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束の間のお金

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「ひゃくさんじゅうまんえん!?」

 ごほん。

 あー。あー。落ち着けオレ。

 きっとオレのろくでもない耳と脳みそが聞き間違えただけさ。

「悪い、ちょっと聞き取れなかったからもういちど言ってくれる? 宝石、いくらだったって?」

「だーかーらー。ブルーダイヤモンドモンドが128万円で、サファイアが2万円。わたしたちこれが原石だと思ってたけど、ルースっていう状態の石だったみたい。ブルーダイヤモンドは最高の色なんだけど、形が悪いのとサイズが小さすぎてカットが難しいからその値段らしいわ」

 へ、へーそうなんだ。

 クリスが吐いた石が、2つで130万円……ねえ。

「で、とりあえずさっきのは買い取って貰ったんだけど、もしまた手に入れるツテがあるならぜひ売ってほしいって言われたわ」

「え? 形とか悪かったのにか? 営業トークなんじゃないの?」

「それがね。ブルーダイヤモンドは10万分の1の出会いって言われるくらいとても貴重なんですって。それに小さくてもカットできれば問題はないから、とりあえず見せにきて欲しいんだってさ」

 へ、へー、そうなんだ。

 やばい、語彙力が無くなったきた。

 宝石とか無縁だったから詳しい価値とか分からないけど、あんな小さな石がそんな値段が付くなんてびっくりだよ。

 なんなら、オレには河原で水切り10回達成した平たい石のほうが価値あるくらいなんだけどね。

 サファイアはこっちも色は最高らしいんだけどやっぱり大きさと形があまり良くないということで2万円ね。

 充分でしょ、それで。

「それでね。もしクリスちゃんがまた宝石を出したとしても、あまり頻繁に売りに行くのはさすがにまずいと思うの」

 あー、それはそうだよね。

 現在、定職なしのギグワーカーのオレや学生のサエちゃんが宝石を頻繁に売りに行ったら怪しすぎるよね。

 まず間違いなく犯罪とか疑われたそうだし、出どころを追及されたりもするかもしれない。

 それに、いくらだったか忘れたけどある程度以上の金額で売却する時は身分証を提示して、店側は記録を保管しておく義務があったはずだよな。

 そんな仕組みがある以上、他の店に売るというのも考えものかもしれない。

 考えすぎかもしれないけど、考えないで痛い目にあったり面倒に巻き込まれるよりはずっといいか。

「あ、でも異世界で売るのは?」

「それもやめたほうがいいと思うわ。エリシャさんのパーティーでたーくんの顔は多少なりとも売れたし、面倒や危険という意味ではあっちのほうがずっと危ないと思うから」

 ですよねー。

 やっぱりそう楽してお金は手に入らないか。

 んー。だめだ、いい手が思い浮かばん。

「サエちゃん、2時間ばかり配達の仕事行ってくるからクリス任せていい?」

「うん。気を付けて行ってらっしゃい」

 原付に跨がってエンジンをかける。ブルルンという振動が心地いい。

 秋が近くなったのか、風もいくらか涼しくなってきた。

 かき氷もそろそろ季節は終わりかな。
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