科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜

難波一

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第13話 魔力の真理と……誤解

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——それは、あまりにも突然の出来事だった。

「……えぇぇぇぇぇぇぇっ!?!?」

 リディアの脳内で、ありとあらゆる思考がパニックを起こしていた。

(ちょっと待って!? なんで!? どうして!?)

 数秒前まで彼女は、森の静かな泉で一人水浴びをしていた。
 確かに服を汚してしまったのは予想外だったが、せっかくの機会だからと、心を落ち着けながら森の魔力を感じるつもりだったのに——。

(なんで今、このタイミングで九条迅くじょうじんが降ってくるのよおおおお!?!?)

 バシャァァァン!!!

 水しぶきを上げて泉に落ちた迅は、ずぶ濡れのまま顔を上げた。
 びしょ濡れになった黒髪が額に張り付き、服は水に浸かって重たそうに体にまとわりついている。

 彼は少し息を切らしながら、リディアを見上げた。

「……おいおい、なんだよこれ……」

(それはこっちのセリフよぉぉぉぉぉ!!!)

 リディアの全身から、一瞬で怒りと羞恥が爆発しそうになる。
 急いで胸元を腕で隠し、水の中に沈み込むように体を縮こまらせる。

(な、何考えてるの!? っていうか、何も考えてないの!? いや、こいつに限ってそれはない!これは間違いなく計画的犯行じゃない!!)

 泉の冷たい水が肌を撫でる感覚さえも、今はまったく感じられない。
 リディアの全神経が、「なぜ迅がここにいるのか」「この状況をどう解釈すればいいのか」に向いていた。

「よ、よくもまあ……!」

 歯を食いしばり、怒りで震える声を絞り出す。
 魔力が腕の先で爆発しそうになるほど、羞恥と怒りが体を駆け巡っていた。

(この変態!!! なんで私が水浴びしてるタイミングで泉に落ちてくるのよ!!!)

 ……だが、その瞬間だった。

 ザバァァッ!!!

 迅が、水の中を勢いよく歩いてくる。

(え……?)

 ズザッ、と水をかき分けながら、一歩、また一歩と確実に距離を詰めてくる。
 水面に映る彼の顔は、普段の飄々とした雰囲気とはまるで違った。

 ……真剣。

 いつもの軽口や悪戯っぽい笑みなど、微塵も見当たらない。

 冷静で、鋭く、ただ一点を見据える視線。
 その目に映っているのは、まるでこの世界の謎を解き明かそうとする研究者そのものだった。

(……えっ? な、なに?)

 思わず一歩後ずさろうとするが、その前に——

 ぐいっ!!

 彼がリディアの手を、力強く握った。

「えっ……!?」

 全身がビクリと震える。

(ちょ、ちょっと!? ちょっと待って!? なんでそんなに真剣な顔で迫ってくるの!?)

 急に意識し始めたせいで、呼吸が乱れる。
 胸の鼓動が、泉の静かな水面にまで伝わりそうなほど、速くなっていく。

(ひょっとして……この距離……!? この雰囲気……!? こ、これって、まさか……!?)

(きゃあああああああ!!!!!!)

(ち、違うわよね!? そんなわけない! でも、でも……!)

 リディアの中で、何かが完全にショートしそうになった、その瞬間——

 迅が口を開いた。



「……もう一度、魔力を集中してみてくれねぇ?」



(……は?)

 ブツッ。

 リディアの思考が、音を立てて途切れた。

(……は?)

 自分が何を期待したのか、何を考えていたのか——そのすべてが一気に崩れ去る。

 怒りも、羞恥も、混乱も、一瞬で吹っ飛んだ。

「…………」

 無言のまま、リディアはじっと迅を見つめる。


「なぁ、もう一度だ。魔力を集中して——」


「…………は?」

 無意識のうちに口から漏れた言葉は、彼女のすべての感情を物語っていた。
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