20 / 53
第20話 嫁あるいはお姉様の取り合い
しおりを挟む
昼頃、カレンが中庭でくつろいでいる時の事だった。午前の授業が終わったロロムが休憩時間にカレンと過ごすためにやってきたのだ。
「そういえば姉様、そのリボンずいぶん派手で手が込んでますよね。虹色だなんて」
ロロムがカレンの髪の先に結んであるリボンを指さして言う。銀色の髪に虹色のリボンとはずいぶんと目だつ。
「ああ、これ? これはお父様が言うには私の本当のお母さんから送られた品物なんだって。ここに来てからはいつもつけてるようにしてるの」
「へぇ。お母さんからの品ですか。いいなぁ、僕にはそういうのはなかったからなー」
ロロムはカレンとお話ししている傍ら、スキがあれば抱き着いたりカレンの体を触ったりとスキンシップに余念がない。
カレンはそれを特に気にしてはいなかったが、それを快く思っていない者もいた。
「ロロム、くっつきすぎだ。少し離れないとカレンが暑苦しいだろ」
いつの間にかやってきた、アレクを連れていたデニスがやや不機嫌な顔をしながらロロムにくぎを刺す。
「いいじゃないですか。僕は姉様と早く仲良くなりたいしー」
ロロムが珍しく兄に反論し、それでデニスの顔は曇る。ある意味「平和的な不穏」を見てデニスの連れがクククと笑い出す。
「アレク、何がおかしい?」
「デニス様、まさかとは思いますけど5歳児の弟に妬いてるのですか?」
「!! バ、バカ言え!」
「ハハハッ。その態度だと図星でしょうな。
まぁそれは分かりますよ。俺も結婚したのは良いけど女房が子育てを始めてからずっと子供にかかりっきりで、気づいたら「妻」から「母親」になってたからなぁ」
「チッ。やっぱりお前にはわかるんだな」
「そりゃあデニス様と俺との付き合いは昨日今日に始まった話じゃないですよね? それくらいわかりますとも」
2人は上下関係はあるにせよ「気の合う友人」のように話をしていた。2年以上も付き合いがあればそれくらいは分かるのか。
「そういえばアレクさんって何のお仕事をしてるんですか? 見た限りでは何か軍人っぽいなとは思うのですが」
「アレクは軍の中でも主力の第1大隊の隊長をやってるんだ。戦場では俺の大事な相棒さ。これから会議を開いて軍の方針を話し合うことになってるから、じゃあな」
そう言ってアレクとデニスは会議室に行こうとするが、デニスは振り返り……。
「ロロム、カレンは俺の嫁だぞ、お前にとっては姉様止まりなんだぞ。覚えとけよ」
「はーいわかりました兄様」
弟相手に鋭い眼光でけん制するもその当事者はどこ吹く風、という表情だった。5歳にしては妙にませている。
ロロムは兄が差してきたクギを無視して午後の授業が始まるまでカレンとおしゃべりをして過ごした。
夕食や入浴を終え、あとは寝るだけとなった時間。ロロムは先にベッドで寝ているところ、デニスと2人きりになったカレンは話を切り出す。
「デニスさん。お昼の事ですけど、私はデニスさんの物ですから他人の物になる事はありませんからご安心ください」
「……俺の事、嫌いになったか? 義理とはいえまだ子供な弟に嫉妬してるところなんて見たくなかっただろ? カッコ悪かっただろ?」
「気持ちはわかりますよ。そりゃ少しは大人げない、っていうのは確かにありますけど」
「あーあ。やっぱりそう思われるだろうなぁ」
沈みかけの太陽に照らされたデニスの顔は、複雑な表情をしていた。弟への嫉妬を何とか隠そうとしたぎこちない物であった。
「嫉妬の感情かぁ。実家じゃそんな感情抱かれなかったから新鮮ね。
私を男の人が取り合ってる、なんて恋愛小説や吟遊詩人の唄位しかなかったからなんかそれらのヒロインになった感じ」
「……本当に、そう思ってるのか? 疑り深いけど」
「デニスさんは心が読めないから不安に思うかもしれませんけど、心配しないで。私はよほどのことが無い限りウソはつかないようにしてますから」
「そうか……そうなのか……そう言えばカレン、お前妙に嬉しそうにしてるよな」
恋愛小説や吟遊詩人の唄のヒロインになった感じ。と少し嬉しそうに述べるカレンの言う事だから、おそらく真実だろう。
「魔女姫」なんて呼ばれていたエドワード王国にいた頃は、おおよそまともな恋愛なんてとてもじゃないが出来なかったはずだ。ましてや複数の男から言い寄られることなど、夢のまた夢だろう。
「分かったよ。カレン、お前を信じる。まぁ将来の嫁を疑うような真似しちゃ夫としてもどうかと思うし」
「そう。デニスさんっていい人ね」
「悪党にならないように、いつも気をつけているんでね。話ってのはこれだけか?」
「ええそうよ。まぁデニスさんらしくて良かった。じゃあお休みなさい」
「ああ、また明日な」
もうすぐ日没。夜になったら多くの者が眠りにつく時で、それは王族も変わりない。ロロムに続いて、デニスとカレンも眠りについた。
「そういえば姉様、そのリボンずいぶん派手で手が込んでますよね。虹色だなんて」
ロロムがカレンの髪の先に結んであるリボンを指さして言う。銀色の髪に虹色のリボンとはずいぶんと目だつ。
「ああ、これ? これはお父様が言うには私の本当のお母さんから送られた品物なんだって。ここに来てからはいつもつけてるようにしてるの」
「へぇ。お母さんからの品ですか。いいなぁ、僕にはそういうのはなかったからなー」
ロロムはカレンとお話ししている傍ら、スキがあれば抱き着いたりカレンの体を触ったりとスキンシップに余念がない。
カレンはそれを特に気にしてはいなかったが、それを快く思っていない者もいた。
「ロロム、くっつきすぎだ。少し離れないとカレンが暑苦しいだろ」
いつの間にかやってきた、アレクを連れていたデニスがやや不機嫌な顔をしながらロロムにくぎを刺す。
「いいじゃないですか。僕は姉様と早く仲良くなりたいしー」
ロロムが珍しく兄に反論し、それでデニスの顔は曇る。ある意味「平和的な不穏」を見てデニスの連れがクククと笑い出す。
「アレク、何がおかしい?」
「デニス様、まさかとは思いますけど5歳児の弟に妬いてるのですか?」
「!! バ、バカ言え!」
「ハハハッ。その態度だと図星でしょうな。
まぁそれは分かりますよ。俺も結婚したのは良いけど女房が子育てを始めてからずっと子供にかかりっきりで、気づいたら「妻」から「母親」になってたからなぁ」
「チッ。やっぱりお前にはわかるんだな」
「そりゃあデニス様と俺との付き合いは昨日今日に始まった話じゃないですよね? それくらいわかりますとも」
2人は上下関係はあるにせよ「気の合う友人」のように話をしていた。2年以上も付き合いがあればそれくらいは分かるのか。
「そういえばアレクさんって何のお仕事をしてるんですか? 見た限りでは何か軍人っぽいなとは思うのですが」
「アレクは軍の中でも主力の第1大隊の隊長をやってるんだ。戦場では俺の大事な相棒さ。これから会議を開いて軍の方針を話し合うことになってるから、じゃあな」
そう言ってアレクとデニスは会議室に行こうとするが、デニスは振り返り……。
「ロロム、カレンは俺の嫁だぞ、お前にとっては姉様止まりなんだぞ。覚えとけよ」
「はーいわかりました兄様」
弟相手に鋭い眼光でけん制するもその当事者はどこ吹く風、という表情だった。5歳にしては妙にませている。
ロロムは兄が差してきたクギを無視して午後の授業が始まるまでカレンとおしゃべりをして過ごした。
夕食や入浴を終え、あとは寝るだけとなった時間。ロロムは先にベッドで寝ているところ、デニスと2人きりになったカレンは話を切り出す。
「デニスさん。お昼の事ですけど、私はデニスさんの物ですから他人の物になる事はありませんからご安心ください」
「……俺の事、嫌いになったか? 義理とはいえまだ子供な弟に嫉妬してるところなんて見たくなかっただろ? カッコ悪かっただろ?」
「気持ちはわかりますよ。そりゃ少しは大人げない、っていうのは確かにありますけど」
「あーあ。やっぱりそう思われるだろうなぁ」
沈みかけの太陽に照らされたデニスの顔は、複雑な表情をしていた。弟への嫉妬を何とか隠そうとしたぎこちない物であった。
「嫉妬の感情かぁ。実家じゃそんな感情抱かれなかったから新鮮ね。
私を男の人が取り合ってる、なんて恋愛小説や吟遊詩人の唄位しかなかったからなんかそれらのヒロインになった感じ」
「……本当に、そう思ってるのか? 疑り深いけど」
「デニスさんは心が読めないから不安に思うかもしれませんけど、心配しないで。私はよほどのことが無い限りウソはつかないようにしてますから」
「そうか……そうなのか……そう言えばカレン、お前妙に嬉しそうにしてるよな」
恋愛小説や吟遊詩人の唄のヒロインになった感じ。と少し嬉しそうに述べるカレンの言う事だから、おそらく真実だろう。
「魔女姫」なんて呼ばれていたエドワード王国にいた頃は、おおよそまともな恋愛なんてとてもじゃないが出来なかったはずだ。ましてや複数の男から言い寄られることなど、夢のまた夢だろう。
