72 / 257
第五章 魔導帝国ベルゼリア編
第70話 黒ギャルリュナさんは家族に甘えたい。
しおりを挟む
湯気の立つ紅茶のポットを、お盆ごと丁寧にテーブルへ置いた。
磁器のカップと、ついでにクッキーの盛り合わせも乗せてある。
うむ、完璧。
世界広しと言えど、美少女と黒ギャルにご奉仕してる真祖竜なんて俺だけだろうね。羨ましいだろう!
「ブリジットちゃん、リュナちゃん。おまたせ。熱いから気をつけて」
「ありがとう、アルドくん!」
「さっすが兄さん、気が利くっすね~」
ブリジットちゃんはにこっと笑って、リュナちゃんはソファにのけぞったまま片手でひらひらとお手振りモード。
……その姿勢で人にお礼言う?脚、だらしなくソファの肘掛けに乗ってるし。
ミニチュアダックス姿のフレキくんにも、牛乳をドッグボウルで差し出す。
「フレキくんの分はミルクだよー。冷やしてあるよ」
「ありがとうございますっ! ……いただきまーすっ!」
床でちょこんと正座(?)したフレキくんが、喜々としてミルクを飲みはじめた。
チャグチャグという音が、なんだか幸せを運んでくる。
ふと視線を上げると、リュナが自分の横のソファのクッションを、ポンポンと叩いていた。
「ほら、兄さん。ここ、座って!」
「え? あ、うん……」
なんとなく言われるがまま、ブリジットちゃんとリュナちゃんの間に腰を下ろす。
それが罠だったと気づいたのは、数秒後のことだ。
リュナちゃんが、俺の膝の上に両足を──しかも、組んだまま、すっと乗せてきたのだ。
「ちょ、ちょっとリュナちゃん!? その格好、スカートの中が見えちゃうって!?」
「んふふ~。別にいいじゃないっすか~それくらい~?」
「よくない!よくないから!!」
うわ。なんか、リュナちゃん、ニヤニヤしてる。
わざとだこれ。
やぶさかではない!やぶさかではないけども!
「兄さん、こーゆーの……嫌いっすか?」
「嫌いじゃないけど~……嫌いじゃないけど~……
嫌いじゃないけど理性的に無理~!!」
俺は視線をあさっての方向に向け、上半身をピーンと棒のように伸ばす。
姿勢が良くなったところで視線のやり場に困るのは変わらないけど!
……そして、ブリジットちゃんが困ったように真っ赤な顔で「わ、わ、わ……」と何度も口を開閉していた。
目が泳いでる。頬が赤い。耳まで赤い。
「じゃ、じゃあ……あたしも……」
「えっ!?」
なにしてんの!? スウェットの裾めくって!? 脚!? それ、まさか俺の膝に──!
ブリジットちゃんの膝が俺の太ももに乗ろうとした、まさにその瞬間だった。
「ビシッ」
乾いた音と共に、軽くブリジットの頭にチョップが落ちる。
やったのは、いつの間にか後ろに立っていたヴァレンだった。
「真似しなくていいから、ブリジットさん」
「はわっ!? ヴ、ヴァレンさんっ!? い、いえ、その、わたしは……!」
しどろもどろになるブリジットちゃんをよそに、リュナちゃんは膝を乗せたまま余裕の笑み。
「ふふ~ん。ね? 兄さんはこういうの好きっすもんね~?」
「それはそうかも知れないけど、だからこそマズイと俺は思うんだよね、リュナちゃん!!」
もう勘弁して。理性が死ぬ。
……そう思いながら、俺は誤魔化すように紅茶をひと口すすった。
香りは上品なはずなのに、味だけが、やたらと混線して感じた。
◇◆◇
リュナちゃんが膝を俺の脚に乗せたまま、ニコニコと俺を見上げてくる。
ブリジットちゃんはヴァレンのチョップを受けてしょんぼりモード。
フレキくんはちゃぐちゃぐとミルク続投中。
……なんというか、俺の周囲だけジャンルが違う気がする。
世界はたしかにファンタジーなんだけど、ここだけ日常系ラブコメが異世界に転移してきてる。
と、そのとき。
「……リュナ。」
ヴァレンの声が少しだけ低くなった。
いつものおふざけトーンではない。
どこか、少しだけ……家族のような、兄のような響き。
「確かに……お前に家族が出来たって聞いたときは、俺も『よかったな』って思った。心からな」
「ん……?」
リュナが、ふいに目をぱちくりさせる。
俺も思わず紅茶を飲む手を止めた。
「でもな」
ヴァレンは、ズイッとリュナに近づくと──
「……それにしても今のお前はダラけすぎだ!!」
「……あ?」
リュナの目元がピクっと跳ねた。
「ワンちゃん達(※フェンリル)ですら、ヘルメット被って工事現場で汗水たらして働いてるってのに……! お前ときたら、食っちゃ寝食っちゃ寝、また食っちゃ寝! 何もしてねぇじゃねぇか!」
「う、うっさいなー!!別にいいっしょ!?」
ヴァレンの正論に、ソファに寝転びながらリュナちゃんはふて腐れたように抗議の声を上げた。
「竜ってのはな~、もともと働かないのが美徳なんだよ! 怠惰こそ竜族のあるべき姿なんすよ!
