科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜

難波一

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第27話 戦いの観察者たち

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 雷鳴の余韻が空に消えていく。

 訓練場には、焼け焦げた地面と、雷に打ちのめされた三人の宮廷魔法士たちが、呆然と立ち尽くしていた。

 周囲の見学者たちも、まるで自身も雷に打たれたように言葉を失っている。

 
 ——まるで、一方的な制圧だった。

 
「ま、参りました……」

 敗北を認める宮廷魔法士の震えた声が響く。

 その瞬間、彼らの体の力が抜け、ドサリと膝をついた。

 
「お、おいおい……」

「何だよ、今の……」

「こんなの……もう模擬戦なんかじゃない……!」

 
 見ていた他の魔法士たちが、一歩、また一歩と後ずさる。

 彼らの中には、まだ迅を「異世界から来た学者タイプの勇者」だと認識していた者も多い。

 
 その迅が——


 圧倒的な魔力量と精密な制御で、雷を自由自在に操り、たった一人で宮廷魔法士たちをねじ伏せたのだ。

 
 そして、戦闘の張本人である九条迅は——

 
「いやぁ~、雷魔法はやっぱり浪漫だな!」


 満足げに腕を組み、余裕の表情で笑っていた。

 



 ——信じられない。

 
 私よりずっと後に魔法を学び始めた男が、まるで当たり前のように高度な魔法を操り、魔法士たちを圧倒している。

 
 しかも、彼はまだ「魔法の初歩を学んでいる段階」のはずだった。

 それが、この成長速度。

 
「……ありえないわ。」

 
 リディアは、思わず呟いた。

 彼の戦い方は、私たち魔法士のものとはまったく違う。

 魔法の伝統に縛られず、まるで「魔法そのものを解析しながら戦う」かのような戦闘スタイル。

 
 (これが……“科学”の力……?)

 
 いつも不敵に笑っている彼の顔が、今はとてつもなく遠い存在に思えた。

 
 けれど——

 
 その不合理なほどの成長に、私の心は、僅かに高鳴っている。

 
(こんな人……初めて見た。)

 

 

「ふむ……勇者殿よ。」

 
 そんな中、ロドリゲスが腕を組み、険しい表情で迅を見つめた。
 
「なんだ?」

「お主、少し危ういぞ。」

「は?」
 
「いや、お主の成長速度が異常なのは、もう何度も言ったから置いておくとして……」
 
 ロドリゲスは周囲の魔法士たちを見渡しながら、ゆっくりと言葉を続けた。

 
「お主が今、圧倒的な力を見せつけたことにより、彼らの中には『勇者は自分たちとは違う存在』と感じる者もおるじゃろう。」

 
 確かに、周囲の魔法士たちは驚愕と畏怖の入り混じった表情をしている。
 
「……」
 
 迅は一瞬だけ、思考を巡らせた後、不敵な笑みを浮かべた。

「それなら、それでいいさ。」
 
 彼は軽く肩をすくめる。

「今回、俺が単なる力押しだけで戦ったのは、
"ワザと"だからな。」

「なんじゃと!?」

ロドリゲスの顔が驚きに染まる。
迅は淡々と説明を続ける。
 
「俺は、ただ自分の理論を証明してみせただけだ。魔法の効率化は可能だってことを、実際に見せてやったんだよ。」
 
「しかし……」
 
「心配すんな、じいさん。」
 
 迅は、周囲の魔法士たちに視線を向けた。
 
「俺の目的は、“戦うこと”じゃない。“戦わずに済むために、強くなること”だ。」
 
 そして、ゆっくりと歩み出し、魔法士たちの前に立つ。

 
「皆、聞いてくれ。俺は”科学”の知識を使って、魔法の可能性を広げようとしてる。」

 
「お前らも、本当に魔法を強くしたいなら……俺の理論を学んでみる気はねぇか?」

 
 その言葉に、魔法士たちはざわめいた。

 
「勇者殿の理論……」

「本当に学べるのか……?」

「だが、もしそれが本当に使えるものなら……」

 
 魔法士たちの目に、新たな光が宿る。

 
「勇者殿。」

 
 その時、一人の魔法士が前に出た。

 
「私は、あなたの理論を学んでみたい。」

 
「俺も……」

「私も……!」

 
 次々と名乗り出る魔法士たちを見て、ロドリゲスは驚きの表情を浮かべる。


「いいね……!そう来なくっちゃな」


 そう言って不敵に笑う迅に、魔法士達の期待に満ちた視線が降り注ぐ。
 
 そして——リディアもまた、そんな彼の姿を見て、胸の奥が僅かに熱くなるのを感じていた。

 

(この人となら……魔法を、もっと深く知ることができるかもしれない。)

 
 ◇◆◇
 

 その夜——

 
 王宮の廊下に、“影”が現れた。

 
 ゆっくりと歩く、長身の男。

 その肌の色は、人間のそれとは違い、白み掛かった灰色をしている。

 目元を隠すように金属のマスクをつけた、黒衣の賢者。

 
「……さて、召喚勇者殿。」

 
 彼は静かに、夜の王宮を進んでいく。

 
「そろそろ、お伺いしてもよろしいでしょうか?」
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