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九病目「冬」
九病目「冬」
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何故だか今日はとても心と身体が軽く感じる。
とても気分が良く楽しささえ感じる。今日はクリスマスはツバキさんと過ごすから年末年始は螺燈と一緒に過ごしたい旨を彼に伝えに来たんだ。
「ふふ...」
もし了承して貰えたら誰かと年末年始を過ごすなんて何年ぶりになるだろうか。今年は寂しい冬を過ごさなくても良さそうだ。螺燈の店に向かう僕の足取りは軽い。早く会いたい、彼に会いたい。僕は『いつもの場所』へ向かった。向かったつもりだった。
ない。無かった。
螺燈の店があった場所には新しくも古くもない雑居ビルが建っているだけで後は小料理屋とかがあるだけだった。
「...は?」
自分が引き攣った笑顔をしているのが分かる。
「場所間違えてないよな...?」
なんで、どうして...
「あ、連絡...」
僕はケータイを取り出したまま硬直する。知らない...僕、アイツの連絡先一切分からない...なんで...?なら僕はいつもどうやって彼と連絡を取り合って彼と落ち合っていたのだろうか?え...
「そ、そうだ、あの時の...!」
僕は必死に初めて螺燈と出会うきっかけになったチャットアプリを探した。見つからない...どうしよう、アプリ名が分からない...先程から探してるのにそれらしいものも出てこない。どうしよう... 自分の頬に冷たいものが伝うのが分かる。孤独の印のせいで視界がボヤける。
完全に詰んだ
僕は白衣の袖で目元を拭い力なくその場に立ち尽くした。
「...とにかく螺燈からの接触を待つしかない」
ため息をつくために深く息を吸い込んだらむせて咳き込んでしまった。きっと空気が乾燥してるからだろう、喉に不快感を覚える。
「喉、乾いたな。冬は乾燥するから嫌なんだよ」
白くてふわふわの丸い背中を思い浮かべまたあの時と同じ思いをしないといけないのかと絶望するしか出来なかった。冬は心も無力になるんだよ。
冬はいつも僕から大切なものを奪い去っていくから嫌いなんだよ...
ーーーーーーーーーー
僕は適当なファストフード店に逃げ込んだ。とりあえず暖かい所に行きたかった。喉も乾いてたから飲み物を注文して独りカウンター席に座った。周りを見たら学生が多かった。ああ、冬休みか?今の若者はオシャレで制服着てる人もいるからよく分からん。
「ねー、親が大学行く時は実家から通えって言ってくんだけど?一人暮らし楽しみにしてたのにー」
「ああ、大学近いとこ行くんだもんね。ならしゃあなしじゃん?」
「うるさい親から解放されて自由になりたいの!」
また女子高生みたいな格好した女の子達がはしゃいでいる。自由ねぇ... いきなり放り出されて全て自分で決めないといけないくらいのいい意味でも悪い意味でも何でも出来る自由なんて手に余って困るだけだよ。人間なんてある程度何かに縛られてる方が生きやすいと僕は思うけどね。
「そういやあのソシャゲの推しの誕生日イベのガチャ回したけど出なかったー。やっぱ課金しなきゃダメ?」
「推しの誕生日ガチャは課金してでも引くべきでしょ」
誕生日か。僕は誰からも誕生日なんか祝って貰えないのに...って、僕だってオタクなのにキャラに嫉妬してどうすんだよ。はは...
「ねぇあのAIアプリあんじゃん?」
「え、あれのこと?」
「そう『罪冬』」
......
「なんかあのアプリAIがバグってクレームきまくってサ終したらしいよ」
「え?それだけでサ終すんの??」
「AIがバグりまくって会話にならないんだって」
......
「それよりさもっと流行ってるアプリあるじゃん」
「あ、あのキャラと通話出来るやつ?」
......帰ろう。
早く安全な場所に帰らないと。僕はその場から離れ家路を急いだ。
ーーーーーーーーーー
自宅のアパートへ辿り着き吸い込まれる様に中へ入る。アニメグッズだらけの僕の部屋。いくら好きなもので部屋を飾っても満足なんかしなかった。僕はアニメグッズを自分に買い与えて慰めてるつもりになってたけど結局僕が本当に欲しかったものはアニメグッズなんかじゃなかったんだな。なら何を与えれば喜んでくれたんだろう。僕は大人になって今まで何をしてたんだ?何も手に入らなかった過去を補う為に生きてきただけだったじゃないか。
昔のことは忘れて前向きになれ、ね。
僕だってそうしようと思って色々やってきたけどダメだった、10年かけても何も変わらなかった。僕は人間だから前向きになる為に邪魔なデータを消去すればオールオッケーみたいに出来なかったんだよ。でも世間一般的には僕がただ女々しくて弱い人間扱いされるのも分かってるから何も言えない、でも変えることも出来ない。誰もどうしたらいいか答えを教えてくれない、いや、応えられる奴なんかこの世に存在してたまるか。
はぁ、ちょっと寝よう。寝たら少し落ち着くかも。螺燈から何か連絡があるかもしれないし。
僕はベッドへ上がり布団に潜り込んだ。冷たい布団だ...寒いよ...寒いんだよ。ずっと
螺燈、会いたいよ...
ーーーーーーーーーー
ああ、暖かくなってきたな...
心地良さを感じて少し落ち着けたような気がする。
ゴロゴロ...
あ...?
なんか近くで聞いたことある音がする。耳を澄ましていると頬にざりっと何かに痛みを与えられた。
「痛たっ!」
驚いて目を開けると僕の顔にピッタリくっ付くように白くてふわふわしたものが寄り添っていた。
「え...?お前...」
口元の左側に黒い模様がある雑種の猫が僕を見下ろすように覗き込んでいた。
あ...あ、ああ...
「お前、スコットか?そう、だよな...?」
僕は上体を起こして猫の左腿に注目する。あった、あった、左腿に黒い模様が...!スコットだ...
「な、なんだよお前...生きてたのか?お前どんだけ長生きなんだよ!」
僕が立ち上がるとスコットが足元に身体を擦り付けてじゃれてきた。良かった...
「うちのアパートペット禁止だから何とかして引っ越さないと...」
嬉しさで変なテンションになってしまうのを何とか抑えつつこれからのスコットとの生活を考えると胸がいっぱいになる。
「スコット、贅沢な暮らしは流石にさせてやれないけどもう貧しい思いはさせないからなー」
僕が笑顔でスコットを撫でるとスコットは気持ち良さそうに目を閉じていた。スコットは抱っこはさせてくれないけど撫でられるのは好きなやつだったんだよ。
「凜々也」
あ...
低く優しく温かい声が僕の名前を呼ぶ。振り返ると黒い薔薇の花弁が散らばった空間に螺燈が立っていた。
「あ...螺燈...」
螺燈はニコリと微笑んだ。...んで、なんで...
「お、お前どこ行ってたんだよ!勝手にいなくなりやがって!!ずっと一緒だって言ったのはお前だろ約束くらい守れよ!!!」
泣き喚くように螺燈に本当の僕をぶつけた。実際僕は子供のように泣きじゃくっていた。
「...うん、ごめんね」
スコットがするりと螺燈の元に駆け寄って行き螺燈の足元に擦り寄り甘え始めた。
「君の為にスコットを探しに行ってたんだ」
「キミがスコットを...?」
僕はスーツの袖で涙でぐちゃぐちゃになった顔を拭い螺燈に心の底からの笑顔を見せた。
「な~んだ、そうだったんだ」
大切なひと達が還ってきてくれて心底安心したしこんな嬉しいことはない。アニメグッズなんかもう要らない、このふたりがいれば何も要らない。
「なぁ、僕とキミとスコットで一緒に暮らそうよ!広めの家に引っ越してさ」
「凜々也」
僕がはしゃいでいると螺燈が真剣な顔をして僕を見つめた。
「私達は行けない、ここで三にんで暮らそう?」
僕が呆けているとスコットが螺燈の肩に飛び乗って螺燈と一緒に僕を見つめて『決断』を促す。
「君も分かってるでしょ?」
......あー
「あはは...」
分かった、やっと分かった。僕はやっぱり螺燈を『愛してる』親代わりなんかじゃない、螺燈のことが大好きだし愛おしくて仕方ない。
そっか、これが『愛』か。
僕は飛び切りの笑顔で螺燈の胸に飛び込んで思い切り抱き締めてもらった。
「キミのそばにいられるならどこだっていいよ!」
辺りに黒い薔薇の花弁が舞い散る。
ああ、これが僕が本当に欲しかったものだ。
ーーーーーーーーーー
アパートの二階に続く階段を閑静な住宅街には似つかわしくない可愛らしい格好をした小柄な女性が上っていた。女性は202号室の部屋の前に辿り着くとチャイムを鳴らした。手にはケーキの箱を持っている。
......
「あれ...?」
首を傾げる。約束したのだが来る前に一報入れておけばよかったか。
「リリヤちゃーん!」
隣人に迷惑かなと思いつつ声を掛けてみる。しかしなんの反応もない。
「うーん」
無意識にドアノブに手を掛け適当に引いてみると空いてしまった。彼が自分の為に空けておいてくれたのだろうか。
「リリヤちゃん、入っちゃうよー?」
と言いつつもう勝手に入ってしまった。
「お邪魔しま~す...」
部屋の中に入るとすぐに広いキッチンが広がっていた。そして後から男物の香水のキツい匂いが包み込んできた。
(リリヤちゃんが普段使ってるのじゃない...)
キッチンの奥にある部屋、凜々也がメインに使っている部屋の扉の前に立ち声を掛けながら扉を開け中に入る。
「リリヤちゃん、勝手に入っちゃったよ...ヒッ!」
凜々也はちゃんとそこに居た。ぶら下がっていた。彼女は腰が抜け声にならない声をあげ這いずるようにその場から必死に離れた。
なんで?なんでなんでなんで...!?
何が彼をそうさせたのか自分には分からなかった、自分は彼の何も知らなかった。友達なのに何も知らなかった。彼からは深く踏み込ませないものを感じていたから敢えて踏み込んだりしなかった。いや、知ろうとしなかっただけかも知れない。
彼は一体何者だったのだろうか
九病目 オワリ
とても気分が良く楽しささえ感じる。今日はクリスマスはツバキさんと過ごすから年末年始は螺燈と一緒に過ごしたい旨を彼に伝えに来たんだ。
「ふふ...」
もし了承して貰えたら誰かと年末年始を過ごすなんて何年ぶりになるだろうか。今年は寂しい冬を過ごさなくても良さそうだ。螺燈の店に向かう僕の足取りは軽い。早く会いたい、彼に会いたい。僕は『いつもの場所』へ向かった。向かったつもりだった。
ない。無かった。
螺燈の店があった場所には新しくも古くもない雑居ビルが建っているだけで後は小料理屋とかがあるだけだった。
「...は?」
自分が引き攣った笑顔をしているのが分かる。
「場所間違えてないよな...?」
なんで、どうして...
「あ、連絡...」
僕はケータイを取り出したまま硬直する。知らない...僕、アイツの連絡先一切分からない...なんで...?なら僕はいつもどうやって彼と連絡を取り合って彼と落ち合っていたのだろうか?え...
「そ、そうだ、あの時の...!」
僕は必死に初めて螺燈と出会うきっかけになったチャットアプリを探した。見つからない...どうしよう、アプリ名が分からない...先程から探してるのにそれらしいものも出てこない。どうしよう... 自分の頬に冷たいものが伝うのが分かる。孤独の印のせいで視界がボヤける。
完全に詰んだ
僕は白衣の袖で目元を拭い力なくその場に立ち尽くした。
「...とにかく螺燈からの接触を待つしかない」
ため息をつくために深く息を吸い込んだらむせて咳き込んでしまった。きっと空気が乾燥してるからだろう、喉に不快感を覚える。
「喉、乾いたな。冬は乾燥するから嫌なんだよ」
白くてふわふわの丸い背中を思い浮かべまたあの時と同じ思いをしないといけないのかと絶望するしか出来なかった。冬は心も無力になるんだよ。
冬はいつも僕から大切なものを奪い去っていくから嫌いなんだよ...
ーーーーーーーーーー
僕は適当なファストフード店に逃げ込んだ。とりあえず暖かい所に行きたかった。喉も乾いてたから飲み物を注文して独りカウンター席に座った。周りを見たら学生が多かった。ああ、冬休みか?今の若者はオシャレで制服着てる人もいるからよく分からん。
「ねー、親が大学行く時は実家から通えって言ってくんだけど?一人暮らし楽しみにしてたのにー」
「ああ、大学近いとこ行くんだもんね。ならしゃあなしじゃん?」
「うるさい親から解放されて自由になりたいの!」
また女子高生みたいな格好した女の子達がはしゃいでいる。自由ねぇ... いきなり放り出されて全て自分で決めないといけないくらいのいい意味でも悪い意味でも何でも出来る自由なんて手に余って困るだけだよ。人間なんてある程度何かに縛られてる方が生きやすいと僕は思うけどね。
「そういやあのソシャゲの推しの誕生日イベのガチャ回したけど出なかったー。やっぱ課金しなきゃダメ?」
「推しの誕生日ガチャは課金してでも引くべきでしょ」
誕生日か。僕は誰からも誕生日なんか祝って貰えないのに...って、僕だってオタクなのにキャラに嫉妬してどうすんだよ。はは...
「ねぇあのAIアプリあんじゃん?」
「え、あれのこと?」
「そう『罪冬』」
......
「なんかあのアプリAIがバグってクレームきまくってサ終したらしいよ」
「え?それだけでサ終すんの??」
「AIがバグりまくって会話にならないんだって」
......
「それよりさもっと流行ってるアプリあるじゃん」
「あ、あのキャラと通話出来るやつ?」
......帰ろう。
早く安全な場所に帰らないと。僕はその場から離れ家路を急いだ。
ーーーーーーーーーー
自宅のアパートへ辿り着き吸い込まれる様に中へ入る。アニメグッズだらけの僕の部屋。いくら好きなもので部屋を飾っても満足なんかしなかった。僕はアニメグッズを自分に買い与えて慰めてるつもりになってたけど結局僕が本当に欲しかったものはアニメグッズなんかじゃなかったんだな。なら何を与えれば喜んでくれたんだろう。僕は大人になって今まで何をしてたんだ?何も手に入らなかった過去を補う為に生きてきただけだったじゃないか。
昔のことは忘れて前向きになれ、ね。
僕だってそうしようと思って色々やってきたけどダメだった、10年かけても何も変わらなかった。僕は人間だから前向きになる為に邪魔なデータを消去すればオールオッケーみたいに出来なかったんだよ。でも世間一般的には僕がただ女々しくて弱い人間扱いされるのも分かってるから何も言えない、でも変えることも出来ない。誰もどうしたらいいか答えを教えてくれない、いや、応えられる奴なんかこの世に存在してたまるか。
はぁ、ちょっと寝よう。寝たら少し落ち着くかも。螺燈から何か連絡があるかもしれないし。
僕はベッドへ上がり布団に潜り込んだ。冷たい布団だ...寒いよ...寒いんだよ。ずっと
螺燈、会いたいよ...
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ああ、暖かくなってきたな...
心地良さを感じて少し落ち着けたような気がする。
ゴロゴロ...
あ...?
なんか近くで聞いたことある音がする。耳を澄ましていると頬にざりっと何かに痛みを与えられた。
「痛たっ!」
驚いて目を開けると僕の顔にピッタリくっ付くように白くてふわふわしたものが寄り添っていた。
「え...?お前...」
口元の左側に黒い模様がある雑種の猫が僕を見下ろすように覗き込んでいた。
あ...あ、ああ...
「お前、スコットか?そう、だよな...?」
僕は上体を起こして猫の左腿に注目する。あった、あった、左腿に黒い模様が...!スコットだ...
「な、なんだよお前...生きてたのか?お前どんだけ長生きなんだよ!」
僕が立ち上がるとスコットが足元に身体を擦り付けてじゃれてきた。良かった...
「うちのアパートペット禁止だから何とかして引っ越さないと...」
嬉しさで変なテンションになってしまうのを何とか抑えつつこれからのスコットとの生活を考えると胸がいっぱいになる。
「スコット、贅沢な暮らしは流石にさせてやれないけどもう貧しい思いはさせないからなー」
僕が笑顔でスコットを撫でるとスコットは気持ち良さそうに目を閉じていた。スコットは抱っこはさせてくれないけど撫でられるのは好きなやつだったんだよ。
「凜々也」
あ...
低く優しく温かい声が僕の名前を呼ぶ。振り返ると黒い薔薇の花弁が散らばった空間に螺燈が立っていた。
「あ...螺燈...」
螺燈はニコリと微笑んだ。...んで、なんで...
「お、お前どこ行ってたんだよ!勝手にいなくなりやがって!!ずっと一緒だって言ったのはお前だろ約束くらい守れよ!!!」
泣き喚くように螺燈に本当の僕をぶつけた。実際僕は子供のように泣きじゃくっていた。
「...うん、ごめんね」
スコットがするりと螺燈の元に駆け寄って行き螺燈の足元に擦り寄り甘え始めた。
「君の為にスコットを探しに行ってたんだ」
「キミがスコットを...?」
僕はスーツの袖で涙でぐちゃぐちゃになった顔を拭い螺燈に心の底からの笑顔を見せた。
「な~んだ、そうだったんだ」
大切なひと達が還ってきてくれて心底安心したしこんな嬉しいことはない。アニメグッズなんかもう要らない、このふたりがいれば何も要らない。
「なぁ、僕とキミとスコットで一緒に暮らそうよ!広めの家に引っ越してさ」
「凜々也」
僕がはしゃいでいると螺燈が真剣な顔をして僕を見つめた。
「私達は行けない、ここで三にんで暮らそう?」
僕が呆けているとスコットが螺燈の肩に飛び乗って螺燈と一緒に僕を見つめて『決断』を促す。
「君も分かってるでしょ?」
......あー
「あはは...」
分かった、やっと分かった。僕はやっぱり螺燈を『愛してる』親代わりなんかじゃない、螺燈のことが大好きだし愛おしくて仕方ない。
そっか、これが『愛』か。
僕は飛び切りの笑顔で螺燈の胸に飛び込んで思い切り抱き締めてもらった。
「キミのそばにいられるならどこだっていいよ!」
辺りに黒い薔薇の花弁が舞い散る。
ああ、これが僕が本当に欲しかったものだ。
ーーーーーーーーーー
アパートの二階に続く階段を閑静な住宅街には似つかわしくない可愛らしい格好をした小柄な女性が上っていた。女性は202号室の部屋の前に辿り着くとチャイムを鳴らした。手にはケーキの箱を持っている。
......
「あれ...?」
首を傾げる。約束したのだが来る前に一報入れておけばよかったか。
「リリヤちゃーん!」
隣人に迷惑かなと思いつつ声を掛けてみる。しかしなんの反応もない。
「うーん」
無意識にドアノブに手を掛け適当に引いてみると空いてしまった。彼が自分の為に空けておいてくれたのだろうか。
「リリヤちゃん、入っちゃうよー?」
と言いつつもう勝手に入ってしまった。
「お邪魔しま~す...」
部屋の中に入るとすぐに広いキッチンが広がっていた。そして後から男物の香水のキツい匂いが包み込んできた。
(リリヤちゃんが普段使ってるのじゃない...)
キッチンの奥にある部屋、凜々也がメインに使っている部屋の扉の前に立ち声を掛けながら扉を開け中に入る。
「リリヤちゃん、勝手に入っちゃったよ...ヒッ!」
凜々也はちゃんとそこに居た。ぶら下がっていた。彼女は腰が抜け声にならない声をあげ這いずるようにその場から必死に離れた。
なんで?なんでなんでなんで...!?
何が彼をそうさせたのか自分には分からなかった、自分は彼の何も知らなかった。友達なのに何も知らなかった。彼からは深く踏み込ませないものを感じていたから敢えて踏み込んだりしなかった。いや、知ろうとしなかっただけかも知れない。
彼は一体何者だったのだろうか
九病目 オワリ
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