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「おねえちゃん。おはよう」
「おはようございます、ヒロノブ様。体温は……36.7℃、平熱ですね。スキャン結果:病気の兆候、無し。身体は大丈夫ですね。朝食は既に出来ております」
いつものように朝が来る。まだ幼いヒロノブにとって食事を作ってくれる「それ」は大好きなお姉ちゃんだった。
お姉ちゃんはひざまで届く長くて濃い茶色の髪をして、見た目は人間によく似ているが表情の乏しい、というか感情表現機能を削除された「廉価版」だ。
「ヒロノブ様、お味はどうでしょうか? 濃い薄いがございましたら遠慮なく申し出てください」
「だいじょうぶ。おねえちゃんのごはんは、すっごくおいしいよ!」
料理も出来て、一緒に遊んでくれるお姉ちゃん。弟や妹に夢中なパパやママみたいに怒ってばかりじゃなくていつも優しく接してくれるお姉ちゃん。
「彼女」はヒロノブにとって「理想のお姉ちゃん」だった。ご飯を食べてお姉ちゃんに見守られている中お着替えをする。
「ヒロノブ様、1人でお着替え出来るようになって、偉いですね。では幼稚園まで送りますので一緒に車に乗りましょう」
「はーい」
『お姉ちゃん』に褒められて上機嫌なヒロノブは今では当たり前となった「完全自動運転車」に乗って幼稚園まで送ってもらう事になった。
ヒロノブの人生の始まりはまだ良かった。だが小学生になってからはだいぶ風向きが悪くなっていった。
「ただいまぁ……」
黒いランドセルを背負って帰って来たヒロノブは、明らかに力なくうつ向いて歩いており、どう考えても学校内で何かあったのだろうと思わせるものがあった。
「ヒロノブ様、いかがいたしましたか? 調子が優れているようには見えませんが……」
ヒロノブは「お姉ちゃん」を見ると泣きながら抱き着いてきた。お姉ちゃんの長い茶色の髪がふわりと舞う。
「ヒック……うぐ……また学校で、みんなからブサイクだって、言われた……ううう……」
ヒロノブは容姿が優れていなかった。一言で言えば「ブサカワのブルドッグ犬」とでも言えばいい顔だ。
そんな容姿はいじめられる理由にはうってつけだった。両親からも疎まれ、育児を『お姉ちゃん』に押し付けて家庭内でも無視される理由でもあった。
「お姉ちゃんは……お姉ちゃんはボクの事ブサイクって言わないよね?」
「私にとってヒロノブ様はかけがえのない家族ですから、どんなことがあっても私はヒロノブ様をお守りしますよ」
「お姉ちゃん……ありがとう……」
『お姉ちゃん』は力強くヒロノブを抱きしめ、慰めてくれた。
いじめは小学3年の1年間続いた。最後には『お姉ちゃん』が法的訴訟を起こすと脅しをかけたのが幸いして、それ以降いじめられることは無かった。
またもや『大好きなお姉ちゃん』に助けられたのだがそれでもお姉ちゃんは表情一つ崩すことは無かった。
ヒロノブは高校生になり思春期に入ると、女子との恋愛ごとにも関心が向くようになった。
とはいえ「ブサカワのブルドッグ犬」に関わろうとする女なぞ、彼の家の遺産目当てしかいなかったのだが。
「ヒロノブ君、私よりそんな機械人形の方が良いの?」
「少なくとも家の金目当てで付き合って来る子よりはましだよ」
「私がお金目当てで付き合おうとする子に見えるの?」
「ああ。目が¥マークじゃないか」
「そう。じゃあソイツと付き合えばいいわ!」
お金目当てで上昇志向に突き動かされている同級生の女子にそう言われてヒロノブは返す言葉が出ない。
彼はまだ16歳だが相手の目が露骨に¥マークなのは分かる。こいつもお金目当てか……ヒロノブの恋はまた1つ終わった。
「お姉ちゃん。今度の彼女もお金目当てだったよ。お姉ちゃんは違うよね?」
「ヒロノブ様、私は初代マスターの遺言『私の家族を寿命が来るまで見守り、共に生きてくれ』は何があろうと守り続けます。私がヒロノブ様を見捨てることなど決してしません」
「お姉ちゃん……ありがとう」
ヒロノブの『お姉ちゃん』は機械人形。
製造から50年以上経つ「ハーフライフ」型で、生体部品で出来ており専用の補給剤さえあれば理論上は半永久的に動くタイプだ。
「お姉ちゃん、僕はお姉ちゃんの事が……」
「私もヒロノブ様の事を愛していますよ。大切な家族ですもの」
お金が好きな同級生よりも、無償の愛を注いでくれる『お姉ちゃん』に惚れるのは当然の事だった。
思春期を超えて成人すると、ヒロノブは実家の事業を手伝う事になった。
主な事業は出来の良い弟が担い、ヒロノブには重要度の低い仕事を任されていたが、それでも並みの人間よりはいい暮らしは出来ていた。
学生時代はお金が無くて中々できなかった『お姉ちゃんとのデート』も、働くようになってそれなりのカネが入るようになると月3~4回くらいの間隔で出来るようになった。
「ヒロノブ様ですね。ご予約ありがとうございます。ではご案内しますね」
シャレた高級フランス料理店でディナーを予約していたヒロノブは「お姉ちゃん」と一緒に外食だ。案内をしている店員の口がかすかに怒りで引きつっていたが彼はあえて無視した。
店側からしたら機械人形とデートする奴なんて「結局1人分しかカネを落とさないくせに、スペースは2人分とって利益率を落とす」という嫌われ者だった。
特にSNSでは店員が陰で呪詛をたれているのを頻繁に見かける。
「ヒロノブ様、私はヒロノブ様と一緒に食事をとる事が出来ないのですが、よろしいですか?」
「構わないさ。お姉ちゃんが見ている中で食事するだけでも嬉しいよ」
フランス料理を食べながらヒロノブはお姉ちゃんと会話する。出来れば一緒に同じ料理を食べながら会話したい。
という願望はあったが、相手は機械人形なので妥協していた。
「申し訳ありません、私のような機械人形には食事の概念がありませんからね。
しいて言えば補給剤の注入が食事に当たるでしょうが、味覚の類はありませんので食事を楽しむという概念はつかみきれてません。
ヒロノブ様が幼い頃から調理もしてきましたが、レシピ通りに作ってるだけですし……」
「いいのいいの。お姉ちゃんが見ているそばで食事ができるだけでもいいの! 気にしないで」
お姉ちゃんの声が申し訳なさそうなしぼんだものになっているのを元気づけるためか、ヒロノブはいつも以上に姉に優しく接した。
その後も月3~4回のデートは続き、ヒロノブは大いに実りのある人生を歩んでいた。
年月は流れ、ヒロノブは年老いて病床に伏せていた。
弟や妹の子供、さらには孫にちょっかいを出しては煙たがれていたのだが、それも出来なくなるまで衰弱してしまった。
「……お姉ちゃん」
「ヒロノブ様、私はここにいます」
「……生涯で本当に愛した女性は、お姉ちゃんだけだな」
「私も、ヒロノブ様を愛しています」
「お姉ちゃん、今まで僕を愛してくれてありがとう。幸せな一生だったよ」
ヒロノブはそう言うとかすかに笑う。お姉ちゃんはそれを否定する。
「そんなこと言わないで下さい。私としてはヒロノブ様にはまだ生きていてほしいです」
「ごめんね、お姉ちゃん。ぼくはもうだめだ……自分の身体の事は自分で良く分かる。こんな見た目のぼくを心の底から愛してくれて本当にありがとう。
お姉ちゃんがいたからここまで頑張れた。お姉ちゃんが愛してくれるからここまで生きて来れた。愛してる、さようなら」
そこまで言ってヒロノブは眠るように息を引き取った。お姉ちゃんに愛され続け、最期を看取ってくれた、実りある生涯であった。
「おはようございます、ヒロノブ様。体温は……36.7℃、平熱ですね。スキャン結果:病気の兆候、無し。身体は大丈夫ですね。朝食は既に出来ております」
いつものように朝が来る。まだ幼いヒロノブにとって食事を作ってくれる「それ」は大好きなお姉ちゃんだった。
お姉ちゃんはひざまで届く長くて濃い茶色の髪をして、見た目は人間によく似ているが表情の乏しい、というか感情表現機能を削除された「廉価版」だ。
「ヒロノブ様、お味はどうでしょうか? 濃い薄いがございましたら遠慮なく申し出てください」
「だいじょうぶ。おねえちゃんのごはんは、すっごくおいしいよ!」
料理も出来て、一緒に遊んでくれるお姉ちゃん。弟や妹に夢中なパパやママみたいに怒ってばかりじゃなくていつも優しく接してくれるお姉ちゃん。
「彼女」はヒロノブにとって「理想のお姉ちゃん」だった。ご飯を食べてお姉ちゃんに見守られている中お着替えをする。
「ヒロノブ様、1人でお着替え出来るようになって、偉いですね。では幼稚園まで送りますので一緒に車に乗りましょう」
「はーい」
『お姉ちゃん』に褒められて上機嫌なヒロノブは今では当たり前となった「完全自動運転車」に乗って幼稚園まで送ってもらう事になった。
ヒロノブの人生の始まりはまだ良かった。だが小学生になってからはだいぶ風向きが悪くなっていった。
「ただいまぁ……」
黒いランドセルを背負って帰って来たヒロノブは、明らかに力なくうつ向いて歩いており、どう考えても学校内で何かあったのだろうと思わせるものがあった。
「ヒロノブ様、いかがいたしましたか? 調子が優れているようには見えませんが……」
ヒロノブは「お姉ちゃん」を見ると泣きながら抱き着いてきた。お姉ちゃんの長い茶色の髪がふわりと舞う。
「ヒック……うぐ……また学校で、みんなからブサイクだって、言われた……ううう……」
ヒロノブは容姿が優れていなかった。一言で言えば「ブサカワのブルドッグ犬」とでも言えばいい顔だ。
そんな容姿はいじめられる理由にはうってつけだった。両親からも疎まれ、育児を『お姉ちゃん』に押し付けて家庭内でも無視される理由でもあった。
「お姉ちゃんは……お姉ちゃんはボクの事ブサイクって言わないよね?」
「私にとってヒロノブ様はかけがえのない家族ですから、どんなことがあっても私はヒロノブ様をお守りしますよ」
「お姉ちゃん……ありがとう……」
『お姉ちゃん』は力強くヒロノブを抱きしめ、慰めてくれた。
いじめは小学3年の1年間続いた。最後には『お姉ちゃん』が法的訴訟を起こすと脅しをかけたのが幸いして、それ以降いじめられることは無かった。
またもや『大好きなお姉ちゃん』に助けられたのだがそれでもお姉ちゃんは表情一つ崩すことは無かった。
ヒロノブは高校生になり思春期に入ると、女子との恋愛ごとにも関心が向くようになった。
とはいえ「ブサカワのブルドッグ犬」に関わろうとする女なぞ、彼の家の遺産目当てしかいなかったのだが。
「ヒロノブ君、私よりそんな機械人形の方が良いの?」
「少なくとも家の金目当てで付き合って来る子よりはましだよ」
「私がお金目当てで付き合おうとする子に見えるの?」
「ああ。目が¥マークじゃないか」
「そう。じゃあソイツと付き合えばいいわ!」
お金目当てで上昇志向に突き動かされている同級生の女子にそう言われてヒロノブは返す言葉が出ない。
彼はまだ16歳だが相手の目が露骨に¥マークなのは分かる。こいつもお金目当てか……ヒロノブの恋はまた1つ終わった。
「お姉ちゃん。今度の彼女もお金目当てだったよ。お姉ちゃんは違うよね?」
「ヒロノブ様、私は初代マスターの遺言『私の家族を寿命が来るまで見守り、共に生きてくれ』は何があろうと守り続けます。私がヒロノブ様を見捨てることなど決してしません」
「お姉ちゃん……ありがとう」
ヒロノブの『お姉ちゃん』は機械人形。
製造から50年以上経つ「ハーフライフ」型で、生体部品で出来ており専用の補給剤さえあれば理論上は半永久的に動くタイプだ。
「お姉ちゃん、僕はお姉ちゃんの事が……」
「私もヒロノブ様の事を愛していますよ。大切な家族ですもの」
お金が好きな同級生よりも、無償の愛を注いでくれる『お姉ちゃん』に惚れるのは当然の事だった。
思春期を超えて成人すると、ヒロノブは実家の事業を手伝う事になった。
主な事業は出来の良い弟が担い、ヒロノブには重要度の低い仕事を任されていたが、それでも並みの人間よりはいい暮らしは出来ていた。
学生時代はお金が無くて中々できなかった『お姉ちゃんとのデート』も、働くようになってそれなりのカネが入るようになると月3~4回くらいの間隔で出来るようになった。
「ヒロノブ様ですね。ご予約ありがとうございます。ではご案内しますね」
シャレた高級フランス料理店でディナーを予約していたヒロノブは「お姉ちゃん」と一緒に外食だ。案内をしている店員の口がかすかに怒りで引きつっていたが彼はあえて無視した。
店側からしたら機械人形とデートする奴なんて「結局1人分しかカネを落とさないくせに、スペースは2人分とって利益率を落とす」という嫌われ者だった。
特にSNSでは店員が陰で呪詛をたれているのを頻繁に見かける。
「ヒロノブ様、私はヒロノブ様と一緒に食事をとる事が出来ないのですが、よろしいですか?」
「構わないさ。お姉ちゃんが見ている中で食事するだけでも嬉しいよ」
フランス料理を食べながらヒロノブはお姉ちゃんと会話する。出来れば一緒に同じ料理を食べながら会話したい。
という願望はあったが、相手は機械人形なので妥協していた。
「申し訳ありません、私のような機械人形には食事の概念がありませんからね。
しいて言えば補給剤の注入が食事に当たるでしょうが、味覚の類はありませんので食事を楽しむという概念はつかみきれてません。
ヒロノブ様が幼い頃から調理もしてきましたが、レシピ通りに作ってるだけですし……」
「いいのいいの。お姉ちゃんが見ているそばで食事ができるだけでもいいの! 気にしないで」
お姉ちゃんの声が申し訳なさそうなしぼんだものになっているのを元気づけるためか、ヒロノブはいつも以上に姉に優しく接した。
その後も月3~4回のデートは続き、ヒロノブは大いに実りのある人生を歩んでいた。
年月は流れ、ヒロノブは年老いて病床に伏せていた。
弟や妹の子供、さらには孫にちょっかいを出しては煙たがれていたのだが、それも出来なくなるまで衰弱してしまった。
「……お姉ちゃん」
「ヒロノブ様、私はここにいます」
「……生涯で本当に愛した女性は、お姉ちゃんだけだな」
「私も、ヒロノブ様を愛しています」
「お姉ちゃん、今まで僕を愛してくれてありがとう。幸せな一生だったよ」
ヒロノブはそう言うとかすかに笑う。お姉ちゃんはそれを否定する。
「そんなこと言わないで下さい。私としてはヒロノブ様にはまだ生きていてほしいです」
「ごめんね、お姉ちゃん。ぼくはもうだめだ……自分の身体の事は自分で良く分かる。こんな見た目のぼくを心の底から愛してくれて本当にありがとう。
お姉ちゃんがいたからここまで頑張れた。お姉ちゃんが愛してくれるからここまで生きて来れた。愛してる、さようなら」
そこまで言ってヒロノブは眠るように息を引き取った。お姉ちゃんに愛され続け、最期を看取ってくれた、実りある生涯であった。
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