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第73話 科学勇者、モテ始める①――異世界ハーレム化の危機!?
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──カリム・ヴェルトールの騎士団辞任の知らせは、王都に衝撃を与えた。
王国最強の剣士が突如として団長の座を降り、勇者のもとへと向かったという事実は、異端排斥派を中心とした貴族や騎士たちを大きく揺るがせていた。
そして今まさに、ヴェルトール家や賢律院の一部では、その対応を巡る会議が行われている。
──しかし、その混乱の裏側で、もう一つの異変が静かに進行していた。
◇◆◇
アルセイア王国の訓練場。
王国の魔法士や兵士たちが鍛錬を行う場であり、普段ならば剣戟の音や魔法の爆発が響いている場所。
だが、今日の訓練場は、少し異様な空気に包まれていた。
「えーと、だからだな……詠唱を極限まで短縮するためには――」
「勇者様! それって火魔法にも応用できますか?」
「雷魔法ならどうでしょう!? 私、雷魔法を専門にしているんですが!」
「勇者様、私は氷魔法なんですが、発動速度を上げるにはどうしたら……?」
……そこには、普段の訓練とはまるで異なる光景が広がっていた。
なんと、魔法士たちが勇者・九条迅の周りに集まり、彼の話を食い入るように聞いているのだった。
しかも、その多くが女性魔法士。
訓練場の一角で、迅は腕を組みながら講義のようなものをしていた。
「火魔法か? もちろん応用できるぞ。火は元々、エネルギーを解放する魔法だし、詠唱の流れを最適化すれば――」
「なるほど……!」
「雷魔法にも応用できるなら、もしかして他の属性にも……?」
「おぉ、それは良い質問だ!」
迅は満足げに頷く。
「詠唱の短縮っていうのは、単に言葉を削るだけじゃ意味がない。重要なのは、頭の中で魔法の構造をどれだけ素早く処理できるかってことだ。」
迅は地面に魔力で簡単な図を描くと、魔法士たちはさらに興味を引かれた様子で身を乗り出した。
「例えばだ。お前ら、九九って知ってるか?」
「クク……?」
「何のことですか?」
魔法士たちは顔を見合わせる。どうやら、この世界には九九の概念がないらしい。
「あー、こっちの世界には無いのか。じゃあ、例えば……」
迅は地面に魔力で数字を描きながら説明を始めた。
「俺がいた世界には、数学の計算を何度も繰り返して反射的に答えを出せるようにする訓練があるんだよ。」
「ふむふむ……?」
迅は指を一本立てる。
「例えば 3×7 は?」
「えっと…………21?」
「そう、それだ。じゃあ、これは?」
「6×8……………48?」
「正解。」
「……でも、それが詠唱短縮とどう関係あるんですか?」
「いい質問だな。」
迅はニヤリと笑う。
「九九を覚えれば、かけ算に関してはいちいち考えなくてもすぐに答えが出せる。それは、脳が瞬時に処理できるように訓練されているからだ。」
魔法士たちは「なるほど……」と唸る。
「つまりだ、魔法の詠唱も “考えなくても瞬時に発動できる状態” にすればいい。」
「えっ、それって……?」
「そう。詠唱の文章を丸暗記するだけじゃなく、脳内で“九九”みたいに即座に思い浮かべられるようにする んだよ。」
「……っ!」
魔法士たちの目が輝いた。
「確かに、そうすれば詠唱を短縮できる……!」
「しかも、これって訓練次第で誰でもできるのでは?」
「おう、やる気があるならな!」
迅が自信満々に答えると、魔法士たちは「これはすごい!」「こんな方法、今まで誰も教えてくれなかった!」と口々に感嘆の声を漏らす。
こうして、勇者・九条迅の評価は、また一段階上がることとなった。
──普段なら、迅の講義にここまで人が集まることはない。
だが、彼の周りに人が増え始めたのには 二つの大きな理由 があった。
① “黒の賢者”アーク・ゲオルグを単身撃破。
② “剣聖”カリム・ヴェルトールとの決闘に勝利し、剣聖に認められる。
この二つの偉業が、迅に対する魔法士たちの認識を根本的に変えたのだった。
「……あの勇者、ただの研究バカじゃなかったのか……?」