あーしは、竜としてはむしろ超正統派!!」
「正統派が聞いて呆れるぜ。」
ヴァレンは、額を指で押さえながら、深くため息をついた。
そして、今度はビシィッとリュナに指を突きつける。
「せっかく俺が、内臓破裂しそうな腹パンを喰らいながらも“負けヒロイン”のフラグを叩き折ってやったってのに……! またニョキニョキと新たなフラグを自家発電してやがって!」
「……な、何の話だよ、それ……」
ヴァレンがリュナちゃんをビシッと指差しながら、キッパリと言い切る。
「今のお前はな……“ヒロイン”じゃない!
ただの“ラブコメ漫画に出てくるエッチなおねいさん枠”だ!!」
「だっ…誰が“エッチなおねいさん枠”だし!!」
ガタッと立ち上がったリュナが、顔を真っ赤にして吠える。
「それ賑やかしだけで、結局主人公から相手にされないやつじゃん!! 漫画読んでる人は好きでも、ストーリー上は相手にされないやつじゃん!!」
「お前が今やってるムーブ、そのまんまだろうが!!!」
指を突きつけるヴァレンと、両手をバタつかせて抗議するリュナちゃん。
最近"恋するカフェラテメモリー(※ヴァレンが描いた漫画。)"にハマってただけあって、ラブコメへの解像度が上がってるね。
二人の周囲には、目に見えるかのような火花が飛び交っている。
ちなみに、ブリジットちゃんとフレキくんは完全に「???」状態。
頭の上にはてなマークでも出るのか?ってくらいぽかんと口を開けていた。
……ごめん、俺も、以前リュナちゃんか風呂上がりにバスタオル巻いただけの姿でウロウロしてるの見て、まったく同じこと思ったわ。
この子、ラブコメ漫画の“エッチなおねいさん枠”じゃん!って。
だから今のヴァレンのツッコミ、めちゃくちゃ刺さった。
リュナちゃんの抗議が、ちょっとだけ痛々しい……。
俺は、心の中でそっと手を合わせる。
(リュナちゃん……ほんとごめん。ここはヴァレンに同意かも……)
──紅茶をすする音が、なぜか場の空気を、ほんの少しだけ落ち着かせた。
◇◆◇
口論(という名のコント)が一段落したあと、リュナちゃんはふいにソファに寝転びながら、ひとつ欠伸をした。
「ふああ……ま、いーじゃん? あーしが何してようが。兄さんが許してんなら、それで良くな~い?」
そう言いながら、今度は俺の膝の上にゴロンと頭を置いてくる。うん、膝枕する側も、嫌いじゃあないぜ?
その目は完全に「勝ったな」と言わんばかりのゆるみきった笑顔だ。
──が、そのとき。
「おいコラ、リュナ」
ヴァレンが腰に手を当て、神妙な顔でこちらに近づいてきた。
その口調には、さっきまでの冗談半分のトーンとは違う……明らかに“説教モード”の気配があった。
「お前が俺の漫画を読んでくれて、ラブコメに対する見識を得てるのは非常に喜ばしいことではある。」
「お? でしょでしょ?」
なぜかドヤ顔を浮かべるリュナちゃん。
その頭を俺の膝に乗せたまま、サムズアップしてきてる。かわいい。
だが──
「……それはそれとして!」
ヴァレンの手が、ドンとテーブルを叩く。
「俺はお前に一言、いや百言くらい言わねばならない!!」
「えぇぇ~……」
リュナちゃんは耳を塞ぎながら寝返りを打つ。
「ブリジットさんはな、開拓の書類作成や工事現場のフェンリル達の指示統括で忙しい中、わざわざ時間を見つけてスキルコントロールの修行までしてるんだぞ!?」
「それに比べてお前はどうだ!? 家でゴロゴロポテチ食って、相棒に絶妙にエロい感じでダル絡みしてるだけ! これじゃ家族っつーか──」
ヴァレンがグッと指を突きつけて叫ぶ。
「──“扶養家族”じゃねーか!!このタダ飯喰らいが!!」
「なっ!?」
あまりの言われように、リュナは一瞬だけ目を剥いた。
が、すぐにニッと笑って、ふわりと身を起こすと──
「姉さ~ん、ヴァレンがあーしにいじわるする~~」
と、ブリジットの肩にすり寄って甘え始めた。
……その姿勢、まるで大型犬。
ダウナー黒ギャルの皮を被った、忠犬っぽい。
「リュナちゃん、よしよーし!」
ブリジットちゃんは笑顔で、リュナちゃんの頭をやさしく撫でてやっている。
その様子を見て、俺は無意識に心の中で叫んでいた。
(尊いッッ!!!)
撫でる側も撫でられる側も、どっちも等しく羨ましいッッ!!
ふにゃっと気を抜いたリュナちゃんの表情と、それを慈しむように見守るブリジットちゃん。
……あの二人、歳は逆だけど、完全に“お姉ちゃんと甘えん坊の妹”ムーブだ。
「──って、ブリジットさん!!」
ヴァレンが思わず叫んだ。
「そいつを甘やかすんじゃあないッッ!!」
「え~~~? だってリュナちゃん、可愛いんだもん……」
とろけたような笑顔でブリジットが返す。
その光景に、ヴァレンは頭を抱えた。
「リュナ、お前さあ!900歳以上年下の女の子にニャンついてるんじゃねえよ!?」
「──お前、ここで圧倒的最年長だろうが!!」
……その瞬間だった。
バチンッ、と空気が一変する音がしたような気がした。
リュナちゃんの背中、──黒い鱗ラメのボディコンスーツの上から、竜の腕がズルリと一本、生える。
黒銀に光る、鋭く尖った爪。
そのまま音もなく、ヴァレンの喉元に──
突きつけられた。
リュナちゃんの瞳からは、すでにハイライトが抜けていた。
薄い金色の双眸に、静かな怒気が宿っている。
「歳のことイジんな……殺すよ?」
声は静かだった。
けれど、火山の奥底でマグマが煮え立つような、危うさがそこにあった。
「……あっ、はい、ごめんなさい、それは本当に俺が悪かったです」
ヴァレンは額に汗をにじませながら、即座に両手をあげて降参ポーズ。
(今のは、ヴァレンが悪いな……)
いかに1000年の時を生きるドラゴンとは言えど、リュナちゃんだって女の子。
女性を相手に、“年齢”を話題に出す。
──そんなものは、どこの世界だろうが共通の地雷ワードでしかない。
ヴァレン……お前、恋愛観察マスターのクセに、
リュナちゃん相手だとデリカシーに欠けるよね。
◇◆◇
リュナちゃんの“年齢ネタ”地雷が炸裂して以降、室内にはしばしの沈黙が流れていた。
──俺は、というと。
膝の上に彼女の脚。肩には彼女の頭。
そのまま無抵抗の“ソファの一部”として、心を無にして沈黙を保っていた。
下手に動くと危ないからね!色んな意味で!
そんな中、ヴァレンがようやく口を開いた。
「と、ともかくッ!」
やや声を裏返しながら、一歩踏み出す。
「このままでは、俺はお前を“王道ラブコメの正ヒロイン”として応援しにくくなってしまう!!」
「ほぉ~?」
リュナはブリジットにもたれながら、俺の膝に脚を乗せたまま、ゆるっと笑う。
「じゃああーし、ヒロインじゃなくていいよ? むしろあたし、裏ヒロインとかの方が美味しいって思ってるし?」
「黙れ!!"エッチなおねいさん枠黒ギャル"が!
裏ヒロインなんておこがましいんだよ!ラブコメ舐めんな!!」
ヴァレンがビシィッとツッコむが、リュナは気にした様子もなく、ニヤッと唇の端を吊り上げた。
「で? そんじゃ、どーすんの?」
その声は明らかに挑発的だった。
ヴァレンはしばらく口を引き結び……そして、静かに告げた。
「お前と相棒をモデルに、漫画を描いて出版する」
場の空気が、ぴたりと止まる。
「タイトルは──《元ドラゴンのダウナー黒ギャルお姉さんが俺に甘えてくる件について》。どうだ」
「これなら、今のお前の体たらくでも、ヒロインとして成立させられるラブコメ作品になる…!」
「──っ!」
思わず、俺は立ち上がりそうになった。
「ちょっと待て! それ、流れ弾が俺にも直撃してない!? むしろ俺が主人公じゃない!? そのタイトルだと!」
「主人公:アルド・ラクスシズ。属性:家事全般得意系男子。趣味:料理と掃除洗濯、犬の世話。
ヒロイン:リュナ。属性:年上甘えん坊ジト目ギザ歯ダウナー系黒ギャル(元竜)。多少盛りすぎ感はあるが、設定は完璧だな」
「いや何が完璧なんだよ!!せめて名前は変えたりしてくれない!?」
俺の抗議などどこ吹く風で、ヴァレンはすでにペンの握りを確認し始めていた。
ちょっと、本当やめて?ヒカル先生!
キミの漫画は大好きだけど、自分が主役のラブコメ漫画なんていう、黒歴史を超越した特急呪物、俺には耐えられないよ!?
一方のリュナちゃんは──というと。
黙っていた。めずらしく、ほんの少し長く。
沈黙の末に、彼女はふいに立ち上がり、
伸びをしながらぼそっと言った。
「……よし、それじゃ、あーしは西の森林で開拓やってるフェンリル達のとこ、手伝いに行ってくるっす」
その目はちょっとだけ鋭く、照れてるような、でも悔しさもちょっと混じってるような、そんな顔だった。
「おう。って、えっ?」
ヴァレンが間の抜けた声を上げる。
「え、行くの!? マジで!? ていうか、働くの!?」
リュナちゃんはくるっと振り向いて、ニコッと笑った。
「自分がモデルの漫画だけは、あーし的にマジでNGなんで。」
そう言いながら、彼女は軽やかに玄関へと向かう。
黒いラメのスーツに、風がひらりとはためいた。
「……いや、待て」
ヴァレンが何かに気づいたような声を漏らす。
「やっぱ、働かなくていい。冗談のつもりだったが……傑作になる予感がしてきた。取材するから、そのまま相棒にダル絡みを続けてくれ」
いや、最初と言ってる事180度変わってるじゃん。本末転倒が過ぎる。
「……それじゃ、行ってくるっすね~!」
逃げるように、文字通り風のように、リュナちゃんはカクカクハウスの扉を開けて外に出ていった。
「おいっ、待てってば!!取材させて!!」
ヴァレンが叫ぶも、すでにリュナの気配は空の彼方。
──残された俺たちはというと。
ソファにお行儀良く座るブリジットちゃんと、床で寝そべるフレキくんと、俺。
顔を見合わせ、声を揃える。
「「「……ま、いっか」」」
そのあと、俺たちは自然と笑い合っていた。
こうして今日も、フォルティア荒野の一日は、平和で賑やかだった──。
磁器のカップと、ついでにクッキーの盛り合わせも乗せてある。
うむ、完璧。
世界広しと言えど、美少女と黒ギャルにご奉仕してる真祖竜なんて俺だけだろうね。羨ましいだろう!
「ブリジットちゃん、リュナちゃん。おまたせ。熱いから気をつけて」
「ありがとう、アルドくん!」
「さっすが兄さん、気が利くっすね~」
ブリジットちゃんはにこっと笑って、リュナちゃんはソファにのけぞったまま片手でひらひらとお手振りモード。
……その姿勢で人にお礼言う?脚、だらしなくソファの肘掛けに乗ってるし。
ミニチュアダックス姿のフレキくんにも、牛乳をドッグボウルで差し出す。
「フレキくんの分はミルクだよー。冷やしてあるよ」
「ありがとうございますっ! ……いただきまーすっ!」
床でちょこんと正座(?)したフレキくんが、喜々としてミルクを飲みはじめた。
チャグチャグという音が、なんだか幸せを運んでくる。
ふと視線を上げると、リュナが自分の横のソファのクッションを、ポンポンと叩いていた。
「ほら、兄さん。ここ、座って!」
「え? あ、うん……」
なんとなく言われるがまま、ブリジットちゃんとリュナちゃんの間に腰を下ろす。
それが罠だったと気づいたのは、数秒後のことだ。
リュナちゃんが、俺の膝の上に両足を──しかも、組んだまま、すっと乗せてきたのだ。
「ちょ、ちょっとリュナちゃん!? その格好、スカートの中が見えちゃうって!?」
「んふふ~。別にいいじゃないっすか~それくらい~?」
「よくない!よくないから!!」
うわ。なんか、リュナちゃん、ニヤニヤしてる。
わざとだこれ。
やぶさかではない!やぶさかではないけども!
「兄さん、こーゆーの……嫌いっすか?」
「嫌いじゃないけど~……嫌いじゃないけど~……
嫌いじゃないけど理性的に無理~!!」
俺は視線をあさっての方向に向け、上半身をピーンと棒のように伸ばす。
姿勢が良くなったところで視線のやり場に困るのは変わらないけど!
……そして、ブリジットちゃんが困ったように真っ赤な顔で「わ、わ、わ……」と何度も口を開閉していた。
目が泳いでる。頬が赤い。耳まで赤い。
「じゃ、じゃあ……あたしも……」
「えっ!?」
なにしてんの!? スウェットの裾めくって!? 脚!? それ、まさか俺の膝に──!
ブリジットちゃんの膝が俺の太ももに乗ろうとした、まさにその瞬間だった。
「ビシッ」
乾いた音と共に、軽くブリジットの頭にチョップが落ちる。
やったのは、いつの間にか後ろに立っていたヴァレンだった。
「真似しなくていいから、ブリジットさん」
「はわっ!? ヴ、ヴァレンさんっ!? い、いえ、その、わたしは……!」
しどろもどろになるブリジットちゃんをよそに、リュナちゃんは膝を乗せたまま余裕の笑み。
「ふふ~ん。ね? 兄さんはこういうの好きっすもんね~?」
「それはそうかも知れないけど、だからこそマズイと俺は思うんだよね、リュナちゃん!!」
もう勘弁して。理性が死ぬ。
……そう思いながら、俺は誤魔化すように紅茶をひと口すすった。
香りは上品なはずなのに、味だけが、やたらと混線して感じた。
◇◆◇
リュナちゃんが膝を俺の脚に乗せたまま、ニコニコと俺を見上げてくる。
ブリジットちゃんはヴァレンのチョップを受けてしょんぼりモード。
フレキくんはちゃぐちゃぐとミルク続投中。
……なんというか、俺の周囲だけジャンルが違う気がする。
世界はたしかにファンタジーなんだけど、ここだけ日常系ラブコメが異世界に転移してきてる。
と、そのとき。
「……リュナ。」
ヴァレンの声が少しだけ低くなった。
いつものおふざけトーンではない。
どこか、少しだけ……家族のような、兄のような響き。
「確かに……お前に家族が出来たって聞いたときは、俺も『よかったな』って思った。心からな」
「ん……?」
リュナが、ふいに目をぱちくりさせる。
俺も思わず紅茶を飲む手を止めた。
「でもな」
ヴァレンは、ズイッとリュナに近づくと──
「……それにしても今のお前はダラけすぎだ!!」
「……あ?」
リュナの目元がピクっと跳ねた。
「ワンちゃん達(※フェンリル)ですら、ヘルメット被って工事現場で汗水たらして働いてるってのに……! お前ときたら、食っちゃ寝食っちゃ寝、また食っちゃ寝! 何もしてねぇじゃねぇか!」
「う、うっさいなー!!別にいいっしょ!?」
ヴァレンの正論に、ソファに寝転びながらリュナちゃんはふて腐れたように抗議の声を上げた。
「竜ってのはな~、もともと働かないのが美徳なんだよ! 怠惰こそ竜族のあるべき姿なんすよ!
