呪殺王と読心姫 ~疎まれ者同士が一緒に歩むことになりました~

あがつま ゆい

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第46話 詰問(きつもん)

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 会議から数日後、アシュトン伯爵を呼び出す手紙を書くがなしのつぶて。
 仕方ないとアランドル王家専用の馬車に乗ったカレンがアレクをはじめとした5名の精鋭騎馬兵と共に馬車でアシュトン伯爵の領内に入り、伯爵閣下の館のある町へとやってきた。

「閣下、王妃様がお見えです」

「予定通りだな。『もてなし』の準備はできているか?」

「全て抜かりなく整えております」

「分かった」

『もてなし』の準備。それは2つの意味があった。1つはわざわざ領内までやってきたカレン一行のもてなし。もう1つは……。



「これはこれはカレン王妃。お会いできて嬉しゅうございますぞ」

 悪い意味で演技臭い言葉を発するアシュトン伯爵をカレンは冷ややかな目で見ていた。出された紅茶や菓子には手を出さない。この男の事だ、毒を盛るくらいの事はやってもおかしくない。

「カレン王妃、まずは紅茶や菓子でもいかがかな?」

「お気持ちはありがたいのですが特にのどがかわいているわけでもないし、お腹もすいてないのでお気持ちだけ受け取らせていただきますね」

「ふむ……残念だな」

 彼は内心で舌打ちをした。



「アシュトン伯爵殿。今回私が来たのは他でもありません。出兵にまつわる話を聞きに来ました。あなたの出兵する理由は今回のエドワード王家クーデター鎮圧のためですか?」

「何のことですかな? カレン王妃」

(……「いいえ」か。やっぱり!)

「今回の出兵に関してデニスさんに何かするつもりなんですか?」

「答えるつもりはありません」

 伯爵はイラつきながら吐き捨てるように言うが、カレンの読心能力の前では意味がない。

(……これは「はい」!?)

 カレンの確信は完全な形で当たっていた。



「もしや、戦場のどさくさに紛れてデニスさんを亡き者にでもするおつもりなのですか!?」

「女狐! これ以上首を突っ込むなら……!」

「待て!」

 付き添いのアレクがアシュトン伯爵を止める。



「剣を抜くつもりか? 抜いたら最後、王家に相対するものとして討伐対象になるぞ。そうなったら俺がこの場でお前を斬り捨てる。それでもいいのなら抜くがいい」

「フン。あの呪殺王の手先のセリフなど、一体だれが真剣に聞くと思ってる?」

「そう思うのなら抜くがいい。言っておくが、アランドル王国軍第1大隊長を甘く見ないでほしいな」

「貴様、脅すつもりか!?」

「その通り、いや脅しではありませんな。ただありのままの事実を述べたにすぎません」

「クッ……!」

「アレクさん、皆さん、もう用事は済みました。帰りましょう」

 カレンとその護衛たちは足早にアシュトン伯爵の屋敷を抜け、帰路に就いた。



「カレン様、アシュトン伯爵は何を考えていたのかわかりますか?」

「ええ、ばっちりです。最後の質問の答えは「はい」でした。アシュトン伯爵は戦場でデニスさんを亡き者にするつもりです!」

「!! そうか。お前たち! すぐに城へ戻るぞ! デニス様に伝えるんだ!」

 彼らは足早に城までの帰路を進んでいった。



「閣下、やるのですか?」

「ああ。待機している賊どもに伝えろ「極上のエサ」が放たれたとな」

 アシュトン伯爵が準備していたもう一つの『もてなし』それは山賊に対しての『もてなし』だった。
 アランドル王家の王妃がいるから捕まえて身代金を要求するなり、デニスが憎いなら代わりに殺すなり、お好きにどうぞというわけだ。



「承知しました。しかしよろしいのですか? もしも王家にバレたら……」

「なぁに『不幸にも』賊の集団に襲われた、と言えば王家と言えどそれ以上の追及は出来まい。カレンの出かけ先という機密情報がどこからか漏れていたという可能性は否定できないからな。
 大船に乗ったつもりでいると良い。それよりも早いところ連絡してくれ」

「……承知いたしました」

「あの女狐め。始末してやる」

 アシュトン伯爵の毒牙がカレンにかかろうとしていた。
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