追放→ざまぁwww こんぴれーしょんぱっく ~追放もの短編集めました~

あがつま ゆい

文字の大きさ
21 / 67
ハズレスキル「会話」は実はダンジョンと会話して仲良くなれる最強スキルでした

第3話 レベルを上げて装備も充実

しおりを挟む
 ボイドはねぐらから東にある迷宮ダンジョンでハーフゴーレムと戦っていた。
 ハーフゴーレム、それは全パーツが石で出来たゴーレムと比べればだいぶ貧相な見た目で、木と石の組み合わせという体つきだがゾンビに比べれば幾分手ごわい魔物。
 そいつを相手にライトニングボウと護身用の剣を振るっていた。

「!!」

 ボイドが相手の心臓部を剣で突くと同時にハーフゴーレムによるカウンターパンチを顔面に食らう。一瞬「くらり」と来るが耐えて、剣を力強く握り思いっきり突く。
 相手の身体はばらばらと崩れ床に転がると同時に消えた。



「お兄様! 大丈夫ですか!?」

 若い、というよりは「幼い」と言った方がしっくりくる少女の声で東の迷宮ダンジョンがボイドに声をかけてくる。

「ごめんなさいお兄様。魔物の細かい動きは私にもコントロールできないのでお兄様に余計なケガをさせてしまうかもと思うと不安で……」

「大丈夫だ。冒険者やってりゃこの程度ケガにすら入らないさ」

「そ、そうですか。お兄様、だいぶレベルが上がってますね。私のところに来てから6くらいは上がってますよ」



 ボイドは自分の事を「お兄様」と呼ぶ東の迷宮ダンジョンと話をするようになって彼女……声色から便宜的に「彼女」と呼ぶことにした、に気に入られトレーニング相手になってもらっている。
 彼のレベルに合わせて「楽勝ではないが苦戦する程度でもない」最適な対戦相手を出してもらって実戦形式スパーリングで経験を積んでいる。

「でも俺が魔物をたくさん倒しちゃうとそのうち魔物がいなくなったりしないのか?」

「そこは大丈夫。魔物を倒すと消えちゃうでしょ? あれは死ぬ前に回収して専用の部屋に入れて治療をするからで、大抵の場合は死ななくて済むから魔物は減らないんだよ?」

「なるほどねぇ。倒しても倒しても魔物が湧き続けるのはそのためか」

 この辺りの洞窟は魔物の強さは大した事なくて死ぬ冒険者なんてあまりいないのに、なぜ魔物が湧き続けるのか? その理由が分かった。



「ところでお兄様。ライトニングボウだけだと近づかれた時に困りますよね? 剣も持った方がいいと思いますのでお受け取りください」

 彼女がそう言うとボイドの目の前にパッと宝箱が現れた。中を開けてみると刀身がまっすぐな長い剣が出てきた。
 これも詳しい事は鑑定屋のオヤジに聞かないといけないと思い、迷宮ダンジョンを後にした。



「こいつは……デスフィランギだな」

「デスフィランギ?」

「ああ。フィランギって言う騎兵向けの剣に特殊な魔力を宿したもので、まれにだが斬った相手の息の根を止める効果があるんだ。
 この辺りじゃあまり見ないものだから、お前さん結構運がいいな。ライトニングボウに続いてこいつまで持ち帰るとはな。で、どうする? 買うか?」

「もちろん買うさ。大丈夫、カネならあるぜ」

 南の迷宮ダンジョンが行った地上戦で稼いだ報奨金を吐き出して、デスフィランギを手に入れた。武装は充実し、レベルも順調に上がっている。
 迷宮ダンジョンと会話ができるようになってからというもの、とんとん拍子で強くなっている。
 冒険者家業には合っており、家業を継げない3男坊にして今まで使い道がないとされていたスキル持ちとして産まれたので家を飛び出して正解だったなとボイドは思った。



【次回予告】

ボイドとは対照的に急に戦果が出なくなった自称勇者パーティ一行。強敵に追われる、お宝もしょぼい。
実際には迷宮ダンジョンから嫌われているだけなのだが、それに気づいていなかった。

第4話 「一方そのころ自称勇者パーティのメンバーは?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

さようなら、たったひとつの

あんど もあ
ファンタジー
メアリは、10年間婚約したディーゴから婚約解消される。 大人しく身を引いたメアリだが、ディーゴは翌日から寝込んでしまい…。

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

家族の肖像~父親だからって、家族になれるわけではないの!

みっちぇる。
ファンタジー
 クランベール男爵家の令嬢リコリスは、実家の経営手腕を欲した国の思惑により、名門ながら困窮するベルデ伯爵家の跡取りキールと政略結婚をする。しかし、キールは外面こそ良いものの、実家が男爵家の支援を受けていることを「恥」と断じ、リコリスを軽んじて愛人と遊び歩く不実な男だった 。  リコリスが命がけで双子のユフィーナとジストを出産した際も、キールは朝帰りをする始末。絶望的な夫婦関係の中で、リコリスは「天使」のように愛らしい我が子たちこそが自分の真の家族であると決意し、育児に没頭する 。  子どもたちが生後六か月を迎え、健やかな成長を祈る「祈健会」が開かれることになった。リコリスは、キールから「男爵家との結婚を恥じている」と聞かされていた義両親の来訪に胃を痛めるが、実際に会ったベルデ伯爵夫妻は―?

この国を護ってきた私が、なぜ婚約破棄されなければいけないの?

ファンタジー
ルミドール聖王国第一王子アルベリク・ダランディールに、「聖女としてふさわしくない」と言われ、同時に婚約破棄されてしまった聖女ヴィアナ。失意のどん底に落ち込むヴィアナだったが、第二王子マリクに「この国を出よう」と誘われ、そのまま求婚される。それを受け入れたヴィアナは聖女聖人が確認されたことのないテレンツィアへと向かうが……。 ※複数のサイトに投稿しています。

婚約者を奪った妹と縁を切ったので、家から離れ“辺境領”を継ぎました。 すると勇者一行までついてきたので、領地が最強になったようです

藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。 家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。 その“褒賞”として押しつけられたのは―― 魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。 けれど私は、絶望しなかった。 むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。 そして、予想外の出来事が起きる。 ――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。 「君をひとりで行かせるわけがない」 そう言って微笑む勇者レオン。 村を守るため剣を抜く騎士。 魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。 物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。 彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。 気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き―― いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。 もう、誰にも振り回されない。 ここが私の新しい居場所。 そして、隣には――かつての仲間たちがいる。 捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。 これは、そんな私の第二の人生の物語。

置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを 

青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ 学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。 お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。 お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。 レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。 でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。 お相手は隣国の王女アレキサンドラ。 アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。 バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。 バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。 せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

処理中です...