あーしは、竜としてはむしろ超正統派!!」
「正統派が聞いて呆れるぜ。」
ヴァレンは、額を指で押さえながら、深くため息をついた。
そして、今度はビシィッとリュナに指を突きつける。
「せっかく俺が、内臓破裂しそうな腹パンを喰らいながらも“負けヒロイン”のフラグを叩き折ってやったってのに……! またニョキニョキと新たなフラグを自家発電してやがって!」
「……な、何の話だよ、それ……」
ヴァレンがリュナちゃんをビシッと指差しながら、キッパリと言い切る。
「今のお前はな……“ヒロイン”じゃない!
ただの“ラブコメ漫画に出てくるエッチなおねいさん枠”だ!!」
「だっ…誰が“エッチなおねいさん枠”だし!!」
ガタッと立ち上がったリュナが、顔を真っ赤にして吠える。
「それ賑やかしだけで、結局主人公から相手にされないやつじゃん!! 漫画読んでる人は好きでも、ストーリー上は相手にされないやつじゃん!!」
「お前が今やってるムーブ、そのまんまだろうが!!!」
指を突きつけるヴァレンと、両手をバタつかせて抗議するリュナちゃん。
最近"恋するカフェラテメモリー(※ヴァレンが描いた漫画。)"にハマってただけあって、ラブコメへの解像度が上がってるね。
二人の周囲には、目に見えるかのような火花が飛び交っている。
ちなみに、ブリジットちゃんとフレキくんは完全に「???」状態。
頭の上にはてなマークでも出るのか?ってくらいぽかんと口を開けていた。
……ごめん、俺も、以前リュナちゃんか風呂上がりにバスタオル巻いただけの姿でウロウロしてるの見て、まったく同じこと思ったわ。
この子、ラブコメ漫画の“エッチなおねいさん枠”じゃん!って。
だから今のヴァレンのツッコミ、めちゃくちゃ刺さった。
リュナちゃんの抗議が、ちょっとだけ痛々しい……。
俺は、心の中でそっと手を合わせる。
(リュナちゃん……ほんとごめん。ここはヴァレンに同意かも……)
──紅茶をすする音が、なぜか場の空気を、ほんの少しだけ落ち着かせた。
◇◆◇
口論(という名のコント)が一段落したあと、リュナちゃんはふいにソファに寝転びながら、ひとつ欠伸をした。
「ふああ……ま、いーじゃん? あーしが何してようが。兄さんが許してんなら、それで良くな~い?」
そう言いながら、今度は俺の膝の上にゴロンと頭を置いてくる。うん、膝枕する側も、嫌いじゃあないぜ?
