伯爵家の三男は冒険者を目指す!

おとうふ

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第一章

後始末(地獄)


「うぷっ......」

馬車の荷台に乗せて運ばれてきたモノを見て、俺は頬を膨らませた。

夏の日差しの中、それはむせ返るような悪臭を放っていた。

「ったく......」

隣のイカつい冒険者のため息が聞こえるが、そんなことを気にする余裕は俺にはない。


スタンピードから一週間。

街はすでに平穏を取り戻してはいるが、俺たちにはやらなければいけないことがあった。

魔物の死体の後始末だ。

草原を埋め尽くすほどの夥しい数の死体を放置するわけにはいかない。

街道の邪魔になるのはもちろんだが、素材の回収や、腐臭・疫病予防のためだ。

そういうわけで俺たち生徒も総動員で解体作業をさせられることになったのだが、この1週間で、俺の心はボロボロだった。

グロいのはそうだけど、とにかく臭いがやばいのだ。最初はなんとか耐えられたが、日増しに凶悪になるそれに、俺の鼻とメンタルはもはや風前の灯だった。

「俺一人くらいいなくなってもバレないんじゃ......?」なんていう邪な考えが浮かぶのも仕方がないことだろう。

だというのに......。

「わあ、この魔石すごく大きいですよー!」

「本当だ。お、こっちも中々だよ」

エマとフランツは、胸部をかっぴらかれドス黒い悪臭を放つ魔物の死体の前で、楽しそうに魔石を見せ合っていた。

こいつら、狂ってる......。

アルはアルで、解体は手慣れていてよくベテラン冒険者からも褒められている。

苦しんでいるのは俺だけだった。その事実に打ちひしがれていると、ため息混じりの声が飛んできた。

「ほら、早く乗せろ」

言われて渋々、解体された上で葉っぱに包まれ、もはやなんの魔物のどの部位かもわからないモノを持ち上げて、荷台に乗せたその時。

ネチャ......。

「いっ」

嫌な感触が手に伝わり、すぐに全身に悪寒が走った。
 
恐る恐る目を下に向ければ、葉の隙間から内臓らしき、どろりとしたグロテスクなものが垂れるようにはみ出していた。

まるでタイミングを見計らったかのように生暖かい風が吹き、むせ返るような血の臭いが運ばれてくる。

「うっ......お、オロロロロロロロロロ」

触覚と視覚、嗅覚の三本の矢を前に、俺の堤防はあっけなく決壊した。

「え、エルさん大丈夫ですか!?」

「オロロロロロ」

大丈夫じゃないです。




その日の夕方、待ち侘びた時がようやく訪れた。

1週間の集中した作業によって解体はあらかた済んだため、生徒はひと足先に解放されることになったのだ。

色々とあったものの、俺はなんとか地獄を耐え抜いたのだ。自分が誇らしい。

解体のことはもう思い出したくもない。

正直逃げ出したかったが、女子も頑張っている中逃げるのはあまりに情けなかったので、涙と胃液を堪え、頬を膨らませながら頑張った。

まあ、逃げるよりも情けないところを見られたような気もするが、気のせいだろう。

ああ、早く風呂入ってそれから......

「うまい飯食いに行こうぜ!」

は?

それはいい笑顔でアルが言った。エマとフランツは顔を綻ばせて頷いた。

グロッキーだった俺は驚きのあまり言葉が出なかった。

俺はこいつらが何を言っているのか理解できないまま飯屋に連行され、みんなは当たり前のように打ち上げを始めた。

しかも、テーブルに並んだのはよりにもよって肉料理ばかりだった。それもただの肉ではなかった。オークだとか、魔物の肉だ。

ーートイレでの孤独な戦いが始まった。

あいつらの感覚どうなってんだよ!と半分キレながら吐いた。本気で正気を疑った。

ともかく、そんなこんなで諸々の後処理が終わり、ようやく平和な日常が戻った。

異世界の日々を日常と言っていいのかはわからないけどーー。





~~~~~~~~~~~~~~
お読みいただきありがとうございます!

随分と間が空いてしまっていたのにも関わらず、たくさんの方に読んでいただけて本当に嬉しいです。

大変お待たせしてしまって申し訳ありません!

これからまた投稿を再開していきますので、
至らないところばかりかと思いますが、どうかよろしくお願いいたしますm(_ _)m


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