呪殺王と読心姫 ~疎まれ者同士が一緒に歩むことになりました~

あがつま ゆい

文字の大きさ
22 / 53

第22話 身体

しおりを挟む
「うげっ……」

 アランドル王家に越してきた時はあれだけ先が長そうに見えた結婚式もそろそろ、という頃。ある日の朝カレンは着替えをしていたのだが、服がきつくて入らない。もしかして……。

「いかがなさいましたかカレン様?」

「……私、太ったかも。服が入らない」

「ええ!? 待ってください。もう少し見させてくれませんか?」

 メイドはそう言って詳しく調べだす。



「カレン様、ご安心を。太ったというよりは身体が成長して服が小さくなっただけですね。今まで合っていたウエストの位置がずれていますから太ったわけではありませんよ」

「え!? そうなんだ、よかった」

「その服はサイズを直しますので別のお召し物にしましょうか」

「うん。分かったわ」

 そう言って今度はアランドル王家に越してきてからもらったドレスに着替える。こちらも成長した後でも着れるよう、サイズ調整ができる仕組みが組み込まれたものだ。
 デニスにとっての義理の母親や姉が着ていた物の「お下がり」だったが同じころの年齢に作られただけあって、より今の身体に合っていた。
 アランドル王家の色、と言える若草色で染められたドレスを着たカレンも、姫君としてふさわしい可憐かれんな少女だった。



「確かこの服は……デニスさんのお姉さんの物だとは聞いてるけど」

「ええそうです、お似合いですよカレン様」

「……それ本当?」

「もちろんですとも」

(「はい」ね)

 お世辞でもない本当の誉め言葉にカレンの顔が緩む。ようやく他人からの誉め言葉を、以前みたいな皮肉やさげすみではなく素直に受け止めることができるようになった。



「どうしました? 姉様、今日はちょっと遅れ気味ですよね」

 朝食の場に遅れてやってきたカレンに対し、ロロムは何があったのか聞きたがっていた。

「うん。実家から持ってきた服が小さくなってきてサイズ直しに出すことにしたの」

「なんだその程度か、大したことじゃなくてよかったよ。今が一番伸び盛りだからすぐ背が伸びると思うぜ」

 普段と比べて明らかに遅れてきたことにデニスもちょっと不安だったが、その程度の事かと安心した。
 王家の者だけが利用できる食堂は朝と昼、そして夕方に光ができる限り多く入り、明るくなるよう設計されているせいか、城の中では結構明るい場所だ。
 実家にいた頃はホコリ臭い、光もまともに入らなくて暗い自分の部屋で食事をとっていたので、そことは大違い。特に明るいせいか料理もおいしく見えた。



「ごちそうさま。さて行くか」

 デニスは1番先に食堂に来たので先に食事を終え仕事へと向かう。
 残されたカレンはロロムと日常の会話、算数の先生が厳しくて苦手、とか歴史の先生は優しいから授業の内容はすぐ頭に入る、という他愛もない話題をしていた。

「算数苦手なんだ」

「算数自体は嫌いじゃないけど先生がすぐ怒るから苦手なんですよ」

「大丈夫よ。私も先生はみんな厳しかったけど勉強自体はできたから。じゃあ私も行くね」

 おしゃべりしながら楽しく食事を終え、カレンは自室へと戻る。服のサイズ調整が待っているのだ。



「ではカレン様。お召し物のサイズ調整をさせていただきますね」

 王家の人間用の服を収めているアランドル王国一の仕立て屋を呼び出し、サイズの調整が始まった。
 彼女が持っている服の中でも今回サイズ調整するものは8着もあるので、それを実際に着てどう手を入れれば身体に合っているか確認するだけでも一苦労。
 着ては脱ぎ、脱いでは着るを繰り返すのも意外と疲れるものなのだ。王族の服は従者の手で着せ替えられる1人では着られないものなので特に。

「実家から持ってきたドレスの仕上がりってどう思う? 調整がしやすかったり何か良さそうな所あった? 本音を言っても怒らないから言ってみて」

「衣服に関してですか? 調整できるサイズに関しては結構幅が出せるような作りになってはいましたけど、まだ全体的に一歩及ばずって所ですね。
 我々がうのならもう少し細部のツメを抜かりなく縫いますね」

 やはり国力の差はこういうところでも出るか。エドワード王家としては精いっぱい背伸びはしたものの、それでもアランドル王家には届かない物だったらしい。



「そうですか。やっぱりこういう所にも国力の差って出るんですね」

「エドワード王家の国力を考えたら十分健闘している方だと思いますよ。あ、決してエドワード王国を悪く言ってるわけではございませんよ?」

「もちろん分かってるわ」

「そうですか。ではカレン様のお召し物はこちらで預からせていただきます。3~4日程お時間をいただければと思います」

「分かったわ。じゃあお願いね」

 カレンは服を仕立て屋に渡して、後はサイズが直るのを待つだけとなった。実家から持ってきた服は全部直すため、しばらくは「お下がり」の服を着まわすことになりそうだ。



 1日が終わってあとは寝るだけとなったカレンは自室に置かれた衣装入れチェストから「成人用」のドレスを取り出して、見る。

 彼女の身長は12歳という「これから伸びる」身体というのを考慮しても低く、デニスの胸程の背丈しかない。
 現在着ているものよりも1周り大きい成人後のドレスも嫁入りの際に持ってきたのだが、今の段階ではブカブカだ。

「順調に育ったらこのドレスも入るようになるのかなぁ?」

 彼女にとってはこのドレスが入るようになるというイメージは今一つ思い浮かべることは難しい事だった。
 この服が本当に入るのだろうか……と思うと、ちょっと不安だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

見捨ててくれてありがとうございます。あとはご勝手に。

有賀冬馬
恋愛
「君のような女は俺の格を下げる」――そう言って、侯爵家嫡男の婚約者は、わたしを社交界で公然と捨てた。 選んだのは、華やかで高慢な伯爵令嬢。 涙に暮れるわたしを慰めてくれたのは、王国最強の騎士団副団長だった。 彼に守られ、真実の愛を知ったとき、地味で陰気だったわたしは、もういなかった。 やがて、彼は新妻の悪行によって失脚。復縁を求めて縋りつく元婚約者に、わたしは冷たく告げる。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

愛しの第一王子殿下

みつまめ つぼみ
恋愛
 公爵令嬢アリシアは15歳。三年前に魔王討伐に出かけたゴルテンファル王国の第一王子クラウス一行の帰りを待ちわびていた。  そして帰ってきたクラウス王子は、仲間の訃報を口にし、それと同時に同行していた聖女との婚姻を告げる。  クラウスとの婚約を破棄されたアリシアは、言い寄ってくる第二王子マティアスの手から逃れようと、国外脱出を図るのだった。  そんなアリシアを手助けするフードを目深に被った旅の戦士エドガー。彼とアリシアの逃避行が、今始まる。

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

婚姻契約には愛情は含まれていません。 旦那様には愛人がいるのですから十分でしょう?

すもも
恋愛
伯爵令嬢エーファの最も嫌いなものは善人……そう思っていた。 人を救う事に生き甲斐を感じていた両親が、陥った罠によって借金まみれとなった我が家。 これでは領民が冬を越せない!! 善良で善人で、人に尽くすのが好きな両親は何の迷いもなくこう言った。 『エーファ、君の結婚が決まったんだよ!! 君が嫁ぐなら、お金をくれるそうだ!! 領民のために尽くすのは領主として当然の事。 多くの命が救えるなんて最高の幸福だろう。 それに公爵家に嫁げばお前も幸福になるに違いない。 これは全員が幸福になれる機会なんだ、当然嫁いでくれるよな?』 と……。 そして、夫となる男の屋敷にいたのは……三人の愛人だった。

十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。

あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。 宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。 対極のような二人は姉妹。母親の違う。 お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。 そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。 天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。 生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。 両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。 だが……。運命とは残酷である。 ルビアの元に死神から知らせが届く。 十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。 美しい愛しているルビア。 失いたくない。殺されてなるものか。 それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。 生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。 これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。

処理中です...