「いや、むしろ今まで誤解してたかもしれない。あの人、実はめちゃくちゃ優秀なのでは……?」
「ていうか、すごい戦えてるし、知識もすごいし……普通にかっこいいのでは?」
「いや、それな……ちょっと前までは研究室にこもってる変人だと思ってたけど、よく考えたら……」
「実績もあって、頭もよくて、しかも……冷静な判断力もあるし……」
「優良物件では???」
訓練場の端で、その様子を偶然目にした リディア・アークライト は、呆れたように眉を上げた。
「……何これ?」
迅が女性魔法士たちに囲まれ、楽しげに講義をしている。
その光景は、彼女にとって意外なものだった。
普段の迅は、研究室にこもりっぱなしで、こうして大勢に教えるようなことはあまりしない。
たまに大勢へ向けて教えることがあっても、それは "特別講義"という形であって、日常的に行なっているものではない。
「ふーん……珍しいわね。」
リディアは少し不思議に思いつつも、その場を立ち去った。
だが――彼女はまだ知らない。
この出来事が、後に「異世界ハーレムの危機」として発展していくことを――。
◇◆◇
王宮魔法研究棟・談話室。
普段は魔法理論の研究や、戦闘魔法の戦略について語り合う場であるこの部屋には、今、異様な熱気が満ちていた。
「ねえ、みんな……ちょっといい?」
テーブルを囲んでいた女性魔法士たちの一人、ミレーヌが慎重に言葉を選びながら口を開く。
彼女は王国魔法士団の中でも知性派で知られ、炎魔法を専門とする優秀な魔法士だったが――
今はどこかそわそわしている。
「どうしたの?」
「訓練の話?」
仲間たちが顔を上げると、ミレーヌは周囲を警戒するように小さく頷いた。
そして――
「……勇者様って、実はすごく素敵な人なんじゃない?」
その言葉が発せられた瞬間、談話室の空気が凍りついた。
「えっ……?」
「……今、何て?」
全員が一瞬固まり、ミレーヌを見つめる。
そして――
「いや、それ!! それ私も思ってた!!」
もう一人の魔法士 セレナが、勢いよく頷いた。
「やっぱり!? だよね!!」
「ちょっと待って、みんな真剣に言ってるの!?」
普段は冷静なカトレアまでもが、驚いた表情を見せる。
しかし、火がついたミレーヌとセレナは止まらない。
「だってさ、この前の決闘見た?」
「見た見た!! まさか”剣聖”カリム様に勝つなんて!!」
「それだけじゃないよ! 賢律院の公式立ち合いの決闘だったのよ!? あの場にいた全員が見てたわけで……つまり、勇者様は”正式に剣聖を超えた”ってことよ!!」
「確かに……」
カトレアも腕を組み、考え込む。
「今までは研究バカってイメージだったけど……実際に戦うとめちゃくちゃ強いのね……。」
エリナは興奮した様子で続ける。
「しかも、あの決闘の時の冷静さ!! カリム様の猛攻をあんなに落ち着いて捌くなんて……!!」
「最後の一撃も……見た?」
「ええ。あの剣速、まるで雷光みたいだった……!」
ミレーヌが、震える声で呟く。
「……ちょっと前までは、異世界から来た変な人って思ってたけど、よく考えたら、すごく冷静で、判断力もあるし……」
「……」
「それに……」
セレナが少し頬を赤らめる。
「よく見たら、普通にイケメンじゃない?」
「……!!」
女性魔法士たちは顔を見合わせた。
そして――
「……あっ、ホントだ。」
誰かがそう呟いた瞬間、急に全員の視線が変わった。
「いや、待って待って! 今までちゃんと見てなかったけど、顔立ち整ってる……?」
「いやいや、よく考えたら異世界人の勇者ってことでハードル上がってただけで……顔だけ見たら普通にカッコいいわよね……?」
「それどころか、今までの実績考えたら、むしろめちゃくちゃハイスペックじゃない?」
「えっ、もしかして……勇者様って、めちゃくちゃ優良物件なのでは?」
女性魔法士たちが次々に顔を赤らめていく。
談話室の外――
そんな光景を、廊下からこっそり覗いていた人物がいた。
リディア・アークライト。
「……えっ、何これ?」
彼女はドアの陰からそっと覗き込み、女性魔法士たちの会話を聞いていた。
(え、え、ちょっと待って。なんか、変な方向に話が進んでない?)
