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第29話 新婚生活
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「私、本当に結婚したんだよね?」
朝、ベッドから目覚めたばかりのカレンが左手の薬指にはめられた結婚指輪を見てそうつぶやく。
カレンの知識からしたら十分大粒に入るダイヤモンドがはめ込まれ、指輪本体に細かい何か文字のようなものが彫り込まれた結婚指輪だ。
結婚式を挙げてから3日が経ち、左手の薬指には結婚指輪がはめられ初夜も体験したが、それでも結婚したという実感は薄い。
「……新婚だってのにこんなに冷めてていいのかな」
メイドによるドレスへの着替えをされる際に思わずそんなことをつぶやく。
「……どういうことですか? 王妃様」
「いや、ホラ。新婚って誰がどう見ても熱々の仲だと思われるくらいの幸せぶりでしょ? それが無くて本当に結婚した感じがしないのよね。私たち大丈夫かなって思っちゃうの。
そりゃ、贅沢な悩みだってのは分かるよ? でもどうしてもそこに行きついちゃうのよね」
「そうですか……王妃様、陛下は心の広いお優しい方ですのでそう心配する必要はないと思いますよ」
「そ、そう。だといいけど」
カレンが寝間着からドレスに着替えたのを見計らったようなタイミングでデニスが入ってくる。いつものことだけどなぜ分かるのかは本当に不思議なのだが。
「おはようカレン。今日もドレスがよく似合ってるぜ」
「おはようございますデニスさ……じゃないや、あなた。褒めてくれてありがとう」
「? どうしたんだ急に?」
急に「あなた」と言い出した嫁にデニスは不思議そうに問う。今日になって突然言い出したので何かあったのか? と疑問がわく。
「い、いやその、私たち結婚したけどそれっぽい所が全然ないから……だから何とかそういうところを出そうかなって思って。
初めてこの城に来た時と全然変わってないから、新婚生活がうまくいくかどうか心配で……」
カレンはデニスにそう正直に話す。せっかくの新婚なのに全然新婚らしさが無い。このままで大丈夫なのかと不安であった。
そこまで言ったカレンにデニスは彼女の頭をなでながら、できるだけ優しい口調で話しかけてきた。
「ふーん、そうか。別に無理しなくていいんだぜ? 結婚したら必ずこうしなければいけない、なんていう規則も法律もどこにもないからいつも通りでいいんだよ。
幼馴染がなんとなく一緒に過ごしていたら気が付いた時には結婚してて子供まで居た。なんていう形の結婚もあるんだし、他人と比べてどうのこうの言ったってしょうがねえだろ?
結婚の形なんて人それぞれなんだから余計な気苦労背負い込んでも良いことねえぞ? 結婚生活を他人と比べて優劣や上下関係競ったところでしょうがねえだろ」
「そ、そうですか……そういうものなのでしょうか?」
「『俺としては』そういうものだと思うぞ」
夫の言葉をそこまで聞いて、カレンはしばし黙る。結婚生活を他人と比べてもどうしようもないだろ、というのはいかにも彼らしい発言だ。
ひょっとしたら自分は「一般的な結婚生活」に縛られていたのかもしれない。今まで不幸だったので幸せに「ならなくてはいけない」と思っていた分、余計に。
「まぁ自由恋愛じゃない、政治や国際情勢って奴で決まった結婚だから本気で恋愛できないかもしれないっていうのは分かるよ?
でも俺ができる限りの範囲できちんと幸せにしてやるから安心しなよ。それだけは本当だからな、心を読んでもいい」
彼が言うには「心を読む能力を知っているから嘘をつくことはしない」としているがそれを出会った時から今までずっと一貫しているのはカレンにとってはかなり安心できる材料だ。
実家にいた頃はその能力ゆえに誰からも白い目で見られていたのとは大違いなのは嫁いできてから一番変わった点だ。
それに夫であるデニスも自分のことによく配慮してくれている。だからこそ彼のためにも幸せな結婚生活にしなくては、と余計に思っていたのかもしれない。
「私、幸せな結婚生活を送りたかったのかな。恋愛小説本に書いてあるような生活、送ってみたかったのかもしれない」
「あー、そういうことか。恋愛小説なんて嘘の話だからどこか誇張して、どこかを切り捨ててる話だから真に受けない方がいい。それよりも目の前の俺と向き合った方が幾分かましだと思うぞ。
今でも十分いい暮らしができてるからそんなに悩むことじゃないとは俺は思うんだがなぁ」
そこまで言うとデニスは目線を下げカレンと目と目で話すように彼女の目を見つめながら話しだす。
「カレン、お前は自分がどうしたいかを考えるんだ。他人に合わせようとしても苦労するだけだぜ?
