恋して王子様!

リカ

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先生×生徒

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私達は馬鹿に違いない。


私達はクズで、お互いを誰よりも理解してるくせに、お互いを見て見ぬ振りを装う。
見て見ぬふりをするのはクズの証拠だ。


「先生、スマートフォンって不思議ですよね」


2人だけの理科室はとても静かだった。科学で、8点と言う自分のベストを更新した私は、先生とマンツーマンでの補修を行っていた。平均点80点。不思議なことも起こるものだ。
山のように用意されたプリントを、解いていくのに飽きた私は、スマホ取り出し、いじりだす。


「ほら、お前はさっさとプリントを解け」

「ええ」


抗議の声をあげる。
スマホは、魔法のように、するりと、先生にとられてしまう。私はめげずに、先生に話しかけた。先生と話す時だけはプリントをしなくても良いような気がしたのだ。
 

「周期表、覚えたってさぁ、将来役に立つの?」

「そんなこと言ってるから、8点なんて、意味のわからない点数を取るんだろうが」


取り上げたスマホで、先生は、私は軽く叩いた。体罰だなんて泣き言に、先生は肩を落とした。きっと先生は知らないのだ、周期表を覚えられない人の気持ちも、覚えようとしない人の気持ちも。


「ねぇねぇ先生、どうして、スマホってさぁ指でタッチすると反応するの?」


今、気づいたことのような質問をする。私はただプリントをやりたくなかっただけ。先程の、先生のお叱りの言葉は全く忘れて、純粋な好奇心だけを、前面に出すように努める


「全くお前は」

 
そう言いつつ、律儀に、私なんかに懇切丁寧に説明なんてしてしまうから、いつまでたっても、プリントの山は減らないんだ。
先生は、教師になるのはもったいない位の名門大出身だ。そして、彼は最先端の技術の話をする時、口元をゆるませて少年が夢を語るような表情になる。きっと私だけが知っている。先生は教師になりたかったんじゃない、研究者になりたかったのだろう。それは、子供の頃の夢か、つい最近まで在籍していた大学院まで追っていた夢か。それは知らない。けれど、先生はまだ、その道に未練を残している。その系統の話をした後に、彼が魅せる憂いの目は、私だけが気づいていればいい。
 
「おい、ちゃんと聞いているのか?」


お前が質問したのだろう、と非難の目を向けてくる先生。話してる自分だって楽しんでたくせに


「聞いてるよお」


先生はきっと知ってる。私が先生に対して、どんな感情を抱いているのかも。そして、それが思春期特有の淡くて、はかない、脆い感情であることも。先生は見てみるふりをする。
私もずっと、気づかないふりをする。


「さあ、そろそろプリントの時間だ」

「はあい」


私はこれから、先生以外の知らない人を好きになって、そして結婚する。そしたら今の私は多分死んでしまうのだろう。
そして、また先生も、私以外の同い年ぐらいのお嬢さんと結婚するんだ。

先生が見て見ぬふりをしたこの感情を、私はなかったことになんかしてあげない。きっとそれが先生に対する最大の復讐なのだから。
私はプリントを書き始めるために、シャーペンを取る
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