その時、リディアの脳裏に、以前迅から聞いた話がよみがえった。
────────────────
「俺の世界の異世界召喚モノの物語にはな、よくハーレム展開ってのがあんだよ。」
「……ハーレム展開?」
「そう。やたらと主人公がモテて、周りの女性キャラがどんどん惚れていくんだよ。」
「は?」
「基本的に、主人公は最初は特別モテてるわけじゃねぇんだけどな。戦場とかで活躍して『勇者様すごい!』ってなると、いつの間にか周囲の女性が次々に惚れていく。そういうお約束があんのよ。」
「……そんな都合のいい話、あるわけないでしょ。」
「まぁ、少なくとも俺には縁のない話だがな。」
────────────────
(これじゃない!?)
リディアは額に手を当て、めまいを覚えながら考え込んだ。
(ま、まさか……ジンが言ってた”異世界ハーレム主人公”ってやつが、今ここで起きようとしてるの!?)
リディアの焦りが大きくなっていく間にも、談話室の3人娘の話は更に弾んでいく。
「ねぇ、みんなで勇者様にアプローチしてみない!?」
「ちょっ!!?」
リディアの心臓が跳ね上がる。
「ちょっと待って!? なんでそうなるのよ!!!」
思わず口に出しそうになるが、必死でこらえる。
(えっ、これ、ヤバくない!?)
(このままじゃ、本当にジンが”異世界ハーレム主人公”になってしまうんじゃ……!?)
リディアは拳を握りしめ、真剣な顔で考え込んだ。
(ま、まずいわ……これは阻止しなきゃ……!!)
“異世界ハーレム化阻止作戦” が、静かに幕を開ける。
王国最強の剣士が突如として団長の座を降り、勇者のもとへと向かったという事実は、異端排斥派を中心とした貴族や騎士たちを大きく揺るがせていた。
そして今まさに、ヴェルトール家や賢律院の一部では、その対応を巡る会議が行われている。
──しかし、その混乱の裏側で、もう一つの異変が静かに進行していた。
◇◆◇
アルセイア王国の訓練場。
王国の魔法士や兵士たちが鍛錬を行う場であり、普段ならば剣戟の音や魔法の爆発が響いている場所。
だが、今日の訓練場は、少し異様な空気に包まれていた。
「えーと、だからだな……詠唱を極限まで短縮するためには――」
「勇者様! それって火魔法にも応用できますか?」
「雷魔法ならどうでしょう!? 私、雷魔法を専門にしているんですが!」
「勇者様、私は氷魔法なんですが、発動速度を上げるにはどうしたら……?」
……そこには、普段の訓練とはまるで異なる光景が広がっていた。
なんと、魔法士たちが勇者・九条迅の周りに集まり、彼の話を食い入るように聞いているのだった。
しかも、その多くが女性魔法士。
訓練場の一角で、迅は腕を組みながら講義のようなものをしていた。
「火魔法か? もちろん応用できるぞ。火は元々、エネルギーを解放する魔法だし、詠唱の流れを最適化すれば――」
「なるほど……!」
「雷魔法にも応用できるなら、もしかして他の属性にも……?」
「おぉ、それは良い質問だ!」
迅は満足げに頷く。
「詠唱の短縮っていうのは、単に言葉を削るだけじゃ意味がない。重要なのは、頭の中で魔法の構造をどれだけ素早く処理できるかってことだ。」
迅は地面に魔力で簡単な図を描くと、魔法士たちはさらに興味を引かれた様子で身を乗り出した。
「例えばだ。お前ら、九九って知ってるか?」
「クク……?」
「何のことですか?」
魔法士たちは顔を見合わせる。どうやら、この世界には九九の概念がないらしい。
「あー、こっちの世界には無いのか。じゃあ、例えば……」
迅は地面に魔力で数字を描きながら説明を始めた。
「俺がいた世界には、数学の計算を何度も繰り返して反射的に答えを出せるようにする訓練があるんだよ。」
「ふむふむ……?」
迅は指を一本立てる。
「例えば 3×7 は?」
「えっと…………21?」
「そう、それだ。じゃあ、これは?」
「6×8……………48?」
「正解。」
「……でも、それが詠唱短縮とどう関係あるんですか?」
「いい質問だな。」
迅はニヤリと笑う。
「九九を覚えれば、かけ算に関してはいちいち考えなくてもすぐに答えが出せる。それは、脳が瞬時に処理できるように訓練されているからだ。」
魔法士たちは「なるほど……」と唸る。
「つまりだ、魔法の詠唱も “考えなくても瞬時に発動できる状態” にすればいい。」
「えっ、それって……?」
「そう。詠唱の文章を丸暗記するだけじゃなく、脳内で“九九”みたいに即座に思い浮かべられるようにする んだよ。」
「……っ!」
魔法士たちの目が輝いた。
「確かに、そうすれば詠唱を短縮できる……!」
「しかも、これって訓練次第で誰でもできるのでは?」
「おう、やる気があるならな!」
迅が自信満々に答えると、魔法士たちは「これはすごい!」「こんな方法、今まで誰も教えてくれなかった!」と口々に感嘆の声を漏らす。
こうして、勇者・九条迅の評価は、また一段階上がることとなった。
──普段なら、迅の講義にここまで人が集まることはない。
だが、彼の周りに人が増え始めたのには 二つの大きな理由 があった。
① “黒の賢者”アーク・ゲオルグを単身撃破。
② “剣聖”カリム・ヴェルトールとの決闘に勝利し、剣聖に認められる。
この二つの偉業が、迅に対する魔法士たちの認識を根本的に変えたのだった。
「……あの勇者、ただの研究バカじゃなかったのか……?」
「いや、むしろ今まで誤解してたかもしれない。あの人、実はめちゃくちゃ優秀なのでは……?」
「ていうか、すごい戦えてるし、知識もすごいし……普通にかっこいいのでは?」
「いや、それな……ちょっと前までは研究室にこもってる変人だと思ってたけど、よく考えたら……」
「実績もあって、頭もよくて、しかも……冷静な判断力もあるし……」
「優良物件では???」
訓練場の端で、その様子を偶然目にした リディア・アークライト は、呆れたように眉を上げた。
「……何これ?」
迅が女性魔法士たちに囲まれ、楽しげに講義をしている。
その光景は、彼女にとって意外なものだった。
普段の迅は、研究室にこもりっぱなしで、こうして大勢に教えるようなことはあまりしない。
たまに大勢へ向けて教えることがあっても、それは "特別講義"という形であって、日常的に行なっているものではない。
「ふーん……珍しいわね。」
リディアは少し不思議に思いつつも、その場を立ち去った。
だが――彼女はまだ知らない。
この出来事が、後に「異世界ハーレムの危機」として発展していくことを――。
◇◆◇
王宮魔法研究棟・談話室。
普段は魔法理論の研究や、戦闘魔法の戦略について語り合う場であるこの部屋には、今、異様な熱気が満ちていた。
「ねえ、みんな……ちょっといい?」
テーブルを囲んでいた女性魔法士たちの一人、ミレーヌが慎重に言葉を選びながら口を開く。
彼女は王国魔法士団の中でも知性派で知られ、炎魔法を専門とする優秀な魔法士だったが――
今はどこかそわそわしている。
「どうしたの?」
「訓練の話?」
仲間たちが顔を上げると、ミレーヌは周囲を警戒するように小さく頷いた。
そして――
「……勇者様って、実はすごく素敵な人なんじゃない?」
その言葉が発せられた瞬間、談話室の空気が凍りついた。
「えっ……?」
「……今、何て?」
全員が一瞬固まり、ミレーヌを見つめる。
そして――
「いや、それ!! それ私も思ってた!!」
もう一人の魔法士 セレナが、勢いよく頷いた。
「やっぱり!? だよね!!」
「ちょっと待って、みんな真剣に言ってるの!?」
普段は冷静なカトレアまでもが、驚いた表情を見せる。
しかし、火がついたミレーヌとセレナは止まらない。
「だってさ、この前の決闘見た?」
「見た見た!! まさか”剣聖”カリム様に勝つなんて!!」
「それだけじゃないよ! 賢律院の公式立ち合いの決闘だったのよ!? あの場にいた全員が見てたわけで……つまり、勇者様は”正式に剣聖を超えた”ってことよ!!」
「確かに……」
カトレアも腕を組み、考え込む。
「今までは研究バカってイメージだったけど……実際に戦うとめちゃくちゃ強いのね……。」
エリナは興奮した様子で続ける。
「しかも、あの決闘の時の冷静さ!! カリム様の猛攻をあんなに落ち着いて捌くなんて……!!」
「最後の一撃も……見た?」
「ええ。あの剣速、まるで雷光みたいだった……!」
ミレーヌが、震える声で呟く。
「……ちょっと前までは、異世界から来た変な人って思ってたけど、よく考えたら、すごく冷静で、判断力もあるし……」
「……」
「それに……」
セレナが少し頬を赤らめる。
「よく見たら、普通にイケメンじゃない?」
「……!!」
女性魔法士たちは顔を見合わせた。
そして――
「……あっ、ホントだ。」
誰かがそう呟いた瞬間、急に全員の視線が変わった。
「いや、待って待って! 今までちゃんと見てなかったけど、顔立ち整ってる……?」
「いやいや、よく考えたら異世界人の勇者ってことでハードル上がってただけで……顔だけ見たら普通にカッコいいわよね……?」
「それどころか、今までの実績考えたら、むしろめちゃくちゃハイスペックじゃない?」
「えっ、もしかして……勇者様って、めちゃくちゃ優良物件なのでは?」
女性魔法士たちが次々に顔を赤らめていく。
談話室の外――
そんな光景を、廊下からこっそり覗いていた人物がいた。
リディア・アークライト。
「……えっ、何これ?」
彼女はドアの陰からそっと覗き込み、女性魔法士たちの会話を聞いていた。
(え、え、ちょっと待って。なんか、変な方向に話が進んでない?)
その時、リディアの脳裏に、以前迅から聞いた話がよみがえった。
────────────────
「俺の世界の異世界召喚モノの物語にはな、よくハーレム展開ってのがあんだよ。」
「……ハーレム展開?」
「そう。やたらと主人公がモテて、周りの女性キャラがどんどん惚れていくんだよ。」
「は?」
「基本的に、主人公は最初は特別モテてるわけじゃねぇんだけどな。戦場とかで活躍して『勇者様すごい!』ってなると、いつの間にか周囲の女性が次々に惚れていく。そういうお約束があんのよ。」
「……そんな都合のいい話、あるわけないでしょ。」
「まぁ、少なくとも俺には縁のない話だがな。」
────────────────
(これじゃない!?)
リディアは額に手を当て、めまいを覚えながら考え込んだ。
(ま、まさか……ジンが言ってた”異世界ハーレム主人公”ってやつが、今ここで起きようとしてるの!?)
リディアの焦りが大きくなっていく間にも、談話室の3人娘の話は更に弾んでいく。
「ねぇ、みんなで勇者様にアプローチしてみない!?」
「ちょっ!!?」
リディアの心臓が跳ね上がる。
「ちょっと待って!? なんでそうなるのよ!!!」
思わず口に出しそうになるが、必死でこらえる。
(えっ、これ、ヤバくない!?)
(このままじゃ、本当にジンが”異世界ハーレム主人公”になってしまうんじゃ……!?)
リディアは拳を握りしめ、真剣な顔で考え込んだ。
(ま、まずいわ……これは阻止しなきゃ……!!)
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