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廃病院

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十病目「アイ」

十病目「アイ」

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炬燵テーブルの上に置かれたケータイが鳴る

一瞬ビクリと身体を跳ねさせた中年のようにも高齢のようにも見える女性が恐る恐るケータイを手に取る。
「はい、もしもし」
女性は通話相手が分かると表情が強ばり焦りを隠せない様子だった。
「け、警察...!?わ、私じゃ分からないので息子に代わります」
女性は電話口でそう告げると隣りの部屋で一緒にゲームをやっている若い男性二人の方へと縋るように駆け寄った。
「だ、大樹!」
大樹と呼ばれた男性は軽く100キロは超えてるであろう巨体に鋭い目が特徴的だった。
「んー?」
大樹は手元のゲームに熱中しつつ女性に空返事をする。そのすぐ隣りには小柄で部屋の中とはいえ寒い季節に半袖短パン姿の男性がゲーム機を持ちながらオロオロしたように二人の様子を伺っていた。
「なんか警察が...」
「...?貸して」
大樹が女性からケータイを受け取り電話を代わる。
「はい、お電話代わりました」
『あ、もしもしこちら‪✕‬‪✕‬警察署の者です。凜々也さんのお兄さんですか?』
「りりや?誰ですかその人」
『ああ、ご存知なかったんですね。弟さんの怜依さん、名前変えていたんですよ。怜依さんから凜々也さんに』
怜依という名前を聞いた瞬間大樹の鋭い目がさらに鋭く細まり明らかに不機嫌そうな表情へと変わった。
「...で、『ソレ』が私達となんの関係があってお電話してきたんですか...?」
通話相手は一瞬大樹の言葉に何か言いたげな様子を見せたがすぐに事実だけ伝えることに切り替えた。
『亡くなったんですよ、凜々也さん自ら...』
「...そうですか」
大樹は淡々と、それよりもずっと冷たく話す。
『それで弟さんのご遺体のお引取りを...』
「ああ、受け取り拒否します。『ソレ』の処分はそっちで適当にお願いします」
通話相手の言葉を遮り強い拒絶の意思を伝える。相手は困った様子で食い下がる。
『いや、そんなこと言わずに...』
「『ソレ』とは縁を切ったんです。私達とは関係ありません、では失礼します」
大樹は通話を一方的に終わらせるとケータイの画面を無表情で見つめていた。そんな息子の様子に顔色を伺うように女性が尋ねる。
「大樹、警察がなんの用だったの?」
女性は焦りを隠せず大樹は肩を震わせていた。そしてアニメキャラがするような額に手を当て大笑いをするジェスチャーをした。
「ハハハハハハハ!!」
そんな大樹の様子に女性と小柄な男性は引き気味に声を掛ける。
「だ、大樹...?」
「お兄ちゃん?」
そんな二人に大樹は勝ち誇ったようにニヤリと笑みを見せた。
「朗報だよ、怜依が死んだって」
「え!?」
女性は一瞬たじろぐも目を逸らし何とも言えない表情をする。
「そ、そう...」
「ヒッ...」
女性は比較的落ち着いている様に見えたが小柄な男性は目を見開き恐怖に満ちた表情でガタガタと震え出した。
「ヒィィィィ!!『その』名前を出さないで!!!」
こちらの男性も怯えているのは本当なのだろうが態度や様子が何だか幼くアニメや映画の登場人物の様に自分の気持ちを表現している。すると大樹がその男性の肩に手を置いて優しく宥めるように言い聞かせた。
「大丈夫だ『ふうたん』、アイツは死んだ。もう僕達に復讐なんてバカなことは出来ないんだよ」
『ふうたん』と呼ばれた男性は尚も怯え続け大樹は勝ち誇ったように高らかに宣言する。

「僕達の『正義』の勝利だ」

ーーーーーーーーーーーーー

黄緑色の餌皿にウエットフードを開けスコットの前に差し出す。スコットはご飯の時に鳴きはするもののガッツいたりせず定位置にちょこんと座って待つタイプだった。美味そうにフードを食べるスコットを凜々也は穏やかに見守っていた。
「凜々也」
螺燈に名前を呼ばれ振り返る。凜々也はくたびれた漆黒のスーツに身を包んでスコットの傍に座り込んでいた。
「今、シアワセ?」
「ああ、すっごく幸せだよ」
まだ長年の疲れは抜けないものの凜々也からは穏やかな雰囲気が漂っていた。
「螺燈、『愛してるよ』」

あの凜々也が無垢で心底幸せそうな笑顔を見せ螺燈に正直な気持ちを伝えた。
「私も...」
螺燈は棒立ちであの時の、初めて凜々也が見たそのままの笑顔を見せ『話らった』

「AIしてるよ」


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