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つかの間の休息
第39話 少年
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まだまだ暑い日が続く中、彼らもそれに負けない位熱くなっていた、というよりは「お熱」になっていた、とでも言えばいいだろうか。
「れ、麗娘さん、これ、あげます!」
農民の男は自生している花で作った花束を渡す。
ペク国より麗娘が来てからというものハシバ国の男どもは落ち着かない。
というのも、彼女の胸はかなり豊満なものだからだ。
大抵の場合、男というのは大人も子供も「でかい=すごい」という方程式が成り立つ。(もちろん例外もあるが)
だから現代地球の男の子たちは自分たちよりもはるかに大きい、はたらくクルマや電車に飛行機、恐竜そして宇宙あたりは大好物だ。
それは女性の胸の大きさに関しても当てはまる。「でかい=すごい」のだ。
この「でかい=すごい」という男の単純な思考の前にいらだっているのは女性、特に既婚者だ。
夫が巨乳につられないかと不安と怒りと嫉妬が混じり合った感情を抱いている。
「やきもち焼いて」なんていう生ぬるい言い方ではとてもじゃないが済まない。
「あなたは胸ごときに釣られないよね?」
「お前は将来性があるからそれに賭けてる。信じてくれよなぁ、お前何度言わせるんだよ」
新婚であるメリルも例外ではなくマコトに対して何重にも釘を刺している。何度言われたのかもう分からない。
「ところで何で神霊石なんて持ち出してるの?」
「配下を召喚するためさ。久しぶりにな」
マコトは久しぶりに召喚の間へと降りる。
神霊石を魔法陣の中心に置き、石の力を開放し召喚の儀を行った。魔法陣が「緑」に輝いた。
少しだけ期待したマコトの目の前に現れたのは9~10歳程度の赤色の瞳だが目つきのキツイ、まともにクシでとかしてもいないボサボサの茶髪をした、殺気だった人間の少年だった。
「アンタがチキュウとかいう異世界からやってきた王か?」
「そうだが、お前の望みは何だ?」
「俺をアンタの軍隊に入れる事」
「なぜだ?」
カネが欲しいとかならともかく、軍隊に入れることを要求した少年。それに何かわけがあると思い、問う。
「ヴェルガノン帝国って知ってるか?」
「ヴェルガノン帝国? あのヴェルガノン帝国か?」
「知ってるなら話は早い。そいつが飼ってる豚野郎に孤児院の先生と仲間全員を殺されたんだ。敵討ちをするのに強くなりたい。だから俺を軍隊に入れてくれ」
「そうか。ちょっと待て。孤児院の先生と仲間を殺されたって言ったな? って事はお前今野宿でもしてるのか?」
「盗みもやってる」
「……」
こんな幼い子供を軍隊に入れるのは気が引けた。だが、このまま盗みで食いつなぐ生活をさせるのは、もっと嫌だった。
「分かった。お前の願いを叶えてやる。軍隊に入れるから盗みとかはもうやらないでくれ。いいな?」
「ああ。俺はクルス。アンタが俺の願いを叶えてくれるってんなら、俺もアンタの言う事を聞いてやる」
彼の胸から緑の光の球が出て、スマホの中に入った。
マコトはディオールに訳を話してお願いしていた。
「というわけだ。コイツに剣の稽古をつけてやってくれ」
「うーむ、私の剣は誰かを守るために使わないといけない剣です。最初から殺しのために教えるのは気が引けますな」
「何だテメェ約束を破るつもりか?」
不穏な空気が漂う。そんな中非番のウラカンがもめているマコト達を見て声をかけた。
「閣下、何ですこのガキは?」
「あ、ああ。コイツは……」
◇◇◇
「というわけだ」
「そうか。だったら俺が預かってもいいか?」
「構わんがいいのか? コイツの目的は殺しだぞ?」
「ハハッ、殺った殺られたなんて今のご時世じゃ良くある話だ。それが目的でもいいんじゃねのか? んじゃ坊主。明日から俺の指揮下に入ってくれよな」
「坊主じゃねえ! クルスだ!」
「オーケーオーケーわかった、クルスな。明日から訓練だぞ」
クルスの日記
アケリア歴1238年 8月19日
