるんだ!?
大学に入れない奴なんてゴミクズのカスだ! ウジ虫未満だ! そんな奴俺の息子じゃない!」
「どんなことがあっても学校に行きなさい! 世界には学校に行きたくてもいけない子供が山のようにいるのよ!? 大学に入れなかったら人生おしまいなんだからね!
大学に入れなかったら人間じゃなくなるんだからね! 大学に入れない奴は人間じゃないんだよ!?」
「お前ら自分の息子が殺されてもいいのか!? 自分の息子が学校に殺されてもいいのか!?」
「死ぬ気になればなんだってできる! 死ぬ気になればどんな困難でも乗り越えられる! お前は世間を見てない! 甘ったれんな!」
もう誰に話しても無駄だ。日本語を使っているにもかかわらず意味が理解できない。死ぬ気になれば……死ぬことだってできるはずだ。
俺はズボンからベルトを取り出し、部屋の照明の電源から伸びるコードの部分にひっかけて輪を作り、首を吊った。だが……
バキッ!
という音とともに照明をつなぐ金具が壊れて、俺は一命を『とりとめてしまった』……俺は『死ぬことすらできない』のか。ただただ情けなくて、惨めで、ひたすらに涙が止まらなかった。
◇◇◇
「父親も母親も学歴主義者で学校を辞めたらお前なんて捨ててやる! って言って俺の言う事は一切聞かなかった。学校に行きたくないって言ったらぶん殴ってでも行かせてたよ」
「……」
シェラハが黙り、1分ほど沈黙がその場を支配する。
「……つらかったでしょ?」
「ああ、つらかった。でもなぐさめなんて要らないよ。されたところでどうこうできるわけじゃないし過去も変わらないからな」
「強いのねワタル。やっぱりあなたは『予言の子』だけあるわ」
シェラハは話し相手を尊敬するような目で彼を見つめる。
「悪いけどもう寝る時間だから今日はこの辺にしてくれないか?」
「あらやだもうそんな時間? じゃあお休み、ワタル」
シェラハは部屋から出ていった。それを見送った後、ワタルはベッドに入って眠りについた。
【次回予告】
訓練を終えついに実戦デビューを迎えたワタル。戦場では憎むべき相手と再会する。
第4話 「教師渡辺」
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