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美歌アメリカへ行く
Scene.39 いいよ。それでも
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10月も過ぎ去り、文化の日を迎えた。それとは全く関係のない話だが、乃亜達にはちょっとしたイベントが待っていた。
秋も深まり涼しい陽気の下、乃亜とミストは真理が選んだ(2人にはファッションセンスがカケラも無かった)最新の秋物を着て出かける準備をしていた。
「じゃ、今日1日いないからよろしくな、真理」
「うん。分かった。楽しんでらっしゃい」
「そう言えばまともにデートするのってこれが初めてだっけ?」
「え……あ、ああ。そうだったな」
そう言えばそうだったことに気付いて乃亜は柄にもなく赤面して答える。
「ハハッ! 乃亜ったら照れてやんのー」
「うるせえ! からかうんじゃねえよ!」
悪態をつきながらも彼らは仲良く出かけて行った2人を見て真理はため息をついた。
「……仲、いいのね」
休日なだけあって人で溢れる街中で2人は久しぶりに羽根を伸ばしていた。特に美歌がいなくなったのがでかい。
彼女が日本を出るまでは天使たちに気付かれないように常に尾行を警戒しながら街中を歩いていた。
スーパーやコンビニへの日用品の買い出しも必要最低限。殆どはネット通販で済ませていた。少なくともこうして呑気におデートなんてする事は出来なかった。
2人は他愛もない会話を重ねながらひとしきり外の空気を吸ってリフレッシュし、昼食をとるために店に寄った。
(ねえ見てよあれ。あんなブサイクが彼女連れて歩いてる)
(彼女も彼女よねー。あんな奴のどこがいいんだか)
陰でコソコソと目立つ客に対してぶっちゃけるウェイトレス達。こっそりと話しているつもりだったが、筒抜けだった。
「オイ、聞こえてんぞ。ブサイクで悪かったな」
「あ、いえ! 何でもありません! い、今すぐ料理をご用意いたしますのでもう少々お待ちいただけますか!」
いつの間にか目の前にいた陰で嗤ってた客に驚きながらも何事も無かったかのように取り繕う所はさすがプロというべきか。
そんなトラブルと言えばトラブルであるイベントに会いながらも2人は無事にねぐらであるアパートまで戻ってきた。
「お帰り。どう? 楽しかった?」
「ああ。楽しかったぜ。そういえばまともに人間の街を歩いたことなんて無かったから結構新鮮だったぜ」
「そう……良かった」
「ん? どうした? 真理。何かあった?」
「……別に何も」
真理はちょっとだけ残念そうなそぶりを見せる。
「どうした? 真理。最近様子が変だぜ?」
「ミスト! 何でもないって言ってるじゃない!」
「わ、分かった。分かったよ。そこまで言わなくてもいいじゃん」
不自然な態度に疑問を感じながらもお互いその場ではそれ以上の追及はせず、寝る時間となった。
「乃亜。起きて」
「何だよ真理? こんな時間に」
真理は乃亜の体をゆする。ほどなくして彼が布団から出てきた。
手元にあったスマホの画面を見ると夜中の3時。普段なら寝ている時間帯だ。
「ごめんね。乃亜。こんな時間に起こしちゃって。でも、どうしてもあなただけに伝えたいことがあったから」
しばらく黙りこんだ後、真理は告白した。
「私、あなたの事が……好きになっちゃったみたい。いや、好きなんてもんじゃない。大好き」
「!!」
告白をされた側はその言葉をかみしめた後、顔を落とす。
「悪い。形だけとはいえミストと籍入れちまったからその思いは受け取ることは出来ないよ」
「いいよ。籍とか入れなくてもいいから」
「なっ!?」
「お前、言ってる意味わかってるのか!? それって……」
「うん。いいよ。それでもいいよ。愛してくれるなら、それでもいい」
「……」
乃亜はしばらく黙りこみ考えた後、