特に周りから抑圧されて育ったんだろ? だったら自分の幸せを考えた方がいいし、そうしてるカレンを見てるだけでも俺は十分幸せもんだよ」
「そ、そうなんですか……」
カレンは恥ずかしいのか目線をそらしながらそう絞り出すように言った。そういえば真正面から話をする回数は数えるほどしかなかった。
「ま、家族ってのはそういうもんだから、最後まで愛し愛されっていう生活が送れるように頑張るから怯えなくてもいいぞ。俺が何とかしてやるから」
「……わかったわ。励ましてくれてありがとう。そろそろ食事の時間だから一緒に行きましょ、デニスさん」
2人は朝食を取るために食堂へと向かっていった。カレンのわだかまりはすっかり消えていた。
朝、ベッドから目覚めたばかりのカレンが左手の薬指にはめられた結婚指輪を見てそうつぶやく。
カレンの知識からしたら十分大粒に入るダイヤモンドがはめ込まれ、指輪本体に細かい何か文字のようなものが彫り込まれた結婚指輪だ。
結婚式を挙げてから3日が経ち、左手の薬指には結婚指輪がはめられ初夜も体験したが、それでも結婚したという実感は薄い。
「……新婚だってのにこんなに冷めてていいのかな」
メイドによるドレスへの着替えをされる際に思わずそんなことをつぶやく。
「……どういうことですか? 王妃様」
「いや、ホラ。新婚って誰がどう見ても熱々の仲だと思われるくらいの幸せぶりでしょ? それが無くて本当に結婚した感じがしないのよね。私たち大丈夫かなって思っちゃうの。
そりゃ、贅沢な悩みだってのは分かるよ? でもどうしてもそこに行きついちゃうのよね」
「そうですか……王妃様、陛下は心の広いお優しい方ですのでそう心配する必要はないと思いますよ」
「そ、そう。だといいけど」
カレンが寝間着からドレスに着替えたのを見計らったようなタイミングでデニスが入ってくる。いつものことだけどなぜ分かるのかは本当に不思議なのだが。
「おはようカレン。今日もドレスがよく似合ってるぜ」
「おはようございますデニスさ……じゃないや、あなた。褒めてくれてありがとう」
「? どうしたんだ急に?」
急に「あなた」と言い出した嫁にデニスは不思議そうに問う。今日になって突然言い出したので何かあったのか? と疑問がわく。
「い、いやその、私たち結婚したけどそれっぽい所が全然ないから……だから何とかそういうところを出そうかなって思って。
初めてこの城に来た時と全然変わってないから、新婚生活がうまくいくかどうか心配で……」
カレンはデニスにそう正直に話す。せっかくの新婚なのに全然新婚らしさが無い。このままで大丈夫なのかと不安であった。
そこまで言ったカレンにデニスは彼女の頭をなでながら、できるだけ優しい口調で話しかけてきた。
「ふーん、そうか。別に無理しなくていいんだぜ? 結婚したら必ずこうしなければいけない、なんていう規則も法律もどこにもないからいつも通りでいいんだよ。
幼馴染がなんとなく一緒に過ごしていたら気が付いた時には結婚してて子供まで居た。なんていう形の結婚もあるんだし、他人と比べてどうのこうの言ったってしょうがねえだろ?
結婚の形なんて人それぞれなんだから余計な気苦労背負い込んでも良いことねえぞ? 結婚生活を他人と比べて優劣や上下関係競ったところでしょうがねえだろ」
「そ、そうですか……そういうものなのでしょうか?」
「『俺としては』そういうものだと思うぞ」
夫の言葉をそこまで聞いて、カレンはしばし黙る。結婚生活を他人と比べてもどうしようもないだろ、というのはいかにも彼らしい発言だ。
ひょっとしたら自分は「一般的な結婚生活」に縛られていたのかもしれない。今まで不幸だったので幸せに「ならなくてはいけない」と思っていた分、余計に。
「まぁ自由恋愛じゃない、政治や国際情勢って奴で決まった結婚だから本気で恋愛できないかもしれないっていうのは分かるよ?
でも俺ができる限りの範囲できちんと幸せにしてやるから安心しなよ。それだけは本当だからな、心を読んでもいい」
彼が言うには「心を読む能力を知っているから嘘をつくことはしない」としているがそれを出会った時から今までずっと一貫しているのはカレンにとってはかなり安心できる材料だ。
実家にいた頃はその能力ゆえに誰からも白い目で見られていたのとは大違いなのは嫁いできてから一番変わった点だ。
それに夫であるデニスも自分のことによく配慮してくれている。だからこそ彼のためにも幸せな結婚生活にしなくては、と余計に思っていたのかもしれない。
「私、幸せな結婚生活を送りたかったのかな。恋愛小説本に書いてあるような生活、送ってみたかったのかもしれない」
「あー、そういうことか。恋愛小説なんて嘘の話だからどこか誇張して、どこかを切り捨ててる話だから真に受けない方がいい。それよりも目の前の俺と向き合った方が幾分かましだと思うぞ。
今でも十分いい暮らしができてるからそんなに悩むことじゃないとは俺は思うんだがなぁ」
そこまで言うとデニスは目線を下げカレンと目と目で話すように彼女の目を見つめながら話しだす。
「カレン、お前は自分がどうしたいかを考えるんだ。他人に合わせようとしても苦労するだけだぜ?
特に周りから抑圧されて育ったんだろ? だったら自分の幸せを考えた方がいいし、そうしてるカレンを見てるだけでも俺は十分幸せもんだよ」
「そ、そうなんですか……」
カレンは恥ずかしいのか目線をそらしながらそう絞り出すように言った。そういえば真正面から話をする回数は数えるほどしかなかった。
「ま、家族ってのはそういうもんだから、最後まで愛し愛されっていう生活が送れるように頑張るから怯えなくてもいいぞ。俺が何とかしてやるから」
「……わかったわ。励ましてくれてありがとう。そろそろ食事の時間だから一緒に行きましょ、デニスさん」
2人は朝食を取るために食堂へと向かっていった。カレンのわだかまりはすっかり消えていた。
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