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目の見えない少女と従者
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「あの愚息は子供のころ、この屋敷でエレイン様にけがをさせてしまったのです」
ジェシカは少し考える素振りをしながら、人差し指を顎にあてた。
「エレインに怪我を?」
「えぇ、とんでもない事ですが。二人で遊んでいて、少しふざけていたのでしょう。二人で、遊ぶ事は結構な回数でありました。私の嫁が熱を出した時なんかは、屋敷の使用人部屋で面倒を見ていたりしていたので。旦那様が、お優しく、私が仕事をしているあいだは、娘と遊ばせていても大丈夫だろうと。けれど愚息が肩を押したのだと言っていました。エレイン様は華奢ですから、それだけで体のバランスを崩し、頭を打ち、それで……」
「それで、目が見えなくなってしまったのね?」
「そうです。あの時は、本当に、エレイン様も高熱を出し続け、私はこれから、どうすべきかと、そう思いながら、王都中の医者を探し回っておりました。特に目に詳しく、その道の医者です。その時はもちろん、この仕事を辞める覚悟も、牢に入る覚悟もして」
今でも思い出すと、辛いのだろう。カタカタと指先を震えさせて、顔の色は真白を通り越して真っ青だ。
「けれど、私達はこうして職を得たまま、ここで生活しております。それはエレイン様のおかげなのです」
「エレインの?」
「それは、医者を伴って家に着いた時です。旦那様と奥様が泣きながらエレイン様の手を握っておりました。高熱に浮かされながらエレイン様は息をするのもやっとなのに、小さな声で言ったのです」
『私が自分で勝手に転んだの。キルシュナーは悪くないわ。でもね、転んだ私を支えなかったキルシュナーが悪いのよ。だから、私にキルシュナーをちょうだい?』
「そう言って下さったのです。そのお言葉がなければ私も、家族もどうなっていたか。」
きっと、キルシュナー少年は自分で自分の罪を大人へ告白したのだろう。それを庇うようにエレインが庇ったと。けれど、罪をなくすことは出来ない。だからキルシュナー少年を自分にくれと言ったのか。なかなかに頭の回る子供だったらしい。
「それで、それからキルシュナーは」
「それからは、ずっとエレイン様の隣におります。子供ですが、それなりに要領のいい子供でして執事の仕事もできる範囲からやらせながらですが」
「それに対して婚約者はなんとも?」
「ええ、そうですね。御家族様の方も、特に異論はなく」
きっと、当主となる子供側に依存されるより執事に依存していた方がこの婚約が反故になった時や、嫁いだ後のことを考えるとよかったのだろう。
これが、貴族社会の嫌なところだ。すぐに人を切り捨てられる立場にあろうとする。
「伯爵家はどうだったの」
「ええ、夫妻はとても心の広い方で。エレイン様のお陰でもありますが。エレイン様がキルシュナーのエスコートしか受けないと言い張ると、それを受け入れてくださって。この子の言う通りにさせたいとそう言って下さいました。」
まあ、娘の言葉一つで、平民とはいえ人ひとりの人生を縛るのだまあそうかと納得した。
「ありがとう。コンバート、なかなかに有意義な時間だったわ」
「いいえ、お役に立てましたら幸いです」
コンバートの後ろ姿を見送りながら、さて次はメイドのメアリーかしら。わかりやすく、Mが入っているしとそう思いながら
ジェシカは少し考える素振りをしながら、人差し指を顎にあてた。
「エレインに怪我を?」
「えぇ、とんでもない事ですが。二人で遊んでいて、少しふざけていたのでしょう。二人で、遊ぶ事は結構な回数でありました。私の嫁が熱を出した時なんかは、屋敷の使用人部屋で面倒を見ていたりしていたので。旦那様が、お優しく、私が仕事をしているあいだは、娘と遊ばせていても大丈夫だろうと。けれど愚息が肩を押したのだと言っていました。エレイン様は華奢ですから、それだけで体のバランスを崩し、頭を打ち、それで……」
「それで、目が見えなくなってしまったのね?」
「そうです。あの時は、本当に、エレイン様も高熱を出し続け、私はこれから、どうすべきかと、そう思いながら、王都中の医者を探し回っておりました。特に目に詳しく、その道の医者です。その時はもちろん、この仕事を辞める覚悟も、牢に入る覚悟もして」
今でも思い出すと、辛いのだろう。カタカタと指先を震えさせて、顔の色は真白を通り越して真っ青だ。
「けれど、私達はこうして職を得たまま、ここで生活しております。それはエレイン様のおかげなのです」
「エレインの?」
「それは、医者を伴って家に着いた時です。旦那様と奥様が泣きながらエレイン様の手を握っておりました。高熱に浮かされながらエレイン様は息をするのもやっとなのに、小さな声で言ったのです」
『私が自分で勝手に転んだの。キルシュナーは悪くないわ。でもね、転んだ私を支えなかったキルシュナーが悪いのよ。だから、私にキルシュナーをちょうだい?』
「そう言って下さったのです。そのお言葉がなければ私も、家族もどうなっていたか。」
きっと、キルシュナー少年は自分で自分の罪を大人へ告白したのだろう。それを庇うようにエレインが庇ったと。けれど、罪をなくすことは出来ない。だからキルシュナー少年を自分にくれと言ったのか。なかなかに頭の回る子供だったらしい。
「それで、それからキルシュナーは」
「それからは、ずっとエレイン様の隣におります。子供ですが、それなりに要領のいい子供でして執事の仕事もできる範囲からやらせながらですが」
「それに対して婚約者はなんとも?」
「ええ、そうですね。御家族様の方も、特に異論はなく」
きっと、当主となる子供側に依存されるより執事に依存していた方がこの婚約が反故になった時や、嫁いだ後のことを考えるとよかったのだろう。
これが、貴族社会の嫌なところだ。すぐに人を切り捨てられる立場にあろうとする。
「伯爵家はどうだったの」
「ええ、夫妻はとても心の広い方で。エレイン様のお陰でもありますが。エレイン様がキルシュナーのエスコートしか受けないと言い張ると、それを受け入れてくださって。この子の言う通りにさせたいとそう言って下さいました。」
まあ、娘の言葉一つで、平民とはいえ人ひとりの人生を縛るのだまあそうかと納得した。
「ありがとう。コンバート、なかなかに有意義な時間だったわ」
「いいえ、お役に立てましたら幸いです」
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コメントありがとうございます(*^^*)
2話と3話の順番が入れ替わってるんですが……
ご指摘ありがとうございます!!
王太子は次代の王になることが決まっている王子のことですよ?
申し訳ない。
基本的な設定なのにも関わらず、情報収集を怠って、かつ自分の思い込みで書いてしまいました。