その目は完全に「勝ったな」と言わんばかりのゆるみきった笑顔だ。
──が、そのとき。
「おいコラ、リュナ」
ヴァレンが腰に手を当て、神妙な顔でこちらに近づいてきた。
その口調には、さっきまでの冗談半分のトーンとは違う……明らかに“説教モード”の気配があった。
「お前が俺の漫画を読んでくれて、ラブコメに対する見識を得てるのは非常に喜ばしいことではある。」
「お? でしょでしょ?」
なぜかドヤ顔を浮かべるリュナちゃん。
その頭を俺の膝に乗せたまま、サムズアップしてきてる。かわいい。
だが──
「……それはそれとして!」
ヴァレンの手が、ドンとテーブルを叩く。
「俺はお前に一言、いや百言くらい言わねばならない!!」
「えぇぇ~……」
リュナちゃんは耳を塞ぎながら寝返りを打つ。
「ブリジットさんはな、開拓の書類作成や工事現場のフェンリル達の指示統括で忙しい中、わざわざ時間を見つけてスキルコントロールの修行までしてるんだぞ!?」
「それに比べてお前はどうだ!? 家でゴロゴロポテチ食って、相棒に絶妙にエロい感じでダル絡みしてるだけ! これじゃ家族っつーか──」
ヴァレンがグッと指を突きつけて叫ぶ。
「──“扶養家族”じゃねーか!!このタダ飯喰らいが!!」
「なっ!?」
あまりの言われように、リュナは一瞬だけ目を剥いた。
が、すぐにニッと笑って、ふわりと身を起こすと──
「姉さ~ん、ヴァレンがあーしにいじわるする~~」
と、ブリジットの肩にすり寄って甘え始めた。
……その姿勢、まるで大型犬。
ダウナー黒ギャルの皮を被った、忠犬っぽい。
「リュナちゃん、よしよーし!」
ブリジットちゃんは笑顔で、リュナちゃんの頭をやさしく撫でてやっている。
その様子を見て、俺は無意識に心の中で叫んでいた。
(尊いッッ!!!)
撫でる側も撫でられる側も、どっちも等しく羨ましいッッ!!
ふにゃっと気を抜いたリュナちゃんの表情と、それを慈しむように見守るブリジットちゃん。
……あの二人、歳は逆だけど、完全に“お姉ちゃんと甘えん坊の妹”ムーブだ。
「──って、ブリジットさん!!」
ヴァレンが思わず叫んだ。
「そいつを甘やかすんじゃあないッッ!!」
「え~~~? だってリュナちゃん、可愛いんだもん……」
とろけたような笑顔でブリジットが返す。
その光景に、ヴァレンは頭を抱えた。
「リュナ、お前さあ!900歳以上年下の女の子にニャンついてるんじゃねえよ!?」
「──お前、ここで圧倒的最年長だろうが!!」
……その瞬間だった。
バチンッ、と空気が一変する音がしたような気がした。
リュナちゃんの背中、──黒い鱗ラメのボディコンスーツの上から、竜の腕がズルリと一本、生える。
黒銀に光る、鋭く尖った爪。
そのまま音もなく、ヴァレンの喉元に──
突きつけられた。
リュナちゃんの瞳からは、すでにハイライトが抜けていた。
薄い金色の双眸に、静かな怒気が宿っている。
「歳のことイジんな……殺すよ?」
声は静かだった。
けれど、火山の奥底でマグマが煮え立つような、危うさがそこにあった。
「……あっ、はい、ごめんなさい、それは本当に俺が悪かったです」
ヴァレンは額に汗をにじませながら、即座に両手をあげて降参ポーズ。
(今のは、ヴァレンが悪いな……)
いかに1000年の時を生きるドラゴンとは言えど、リュナちゃんだって女の子。
女性を相手に、“年齢”を話題に出す。
──そんなものは、どこの世界だろうが共通の地雷ワードでしかない。
ヴァレン……お前、恋愛観察マスターのクセに、
リュナちゃん相手だとデリカシーに欠けるよね。
◇◆◇
リュナちゃんの“年齢ネタ”地雷が炸裂して以降、室内にはしばしの沈黙が流れていた。
──俺は、というと。
膝の上に彼女の脚。肩には彼女の頭。
そのまま無抵抗の“ソファの一部”として、心を無にして沈黙を保っていた。
下手に動くと危ないからね!色んな意味で!
そんな中、ヴァレンがようやく口を開いた。
「と、ともかくッ!」
やや声を裏返しながら、一歩踏み出す。
「このままでは、俺はお前を“王道ラブコメの正ヒロイン”として応援しにくくなってしまう!!」
「ほぉ~?」
リュナはブリジットにもたれながら、俺の膝に脚を乗せたまま、ゆるっと笑う。
「じゃああーし、ヒロインじゃなくていいよ? むしろあたし、裏ヒロインとかの方が美味しいって思ってるし?」
「黙れ!!"エッチなおねいさん枠黒ギャル"が!