「分かったよ。カレン、お前を信じる。まぁ将来の嫁を疑うような真似しちゃ夫としてもどうかと思うし」
「そう。デニスさんっていい人ね」
「悪党にならないように、いつも気をつけているんでね。話ってのはこれだけか?」
「ええそうよ。まぁデニスさんらしくて良かった。じゃあお休みなさい」
「ああ、また明日な」
もうすぐ日没。夜になったら多くの者が眠りにつく時で、それは王族も変わりない。ロロムに続いて、デニスとカレンも眠りについた。
0
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
見捨ててくれてありがとうございます。あとはご勝手に。
有賀冬馬
恋愛
「君のような女は俺の格を下げる」――そう言って、侯爵家嫡男の婚約者は、わたしを社交界で公然と捨てた。
選んだのは、華やかで高慢な伯爵令嬢。
涙に暮れるわたしを慰めてくれたのは、王国最強の騎士団副団長だった。
彼に守られ、真実の愛を知ったとき、地味で陰気だったわたしは、もういなかった。
やがて、彼は新妻の悪行によって失脚。復縁を求めて縋りつく元婚約者に、わたしは冷たく告げる。
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
愛しの第一王子殿下
みつまめ つぼみ
恋愛
公爵令嬢アリシアは15歳。三年前に魔王討伐に出かけたゴルテンファル王国の第一王子クラウス一行の帰りを待ちわびていた。
そして帰ってきたクラウス王子は、仲間の訃報を口にし、それと同時に同行していた聖女との婚姻を告げる。
クラウスとの婚約を破棄されたアリシアは、言い寄ってくる第二王子マティアスの手から逃れようと、国外脱出を図るのだった。
そんなアリシアを手助けするフードを目深に被った旅の戦士エドガー。彼とアリシアの逃避行が、今始まる。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?
すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。
人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。
これでは領民が冬を越せない!!
善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。
『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』
と……。
そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。
十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。
あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。
宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。
対極のような二人は姉妹。母親の違う。
お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。
そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。
天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。
生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。
両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。
だが……。運命とは残酷である。
ルビアの元に死神から知らせが届く。
十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。
美しい愛しているルビア。
失いたくない。殺されてなるものか。
それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。
生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。
これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる