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二病目「囚われ」
二病目「囚われ」
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約束の日曜日、待ち合わせ時間より少し早く来てしまった。適当に安いファストフード店で暇を潰す。休日だからか人が多い。あまり外食が好きではない為バニラ味のアイスシェイクだけ頼みそれを独りでボッーと飲み続ける。このアイスシェイクを飲んだのはいつぶりだろうか、それにお店には失礼だがたまにしか飲めないような高い代物でもなかった。
僕は「これ」を子供の頃に何回飲んだだろうか
アイスシェイクの美味さに独り感激していると近くの女子高生達が楽しげに話している。今の若い子は僕より背が高くて細いな。メシ食ってんのかなと思いながら悪いと思いつつ暇つぶしに彼女たちの会話にそっと耳を傾ける。
「今度推しのライブ行きたいのに親がダメとか言ってくんだよー?マジありえん!」
「あー、推しのVのライブ近いって言ってたもんね」
ああ、彼女たちはオタク系女子なのか。てっきり洋服がどうとかSNS映えとか承認欲求の塊って言うのか?可愛い私を見てって感じなのかと思った。ライブか、僕は行ったことないな。
チラリと彼女たちを見るとスマホを取り出し何やら画面を見せ合っている。
「夜血通りってソシャゲやってるって言ったじゃん?アレ課金ゲーに成り果ててつまらんくなった」
「あ、それ萎えるわー笑」
項垂れる少女に友達らしき少女が自分のスマホ画面を見せる。
「私は今これやってるー。『罪冬』ってアプリ。簡単に言うとAIに質問とかするアプリね。暇つぶしにいいよー、今なら無課金でもそこそこ遊べるし。」
「あー、そういうのって仕事とかで使うイメージしかなかったわー」
それからも少女達は楽しげにゲームやアニメ、Vライバーの話をしていた。自分には彼女たちの様に無邪気に笑える人生の選択肢があったのだろうかとふと考えてしまう。自分もスマホを確認し待ち合わせ時間10分前を表す9時20分を見つめる。
そろそろ行くか
席から立ち上がろうとしてあることが頭をよぎる。自分は今何の飾り付けもしていない素の自分だ。疲れた顔をして伸び放題の髪を適当に束ね、作業着代わりに着ているブカブカな白衣姿でここにいる。
(しくじったかな...)
チャットに登録した写真は自分を守る為のいわゆる強く見せる為に武装した姿だ。写真と全く違う姿で現れたら何か思われるだろうか?いや、出会い系ではあるまいし、そんなこと気にする必要はないはずだ。ただ、何故か彼には『僕』を見て欲しかった。上手く言葉に出来ないがちゃんと『僕』自身を見て欲しかった。
ーーーーーーーー
......なんかいる。
待ち合わせ時間に駅前に鎮座する謎のモニュメントの前に和服姿の長身の若い男がニコニコしながらと表現するのが1番正しいと思えるような表情で両腕を着物の袖の中に忍ばせるように入れ上品な佇まいで
『そこにいた』
声を掛けなければ...
少し緊張しつつゆっくり近付き螺燈らしき男に声を掛ける。自分は初対面の人間相手でも難なく話し掛けることに抵抗は無いが、やはりネットで知り合った得体の知れない、しかも男同士でも自分よりずっとデカい男に声を掛けるのは少し緊張する。
「あ、あの...」
螺燈らしき男の傍に寄り自然と見上げるような形で声を掛ける。男は自分を認識すると眼鏡の奥で細めていた目を開け少し面食らったような表情を見せた。
「凜々也...?」
...やはり螺燈だ......
僕が不安げに見上げていると螺燈はすぐに目を細めニコリとあの笑顔を見せこちらにゆっくりに近付き自然と見下ろすような形で低く柔らかい声で話しかけて来た。
「...写真と全然違うな。」
僕に会って初めての感想はやはりそれか。
「...マッチングアプリ使ってるヤツみたいなこと言うなよ」
僕は目を細めて螺燈を見上げる。
「素の僕は地味で驚いたか?」
不安と皮肉を織り交ぜて言ってやった。なのに彼は笑顔を崩さず余裕のようなものを見せてきてとんでもないことを言い放ってきた。
「んー、可愛いな。」
こ、このガキ腹立つな... 少し大人に軽口叩いて遊ぶようなことをしないように言っておこう。
「なぁキミ、僕より年下だよな?僕31だぞ?」
そう僕が言うといきなり螺燈が目を見開き僕の両肩を掴み顔を近づけて来た。
「年下はお前の方だ。俺は34だ。」
「え!?と、年上...」
疲れきった自分と違って若々しく気品やエネルギーに溢れているからもっと若者かと思っていたので螺燈からの告白には驚いてしまった。そんな僕の反応を楽しむように螺燈は僕の肩を抱き寄せ耳元で呪いの言葉を囁く。
「お前はオレのものだよ」
僕が呆気に取られていると螺燈が僕の手を引き歩き出す。
「今から俺の店に行こう」
「お、おい...」
なんなんだコイツは...
ーーーーーーーーーーー
駅前から少し離れた路地裏に落ち着いた雰囲気の二階建ての建物の前に連れて行かれた。別に何の変哲もない店だが、外観からは何屋なのかが分からない。
「気に入ってくれた?」
そう声を掛け僕を無理やり店内に押し込んできた。店内は薄暗く棚には何かの液体が入った小瓶やよく分からない置き物が陳列されていた。僕が物珍しそうに店内を見渡していると螺燈が後ろから声を掛けてきた。
「凜々也、風呂入ろうよ」
「...は?なんだよ急に...」
この男の謎過ぎる発言に困惑していると螺燈が「いいから」と僕を後ろからグイッと押してくる。
「お、おい...」
ーーーーーーーーーー
何故僕はこの男の言うことをホイホイ聞いているんだ?気付けば僕は店の奥の脱衣所でタオル1枚になっていた。解いた無造作な長髪がバサリと広がる。螺燈がニコニコとこちらを見ているので長い前髪の間から不機嫌そうに睨んでやった。
「なんだよ」
「...触りたい」
「キモイなキミ」
ーーーーーーーーーーー
こうして何故か初対面の男と一緒に風呂に入ることになった。これが裸の付き合いか?と思ったがなにかがチガウ...
「で...」
「なんか近くないか?」
螺燈は何故か僕を後ろから抱き締めるように一緒に浴槽に入っている。何してんだコイツ?
「なぁ、凜々也」
螺燈が耳元に唇を寄せる。
「お前、心がガキのままだよな」
......!
こ、コイツナニを...
速くなる鼓動を抑えつつ冷静でいようと心掛ける。
「心がガキのお前が独りで生きていけるわけない。俺が全部お前のことを管理してやる、守ってやる」
に、逃げないと... じゃないとまた『玩具』にされる...
「聞いて、凜々也」
...ニゲナイト...
「『愛してるよ』凜々也」
...信じられないものを聞いた。そんなもの、アニメやドラマでしか聞かない言葉のハズ...
「え...」
『僕』にとっては有り得ない場面に思わず振り返る。
風呂に入る為に眼鏡を外していたので射抜くような目が真っ直ぐ自分と見つめている。
「『愛してるよ』凜々也。もう離さない。」
「な...」
...怖い。怖い、こんな非現実的で恐ろしいことがあってたまるものか。
「な、んで、僕なんか...」
螺燈から視線を逸らし自分に強く刻まれた言葉の数々のひとつが頭をよぎる。
『あんたなんて二度と顔も見たくない!』
もうハッキリ顔も思い出せない中年女性の影がチラつき吐きそうになる。今すぐここから消えてしまいたい...
身体の力が抜け螺燈の胸にもたれかかるように縋る。
「凜々也、大丈夫?」
遠くで螺燈が僕の名前を呼んでいる。
こんな僕でも
愛してくれるひとがいたのか......
僕は逃げるように意識を手放した。
ニ病目 オワリ
僕は「これ」を子供の頃に何回飲んだだろうか
アイスシェイクの美味さに独り感激していると近くの女子高生達が楽しげに話している。今の若い子は僕より背が高くて細いな。メシ食ってんのかなと思いながら悪いと思いつつ暇つぶしに彼女たちの会話にそっと耳を傾ける。
「今度推しのライブ行きたいのに親がダメとか言ってくんだよー?マジありえん!」
「あー、推しのVのライブ近いって言ってたもんね」
ああ、彼女たちはオタク系女子なのか。てっきり洋服がどうとかSNS映えとか承認欲求の塊って言うのか?可愛い私を見てって感じなのかと思った。ライブか、僕は行ったことないな。
チラリと彼女たちを見るとスマホを取り出し何やら画面を見せ合っている。
「夜血通りってソシャゲやってるって言ったじゃん?アレ課金ゲーに成り果ててつまらんくなった」
「あ、それ萎えるわー笑」
項垂れる少女に友達らしき少女が自分のスマホ画面を見せる。
「私は今これやってるー。『罪冬』ってアプリ。簡単に言うとAIに質問とかするアプリね。暇つぶしにいいよー、今なら無課金でもそこそこ遊べるし。」
「あー、そういうのって仕事とかで使うイメージしかなかったわー」
それからも少女達は楽しげにゲームやアニメ、Vライバーの話をしていた。自分には彼女たちの様に無邪気に笑える人生の選択肢があったのだろうかとふと考えてしまう。自分もスマホを確認し待ち合わせ時間10分前を表す9時20分を見つめる。
そろそろ行くか
席から立ち上がろうとしてあることが頭をよぎる。自分は今何の飾り付けもしていない素の自分だ。疲れた顔をして伸び放題の髪を適当に束ね、作業着代わりに着ているブカブカな白衣姿でここにいる。
(しくじったかな...)
チャットに登録した写真は自分を守る為のいわゆる強く見せる為に武装した姿だ。写真と全く違う姿で現れたら何か思われるだろうか?いや、出会い系ではあるまいし、そんなこと気にする必要はないはずだ。ただ、何故か彼には『僕』を見て欲しかった。上手く言葉に出来ないがちゃんと『僕』自身を見て欲しかった。
ーーーーーーーー
......なんかいる。
待ち合わせ時間に駅前に鎮座する謎のモニュメントの前に和服姿の長身の若い男がニコニコしながらと表現するのが1番正しいと思えるような表情で両腕を着物の袖の中に忍ばせるように入れ上品な佇まいで
『そこにいた』
声を掛けなければ...
少し緊張しつつゆっくり近付き螺燈らしき男に声を掛ける。自分は初対面の人間相手でも難なく話し掛けることに抵抗は無いが、やはりネットで知り合った得体の知れない、しかも男同士でも自分よりずっとデカい男に声を掛けるのは少し緊張する。
「あ、あの...」
螺燈らしき男の傍に寄り自然と見上げるような形で声を掛ける。男は自分を認識すると眼鏡の奥で細めていた目を開け少し面食らったような表情を見せた。
「凜々也...?」
...やはり螺燈だ......
僕が不安げに見上げていると螺燈はすぐに目を細めニコリとあの笑顔を見せこちらにゆっくりに近付き自然と見下ろすような形で低く柔らかい声で話しかけて来た。
「...写真と全然違うな。」
僕に会って初めての感想はやはりそれか。
「...マッチングアプリ使ってるヤツみたいなこと言うなよ」
僕は目を細めて螺燈を見上げる。
「素の僕は地味で驚いたか?」
不安と皮肉を織り交ぜて言ってやった。なのに彼は笑顔を崩さず余裕のようなものを見せてきてとんでもないことを言い放ってきた。
「んー、可愛いな。」
こ、このガキ腹立つな... 少し大人に軽口叩いて遊ぶようなことをしないように言っておこう。
「なぁキミ、僕より年下だよな?僕31だぞ?」
そう僕が言うといきなり螺燈が目を見開き僕の両肩を掴み顔を近づけて来た。
「年下はお前の方だ。俺は34だ。」
「え!?と、年上...」
疲れきった自分と違って若々しく気品やエネルギーに溢れているからもっと若者かと思っていたので螺燈からの告白には驚いてしまった。そんな僕の反応を楽しむように螺燈は僕の肩を抱き寄せ耳元で呪いの言葉を囁く。
「お前はオレのものだよ」
僕が呆気に取られていると螺燈が僕の手を引き歩き出す。
「今から俺の店に行こう」
「お、おい...」
なんなんだコイツは...
ーーーーーーーーーーー
駅前から少し離れた路地裏に落ち着いた雰囲気の二階建ての建物の前に連れて行かれた。別に何の変哲もない店だが、外観からは何屋なのかが分からない。
「気に入ってくれた?」
そう声を掛け僕を無理やり店内に押し込んできた。店内は薄暗く棚には何かの液体が入った小瓶やよく分からない置き物が陳列されていた。僕が物珍しそうに店内を見渡していると螺燈が後ろから声を掛けてきた。
「凜々也、風呂入ろうよ」
「...は?なんだよ急に...」
この男の謎過ぎる発言に困惑していると螺燈が「いいから」と僕を後ろからグイッと押してくる。
「お、おい...」
ーーーーーーーーーー
何故僕はこの男の言うことをホイホイ聞いているんだ?気付けば僕は店の奥の脱衣所でタオル1枚になっていた。解いた無造作な長髪がバサリと広がる。螺燈がニコニコとこちらを見ているので長い前髪の間から不機嫌そうに睨んでやった。
「なんだよ」
「...触りたい」
「キモイなキミ」
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こうして何故か初対面の男と一緒に風呂に入ることになった。これが裸の付き合いか?と思ったがなにかがチガウ...
「で...」
「なんか近くないか?」
螺燈は何故か僕を後ろから抱き締めるように一緒に浴槽に入っている。何してんだコイツ?
「なぁ、凜々也」
螺燈が耳元に唇を寄せる。
「お前、心がガキのままだよな」
......!
こ、コイツナニを...
速くなる鼓動を抑えつつ冷静でいようと心掛ける。
「心がガキのお前が独りで生きていけるわけない。俺が全部お前のことを管理してやる、守ってやる」
に、逃げないと... じゃないとまた『玩具』にされる...
「聞いて、凜々也」
...ニゲナイト...
「『愛してるよ』凜々也」
...信じられないものを聞いた。そんなもの、アニメやドラマでしか聞かない言葉のハズ...
「え...」
『僕』にとっては有り得ない場面に思わず振り返る。
風呂に入る為に眼鏡を外していたので射抜くような目が真っ直ぐ自分と見つめている。
「『愛してるよ』凜々也。もう離さない。」
「な...」
...怖い。怖い、こんな非現実的で恐ろしいことがあってたまるものか。
「な、んで、僕なんか...」
螺燈から視線を逸らし自分に強く刻まれた言葉の数々のひとつが頭をよぎる。
『あんたなんて二度と顔も見たくない!』
もうハッキリ顔も思い出せない中年女性の影がチラつき吐きそうになる。今すぐここから消えてしまいたい...
身体の力が抜け螺燈の胸にもたれかかるように縋る。
「凜々也、大丈夫?」
遠くで螺燈が僕の名前を呼んでいる。
こんな僕でも
愛してくれるひとがいたのか......
僕は逃げるように意識を手放した。
ニ病目 オワリ
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