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第3話
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――売られるんだ。
その建物を見て考えたのはそんなことだった。
確かにこんな貧相な身体になんて面白みはないし、上手く彼の要望に応えられるかどうかもわからない。私に稼ぐ方法を任せたうえで不確実な返済の約束をするよりも、ここに売った方が彼の実入りとなるだろうことは確かだ。運良く私はまだなにも知らない身体だから、こういう場所ならば生娘というだけで多少の価値がつくかもしれなかった。
「売るんだ」
そんな私の言葉には一切答えずにんまりと笑った男は、慣れた様子で建物に足を踏み入れる。すぐに楼主らしき色気のある中年の女性が出てきて「あら束宵様、ご無沙汰しております」と丁寧に頭を下げた。その態度からすると、男はここの常連のようだ。しかも、かなりの上客扱いにみえる。
「久し振りだね。早速だけど、この子よろしく」
男は笑顔で私の背中を押して楼主に押し付ける。臭いだろう私が近付いても、上客の彼が連れてきた娘に対して嫌な顔ひとつしない楼主は綺麗な笑みを貼り付けたまま
「……この娘は、束宵様の……?」
と質問を投げかける。二人はどのような関係か、と問うているのだろう。私のような明らかに貧民街の娘と金持ちなのだろう彼の人生が交わる機会などほぼない。考えうる限りで一番ありそうなのは、私が彼の財布を盗もうとして捕まったというようなものだ。いくらなんでも犯罪者を雇うわけにもいかないのだろうから、警戒するのも当然のことだった。
しかし男は笑顔のまま、彼女の質問には答えずに小さく首を傾げるばかりだ。
「出来る? 出来ない? それだけ答えて」
ぴくっと小さく反応した楼主は、幾人かの姐さんたちを呼ぶと私を奥に連れて行かせる。
なにをやらされるのかと警戒していた私は、抵抗空しくそこに居た姐さんたちに服を剥ぎ取られ風呂に突っ込まれ、普段水で濡らした布切れで拭くくらいしかしていないような身体をゴシゴシと磨き上げられて、髪は三度洗いされて油で手入れされた。煤で汚れていた髪は何段階も明るい色になって、初めて見る清潔な髪は燃えるような赤い色をしていた。
髪を乾かしたあとは椅子に座るよう指示された。それから生まれてはじめての化粧をされて、慣れない化粧が粉っぽくて咳が出そうになる。皮膚が強張った感じがしてとても不快だ。でも、着飾らなければこういう店では働けない。
爪まで髪と同じような鮮やかな赤に塗られ、身動き取れないでいるうちに触ったことすらない上等な着物を着せられていた。周囲の姐さんたちが着ているものよりも露出が少ないのは、貧相な身体を目立たせなくするためかもしれない。それとも、束宵の好みに合わせたのだろうか。見慣れた自分とはあまりに違っている姿に驚いている暇もなく、再び束宵の前に出された。
「お待たせ致しました」
主に化粧を担当してくれた姐さんが、扉を開けて声を掛ける。
「お。」
私を見て目を丸くした束宵は、柔らかそうな長椅子に寝転んでいた。
ついてきてくれるのかと思いきや、姐さんは頭を下げてさがってしまう。部屋にふたりきりにされた私は急に居心地が悪くなり、着物を握って入り口近くに立ち尽くした。
部屋の中に姐さんたちはいないし、女がつけていそうな香の匂いも残っていない。机の上にも水菓子とお茶しか置いていないから、誰かと遊んでいたわけではなく、ここで一人、私の準備が終わるのを待っていたようだった。
彼はゆっくり起き上がると、こちらに近付いてきた。
「な、なによ」
怯えて威嚇する私は、爪のような装飾品で顎を持ち上げられ息を止める。じぃっと私を見た束宵は、満足そうな顔になった。
「思っていた以上の出来じゃないか。可愛い」
「それは、どうも」
「じゃあ、行こうか」
気安い態度で私の肩を抱くと、彼はあっさりと部屋を出ていこうとする。
「え?」
「え?」
てっきりここに売られるのだと思っていた私は、素直に驚く。
「売られたんじゃないの?」
「誰が?」
「私が」
「どこに?」
「ここに」
私の疑問に首を傾げた彼は「売るつもりなんてないけど」と言う。
ならば、一体どうしてここに来たのだろう。まさか、ただ私を清潔にさせて着飾らせるためでもあるまいし、なにか下心があるはずだと思うのだけど、彼がなにを考えているのかはわからない。
「……売るんじゃなかったら、やっぱり、その、するんでしょ?」
「……??」
私の問いに、束宵は怪訝そうな顔で首を傾げた。
「なにを?」
「え、だからその、お金払えないから、その代わりに」
「うん。だから、次の場所に行くよ」
ここではしないということか、それとも連れてきた女を抱くために部屋を貸してはもらえなかったのか。ただ着替えさせるのに妓楼を使っただけとは考えにくいのだけど。
戸惑う私の前で楼主の手に10玄銭を何枚も乗せた彼は
「またよろしく」
と軽く手を振った。
――ちょ……それ、私が一生で稼げるかどうかってお金……!
全く高額とは思っていない様子に唖然とする。一体、どれくらいの金持ちなのだろう、この男。
「次は是非遊んでいかれてくださいまし。麗香や雅琴も束宵様のお越しを心待ちにしておりますので」
品良く、そして艶やかに微笑んでしなを作った楼主に、束宵は目を細めた。
「はいはい、気が向いたらね」
子汚い娘を着飾らせるだけで何十玄銭も手に入れられるなら、姐さんたちだって働くより楽でありがたいのでは? なんて思うけど、私とは違う価値観で生きているのだろうから、そういう簡単な話ではないのかもしれない。
妓楼を出ればまた牛車に押し込まれる。その中で彼はじっと私を見るだけでなにも言ってこなかった。それがあまりに不気味で仕方がない。金色の瞳が暗闇で妖しげに光っているようにも思えた。
「あの」
「うん?」
「どこに向かってるの?」
問えばにこりと笑った束宵は「内緒」と唇に立てた指を当てた。
そのうち、徐々に周囲が騒がしくなってきて、美味しそうな匂いが漂ってきだした。外が気になるが、窓には簾が下げられていて見ることはできない。そわそわと窓を眺めていると、牛車が止まった。
「ついたよ」
牛車の戸が開いた瞬間、嗅いだことがないような良い匂いが鼻腔を満たす。それに刺激されて、ぐぅっとおなかが鳴る。
「っ!!」
「っ、ははっ」
束宵は私の手を引いてまた立派な門構えの店に入っていく。
どう見ても、私みたいな身分のものが足を踏み入れていいような店ではない。足元はふかふかな敷物でおぼつかない。慣れない服も足に纏わりついてきて転びそうになる。
「わっ」
「お、っと」
転ぶ、と思った瞬間に抱き上げられ、束宵の整った顔が近くなる。どきっとする私に彼はからかうような笑みを作った。
「おなか空きすぎてもう歩けない?」
「そうじゃなくて、この服ひらひらしてて歩き難……」
「そっかそっか。じゃあこのまま部屋まで行こ」
「聞いてる?」
「こちらにどうぞ」
一番奥の個室に通されると、そこには既に、豪華な料理が山のように並んでいた。
ごくりと喉が鳴る。
口の中が涎でいっぱいになる。
夢のような光景に言葉が出ない。
硬直した私を眺めた 束宵は
「好きなの食べて良いよ」
と卓の上を撫でるように腕を動かす。
「っ、本当?!」
「オレ、これ全部食べられるほどの大食いじゃないからね」
どうぞ召し上がれ、と言われたものの、私はどれにも手を出せずにいた。あまりにも品数が多くて迷ってしまっただけではなく、束宵の膝に乗せられているというのが一番の理由だった。
「あの、ごはん食べたいから、降ろして……」
「ここで食べればいい」
「食べられないよ!」
「なんで」
「落ち着かないし、その」
自慢ではないが、私は育ちが良くない。こんなちゃんとした食器を用意されても、使い方がわからないし、上手に食べられはしない。ボロボロとこぼしてしまうことは予想できて、結果的に彼の上質な服を汚してしまうことも想像できた。
「ああ、わかった。そういうことか」
束宵は蒸籠から小さな饅頭をつまむと、はい、と私の前に差し出した。
「な、なに?」
「食べさせてほしいんだろ?」
え、違う、と言いかけた口に饅頭が押し込まれる。柔らかくてほんのりと甘い皮の中から、お肉が出てくる。歯応えのある野菜も混ぜられているらしい肉餡は、汁がたっぷりでまったく臭くない。
「っ!!!!!」
「っ、ははは!」
言葉もなく悶絶した私を見て彼は笑い出す。それから、次から次へと料理を取っては私の口に運んでくれる。じっくりと煮られたのだろう肉は、油と汁がてらてらと輝いていて、歯がいらないくらい柔らかい。食べたことのない野菜に果物。甘い甘い香りを漂わせているお菓子。
どれもが見たことのない料理ばかりで、ここはまさに夢の世界だった。
その建物を見て考えたのはそんなことだった。
確かにこんな貧相な身体になんて面白みはないし、上手く彼の要望に応えられるかどうかもわからない。私に稼ぐ方法を任せたうえで不確実な返済の約束をするよりも、ここに売った方が彼の実入りとなるだろうことは確かだ。運良く私はまだなにも知らない身体だから、こういう場所ならば生娘というだけで多少の価値がつくかもしれなかった。
「売るんだ」
そんな私の言葉には一切答えずにんまりと笑った男は、慣れた様子で建物に足を踏み入れる。すぐに楼主らしき色気のある中年の女性が出てきて「あら束宵様、ご無沙汰しております」と丁寧に頭を下げた。その態度からすると、男はここの常連のようだ。しかも、かなりの上客扱いにみえる。
「久し振りだね。早速だけど、この子よろしく」
男は笑顔で私の背中を押して楼主に押し付ける。臭いだろう私が近付いても、上客の彼が連れてきた娘に対して嫌な顔ひとつしない楼主は綺麗な笑みを貼り付けたまま
「……この娘は、束宵様の……?」
と質問を投げかける。二人はどのような関係か、と問うているのだろう。私のような明らかに貧民街の娘と金持ちなのだろう彼の人生が交わる機会などほぼない。考えうる限りで一番ありそうなのは、私が彼の財布を盗もうとして捕まったというようなものだ。いくらなんでも犯罪者を雇うわけにもいかないのだろうから、警戒するのも当然のことだった。
しかし男は笑顔のまま、彼女の質問には答えずに小さく首を傾げるばかりだ。
「出来る? 出来ない? それだけ答えて」
ぴくっと小さく反応した楼主は、幾人かの姐さんたちを呼ぶと私を奥に連れて行かせる。
なにをやらされるのかと警戒していた私は、抵抗空しくそこに居た姐さんたちに服を剥ぎ取られ風呂に突っ込まれ、普段水で濡らした布切れで拭くくらいしかしていないような身体をゴシゴシと磨き上げられて、髪は三度洗いされて油で手入れされた。煤で汚れていた髪は何段階も明るい色になって、初めて見る清潔な髪は燃えるような赤い色をしていた。
髪を乾かしたあとは椅子に座るよう指示された。それから生まれてはじめての化粧をされて、慣れない化粧が粉っぽくて咳が出そうになる。皮膚が強張った感じがしてとても不快だ。でも、着飾らなければこういう店では働けない。
爪まで髪と同じような鮮やかな赤に塗られ、身動き取れないでいるうちに触ったことすらない上等な着物を着せられていた。周囲の姐さんたちが着ているものよりも露出が少ないのは、貧相な身体を目立たせなくするためかもしれない。それとも、束宵の好みに合わせたのだろうか。見慣れた自分とはあまりに違っている姿に驚いている暇もなく、再び束宵の前に出された。
「お待たせ致しました」
主に化粧を担当してくれた姐さんが、扉を開けて声を掛ける。
「お。」
私を見て目を丸くした束宵は、柔らかそうな長椅子に寝転んでいた。
ついてきてくれるのかと思いきや、姐さんは頭を下げてさがってしまう。部屋にふたりきりにされた私は急に居心地が悪くなり、着物を握って入り口近くに立ち尽くした。
部屋の中に姐さんたちはいないし、女がつけていそうな香の匂いも残っていない。机の上にも水菓子とお茶しか置いていないから、誰かと遊んでいたわけではなく、ここで一人、私の準備が終わるのを待っていたようだった。
彼はゆっくり起き上がると、こちらに近付いてきた。
「な、なによ」
怯えて威嚇する私は、爪のような装飾品で顎を持ち上げられ息を止める。じぃっと私を見た束宵は、満足そうな顔になった。
「思っていた以上の出来じゃないか。可愛い」
「それは、どうも」
「じゃあ、行こうか」
気安い態度で私の肩を抱くと、彼はあっさりと部屋を出ていこうとする。
「え?」
「え?」
てっきりここに売られるのだと思っていた私は、素直に驚く。
「売られたんじゃないの?」
「誰が?」
「私が」
「どこに?」
「ここに」
私の疑問に首を傾げた彼は「売るつもりなんてないけど」と言う。
ならば、一体どうしてここに来たのだろう。まさか、ただ私を清潔にさせて着飾らせるためでもあるまいし、なにか下心があるはずだと思うのだけど、彼がなにを考えているのかはわからない。
「……売るんじゃなかったら、やっぱり、その、するんでしょ?」
「……??」
私の問いに、束宵は怪訝そうな顔で首を傾げた。
「なにを?」
「え、だからその、お金払えないから、その代わりに」
「うん。だから、次の場所に行くよ」
ここではしないということか、それとも連れてきた女を抱くために部屋を貸してはもらえなかったのか。ただ着替えさせるのに妓楼を使っただけとは考えにくいのだけど。
戸惑う私の前で楼主の手に10玄銭を何枚も乗せた彼は
「またよろしく」
と軽く手を振った。
――ちょ……それ、私が一生で稼げるかどうかってお金……!
全く高額とは思っていない様子に唖然とする。一体、どれくらいの金持ちなのだろう、この男。
「次は是非遊んでいかれてくださいまし。麗香や雅琴も束宵様のお越しを心待ちにしておりますので」
品良く、そして艶やかに微笑んでしなを作った楼主に、束宵は目を細めた。
「はいはい、気が向いたらね」
子汚い娘を着飾らせるだけで何十玄銭も手に入れられるなら、姐さんたちだって働くより楽でありがたいのでは? なんて思うけど、私とは違う価値観で生きているのだろうから、そういう簡単な話ではないのかもしれない。
妓楼を出ればまた牛車に押し込まれる。その中で彼はじっと私を見るだけでなにも言ってこなかった。それがあまりに不気味で仕方がない。金色の瞳が暗闇で妖しげに光っているようにも思えた。
「あの」
「うん?」
「どこに向かってるの?」
問えばにこりと笑った束宵は「内緒」と唇に立てた指を当てた。
そのうち、徐々に周囲が騒がしくなってきて、美味しそうな匂いが漂ってきだした。外が気になるが、窓には簾が下げられていて見ることはできない。そわそわと窓を眺めていると、牛車が止まった。
「ついたよ」
牛車の戸が開いた瞬間、嗅いだことがないような良い匂いが鼻腔を満たす。それに刺激されて、ぐぅっとおなかが鳴る。
「っ!!」
「っ、ははっ」
束宵は私の手を引いてまた立派な門構えの店に入っていく。
どう見ても、私みたいな身分のものが足を踏み入れていいような店ではない。足元はふかふかな敷物でおぼつかない。慣れない服も足に纏わりついてきて転びそうになる。
「わっ」
「お、っと」
転ぶ、と思った瞬間に抱き上げられ、束宵の整った顔が近くなる。どきっとする私に彼はからかうような笑みを作った。
「おなか空きすぎてもう歩けない?」
「そうじゃなくて、この服ひらひらしてて歩き難……」
「そっかそっか。じゃあこのまま部屋まで行こ」
「聞いてる?」
「こちらにどうぞ」
一番奥の個室に通されると、そこには既に、豪華な料理が山のように並んでいた。
ごくりと喉が鳴る。
口の中が涎でいっぱいになる。
夢のような光景に言葉が出ない。
硬直した私を眺めた 束宵は
「好きなの食べて良いよ」
と卓の上を撫でるように腕を動かす。
「っ、本当?!」
「オレ、これ全部食べられるほどの大食いじゃないからね」
どうぞ召し上がれ、と言われたものの、私はどれにも手を出せずにいた。あまりにも品数が多くて迷ってしまっただけではなく、束宵の膝に乗せられているというのが一番の理由だった。
「あの、ごはん食べたいから、降ろして……」
「ここで食べればいい」
「食べられないよ!」
「なんで」
「落ち着かないし、その」
自慢ではないが、私は育ちが良くない。こんなちゃんとした食器を用意されても、使い方がわからないし、上手に食べられはしない。ボロボロとこぼしてしまうことは予想できて、結果的に彼の上質な服を汚してしまうことも想像できた。
「ああ、わかった。そういうことか」
束宵は蒸籠から小さな饅頭をつまむと、はい、と私の前に差し出した。
「な、なに?」
「食べさせてほしいんだろ?」
え、違う、と言いかけた口に饅頭が押し込まれる。柔らかくてほんのりと甘い皮の中から、お肉が出てくる。歯応えのある野菜も混ぜられているらしい肉餡は、汁がたっぷりでまったく臭くない。
「っ!!!!!」
「っ、ははは!」
言葉もなく悶絶した私を見て彼は笑い出す。それから、次から次へと料理を取っては私の口に運んでくれる。じっくりと煮られたのだろう肉は、油と汁がてらてらと輝いていて、歯がいらないくらい柔らかい。食べたことのない野菜に果物。甘い甘い香りを漂わせているお菓子。
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