📗夢日記から生まれたショート小説

ノアキ光

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17 ツッコミが過ぎた

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漫才師志望の青年・健太は、ある日ふとしたきっかけで「魔法の言葉」を手に入れた。
それは、ただ一言――

「なんでやねん」

このツッコミを口にすると、現実がねじ曲がるのだ。


初めて使ったのはコンビニだった。
レジで「合計一万円です」と言われて思わず「なんでやねん!」と返した瞬間、値段は「千円」に変わった。

電車で満員に押しつぶされ「押さないでください」とアナウンスが流れたときも、「なんでやねん!」と言うと、車内は一瞬でガラガラになった。

就職の面接でも役立った。
「あなたの志望動機は?」
「なんでやねん!」
すると面接官たちは笑い転げ、そのまま内定。

健太は「なんでやねん」の力で、順風満帆の人生を歩み始めた。


だが一つだけ問題があった。
漫才の相方・浩二には、その力が全く効かないのだ。

「……いや、それ便利すぎるやろ」
「なんでやねん!」
「いや普通やん。ツッコミやん」

浩二だけは、世界が変化することなく平然としている。


そして漫才対決決勝の日。
二人は舞台に立った。観客の前で、健太は魔法の言葉を放つ。

「なんでやねん!」

会場は大爆笑。天井から紙吹雪、賞金ボードは「1億円」に書き換わる。

健太は勝利を確信した。だが、横の浩二はマイクを握りしめて、静かに言った。

「……健太、お前さ、もう“現実のツッコミ”できへんやろ?」

健太はハッとした。
舞台は静まり返る。
笑いの神は、ただ一つのルールを持っていた。

「本物の笑いは、魔法では作れない」

次の瞬間、観客も舞台もすべて消え、健太は真っ暗な舞台袖にひとり取り残された。


そして闇の中から聞こえたのは、たった一言。

「なんでやねん」

それは、相方の声ではなかった。
観客席の、世界中の、ありとあらゆる人々の声だった。

――ツッコまれたのは、自分自身だったのだ。
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