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アレク編
魔法使いの街 6
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「ところで君、前にどこかで会ったかな?」
男が顔を近付けてきた。彼は顎に手をやり、目を細めている。
アレクは予想外の質問に面食らった。
「え? いや、それはないと思いますけど……」
「本当に?」
「だって僕は、この街に来たのは今日が初めてで……」
「そうか。うーん、どっかで見た顔だと思ったんだけどな」
男はまだ納得がいかない様子で、アレクの顔をじろじろと見ている。と思ったら、急に何かに驚いたように眉を上げた。
「うん? 今、初めてって言ったかい? ここいら、観光で来るような場所じゃないと思うけど。もしかして迷ってる?」
聞かれて、アレクは久しぶりに目的を思い出した。今の質問はまさしく渡りに船である。
「北の森ってところに用があるんです! 行き方を教えてもらえませんか?」
男はこともなげに言った。
「北の森? というと、そこに見える森のことだけど……何の用なの? 魔法使いじゃないと入れないよ?」
「え! ど、どうして……」
「トラップが張ってあるんだ。定められたポイントで、魔法使いの杖を使って解除しない限り、森の奥には入れない」
「……そ、そんな……あなたは解除できないんですか?」
「俺? 俺は魔法使いじゃないから、杖は持ってないんだ。悪いね」
先ほどの謎は解けたが、それによる達成感や興奮は微々たるものだった。むしろ絶望感が勝り、アレクはがっくりと膝をついた。
男はわざわざしゃがんでアレクに目線を近づけようとした。
「おいおいどうした? 招待状は持ってないの?」
「しょ、招待状?」
「うん、招待状。『学園』が発行してる正規のものを持っていれば、トラップを無効化できる」
「……たぶん持ってないです」
「じゃあ、魔法使いの知り合いは?」
「います……けど」
「ならその人に連絡を取って、同行してもらいなよ」
「……それはできないと言うか……それができるなら森に入る必要はないというか……」
アレクの声は自信なさげに小さくなっていった。
何しろ、魔法使いの知人などいるわけがない。当てにできるのは兄くらいだが、そもそも森に入ろうとしているのは、その兄と連絡を取るためなのだ。アレクが途方に暮れるのは無理からぬことだった。
男は顎を撫でながら、「うーん」と唸っている。
「魔法使いくらいしかここに用事ができないはずなんだけどな。しかし、君はどうやら、どこかの魔法使いから依頼を受けたってわけではないようだね。
一体どんな用なんだい? よかったら聞かせてくれないか?」
アレクは暗い表情で男の顔を見つめ返した。藁にもすがる思いだった。
「兄に会いに来たんです。住所によるとこの森の中に住んでるらしくて……」
「すると、お兄さんは魔法使いだな。招待状を申請してくれなかったの?」
「招待されたわけじゃないので。兄とはしばらく前から連絡が取れなくなったので、様子を見に来たんです」
「なるほどね。兄……兄ね……」
男は再び、アレクの顔をじぃっと見つめてきた。
「……なんですか……?」
「……俺が知る限り、わざわざ森の中に住むような物好きはほとんどいないはずなんだよ」
「はぁ……そうなんですか?」
「そこでだ。当ててやろう」
男はアレクの鼻先をビシッと指差した。その瞳はいたずらっ子のように輝いている。
「君が会いにきたのはフリード・シアン。今年で35歳。魔法薬作りで生計を立ててる。
そして君の名前はトール——いや、アレクの方だな。確か15歳下だから、今は20歳? どうだ?」
アレクは驚いて目を見開いた。
「どうしてわかったんですか?」
「なぁに、簡単なことだよ」
男は言いながら立ち上がり、コートの襟と姿勢を正した。
「君のことはフリードから聞いたんだ。
俺はジョージ・ホーネット。君の兄さんの親友さ。よろしく」
ジョージは呆然としているアレクを見下ろして、ウインクをひとつ寄こす。
「さて、また手を貸そうか?」
男が顔を近付けてきた。彼は顎に手をやり、目を細めている。
アレクは予想外の質問に面食らった。
「え? いや、それはないと思いますけど……」
「本当に?」
「だって僕は、この街に来たのは今日が初めてで……」
「そうか。うーん、どっかで見た顔だと思ったんだけどな」
男はまだ納得がいかない様子で、アレクの顔をじろじろと見ている。と思ったら、急に何かに驚いたように眉を上げた。
「うん? 今、初めてって言ったかい? ここいら、観光で来るような場所じゃないと思うけど。もしかして迷ってる?」
聞かれて、アレクは久しぶりに目的を思い出した。今の質問はまさしく渡りに船である。
「北の森ってところに用があるんです! 行き方を教えてもらえませんか?」
男はこともなげに言った。
「北の森? というと、そこに見える森のことだけど……何の用なの? 魔法使いじゃないと入れないよ?」
「え! ど、どうして……」
「トラップが張ってあるんだ。定められたポイントで、魔法使いの杖を使って解除しない限り、森の奥には入れない」
「……そ、そんな……あなたは解除できないんですか?」
「俺? 俺は魔法使いじゃないから、杖は持ってないんだ。悪いね」
先ほどの謎は解けたが、それによる達成感や興奮は微々たるものだった。むしろ絶望感が勝り、アレクはがっくりと膝をついた。
男はわざわざしゃがんでアレクに目線を近づけようとした。
「おいおいどうした? 招待状は持ってないの?」
「しょ、招待状?」
「うん、招待状。『学園』が発行してる正規のものを持っていれば、トラップを無効化できる」
「……たぶん持ってないです」
「じゃあ、魔法使いの知り合いは?」
「います……けど」
「ならその人に連絡を取って、同行してもらいなよ」
「……それはできないと言うか……それができるなら森に入る必要はないというか……」
アレクの声は自信なさげに小さくなっていった。
何しろ、魔法使いの知人などいるわけがない。当てにできるのは兄くらいだが、そもそも森に入ろうとしているのは、その兄と連絡を取るためなのだ。アレクが途方に暮れるのは無理からぬことだった。
男は顎を撫でながら、「うーん」と唸っている。
「魔法使いくらいしかここに用事ができないはずなんだけどな。しかし、君はどうやら、どこかの魔法使いから依頼を受けたってわけではないようだね。
一体どんな用なんだい? よかったら聞かせてくれないか?」
アレクは暗い表情で男の顔を見つめ返した。藁にもすがる思いだった。
「兄に会いに来たんです。住所によるとこの森の中に住んでるらしくて……」
「すると、お兄さんは魔法使いだな。招待状を申請してくれなかったの?」
「招待されたわけじゃないので。兄とはしばらく前から連絡が取れなくなったので、様子を見に来たんです」
「なるほどね。兄……兄ね……」
男は再び、アレクの顔をじぃっと見つめてきた。
「……なんですか……?」
「……俺が知る限り、わざわざ森の中に住むような物好きはほとんどいないはずなんだよ」
「はぁ……そうなんですか?」
「そこでだ。当ててやろう」
男はアレクの鼻先をビシッと指差した。その瞳はいたずらっ子のように輝いている。
「君が会いにきたのはフリード・シアン。今年で35歳。魔法薬作りで生計を立ててる。
そして君の名前はトール——いや、アレクの方だな。確か15歳下だから、今は20歳? どうだ?」
アレクは驚いて目を見開いた。
「どうしてわかったんですか?」
「なぁに、簡単なことだよ」
男は言いながら立ち上がり、コートの襟と姿勢を正した。
「君のことはフリードから聞いたんだ。
俺はジョージ・ホーネット。君の兄さんの親友さ。よろしく」
ジョージは呆然としているアレクを見下ろして、ウインクをひとつ寄こす。
「さて、また手を貸そうか?」
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