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第六話 新しい人生の始まり
翌朝、バークス家の屋敷に一通の書状が届けられた。
封蝋には宰相府の紋章が刻まれている。
父が封を切り、内容を確認した後、静かに私へ差し出した。
「……リディア。正式に、離縁が成立した」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥に何かがふっと解けた。
長い間、心を締めつけていた鎖が、ようやく外れたような感覚だった。
「……そう、ですか」
声が震えた。
悲しみではない。
寂しさでもない。
ただ――自由になったのだ。
その事実が、胸の奥に静かに広がっていく。
◆
その日の午後、私は庭のベンチに座っていた。
空は雲ひとつなく、青がどこまでも広がっている。
風が頬を撫で、花々の香りがふわりと漂う。
――私は、これからどう生きていくのだろう。
そんな問いが胸に浮かんだ時、背後から足音が聞こえた。
「リディア様」
振り返ると、ユリウスが立っていた。
いつものように丁寧に頭を下げ、静かに近づいてくる。
「離縁が……成立したと伺いました」
「はい。……ようやく、終わりました」
「お疲れさまでした」
ユリウスはそう言って、私の隣に腰を下ろした。
その距離は近すぎず、遠すぎず、心地よい。
「これから……どうされるのですか」
私は少し考え、ゆっくりと答えた。
「まだ、はっきりとはわかりません。でも……自分の意思で選びたい。誰かのためではなく、私自身のために」
「それが一番です」
ユリウスは穏やかに微笑んだ。
その笑顔は、胸の奥を温かく満たす。
◆
「……リディア様」
ユリウスの声が、少しだけ震えていた。
私は彼を見つめる。
「私は……あなたのこれからの人生に、関わっていたいと思っています」
胸が大きく跳ねた。
「あなたが望むなら……私は、あなたの隣に立ちたい。あなたを支え、あなたの笑顔を守りたい」
その言葉は、まっすぐで、誠実で、温かかった。
胸の奥に、涙が込み上げる。
「ユリウス様……」
「もちろん、強制はしません。あなたが自由であることが、何より大切です。だから……あなたの意思を聞かせてください」
私は深く息を吸い、ゆっくりと吐いた。
そして、彼の瞳をまっすぐに見つめる。
「……私は、あなたと歩きたい」
ユリウスの瞳が大きく揺れた。
「あなたの言葉に救われました。あなたの優しさに触れて……私は、前に進む勇気をもらいました。これからの人生を、自分の意思で選ぶなら……私は、あなたを選びます」
ユリウスは息を呑み、そして静かに微笑んだ。
「……ありがとうございます。リディア様。あなたの選択を、私は一生大切にします」
彼はそっと私の手を取った。
その手は温かく、力強く、安心できるものだった。
私は微笑み返し、彼の手を握り返した。
「これから……よろしくお願いします、ユリウス様」
「はい。あなたの未来が、どうか幸せで満ちますように。その隣にいられることを、誇りに思います」
青空の下、私たちは静かに手を取り合った。
――さようなら、白い結婚。
私は自由になった。
そして今、自分の意思で『愛』を選ぶ。
新しい人生が、ここから始まる。
封蝋には宰相府の紋章が刻まれている。
父が封を切り、内容を確認した後、静かに私へ差し出した。
「……リディア。正式に、離縁が成立した」
その言葉を聞いた瞬間、胸の奥に何かがふっと解けた。
長い間、心を締めつけていた鎖が、ようやく外れたような感覚だった。
「……そう、ですか」
声が震えた。
悲しみではない。
寂しさでもない。
ただ――自由になったのだ。
その事実が、胸の奥に静かに広がっていく。
◆
その日の午後、私は庭のベンチに座っていた。
空は雲ひとつなく、青がどこまでも広がっている。
風が頬を撫で、花々の香りがふわりと漂う。
――私は、これからどう生きていくのだろう。
そんな問いが胸に浮かんだ時、背後から足音が聞こえた。
「リディア様」
振り返ると、ユリウスが立っていた。
いつものように丁寧に頭を下げ、静かに近づいてくる。
「離縁が……成立したと伺いました」
「はい。……ようやく、終わりました」
「お疲れさまでした」
ユリウスはそう言って、私の隣に腰を下ろした。
その距離は近すぎず、遠すぎず、心地よい。
「これから……どうされるのですか」
私は少し考え、ゆっくりと答えた。
「まだ、はっきりとはわかりません。でも……自分の意思で選びたい。誰かのためではなく、私自身のために」
「それが一番です」
ユリウスは穏やかに微笑んだ。
その笑顔は、胸の奥を温かく満たす。
◆
「……リディア様」
ユリウスの声が、少しだけ震えていた。
私は彼を見つめる。
「私は……あなたのこれからの人生に、関わっていたいと思っています」
胸が大きく跳ねた。
「あなたが望むなら……私は、あなたの隣に立ちたい。あなたを支え、あなたの笑顔を守りたい」
その言葉は、まっすぐで、誠実で、温かかった。
胸の奥に、涙が込み上げる。
「ユリウス様……」
「もちろん、強制はしません。あなたが自由であることが、何より大切です。だから……あなたの意思を聞かせてください」
私は深く息を吸い、ゆっくりと吐いた。
そして、彼の瞳をまっすぐに見つめる。
「……私は、あなたと歩きたい」
ユリウスの瞳が大きく揺れた。
「あなたの言葉に救われました。あなたの優しさに触れて……私は、前に進む勇気をもらいました。これからの人生を、自分の意思で選ぶなら……私は、あなたを選びます」
ユリウスは息を呑み、そして静かに微笑んだ。
「……ありがとうございます。リディア様。あなたの選択を、私は一生大切にします」
彼はそっと私の手を取った。
その手は温かく、力強く、安心できるものだった。
私は微笑み返し、彼の手を握り返した。
「これから……よろしくお願いします、ユリウス様」
「はい。あなたの未来が、どうか幸せで満ちますように。その隣にいられることを、誇りに思います」
青空の下、私たちは静かに手を取り合った。
――さようなら、白い結婚。
私は自由になった。
そして今、自分の意思で『愛』を選ぶ。
新しい人生が、ここから始まる。
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