悪役令嬢は、面倒事が大嫌い!

リカ

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目の見えない少女と従者

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その現場は血の匂いに満ち溢れていて、不自然な程に、小綺麗だと感じた。
ごくごく普通の死体なのだ。

エレインの婚約者様はどうやら、この部屋で殺された。彼の死体の下には彼の体より少しだけ大きい、血溜まりが出来ていた。
もちろん、当たり前のように顔は土気色で青白ささえもない。元はそれなりの美丈夫だったのだろうが今は死体としか見えなかった。


彼はこの部屋に重要な書き置きであるダイイングメッセージを書いていた。

壁についた血の跡が、床を辿って結果部屋の真ん中で死に至ったらしく、彼は仰向けで寝ていた。何度か血をつけ直しながら書いたその字に迷いはない。



『M』


そのメッセージにどんな意味が込められているのか。被害者が書いたにしろ、犯人の錯乱にしろこのMに重要な意味があることには違いないだろう。



「この血の量は、刺殺で間違いないかな」



レイは少しだけ青ざめながら、自分の考えを述べた。


「ええ、そうね。そこに落ちているナイフで多分間違いないと思うわ」


「Mね、誰かMのイニシャルが入っている人はいるかな。それとも役職だったりするか」


「メイド、それとも名前ね。どっちにせよ聞き込みは大切だけれど。」



「君には犯人が分かるかい?」



「いいえ、まだ全然。見当もつかないわ。けれど彼は間違いなくたくさんの恨みを買っていると思うの。」



「どうして?」


ジェシカはハンカチを出し、その上でナイフを拾った。想像していた以上に重かったが、ジェシカが振り回せないほどでもなく、男性だけの犯行とも言いきれなかった。


「このナイフは、普通の殺人じゃ選択しないほど大きいもの。だからこそ、確実に殺してやるという思考が読み取れるわ。大した意味はないけれど」


部屋の小窓から、光が漏れていて丁度死体の髪の毛を照らしていた。その金色は光を通して白色に染まっていて、エレインはこの髪の色を見た事も想像したこともないのだろうかと思う。
エレインの目は婚約者の髪の色さえ、見えない。エレインの思い出に髪の色さえ残していかず、そうして死んでいった彼は幸せだったのだろうか。
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