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第34話 血は大事
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「ん……大丈夫、だいぶ痛みは引いたから」
「そうか……」
カレンは数日に1回は「夜伽」でデニスと1夜を共に過ごすようになった。痛みはまだあるが初夜の時ほどの「耐え難い激痛」とまではいかない。
何とかこらえられる程度のものだ。
「うう……お腹の中がぐちゃぐちゃする……」
「夜のお仕事」を終えた後、2人は距離が近い分普段はあまりしない話をする。顔がかすかに分かるくらいの明るさしかない照明もそれをサポートする。
「そういえばデニスさん、ロロム君が成人したらどうします?」
「その話か。ロロムが成人したら国はロロムに任せて俺は裏方に引っ込んで公爵様にでもなるつもりさ。それまでは何とかして国を持たせるよ」
デニスはアランドル王家の血をひいてない。それゆえ王家最後の生き残りであるロロムが成人したら彼に正式に王位を継がせてお役御免。となるつもりらしい。
「そうなんですか。王家の血をひいてないってなるとそうなるのが妥当だっていうのもわかりますけど」
カレンは「やっぱりそうか」という口調だ。デニスの今後に対しある程度予想していたが、それが的中した形だ。
「まぁ王族ってやつは血が大事なんだからなぁ。それはお前が一番よくわかってるはずだ。父親がバラまいた種から生まれた妾腹の娘なんだろ?
それでずいぶんと苦労したってのは聞いているぞ」
「……やっぱり私の血についてはデニスさんもご存じなんですね」
「さすがに嫁の事情は最低限知っておかないとな。勝手に調べたのは悪かったかもしれんが」
平民からしたら「住む世界が違うやんごとなき人」である王族には「血統」というのはとても重要な要素である。
例えば、かつて大いに栄えた古王国の王家の血を引く末裔、あるいはその重役を務めた人間の子孫というのはざらにある話。
もっとスケールのでかい話で行くと「祖先は神々と交わり神の血を持って産まれた者たち」という物まで様々だ。
とにかく「やんごとなき血」というのは王族や貴族という特別な立場を証明するには何としても必要なものなのだ。
何せ多くの国王は「神から「国を治めよ」という使命を遣わされて」今の立場にいる(という事にしている)ケースが多い。
実際、新たに国が出来た時には、その王は「実はあのやんごとなきお方の血を引く高貴なお方で……」と経歴を偽称することが多いが、
それも「国を治める」という特別な立場になるためには重要で欠かせない「大道具」なのだ。
噂では「やんごとなき人」の子孫を名乗るためにカネで経歴をでっちあげる専門家にお願いすることも多いという。
そういう意味では「血筋」も「神からの使命」も無い「どこの馬の骨かもわからない」平民出身のデニスはそこで大きなハンデを背負うこととなる。
なぜ平民出身の王に、彼と同じである俺たち平民が支配されなければならんのか!? となるわけだ。
反デニス派はそこを突いて国民の怒りをデニスに向けさせようと日夜工作をしているそうだ。
当然デニスもそれを認識しており、それを補うために積極的に減税して民への人気取りをしている。
とりあえずは国民からの厚い支持があれば、革命でも起こされて急に国家が転覆するような事態にはならないだろう。
「……私はまだ恵まれている方なのかなぁ。お父様は国王なんだし」
カレンは妾腹の子供ではあるが父親は国王だったので血だけ見れば十分「やんごとなきお方」に入る身分ではあった。
そう思うと「やんごとなき血」の流れていないデニスの苦労は彼女の想像を絶するものだろう。
「デニスさんは王族の血が欲しかった、とか思ったことはありますか?」
「ポーカーでいうなら『配られたカードで勝負するしかないのさ……それがどういう意味であれ』ってとこかな。
引きはほぼブタと言っていいくらいに悪かったけどな。幼少期はオババ様っていう切り札に頼りっぱなしだったな」
「……そうやってつらかった過去を笑い飛ばせるデニスさんって凄いなぁ。縁談は国の事情で決まったことだけど、デニスさんの所に嫁げて本当に良かったと思ってる」
「そうか。そう言ってくれるとありがたいな」
カレンは幼少期の頃に不幸な自分を呪ったことも多かったが、彼女自身よりも不幸なデニスに会ってからはしなくなった。
自分よりも不幸な目に遭ってきた人がいるんだから、それくらい何だ! という話である。
