科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜

難波一

文字の大きさ
23 / 151

第23話 異常な成長速度

しおりを挟む
アルセイア王国、王宮の魔法研究室。
朝日が差し込み、澄んだ空気が漂う静かな空間で、一人の青年が深く呼吸を整えていた。

九条迅くじょうじん
召喚されてからまだ日が浅い異世界の勇者。

だが、その成長速度は異常だった。

「ふぅ……」

静かに息を吸い、ゆっくりと吐く。
その度に、彼の体から放たれる魔力の波が、まるで規則正しい鼓動のように周囲の空気を揺らしていた。

「……本当に、異常じゃのう。」

ぽつりと呟くのは、宮廷魔法士のロドリゲス。
長年魔法を研究し、数多の魔法士を指導してきた彼でさえ、迅の成長速度には開いた口が塞がらなかった。

「一週間前までは、一般的な魔法士と変わらぬ魔力量だったはず……。それが今では……」

ロドリゲスは静かに目を閉じ、迅の魔力の流れを感じ取る。

それは、まるで 魔力量が膨大な高位魔法士のものと変わらぬほど にまで膨れ上がっていた。


「ちょっと待って……」


隣で同じように魔力を感じ取っていたリディアが、驚愕の声を上げた。

「あなた……魔力量、私とほぼ同じじゃない!?」

「おお、そりゃいいな」

迅はにこやかに笑い、手を軽く振る。
まるで「今日は天気がいいな」とでも言わんばかりの気楽な反応。

「軽っ!!……“そりゃいいな”じゃないのよ!!」

リディアが迅の肩を掴み、ぐいっと引き寄せる。

「普通! 元々魔力量は生まれつき決まってるってのが定説で、言ってみれば増やせる事自体おかしいのよ! それをたった一週間でこのわたしと同等近くまで伸びるなんて!? どういうことなの!?」

「いやぁ、そりゃ俺だってびっくりしてんだよ。やっぱ呼吸法の調整が効いたのかもな?」

「呼吸法……?」

リディアが眉をひそめる。

ロドリゲスも「ふむ?」と興味深そうに聞き耳を立てた。

「俺さ、効率よく魔力量を増やせないかって考えたんだよ。そしたら、寝る間も惜しんで鍛えるより、“寝ながらでも鍛えられる” 方法を探した方がいいんじゃないかって思ってな。」

「……また変なこと考えたわね。」

リディアがため息をつく。

「いや、理にかなってるぜ? だって、魔力って血液の流れと関係あるだろ?」

迅は指を立て、得意げに続ける。

「血流をコントロールするのは心臓、そして呼吸だ。なら、呼吸法を工夫すれば、効率よく魔力を循環させられるんじゃねぇかってな。」

「……」

ロドリゲスがゆっくり頷く。

「それで、どのように呼吸を変えたのじゃ?」

「まず、普通に深呼吸すると魔力が流れるのが分かるだろ?」

迅は実演しながら説明する。

「それを意識して、起きてる時はもちろん、寝るときにも無意識にこの呼吸ができるように、枕の高さとか寝る姿勢とか、全部調整してみたんだよ。」

「ちょ、ちょっと待って!」

リディアが驚きながら両手を振る。

「まさか、寝相まで調整したの!?」

「そりゃそうだろ?」

迅は当然のように言う。

「寝ながら魔力を循環できれば、時間を無駄にせずに済むだろ? あと、寝てる間に呼吸を最適化するために、枕の高さも何十パターンか試したし、身体のどこに力を入れて寝ればいいかも研究した。」

「…………」

リディアとロドリゲスが沈黙する。

——こいつ、本気で「寝ながら成長」してやがる……!!

「まぁ、その結果がこの魔力量だ。」

「そんな……そんなことが……」

リディアは震えるように呟きながら、迅の全身をまじまじと見つめる。

これは、もう天才とか努力とか、そういう次元の話ではない。
こいつは……こいつだけは……!!!

「…………」

リディアはふと、指先をぎゅっと握る。

(……私も、やってみようかしら?)

頭では「バカげた方法だ」と思っていた。
けれど、迅が証明した結果は、まぎれもない事実。

「ロドリゲス……この呼吸法、私も試してみるわ。」

「……うむ。わしも試してみるかの。」

「お、いいね。んじゃ今から要点メモるわ。」

ニヤリと笑って羊皮紙にペンを走らせる迅を見ながら、ロドリゲスは髭を撫で、ゆっくりと頷いた。
彼のような老練な魔法士でも、迅の成長には 「学ばねばならない何か」 を感じていたのだ。

——こうして、迅の「異常な成長速度」は、周囲の魔法士たちにまで影響を与え始めていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

スキル『レベル1固定』は最強チートだけど、俺はステータスウィンドウで無双する

うーぱー
ファンタジー
アーサーはハズレスキル『レベル1固定』を授かったため、家を追放されてしまう。 そして、ショック死してしまう。 その体に転成した主人公は、とりあえず、目の前にいた弟を腹パンざまぁ。 屋敷を逃げ出すのであった――。 ハズレスキル扱いされるが『レベル1固定』は他人のレベルを1に落とせるから、ツヨツヨだった。 スキルを活かしてアーサーは大活躍する……はず。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

【村スキル】で始まる異世界ファンタジー 目指せスローライフ!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は村田 歩(ムラタアユム) 目を覚ますとそこは石畳の町だった 異世界の中世ヨーロッパの街並み 僕はすぐにステータスを確認できるか声を上げた 案の定この世界はステータスのある世界 村スキルというもの以外は平凡なステータス 終わったと思ったら村スキルがスタートする

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

処理中です...