「分かった。それでいいって言うならそう言う扱いになるけど、それでいいか?」
「うん。いいよ。ありがとう。乃亜」
真理は久しぶりに笑顔を見せたのだった。
秋も深まり涼しい陽気の下、乃亜とミストは真理が選んだ(2人にはファッションセンスがカケラも無かった)最新の秋物を着て出かける準備をしていた。
「じゃ、今日1日いないからよろしくな、真理」
「うん。分かった。楽しんでらっしゃい」
「そう言えばまともにデートするのってこれが初めてだっけ?」
「え……あ、ああ。そうだったな」
そう言えばそうだったことに気付いて乃亜は柄にもなく赤面して答える。
「ハハッ! 乃亜ったら照れてやんのー」
「うるせえ! からかうんじゃねえよ!」
悪態をつきながらも彼らは仲良く出かけて行った2人を見て真理はため息をついた。
「……仲、いいのね」
休日なだけあって人で溢れる街中で2人は久しぶりに羽根を伸ばしていた。特に美歌がいなくなったのがでかい。
彼女が日本を出るまでは天使たちに気付かれないように常に尾行を警戒しながら街中を歩いていた。
スーパーやコンビニへの日用品の買い出しも必要最低限。殆どはネット通販で済ませていた。少なくともこうして呑気におデートなんてする事は出来なかった。
2人は他愛もない会話を重ねながらひとしきり外の空気を吸ってリフレッシュし、昼食をとるために店に寄った。
(ねえ見てよあれ。あんなブサイクが彼女連れて歩いてる)
(彼女も彼女よねー。あんな奴のどこがいいんだか)
陰でコソコソと目立つ客に対してぶっちゃけるウェイトレス達。こっそりと話しているつもりだったが、筒抜けだった。
「オイ、聞こえてんぞ。ブサイクで悪かったな」
「あ、いえ! 何でもありません! い、今すぐ料理をご用意いたしますのでもう少々お待ちいただけますか!」
いつの間にか目の前にいた陰で嗤ってた客に驚きながらも何事も無かったかのように取り繕う所はさすがプロというべきか。
そんなトラブルと言えばトラブルであるイベントに会いながらも2人は無事にねぐらであるアパートまで戻ってきた。
「お帰り。どう? 楽しかった?」
「ああ。楽しかったぜ。そういえばまともに人間の街を歩いたことなんて無かったから結構新鮮だったぜ」
「そう……良かった」
「ん? どうした? 真理。何かあった?」
「……別に何も」
真理はちょっとだけ残念そうなそぶりを見せる。
「どうした? 真理。最近様子が変だぜ?」
「ミスト! 何でもないって言ってるじゃない!」
「わ、分かった。分かったよ。そこまで言わなくてもいいじゃん」
不自然な態度に疑問を感じながらもお互いその場ではそれ以上の追及はせず、寝る時間となった。
「乃亜。起きて」
「何だよ真理? こんな時間に」
真理は乃亜の体をゆする。ほどなくして彼が布団から出てきた。
手元にあったスマホの画面を見ると夜中の3時。普段なら寝ている時間帯だ。
「ごめんね。乃亜。こんな時間に起こしちゃって。でも、どうしてもあなただけに伝えたいことがあったから」
しばらく黙りこんだ後、真理は告白した。
「私、あなたの事が……好きになっちゃったみたい。いや、好きなんてもんじゃない。大好き」
「!!」
告白をされた側はその言葉をかみしめた後、顔を落とす。
「悪い。形だけとはいえミストと籍入れちまったからその思いは受け取ることは出来ないよ」
「いいよ。籍とか入れなくてもいいから」
「なっ!?」
「お前、言ってる意味わかってるのか!? それって……」
「うん。いいよ。それでもいいよ。愛してくれるなら、それでもいい」
「……」
乃亜はしばらく黙りこみ考えた後、
「分かった。それでいいって言うならそう言う扱いになるけど、それでいいか?」
「うん。いいよ。ありがとう。乃亜」
真理は久しぶりに笑顔を見せたのだった。
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