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水市 宇和香

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 夏休み。
 クーラーをガンガンに効かせた部室で、僕、霜月先輩、五代先輩の三人は膝を突き合わせている。
 今日は新バンドの会議、第一回目なのだ。
「で、何のバンドをコピーするかっつー話だけど」
 五代先輩の台詞を霜月先輩が引き継ぐ。
「ABCのときと同じドリームシアター、ってわけにはいかないね」
「ああ。なんつってもドラムが下手くそだからな」
「……す、すみません」
 そう、いくら仲良くなったとはいえ、僕は庄司先輩の足元にも及ばないくらい下手っぴで、なぜバンドを組んでもらえたのか不思議なくらいなのだ。申しわけないなあ……頑張らなくちゃ。
「何かやりたいのある?」
 と聞かれても、最近音楽を聞き始めた僕は何も答えられない。一番よく聞くのはドリームシアターだし。
「邦楽は嫌だね。歌詞に共感できねーとやる気なくすからな。あとギター激しいやつやらせろよ」
「僕もベースラインが面白い曲がしたいな。だけど、ベースとギターが派手でドラムがやりやすいバンドって……ある?」
「思いつかねぇな」
 うーん、と考えこむ二人。僕も一応、ウォークマンに入ってる曲をいくつか思い出す。そして、ふと考えた。
「あの、ボーカルって誰がやるんですか?」
 沈黙。
「スリーピースだとギタボっていうのが一般的だよねぇ?」
 ニコニコニコニコ。あれ? 霜月先輩から圧を感じる。
「ベーボでもいいだろ!」
「僕、そういうの向いてないんだ」
「俺だってボーカルなんてやりたくねぇよ! だいたい、あんなもん目立ちたがり屋のバカしかやんねえだろ!」
(えっ、そんなことないと……思うけど……)
 ABCの美輪先輩、すっごくかっこよかったし。
 でも、反論しなかったところを見る限り、霜月先輩も同意見みたい。かといって僕もドラムしながらボーカルをやる自信はないし……何よりボーカルみたいに目立つパートは苦手だ。あれ、もしかして、このままじゃバンド解散?!
 ずーん。せっかくバンドを組んでもらえることになったのに、始動前に解散だなんて。ショックで、重い石が両肩と頭と太ももに乗っかっているみたいだ。
 ついうつむいていたら、五代先輩に膝で足をつつかれた。
「下向いてんなよ」
「……はい」
「そうだよ、要は歌わなくていいものをすればいいんだから。インストなんてどう?」
「あ、いいなそれ」
  (インスト?)
 聞き慣れない単語だ。ハテナマークを浮かべていたら、霜月先輩が「歌のない曲だよ」って教えてくれた。へえ! そんなジャンルがあるんだ!
 目を丸くしてたら、五代先輩のとんでも発言。
「つーか、だったらいっそのことオリジナルにしねぇ? そっちのが好き勝手やれるし」
(えええ?! そんなプロみたいなことするの?!)
 でも霜月先輩は乗り気だ。「セッションしながら作ろうか」なんて言ってる。ってことは、僕も曲作りに参加するってわけで……ええっ、で、できるかな?!
 楽しみ三割、不安七割ってかんじだ。
 だけど、方向性が決まったおかげでバンド解散はなくなった。先輩たちとやれるんだ!
 ってわけで、さっそく音合わせをしてみることになった。先輩たちと合わせるのは初めてで緊張するっ! ドラムの位置から見える二人の後ろ姿は、本当に大きくて。心臓がドキドキする。
 胸を押さえていたら、アンプにギターをつなげ終わった五代先輩が振り返った。
「おまえ、四小節ずっと同じとこしか叩いてなかったら犯すからな」
「えっ」
「それいいね」
「……えっ?!」
 霜月先輩まで!
 先輩たちっていつもこんなスパルタな練習してるの?!
 結局動揺しちゃって大失敗。その日はずっと、二人からほっぺにキスをされまくってしまった。(それ以上はなんとか阻止したけど、これから先もこんな指導法だったら僕の身は持たないよっ)
 ……が、頑張って上達しろってことだよね。僕、頑張る!
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