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受験
しおりを挟む「ちゃんと、受験票は持った?」
『持ったよ』
「筆記用具は?時計もちゃんと持った?」
「大丈夫?寒くない?」
「カイロもうちょっといる?」
『大丈夫だよ、おばあ様』
「あ!手袋つけてないわね、今持ってくるわ。少し待ってて」
『だから大丈夫だってば』
はあ、と白い吐息を吐き出した。
防寒対策をしていない顔の皮膚が痛い。首に巻いているマフラーを少し上にあげた
今日は2月12日。受験当日だ。
ガラガラと音を立てながら、玄関の引き戸が開く。
「はいこれ、手袋」
「まぁ、さすが湊さん!今取りに行こうと思ってましたの」
『ありがとう、湊くん』
私は湊くんが持ってきてくれた手袋をつけた。
「そろそろ行こうか」
水流園さんが車の中から話しかけてきた。
試験会場までは水流園さんが送迎してくれることになっている。
「じゃあ、こはく頑張ってね」
「いってらっしゃいのハグする?」
『いや、それはいい。』
「あらあら、思春期?」
あー、どうしよう。さっきまでは、なんともなかったのに急に緊張してきた
緊張しすぎて気持ち悪い。
「こはくちゃんなら大丈夫だよ」
「頑張れ」
『うん』
湊くんが大丈夫って言うんだもん、絶対受かる。大丈夫。そう自分に言い聞かせた
『じゃあ、いってきます』
「いってらっしゃい」
湊くんと強めのハイタッチを交わし、私は車の後部座席に乗り込んだ。ドアが閉じる音と共に、車は静かに動き出した。
最初は、周りにはビルや様々な建物が立ち並んでいたが、徐々にそれらは姿を消し、車は山道に入り込んでいった。
『翠樹高専って山の中にあるんですね』
「あんまり人目につかないように山の中に建ててあるんだよね」
「見つかりにくいように色々術かけてるし結界も張ってるから森の中歩く時は迷わないように気をつけてね」
『私方向音痴だから絶対迷う…』
どんどん山道を進んでいく、目に飛び込んで来るのは深い緑の海。周囲に広がる自然の中で、息をのむほどの美しさに酔いしれる。
しばらく山道を進むと、これまでに見たことがないほど壮大な門が立ち現れた。
その門をくぐると、和風の優美な建物が数多く並ぶ光景が広がっていた。
『…凄い……』
そのまま車で4分くらい進むと、学校が見えてきた。正門には「翠樹高等専門学校」という看板が立てかけられていた。
車を学校にある駐車場に停めると、水流園さんは車を降りた私も後に続けて降りる。
『学校思ってたより、普通っていうかめっちゃ大きいし綺麗ですね』
「逆にどんな学校想像してたの?w」
「ここに来るまで少し古い建物が多かったので、学校も古めの建物なのかと」
周りを見渡すと私と同じく受験をするであろう子達がたくさんいた。
『すうぅ.........はぁぁー.....』
私は落ち着くために深呼吸をした。
「緊張してる?」
『はい、緊張しすぎて吐きそうです』
「そういう包み隠さずに言うとこ結構好きよ」
「大丈夫!絶対受かるから気楽に行きな」
「試験会場は昇降口に入って廊下を右に行って2番目の教室であるから」
「おーけー?」
昇降口入って、廊下を右、2番目の教室…
『覚えました』
「よしっ、頑張ってこい」
背中を軽めに押される。
『......いってきます...』
「はーい、また後で~♪」
私は足を踏み出し、昇降口に向かって歩き始めた。その瞬間、心臓の鼓動が速まり、身体中に緊張が走った。足音は静かで、空気は冷たい。
昇降口につくと履いていた靴を脱ぎ、指定の棚に靴を入れた。
『昇降口入って右......』
『あっ、やばい!』私は試験会場の場所をすっかり忘れてしまったことに気がついた。どこに行くべきか、頭の中が真っ白になってしまった。
『どうしよう、どうしよう』と焦りながら、私は水流園さんのところに戻って聞くことにした。一歩後ずさると、
「わっ」
後ろにいた人にぶつかってしまった。
『あっ、ごめんなさい!大丈夫ですか?』
振り向くと、そこにはベージュの髪に薄い緑色の瞳の女の子が立っていた
「いえ、私の方こそごめんなさい」
「ちょっと緊張してまして注意力が散漫になってました」
「私、日下結っていいます」
「よろしく」
女の子が右手を差し出した。
『月出こはくです、よろしくお願いします』
私は差し出された右手を握り返した。
女の子が嬉しそうに微笑む、私もつられて微笑んだ。
「こはくちゃんは試験会場何番目のところなの?」
『それが私忘れちゃって…』
「自分の受験番号わかる?それで何番目か分かるよ」
『えっと、68』
「へぇ、すごい偶然!私受験番号69なの」
「68なら私と同じ教室であるはず、良かったら一緒に行かない?」
『ありがとうございます!助かります!』
「敬語じゃなくて大丈夫だよ」
『ありがとう、結ちゃん』
結ちゃんはにっこりと微笑んだ。笑顔が多くて可愛い女の子だな。思った
「じゃあ、行こう」
廊下を右に曲がって、2番目の教室の前まで来ると結ちゃんは落ち着いた手つきでドアを開けた。
教室にいた人達が一斉に私たちを見る。その視線は私たちを刺すような鋭さを持っていた。
「受験番号は?」
教卓の前に立っている、気怠げな男の人が訊ねてきた。
「私は69隣の子は68です」
結ちゃんが答える
「そこの空いてる席に座れ、68の方が前ね」
私は前、その後ろに結ちゃんという順で席に着いた。
「あー全員揃ったんで」
「俺は中村春樹、歴史と詠唱について教えてます」
「ヨロシクね」
「で、えーとなんだっけ?あー、思い出した」
「皆さんは今回の試験、筆記試験と実技試験を2つすると聞かされていたと思いますが試験内容が変更されました」
「今回の試験、筆記試験が無くなり代わりに面接をすることになりました」
『え……』
「はぁー良かった。俺筆記試験自信なかったんだよねー」
「マジそれな、良かった」
「えー、俺面接の練習してないんだけど…」
様々な声や響きが遠く近くで交差し出した
「はい、静かにー」
「では、これより1次試験を開始します」
「皆さんには今からこれをしてもらいます。」
中村先生が、教卓の中から水晶玉を取り出し教卓の上に丁寧に置いた。
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