呪殺王と読心姫 ~疎まれ者同士が一緒に歩むことになりました~

あがつま ゆい

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第11話 デートするのも難しい

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 アランドル国の王都でも最も格式高く、美味の料理を出す店。クマを狩った翌日、デニスとカレンはそこで2人きりで食事をと前から予約したうえで訪れていた。
 王国屈指の高級料理店を昼のみとはいえ貸し切りにしてしまう辺りさすが王家と言える。

 カレンは慣れたものでテーブルマナーを守りながらもコース料理を食べ、デニスはテーブルマナーに苦労しながらカチャカチャと食器から音を立てながらなんとか彼女についていく。

「それにしても王国有数の料理店を貸し切りにしちゃうだなんて、贅沢ねぇ」

「贅沢してるわけじゃないぞ。こうした方が安全に食事が出来るからな」

「安全? どういうことですか?」

 安全のため……? どういう事だろう。聞きなれない言葉にカレンのフォークを持つ手が止まる。



「不特定多数の出入りがあると危険なんでな。1年前から特に多くなってるからお前も気をつけろよ、カレン。
 ホラ、前に視察した時に石を投げられただろ。あれを何倍にも酷くしたことが起こる可能性はどこにでもあるんだ」

「あれよりも……ですか」

 思い出すのは視察の頻度に対し明らかに多い、デニスを「呪殺王じゅさつおう」と憎む人による妨害。あれよりも酷いこと……? カレンにはちょっと想像がつかない事だった。
 彼女はメインディッシュのローストビーフを何の苦も無く食べながら、あれよりも酷い事って一体どんな事なのだろうかと考える器用なことをして見せた。



「……暇だな」

「ああ。でも俺たち兵士が忙しいってのも問題だぞ?」

「陛下と同じこと言ってるなお前は」

「へへっ、気に入ってるんでな」

 雑談をしながらも任務を遂行中である衛兵2人は、店の正面入り口を警備していた。そこへ彼らに対し殺気をみなぎらせた謎の男たち5名が囲む。

「!? 何だお前らは!?」

「この店の『客』に用がある。用があるのはそいつだけだ、お前たちには手出しはしない」

 そう言って彼らは電撃魔法を放つ。相手に傷や後遺症をつけずにショックで気絶させることを目的としたもので、兵士2人はその場で気絶してしまう。



「!!」

 不意にデニスは立ち上がり剣を抜く。

「カレン、嫌な予感がする。俺のそばから離れるなよ」

「!? どういう事!?」

 カレンが食事中に突然剣を抜いたデニスに対し疑問を持ちながらも、言われた通り彼の広い背中にそっと寄り添う。
 直後、ナイフを抜いたり指揮棒タクトにも見えそうな小型の杖を持った者たち、総勢5名がドカドカと音を立てて殺到してきた。
 表情はフードの下に隠れてよく見えない。



「悪く思うなよ。仕事なんでな」

 その声の口調からして、怒りや憎悪の感情は込められていない。おそらくは食い詰めた傭兵辺りが反デニス派に雇われ「実行役」として来たのだろう。
 そこまでをデニスはコンマ1秒もかからずにパッと推測する。そしてならず者たちの後方に居て杖の一種らしい指揮棒タクトを持った2人を見て
「何かしらの魔法が来る」と悟る。ここまでわずか「半秒」もかかっていない。

(魔力捕食型呪力障壁展開……全力で守る!)

 デニスは「魔力を喰う」呪いを使った一種の防御壁を張る。直後雷撃魔法が2発飛んでくる! が、デニスが防御壁を張る方が早かった。雷撃2発は「魔力を喰われて」消滅する。



「進め! 陛下とカレン様を守れ!」

 もしもの事態に備えてデニスやカレンからは見えない場所に待機していた兵士が一斉に店内に5名入って来る!

「くっ!」

「悪いが逃がすわけにはいかないんでね」

 襲撃者が兵士が突入してくるのを見て「失敗した」と背を見せ逃亡を試みるが、デニスは空いている左手の5本の指からピンポン玉サイズの黒い球体を作り、飛ばす。
 球体は食らいつくように5人の侵入者にそれぞれ1発ずつ命中する。
 これはデニスの体内に宿る呪力を固めて球状にしたもので、抵抗力の無い者ならこれだけでも即死するほどの威力がある。呪力で気を失う、あるいは即死してバタバタと倒れていった。



「うう……」

 倒れた5人の男のうち、リーダー格と思われる男がうめき声をあげて立ち上がろうとする。が、足取りはおぼつかない。

「オラ、立て。詳しい話を聞かせてもらうぞ。来るんだ」

 兵士たちは「実行役」である連中の身体チェックをして武器を隠し持っていないことを確認したうえで男を拘束する。生きていたのは1人だけで他はみんな呪力で死んでいた。



「デニスさん……殺したのですか?」

「ああ。殺されそうになったから、やむを得ずって感じだな。変なもの見せちまったな」

(「はい」か。本当にむやみに人の命を奪う人じゃなさそうね)

「安全ってこういう事が起こるから、ってことですか?」

「ああ。さすがにここまでの事件は年に1度あるかどうかって感じだけどな」

「そ、そうですか……(年に1度もあるなんて頻度多すぎるわよ。生涯に1回有るか無いかくらいじゃないと……)」



 それにしてもデニスの背中は鍛えられているのかずいぶんと広く、安心感を与えるものだった。

「カレン、もう大丈夫だぞ?」

「もうちょっとここにいさせて」

「? あ、ああ。いいぞ」

(広くて、温かいな……)

 カレンはしばらくの間デニスの背中に全身を預けていた。これが恋なのかな? と思いつつ。
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