マコトとか言うチキュウって言うらしい異世界から来た王に召喚され、配下になる。軍隊に入れろという要求も叶って明日から訓練が始まるそうだ。
この国は西大陸南部らしいのでヴェルガノン帝国とぶつかることは当分の間無いだろうが、
いざという時は軍隊辞めて傭兵にでもなって大陸北部にでも行けばいいか。
翌朝
真新しいバトルアックスを貰い上機嫌のクルスに強烈な訓練が待っていた。
「よーし! まずは万色の神への感謝の素振り100回! 始め!」
「1!」
「2!」
「3!」
◇◇◇
「98!」
「99!」
「100!」
「ハァ……ハァ……終わった」
クルスが一息つこうとした時、ウラカンが叫ぶ。
「よーし! 次は我らが王への感謝の素振り100回! 始め! モタモタするな!」
「ええっ!? ちょっとま……」
「1!」
「2!」
「3!」
◇◇◇
「98!」
「99!」
「100!」
「ぜぇ……ぜぇ……」
新入りが肩で息をしているのを全く気にせず、ウラカンは叫ぶ。
「よーし! 次は我らが王妃への感謝の素振り100回! 始め!」
「う、ウソだろ!?」
「1!」
「2!」
「3! もたつくな! ついてこい!」
◇◇◇
「98!」
「99!」
「100!」
「ハァ……ハァ……」
少年は地面に転がってもう動けないと身体で表現しているようなありさまだ。
「よし! 素振りはこの辺にしよう。続いて集団行動の訓練だ! 休んでる暇はないぞ! 全員集合!」
「マジかよ。休みなしかよ!」
「集合するまでが遅い! 実戦じゃ貴様ら死んでるぞ! もう一回最初からやり直しだ!」
「ひ、ひぃい!」
「チンタラ動くな! やる気見せろ! もっとキビキビと動け! もう一回だ!」
◇◇◇
「どうだぁ? 憧れの軍隊生活は」
「……」
あまりにも疲れすぎて声すらまともに出ない。
「明日もあるんだ。早く寝ることだな」
「……」
彼は黙ったまま力なくこくりとうなずいた。
クルスの日記
後アケリア歴1238年 8月20日
訓練が始まったが書くのもしんどい。今日はもう寝る。
【次回予告】
「あの子は放っておくと何するか分からないから心配だ」とメリルは訴える。
それを解決できるアイディアとは?
第40話「クルス、養子になる」
「れ、麗娘さん、これ、あげます!」
農民の男は自生している花で作った花束を渡す。
ペク国より麗娘が来てからというものハシバ国の男どもは落ち着かない。
というのも、彼女の胸はかなり豊満なものだからだ。
大抵の場合、男というのは大人も子供も「でかい=すごい」という方程式が成り立つ。(もちろん例外もあるが)
だから現代地球の男の子たちは自分たちよりもはるかに大きい、はたらくクルマや電車に飛行機、恐竜そして宇宙あたりは大好物だ。
それは女性の胸の大きさに関しても当てはまる。「でかい=すごい」のだ。
この「でかい=すごい」という男の単純な思考の前にいらだっているのは女性、特に既婚者だ。
夫が巨乳につられないかと不安と怒りと嫉妬が混じり合った感情を抱いている。
「やきもち焼いて」なんていう生ぬるい言い方ではとてもじゃないが済まない。
「あなたは胸ごときに釣られないよね?」
「お前は将来性があるからそれに賭けてる。信じてくれよなぁ、お前何度言わせるんだよ」
新婚であるメリルも例外ではなくマコトに対して何重にも釘を刺している。何度言われたのかもう分からない。
「ところで何で神霊石なんて持ち出してるの?」
「配下を召喚するためさ。久しぶりにな」
マコトは久しぶりに召喚の間へと降りる。
神霊石を魔法陣の中心に置き、石の力を開放し召喚の儀を行った。魔法陣が「緑」に輝いた。
少しだけ期待したマコトの目の前に現れたのは9~10歳程度の赤色の瞳だが目つきのキツイ、まともにクシでとかしてもいないボサボサの茶髪をした、殺気だった人間の少年だった。
「アンタがチキュウとかいう異世界からやってきた王か?」
「そうだが、お前の望みは何だ?」
「俺をアンタの軍隊に入れる事」
「なぜだ?」
カネが欲しいとかならともかく、軍隊に入れることを要求した少年。それに何かわけがあると思い、問う。
「ヴェルガノン帝国って知ってるか?」
「ヴェルガノン帝国? あのヴェルガノン帝国か?」
「知ってるなら話は早い。そいつが飼ってる豚野郎に孤児院の先生と仲間全員を殺されたんだ。敵討ちをするのに強くなりたい。だから俺を軍隊に入れてくれ」
「そうか。ちょっと待て。孤児院の先生と仲間を殺されたって言ったな? って事はお前今野宿でもしてるのか?」
「盗みもやってる」
「……」
こんな幼い子供を軍隊に入れるのは気が引けた。だが、このまま盗みで食いつなぐ生活をさせるのは、もっと嫌だった。
「分かった。お前の願いを叶えてやる。軍隊に入れるから盗みとかはもうやらないでくれ。いいな?」
「ああ。俺はクルス。アンタが俺の願いを叶えてくれるってんなら、俺もアンタの言う事を聞いてやる」
彼の胸から緑の光の球が出て、スマホの中に入った。
マコトはディオールに訳を話してお願いしていた。
「というわけだ。コイツに剣の稽古をつけてやってくれ」
「うーむ、私の剣は誰かを守るために使わないといけない剣です。最初から殺しのために教えるのは気が引けますな」
「何だテメェ約束を破るつもりか?」
不穏な空気が漂う。そんな中非番のウラカンがもめているマコト達を見て声をかけた。
「閣下、何ですこのガキは?」
「あ、ああ。コイツは……」
◇◇◇
「というわけだ」
「そうか。だったら俺が預かってもいいか?」
「構わんがいいのか? コイツの目的は殺しだぞ?」
「ハハッ、殺った殺られたなんて今のご時世じゃ良くある話だ。それが目的でもいいんじゃねのか? んじゃ坊主。明日から俺の指揮下に入ってくれよな」
「坊主じゃねえ! クルスだ!」
「オーケーオーケーわかった、クルスな。明日から訓練だぞ」
クルスの日記
アケリア歴1238年 8月19日
マコトとか言うチキュウって言うらしい異世界から来た王に召喚され、配下になる。軍隊に入れろという要求も叶って明日から訓練が始まるそうだ。
この国は西大陸南部らしいのでヴェルガノン帝国とぶつかることは当分の間無いだろうが、
いざという時は軍隊辞めて傭兵にでもなって大陸北部にでも行けばいいか。
翌朝
真新しいバトルアックスを貰い上機嫌のクルスに強烈な訓練が待っていた。
「よーし! まずは万色の神への感謝の素振り100回! 始め!」
「1!」
「2!」
「3!」
◇◇◇
「98!」
「99!」
「100!」
「ハァ……ハァ……終わった」
クルスが一息つこうとした時、ウラカンが叫ぶ。
「よーし! 次は我らが王への感謝の素振り100回! 始め! モタモタするな!」
「ええっ!? ちょっとま……」
「1!」
「2!」
「3!」
◇◇◇
「98!」
「99!」
「100!」
「ぜぇ……ぜぇ……」
新入りが肩で息をしているのを全く気にせず、ウラカンは叫ぶ。
「よーし! 次は我らが王妃への感謝の素振り100回! 始め!」
「う、ウソだろ!?」
「1!」
「2!」
「3! もたつくな! ついてこい!」
◇◇◇
「98!」
「99!」
「100!」
「ハァ……ハァ……」
少年は地面に転がってもう動けないと身体で表現しているようなありさまだ。
「よし! 素振りはこの辺にしよう。続いて集団行動の訓練だ! 休んでる暇はないぞ! 全員集合!」
「マジかよ。休みなしかよ!」
「集合するまでが遅い! 実戦じゃ貴様ら死んでるぞ! もう一回最初からやり直しだ!」
「ひ、ひぃい!」
「チンタラ動くな! やる気見せろ! もっとキビキビと動け! もう一回だ!」
◇◇◇
「どうだぁ? 憧れの軍隊生活は」
「……」
あまりにも疲れすぎて声すらまともに出ない。
「明日もあるんだ。早く寝ることだな」
「……」
彼は黙ったまま力なくこくりとうなずいた。
クルスの日記
後アケリア歴1238年 8月20日
訓練が始まったが書くのもしんどい。今日はもう寝る。
【次回予告】
「あの子は放っておくと何するか分からないから心配だ」とメリルは訴える。
それを解決できるアイディアとは?
第40話「クルス、養子になる」
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