カレンにとってデニスはこの人と結婚することになってよかった。と心の底から思えるくらい、良い人だった。
「そうか……」
カレンは数日に1回は「夜伽」でデニスと1夜を共に過ごすようになった。痛みはまだあるが初夜の時ほどの「耐え難い激痛」とまではいかない。
何とかこらえられる程度のものだ。
「うう……お腹の中がぐちゃぐちゃする……」
「夜のお仕事」を終えた後、2人は距離が近い分普段はあまりしない話をする。顔がかすかに分かるくらいの明るさしかない照明もそれをサポートする。
「そういえばデニスさん、ロロム君が成人したらどうします?」
「その話か。ロロムが成人したら国はロロムに任せて俺は裏方に引っ込んで公爵様にでもなるつもりさ。それまでは何とかして国を持たせるよ」
デニスはアランドル王家の血をひいてない。それゆえ王家最後の生き残りであるロロムが成人したら彼に正式に王位を継がせてお役御免。となるつもりらしい。
「そうなんですか。王家の血をひいてないってなるとそうなるのが妥当だっていうのもわかりますけど」
カレンは「やっぱりそうか」という口調だ。デニスの今後に対しある程度予想していたが、それが的中した形だ。
「まぁ王族ってやつは血が大事なんだからなぁ。それはお前が一番よくわかってるはずだ。父親がバラまいた種から生まれた妾腹の娘なんだろ?
それでずいぶんと苦労したってのは聞いているぞ」
「……やっぱり私の血についてはデニスさんもご存じなんですね」
「さすがに嫁の事情は最低限知っておかないとな。勝手に調べたのは悪かったかもしれんが」
平民からしたら「住む世界が違うやんごとなき人」である王族には「血統」というのはとても重要な要素である。
例えば、かつて大いに栄えた古王国の王家の血を引く末裔、あるいはその重役を務めた人間の子孫というのはざらにある話。
もっとスケールのでかい話で行くと「祖先は神々と交わり神の血を持って産まれた者たち」という物まで様々だ。
とにかく「やんごとなき血」というのは王族や貴族という特別な立場を証明するには何としても必要なものなのだ。
何せ多くの国王は「神から「国を治めよ」という使命を遣わされて」今の立場にいる(という事にしている)ケースが多い。
実際、新たに国が出来た時には、その王は「実はあのやんごとなきお方の血を引く高貴なお方で……」と経歴を偽称することが多いが、
それも「国を治める」という特別な立場になるためには重要で欠かせない「大道具」なのだ。
噂では「やんごとなき人」の子孫を名乗るためにカネで経歴をでっちあげる専門家にお願いすることも多いという。
そういう意味では「血筋」も「神からの使命」も無い「どこの馬の骨かもわからない」平民出身のデニスはそこで大きなハンデを背負うこととなる。
なぜ平民出身の王に、彼と同じである俺たち平民が支配されなければならんのか!? となるわけだ。
反デニス派はそこを突いて国民の怒りをデニスに向けさせようと日夜工作をしているそうだ。
当然デニスもそれを認識しており、それを補うために積極的に減税して民への人気取りをしている。
とりあえずは国民からの厚い支持があれば、革命でも起こされて急に国家が転覆するような事態にはならないだろう。
「……私はまだ恵まれている方なのかなぁ。お父様は国王なんだし」
カレンは妾腹の子供ではあるが父親は国王だったので血だけ見れば十分「やんごとなきお方」に入る身分ではあった。
そう思うと「やんごとなき血」の流れていないデニスの苦労は彼女の想像を絶するものだろう。
「デニスさんは王族の血が欲しかった、とか思ったことはありますか?」
「ポーカーでいうなら『配られたカードで勝負するしかないのさ……それがどういう意味であれ』ってとこかな。
引きはほぼブタと言っていいくらいに悪かったけどな。幼少期はオババ様っていう切り札に頼りっぱなしだったな」
「……そうやってつらかった過去を笑い飛ばせるデニスさんって凄いなぁ。縁談は国の事情で決まったことだけど、デニスさんの所に嫁げて本当に良かったと思ってる」
「そうか。そう言ってくれるとありがたいな」
カレンは幼少期の頃に不幸な自分を呪ったことも多かったが、彼女自身よりも不幸なデニスに会ってからはしなくなった。
自分よりも不幸な目に遭ってきた人がいるんだから、それくらい何だ! という話である。
カレンにとってデニスはこの人と結婚することになってよかった。と心の底から思えるくらい、良い人だった。
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