科学×魔法で世界最強! 〜高校生科学者は異世界魔法を科学で進化させるようです〜

難波一

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第52話 砕かれた防御、暴かれた誤算

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——“魔力収束粒子砲マギア・コンヴァージ”。

それは、従来の”魔力収束砲”を遥かに超越した魔法だった。

通常の”魔力収束砲”は、魔力を一点に収束させて光熱エネルギーを生み出す。しかし、迅《じん》はそこにさらに別の要素を組み込んでいた。

土属性“鉄創造アイアン・フォージ“の魔法を併用し、魔力の熱線に、鉄の"重イオン"を混ぜたのだ。

これにより、放たれた砲撃は単なる熱線ではなく、超高温の鉄粒子を伴った”物理的な質量攻撃”へと変質していた。

魔法と物理が融合したその一撃は、“タングステンの防御球”すら粉砕するだけの破壊力を秘めていた。


───────────────────


「——ッ!!」

アークの防御球が、まるでガラス細工のように砕け散る。

衝撃と共に、タングステンの構造が一瞬で崩壊し、熱波と鉄粒子が彼の元へと迫ってきた。

(な……!?)

彼は即座に第3の魔力球を展開し、寸前で直撃を回避した。

しかし、それでも衝撃波の余波は強烈で、アークはその場に踏みとどまることができず、数メートル後方へと吹き飛ばされた。

「……ぐ……ッ!」

地面に膝をつき、僅かに荒い息を吐く。

黒衣が焦げ、仮面の一部に細かなひびが入る。

(……私の防御が……破られた……?)

動揺を隠せなかった。

これまで、彼の”防御球”はどんな魔法にも対応できるはずだった。

熱にはタングステン、電撃にはゴム、物理攻撃にはダイヤモンド級の硬度を持たせた防壁を作ることで、あらゆる攻撃を受け流してきた。

それが、今……確かに、砕かれた。

しかも、相手は”勇者”とはいえ、つい数ヶ月前まで魔法の基礎すら知らなかった少年に——。

(これは……“鉄”……!?)

アークは、自らの防御球を貫いた残滓に目を向けた。

鉄の微粒子が空気中に漂い、じりじりと赤熱している。

「……ふっ。」

彼は、静かに笑みを零した。

(まさか、“物質”を熱線に乗せてくるとは……いや、それだけではない……)

彼の理解の外にある未知の魔法。

科学と魔法が融合した、新たな戦術。

「……興味深い……これは……想像以上に……“面白い”ですね。」

顔を上げ、迅を見据える。

その瞳には、敗北の悔しさよりも——探究者としての好奇心が宿っていた。


────────────────


「……ギリギリ、か。」

迅は指先を軽く振りながら、慎重にアークの動きを観察していた。

(……やっぱり、タダじゃやられねぇな。)

あの一撃で仕留めきれなかったのは、迅にとっても予想通りだった。

“タングステンの防御球”が破壊された瞬間、アークは即座に第3の魔力球を展開し、被害を最小限に抑えた。

(……やっぱ、まだ”切り札”を隠してやがったか。)

あのまま防御手段を持っていなければ、アークは間違いなく直撃を受けていただろう。

——しかし、問題はそこではない。

(さっきの攻撃……“物理攻撃”を絡めたのに、何で反応できた?)

魔力収束粒子砲マギア・コンヴァージ“は、魔法の概念を超えた攻撃だった。

魔力の波動や属性相性を無視して、物理的に相手を破壊する。

それにも関わらず、アークは反応し、防いだ。


(もしかして……“俺と同じ”か?)


迅の脳裏に、一つの仮説が浮かぶ。

アークも、“並列処理”による”多重魔法制御”を行っているのではないか——と。

(こいつ……今まで、“二つ”しか魔力球を操ってなかったよな……)

しかし、さっきは明らかに”三つ目”を展開した。

「……チッ。」

迅は軽く舌打ちをした。

(つまり……“まだ余裕がある”ってことか。)


────────────────


土煙が立ちこめる戦場の中心。
 空を覆っていた雷光の残滓は次第に薄れ、辺りは静寂に包まれた。

 アーク・ゲオルグは、地面に膝をついていた。

 黒衣の端が焦げ付き、仮面の表面には無数のひびが走っている。かつてどんな強敵をも退けてきた魔導障壁は、いまや粉々に砕け散り、その残骸は熱を帯びた鉄の微粒子とともに風に舞っていた。

 (……まさか……ここまでのものとは……)

 彼は小さく息を吐く。仮面の奥の瞳が、わずかに揺れていた。

 タングステンの防御球——魔法すら寄せ付けない超高密度の防壁が、一撃で破壊されたのだ。

 魔法の攻撃には物理の防御を。物理の攻撃には魔法の障壁を。

 長年築き上げた理論が、一瞬で崩れ去った。

 それだけではない。

 この砲撃はただの魔法ではなかった。
 魔力による熱線と、鉄の重イオンを組み合わせることで、エネルギーと質量を兼ね備えた攻撃。

 迅の科学と魔法の融合によって生み出された新たな戦術。

 彼は、敗北を悟った。


 「……どうやら、今回は”私の負け”ですね。」


 静かに、穏やかに、アークは言った。
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