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領土平定
第102話 ヴァジュラ
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「うーん……できた。ふあぁ~~~~。眠いなー」
「ギズモ、まさかお主徹夜したのか?」
「あ、システィアーノの姉御、ええまぁ。天啓が降ってきてとてもじゃないが寝てられませんわ」
「徹夜はするな。睡眠不足は良い仕事の敵じゃ。あと健康にもよくない。早死にするぞ? わらわの同僚の1人など128歳じゃったぞ?」
「128歳? エルフとしてはかなり若いですね」
「年齢じゃないぞ? 『享年』じゃぞ? 今日はもう1日仕事を休んで寝ることじゃな」
そう言って眠りの魔法をかける。ギズモは抵抗するそぶりすら見せずにコテンと倒れるように眠った。
その様子の一部始終を視察に来ていたマコトも見ていた。
「技術者は仕事が乗ってくると平気で徹夜してしまう生き物じゃ。だからこそムリヤリにでも休ませないといけないものじゃ。
さっきも言ったようにわらわの同僚で徹夜してばかりで128歳で逝った者もいてな。その二の舞だけはさせたくないんじゃ」
システィアーノはその128歳で逝った技術者が気になるのだろうか、暗い顔をする。
マコトはやや強引ではあるが話題を変える。
「そ、そうか。ところで製作状況はどうなってる?」
「動力源のエネルギーを回転エネルギーに変換する機関の開発にちょっと手間取っておる。小型軽量化は何とか出来て今の段階でも一応形にはなってはおるが、燃費は最悪じゃの」
「構わん。元々戦争で使うものじゃない。『渇き』を殺せさえすればそれでいいんだ」
マコトとシスティアーノの前には地球で言う「戦車」に似た、というか戦車をこの世界の技術で可能な限り再現した兵器があった。
「ところでマコト。これには「ヴァジュラ」という名前があるのじゃが何かの由来とかはわかるかの?」
「うん、良いだろう。教えよう」
ヴァジュラ……インドの神話に出てくる干ばつの象徴であるヴリトラという怪物を傷つける事が出来ない「木、石、鉄、乾いたもの、湿ったもの」のいずれでもない聖人の骨を使って作られたとされる、ヴリトラを殺すために作られた特別製の武器の名前だ。
「なるほど。そんな伝説があるのか。ヴリトラ、とか言ったかの? 『渇き』に似た化け物がそなたの世界にもいたとはのぉ」
「車体は形になり始めているな。砲はどうなってる?」
「何とか試作品が出来て今はハクタクの者たちの手で射表づくりの真っ最中じゃ」
「そうか。今のところは順調そうだな」
設計図ではヴァジュラの主砲にはドワーフの大砲をベースにして、砲身にエルフの魔術による砲弾加速機能という2重の推進力をもって弾を撃ちだす機能が記載されていた。
それを実現させるために極めて一部のダークエルフたちに何とか協力してくれるように頼み込み、なんとかこぎつけて試作の砲が完成した。
何発か試し撃ちをしてデータを集め、それを基に射表づくりの計算をしてもらっている。
「次はそっちの計算の検算を頼む」
「はいはーい。あー頭痛くなってきた。目も霞んでくる」
「頑張れ。ほれ、アメだ」
「砂糖アメも飽きたなぁ。出来れば蜂蜜アメが欲しいなぁ」
砲撃するためにはどの角度で撃ち出せばどれだけ離れた目標に命中するか、が示されたガイドラインと言える「射表」が欠かせない。だがこれを作る際、計算で弾道予測を割り出すのだがこれには莫大な手間がかかる。
ましてや魔法による砲弾加速機能がついているヴァジュラの主砲の弾道計算は通常の砲弾以上に手間がかかる。
マコトはペク国の王である老師に頼み込み、賢人と名高いハクタク一族の全面協力の元、日夜開発している。
ちなみに、地球においてコンピューターが産まれたのもこの弾道計算の為だと言われている。
「お疲れさまです。お昼ご飯を持ってまいりました」
「おお、麗娘ちゃん。わかってるぅ」
「そっちこそお疲れ様、麗娘ちゃん」
昼食を持ってきた麗娘は男どもからの歓迎を受ける。
彼女の本来の仕事は外交官なのだが合間を縫って同胞であるハクタク達に差し入れを持ってきている。人間からはもちろんの事、ハクタクの間でも人気らしい。
そこへマコトが視察に来る。
「調子はどうだ?」
「あ、閣下。まぁ今のところは予定通りだと思っていいです」
「そうか。大変な仕事だが頑張ってくれ。ところで何で麗娘が?」
「皆さんへの差し入れのために来ました。閣下もどうです?」
「いや、今日は弁当持参してるから大丈夫だ」
「ふふっ。愛妻弁当ってやつですか? うらやましいですね」
そう言って彼女はフフッと笑う。
ヴェルガノン帝国が復活をもくろんでいる『渇き』という化け物。それに対する牙や爪は着々と育っていた。
【次回予告】
クルスはついに結婚することを決めた。式が始まる。
第103話 「結婚式」
「ギズモ、まさかお主徹夜したのか?」
「あ、システィアーノの姉御、ええまぁ。天啓が降ってきてとてもじゃないが寝てられませんわ」
「徹夜はするな。睡眠不足は良い仕事の敵じゃ。あと健康にもよくない。早死にするぞ? わらわの同僚の1人など128歳じゃったぞ?」
「128歳? エルフとしてはかなり若いですね」
「年齢じゃないぞ? 『享年』じゃぞ? 今日はもう1日仕事を休んで寝ることじゃな」
そう言って眠りの魔法をかける。ギズモは抵抗するそぶりすら見せずにコテンと倒れるように眠った。
その様子の一部始終を視察に来ていたマコトも見ていた。
「技術者は仕事が乗ってくると平気で徹夜してしまう生き物じゃ。だからこそムリヤリにでも休ませないといけないものじゃ。
さっきも言ったようにわらわの同僚で徹夜してばかりで128歳で逝った者もいてな。その二の舞だけはさせたくないんじゃ」
システィアーノはその128歳で逝った技術者が気になるのだろうか、暗い顔をする。
マコトはやや強引ではあるが話題を変える。
「そ、そうか。ところで製作状況はどうなってる?」
「動力源のエネルギーを回転エネルギーに変換する機関の開発にちょっと手間取っておる。小型軽量化は何とか出来て今の段階でも一応形にはなってはおるが、燃費は最悪じゃの」
「構わん。元々戦争で使うものじゃない。『渇き』を殺せさえすればそれでいいんだ」
マコトとシスティアーノの前には地球で言う「戦車」に似た、というか戦車をこの世界の技術で可能な限り再現した兵器があった。
「ところでマコト。これには「ヴァジュラ」という名前があるのじゃが何かの由来とかはわかるかの?」
「うん、良いだろう。教えよう」
ヴァジュラ……インドの神話に出てくる干ばつの象徴であるヴリトラという怪物を傷つける事が出来ない「木、石、鉄、乾いたもの、湿ったもの」のいずれでもない聖人の骨を使って作られたとされる、ヴリトラを殺すために作られた特別製の武器の名前だ。
「なるほど。そんな伝説があるのか。ヴリトラ、とか言ったかの? 『渇き』に似た化け物がそなたの世界にもいたとはのぉ」
「車体は形になり始めているな。砲はどうなってる?」
「何とか試作品が出来て今はハクタクの者たちの手で射表づくりの真っ最中じゃ」
「そうか。今のところは順調そうだな」
設計図ではヴァジュラの主砲にはドワーフの大砲をベースにして、砲身にエルフの魔術による砲弾加速機能という2重の推進力をもって弾を撃ちだす機能が記載されていた。
それを実現させるために極めて一部のダークエルフたちに何とか協力してくれるように頼み込み、なんとかこぎつけて試作の砲が完成した。
何発か試し撃ちをしてデータを集め、それを基に射表づくりの計算をしてもらっている。
「次はそっちの計算の検算を頼む」
「はいはーい。あー頭痛くなってきた。目も霞んでくる」
「頑張れ。ほれ、アメだ」
「砂糖アメも飽きたなぁ。出来れば蜂蜜アメが欲しいなぁ」
砲撃するためにはどの角度で撃ち出せばどれだけ離れた目標に命中するか、が示されたガイドラインと言える「射表」が欠かせない。だがこれを作る際、計算で弾道予測を割り出すのだがこれには莫大な手間がかかる。
ましてや魔法による砲弾加速機能がついているヴァジュラの主砲の弾道計算は通常の砲弾以上に手間がかかる。
マコトはペク国の王である老師に頼み込み、賢人と名高いハクタク一族の全面協力の元、日夜開発している。
ちなみに、地球においてコンピューターが産まれたのもこの弾道計算の為だと言われている。
「お疲れさまです。お昼ご飯を持ってまいりました」
「おお、麗娘ちゃん。わかってるぅ」
「そっちこそお疲れ様、麗娘ちゃん」
昼食を持ってきた麗娘は男どもからの歓迎を受ける。
彼女の本来の仕事は外交官なのだが合間を縫って同胞であるハクタク達に差し入れを持ってきている。人間からはもちろんの事、ハクタクの間でも人気らしい。
そこへマコトが視察に来る。
「調子はどうだ?」
「あ、閣下。まぁ今のところは予定通りだと思っていいです」
「そうか。大変な仕事だが頑張ってくれ。ところで何で麗娘が?」
「皆さんへの差し入れのために来ました。閣下もどうです?」
「いや、今日は弁当持参してるから大丈夫だ」
「ふふっ。愛妻弁当ってやつですか? うらやましいですね」
そう言って彼女はフフッと笑う。
ヴェルガノン帝国が復活をもくろんでいる『渇き』という化け物。それに対する牙や爪は着々と育っていた。
【次回予告】
クルスはついに結婚することを決めた。式が始まる。
第103話 「結婚式」
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