裏ヒロインなんておこがましいんだよ!ラブコメ舐めんな!!」
ヴァレンがビシィッとツッコむが、リュナは気にした様子もなく、ニヤッと唇の端を吊り上げた。
「で? そんじゃ、どーすんの?」
その声は明らかに挑発的だった。
ヴァレンはしばらく口を引き結び……そして、静かに告げた。
「お前と相棒をモデルに、漫画を描いて出版する」
場の空気が、ぴたりと止まる。
「タイトルは──《元ドラゴンのダウナー黒ギャルお姉さんが俺に甘えてくる件について》。どうだ」
「これなら、今のお前の体たらくでも、ヒロインとして成立させられるラブコメ作品になる…!」
「──っ!」
思わず、俺は立ち上がりそうになった。
「ちょっと待て! それ、流れ弾が俺にも直撃してない!? むしろ俺が主人公じゃない!? そのタイトルだと!」
「主人公:アルド・ラクスシズ。属性:家事全般得意系男子。趣味:料理と掃除洗濯、犬の世話。
ヒロイン:リュナ。属性:年上甘えん坊ジト目ギザ歯ダウナー系黒ギャル(元竜)。多少盛りすぎ感はあるが、設定は完璧だな」
「いや何が完璧なんだよ!!せめて名前は変えたりしてくれない!?」
俺の抗議などどこ吹く風で、ヴァレンはすでにペンの握りを確認し始めていた。
ちょっと、本当やめて?ヒカル先生!
キミの漫画は大好きだけど、自分が主役のラブコメ漫画なんていう、黒歴史を超越した特急呪物、俺には耐えられないよ!?
一方のリュナちゃんは──というと。
黙っていた。めずらしく、ほんの少し長く。
沈黙の末に、彼女はふいに立ち上がり、
伸びをしながらぼそっと言った。
「……よし、それじゃ、あーしは西の森林で開拓やってるフェンリル達のとこ、手伝いに行ってくるっす」
その目はちょっとだけ鋭く、照れてるような、でも悔しさもちょっと混じってるような、そんな顔だった。
「おう。って、えっ?」
ヴァレンが間の抜けた声を上げる。
「え、行くの!? マジで!? ていうか、働くの!?」
リュナちゃんはくるっと振り向いて、ニコッと笑った。
「自分がモデルの漫画だけは、あーし的にマジでNGなんで。」
そう言いながら、彼女は軽やかに玄関へと向かう。
黒いラメのスーツに、風がひらりとはためいた。
「……いや、待て」
ヴァレンが何かに気づいたような声を漏らす。
「やっぱ、働かなくていい。冗談のつもりだったが……傑作になる予感がしてきた。取材するから、そのまま相棒にダル絡みを続けてくれ」
いや、最初と言ってる事180度変わってるじゃん。本末転倒が過ぎる。
「……それじゃ、行ってくるっすね~!」
逃げるように、文字通り風のように、リュナちゃんはカクカクハウスの扉を開けて外に出ていった。
「おいっ、待てってば!!取材させて!!」
ヴァレンが叫ぶも、すでにリュナの気配は空の彼方。
──残された俺たちはというと。
ソファにお行儀良く座るブリジットちゃんと、床で寝そべるフレキくんと、俺。
顔を見合わせ、声を揃える。
「「「……ま、いっか」」」
そのあと、俺たちは自然と笑い合っていた。
こうして今日も、フォルティア荒野の一日は、平和で賑やかだった──。
106
あなたにおすすめの小説
足手まといだと言われて冒険者パーティから追放されたのに、なぜか元メンバーが追いかけてきました
ちくわ食べます
ファンタジー
「ユウト。正直にいうけど、最近のあなたは足手まといになっている。もう、ここらへんが限界だと思う」
優秀なアタッカー、メイジ、タンクの3人に囲まれていたヒーラーのユウトは、実力不足を理由に冒険者パーティを追放されてしまう。
――僕には才能がなかった。
打ちひしがれ、故郷の実家へと帰省を決意したユウトを待ち受けていたのは、彼の知らない真実だった。
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
ブックマーク・評価、宜しくお願いします。
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!
ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。
ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!?
「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」
理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。
これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!
「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい
夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。
彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。
そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。
しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~
夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。
全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった!
ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。
一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。
落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる