22 / 24
2度目のご依頼
しおりを挟む
「あの…どうして今井様が昨夜のことを…?」
僕は不審げに顔を顰めながら尋ねた。
「葵の部屋に忘れ物を取りに行ったら上裸な上、ご機嫌だったから何があったのか問い詰めたら狸塚さんを無理やり襲ったって言うから居ても立っても居られなくて思わず来ちゃったわ。正直、別れた私には関係のないことだけれど、楽しそうな葵を久々に見たら気になって仕方がなかったの。」
なんだかよく分からないけれど、葵さんを問い質したみたい。
正直まだ腰やお尻は痛いけれど、そこまで気にしてない。そんな風に思いながらチラリと葵さんを見ると、申し訳なさそうに眉を下げていた。
「昨日はごめん。」
「いえ、気にしてませんよ。」
「それはそれで複雑……」
葵さんがポツリと何か呟いた。
「何か言いました?」
コテンと首を傾げると、真剣な顔をして両手僕の手を葵さんの大きな手で包まれた。
「葵さん?」
「俺、瑠衣くんのこと本気だよ。」
「は、はいっ」
突然の告白にピシッと背筋が伸びて、声が裏返る。
「出会って一日も経ってないけど、こんなにも惹かれたのは初めてだよ。」
「はいっ」
「瑠衣くんは俺のこと本気じゃないみたいだし俺は本気になって貰えるように頑張る。」
チュッと可愛い音を立てて頬にキスをすると葵さんはニコリと爽やかに微笑んで、『さぁ席へ案内して?』と言った。
「え…な、何故ですか?」
返って頂きたいのですが…。葵さんがいるとなんだか変にドキドキして集中できない。
「ん?君への依頼だよ。」
「っあ、なるほどです!でしたらこちらへどうぞ。」
パーテーションで作られた簡易個室へ案内して、葵さんが座ったのを確認すると、僕も椅子「腰掛けた。
「それでは、本日はどのようご依頼ですか?」
僕はペン立てからボールペンを取り出して、白紙も用意した。
「デートの依頼」
やっぱり。葵さんは僕のことは遊びなんだ。分かっていたことだけれど、何故か針で刺されたように胸がチクリと痛んだ。
「か、かしこまりました。…差し支えなければお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
ジッと葵さんを見詰めると、葵さんはニコニコと楽しそうにしながら言った。
「御子柴 葵」
みこしば…柴犬からか、柴がつくと可愛く見えるのは僕だけ?
「今年23歳。しがない社会人です。」
しがないってそんなことはないと思う。
こんな僕のことを好きだって言ってくれて、昨夜だって大切にしてくれた。
でも多分、人間達の言う、“せふれ” というものだと思う。だって葵さんはこれから誰かとデートする。その人がきっと本命なんだと思う。
チクチクと胸の奥が痛むけれど、こんな素晴らしい人と一夜を共にできたんだ。それで満足しなきゃ。
僕は気持ちを押し殺してニコリと微笑んだ。
「お相手のお名前や住所をお伺いしてもよろしいですか?」
声が震える。聞くのが怖い。聞きたくない。でもお仕事だからーー……
だんだんと目の前がぼやけ滲んで、鼻がぐじゃぐじゃいいだした。
僕は泣かない。泣くともっと迷惑かけちゃうから。
僕は不審げに顔を顰めながら尋ねた。
「葵の部屋に忘れ物を取りに行ったら上裸な上、ご機嫌だったから何があったのか問い詰めたら狸塚さんを無理やり襲ったって言うから居ても立っても居られなくて思わず来ちゃったわ。正直、別れた私には関係のないことだけれど、楽しそうな葵を久々に見たら気になって仕方がなかったの。」
なんだかよく分からないけれど、葵さんを問い質したみたい。
正直まだ腰やお尻は痛いけれど、そこまで気にしてない。そんな風に思いながらチラリと葵さんを見ると、申し訳なさそうに眉を下げていた。
「昨日はごめん。」
「いえ、気にしてませんよ。」
「それはそれで複雑……」
葵さんがポツリと何か呟いた。
「何か言いました?」
コテンと首を傾げると、真剣な顔をして両手僕の手を葵さんの大きな手で包まれた。
「葵さん?」
「俺、瑠衣くんのこと本気だよ。」
「は、はいっ」
突然の告白にピシッと背筋が伸びて、声が裏返る。
「出会って一日も経ってないけど、こんなにも惹かれたのは初めてだよ。」
「はいっ」
「瑠衣くんは俺のこと本気じゃないみたいだし俺は本気になって貰えるように頑張る。」
チュッと可愛い音を立てて頬にキスをすると葵さんはニコリと爽やかに微笑んで、『さぁ席へ案内して?』と言った。
「え…な、何故ですか?」
返って頂きたいのですが…。葵さんがいるとなんだか変にドキドキして集中できない。
「ん?君への依頼だよ。」
「っあ、なるほどです!でしたらこちらへどうぞ。」
パーテーションで作られた簡易個室へ案内して、葵さんが座ったのを確認すると、僕も椅子「腰掛けた。
「それでは、本日はどのようご依頼ですか?」
僕はペン立てからボールペンを取り出して、白紙も用意した。
「デートの依頼」
やっぱり。葵さんは僕のことは遊びなんだ。分かっていたことだけれど、何故か針で刺されたように胸がチクリと痛んだ。
「か、かしこまりました。…差し支えなければお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
ジッと葵さんを見詰めると、葵さんはニコニコと楽しそうにしながら言った。
「御子柴 葵」
みこしば…柴犬からか、柴がつくと可愛く見えるのは僕だけ?
「今年23歳。しがない社会人です。」
しがないってそんなことはないと思う。
こんな僕のことを好きだって言ってくれて、昨夜だって大切にしてくれた。
でも多分、人間達の言う、“せふれ” というものだと思う。だって葵さんはこれから誰かとデートする。その人がきっと本命なんだと思う。
チクチクと胸の奥が痛むけれど、こんな素晴らしい人と一夜を共にできたんだ。それで満足しなきゃ。
僕は気持ちを押し殺してニコリと微笑んだ。
「お相手のお名前や住所をお伺いしてもよろしいですか?」
声が震える。聞くのが怖い。聞きたくない。でもお仕事だからーー……
だんだんと目の前がぼやけ滲んで、鼻がぐじゃぐじゃいいだした。
僕は泣かない。泣くともっと迷惑かけちゃうから。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ふたなり治験棟
ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。
男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる