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無能ジョブ「宝石使い」が実は最強ジョブでした ~強くてかわいい宝石娘に囲まれて幸せです~
第7話 滅ぶはずだった国
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乱世において国が生まれ、そして滅びるのは日常である。今日もとある人間の国が滅びを迎えようとしていた。
僕、シュムックがリーダーを務める事になった宝石娘たちのパーティがドラゴンを討伐してから2週間後、ダイヤモンドの提案で紛争地域に足を運ぶとその町の外側の地域に難民キャンプができていた。
僕らはダイヤモンドを先頭に話を聞く。
「あなたたちは一体どこから来たんですか?」
「私たちの祖国であるリンケン国はもうすぐ魔族の大軍に蹂躙されるからせめてお前たちは逃げろと国王陛下から言われて国を発ってここまで流れ着いたんです」
「そうですか……大変でしたね」
ダイヤモンドは振り返り僕に話しかけてきた。
「マスター。私たちが戦働きをすれば貴族の地位が手に入るかもしれません。どうか許可をお願いできませんか?」
「貴族か……」
僕が宝石を合法的に所有するには貴族にならなくてはいけない。だが産まれてから16年間ずっと平民である僕には貴族なんて雲の上の存在だ。
「僕なんかが貴族になるのか……実感湧かないな」
「大丈夫よマスターちゃん。貴族と言えど平民と一緒で、ご飯も食べるしトイレにも行くしベッドで寝るから大して変わりないわよ」
「そうですよ。実際成功した平民や宝石が欲しい平民を相手に貴族の称号を売ることもあるってボクは聞いたことありますし、貴族と言っても平民と大して変わりないですって」
エメラルドとサファイアがそう言って僕を説得しにかかる。
「宝石使い」は一般的には希少な職業でこそあれ「得意なことが何一つない」職業と言われていたため、自尊心なんてものは幼少の頃より徹底的に叩き潰されていた。
とはいえ何度も身体を重ねて愛着を感じている彼女たちのマスターとして、堂々とふるまわなければならないという使命感も持っており、その板挟みに苦労しながらもなんとか生きていた。
「よし分かった、リンケン国に行こう。そこで戦働きをして貴族の地位を手に入れるか」
僕らの目的地は決まった。
「ハァーハッハッハッハ! 命を捨てに来るというもの好きな奴が居ると思ったら、まだまだ先のある若者ばかりじゃないか! どういう事だ!?
それにダイヤモンド、ルビーなんていうドワーフの女がよく付けられる名前の割には背が高いな。まるで人間じゃないか!」
「魔王軍と戦わせてくれ」と頼み込むとあっさり通してくれた。自分たちは死ぬと思ってヤケになっているのが誰から見ても分かる位には国王の態度はやっつけ具合がすごかった。
それに鉱物に詳しいドワーフは娘に宝石の名前を付けることが多く、宝石娘たちの名前に関してはその風習で名づけられたのだと勘違いしていた。
「閣下、どうしてそのような態度を?」
「我が軍が傭兵と忠義者を寄せ集めた300の軍勢なのに対し相手は2000の大軍だぞ!? 7倍近い兵力差をいったいどうしろっていうんだ!?」
「ご安心を。私たち1人当たり500を蹴散らせば勝てます」
ダイヤモンドはそうさらりと言う。そこに恐れも誇大も無く、ただ冷静に戦力差を覆せると言って見せた。
「ハァーハッハッハッハ! お嬢さん! そんな冗談を堂々と言えるとはキモの座り方が尋常じゃないな! 気に入った! で、何が望みだ!? 言ってみろ!」
「この方に爵位を授けてください。それも男爵以上の物を」
「ハハハッ! 良いだろう。逃げ出した伯爵の領土があるから爵位とセットで使うがいい。まぁ数日後に全部魔物に蹂躙されるだろうがな!
どうせ平民なんだろお前達!? 死ぬ前に伯爵気分を味わうのもいいだろう!」
そんなわけで、あっさりと伯爵の地位と領地を手に入れることができた。
「……ここが、僕らの新しい家か」
与えられた屋敷はまさに貴族の物と言わんばかりの豪邸。ただ先住者は使用人を含めて全員逃げ出しており「もぬけの殻」だった。
「こんな立派なお屋敷に、本当に僕なんかが住んでもいいのかな?」
「大丈夫ですよ。そのうち慣れれば日常になるでしょうし」
「そうか……」
ダイヤモンドはそう言って僕の不安を取り除く。
「ところで食事はどうしようか?」
「あ、それなら私が作れますよ」
「……ルビーが?」
「ええ、簡単な家庭料理程度ですが作れますよ」
「そうかわかった。じゃあ頼むよ」
とりあえず食事には困らずに済みそうだ……あとは戦果を出せばいいだけか。
【次回予告】
2000にも及ぶ魔物の軍勢に対し、忠義者と傭兵の寄せ集めの軍勢300。勝てるわけがなかった……宝石娘たちが来るまでは。
第8話 「戦場を舞う宝石達」
僕、シュムックがリーダーを務める事になった宝石娘たちのパーティがドラゴンを討伐してから2週間後、ダイヤモンドの提案で紛争地域に足を運ぶとその町の外側の地域に難民キャンプができていた。
僕らはダイヤモンドを先頭に話を聞く。
「あなたたちは一体どこから来たんですか?」
「私たちの祖国であるリンケン国はもうすぐ魔族の大軍に蹂躙されるからせめてお前たちは逃げろと国王陛下から言われて国を発ってここまで流れ着いたんです」
「そうですか……大変でしたね」
ダイヤモンドは振り返り僕に話しかけてきた。
「マスター。私たちが戦働きをすれば貴族の地位が手に入るかもしれません。どうか許可をお願いできませんか?」
「貴族か……」
僕が宝石を合法的に所有するには貴族にならなくてはいけない。だが産まれてから16年間ずっと平民である僕には貴族なんて雲の上の存在だ。
「僕なんかが貴族になるのか……実感湧かないな」
「大丈夫よマスターちゃん。貴族と言えど平民と一緒で、ご飯も食べるしトイレにも行くしベッドで寝るから大して変わりないわよ」
「そうですよ。実際成功した平民や宝石が欲しい平民を相手に貴族の称号を売ることもあるってボクは聞いたことありますし、貴族と言っても平民と大して変わりないですって」
エメラルドとサファイアがそう言って僕を説得しにかかる。
「宝石使い」は一般的には希少な職業でこそあれ「得意なことが何一つない」職業と言われていたため、自尊心なんてものは幼少の頃より徹底的に叩き潰されていた。
とはいえ何度も身体を重ねて愛着を感じている彼女たちのマスターとして、堂々とふるまわなければならないという使命感も持っており、その板挟みに苦労しながらもなんとか生きていた。
「よし分かった、リンケン国に行こう。そこで戦働きをして貴族の地位を手に入れるか」
僕らの目的地は決まった。
「ハァーハッハッハッハ! 命を捨てに来るというもの好きな奴が居ると思ったら、まだまだ先のある若者ばかりじゃないか! どういう事だ!?
それにダイヤモンド、ルビーなんていうドワーフの女がよく付けられる名前の割には背が高いな。まるで人間じゃないか!」
「魔王軍と戦わせてくれ」と頼み込むとあっさり通してくれた。自分たちは死ぬと思ってヤケになっているのが誰から見ても分かる位には国王の態度はやっつけ具合がすごかった。
それに鉱物に詳しいドワーフは娘に宝石の名前を付けることが多く、宝石娘たちの名前に関してはその風習で名づけられたのだと勘違いしていた。
「閣下、どうしてそのような態度を?」
「我が軍が傭兵と忠義者を寄せ集めた300の軍勢なのに対し相手は2000の大軍だぞ!? 7倍近い兵力差をいったいどうしろっていうんだ!?」
「ご安心を。私たち1人当たり500を蹴散らせば勝てます」
ダイヤモンドはそうさらりと言う。そこに恐れも誇大も無く、ただ冷静に戦力差を覆せると言って見せた。
「ハァーハッハッハッハ! お嬢さん! そんな冗談を堂々と言えるとはキモの座り方が尋常じゃないな! 気に入った! で、何が望みだ!? 言ってみろ!」
「この方に爵位を授けてください。それも男爵以上の物を」
「ハハハッ! 良いだろう。逃げ出した伯爵の領土があるから爵位とセットで使うがいい。まぁ数日後に全部魔物に蹂躙されるだろうがな!
どうせ平民なんだろお前達!? 死ぬ前に伯爵気分を味わうのもいいだろう!」
そんなわけで、あっさりと伯爵の地位と領地を手に入れることができた。
「……ここが、僕らの新しい家か」
与えられた屋敷はまさに貴族の物と言わんばかりの豪邸。ただ先住者は使用人を含めて全員逃げ出しており「もぬけの殻」だった。
「こんな立派なお屋敷に、本当に僕なんかが住んでもいいのかな?」
「大丈夫ですよ。そのうち慣れれば日常になるでしょうし」
「そうか……」
ダイヤモンドはそう言って僕の不安を取り除く。
「ところで食事はどうしようか?」
「あ、それなら私が作れますよ」
「……ルビーが?」
「ええ、簡単な家庭料理程度ですが作れますよ」
「そうかわかった。じゃあ頼むよ」
とりあえず食事には困らずに済みそうだ……あとは戦果を出せばいいだけか。
【次回予告】
2000にも及ぶ魔物の軍勢に対し、忠義者と傭兵の寄せ集めの軍勢300。勝てるわけがなかった……宝石娘たちが来るまでは。
第8話 「戦場を舞う宝石達」
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