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「叫び」

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 何かがみんなと違うと思っていた。

 それはの子供の頃は気づかなかったけれど
 今ならわかる。


「容姿」


 私の学生時代はあまり楽しくない話であり
 とても悲惨だった。

 特に高校生になってからは友達が出来なかった。

 仲間はずれにされたり、通学する
 行きも帰りも独りだった。

 私は冴えない人間で内気だった。

 でも、少しでもこの垢抜けない
 自分を変えようと思い化粧を初めて見た。

 流行りの雑誌を買って
 見様見真似で挑戦した。

 少しでもお洒落になるために
 流行りの服を勉強した。

 学校で許される範囲のヘアアクセを
 身につけてみたり
 可愛い通学用バッグを探したり

 勉強なんてそっちのけで少しでも

「可愛くなる勉強をしていた」




 それでも学校では浮いていた。



 何がきっかけかも分からず
 仲間はずれにされたり
 昼食を一緒に食べる子がいなかった。

 独りで食べてる所を見られたくなくて
 噂されるのが怖くて
 どこで食べていいか分からず
 食べない日もあった。

 昼休みは私にとってまさに

「地獄」

 教室で独りで過ごしている姿を
 見られたくなくて
 昼休みは臭い女子トイレの個室にいた。

 チャイムが鳴るのがすごく長く感じた。

 毎日「早く帰りたい」これが私の中で
 いちばん記憶に残っている。

 下校時間が過ぎてもしばらくの間帰らなかった。

 独りで帰ってる姿を見られたくなかったから。



 クラス全体が少なくなってから
 靴箱からローファーを出し
 独りで寂しく遠回りの裏道から帰ったのを
 今でもよく覚えている。

 でもその裏道はカップルロードでも
 あったのだ。

 さすがに遅い時間だから誰もいないと思ったが
 同じ学年の人気者の女の子が彼氏と手を繋いで
 2人で帰ってるのを見て胸が苦しくなった。


 あまり見ないように俯いて反対車線の歩道で
 早歩きで追い抜かして急いで駅へ向かった。

 帰り道の道中
 どうしてあの子は男の子も女の子も
 集まるんだろう。
 何故いつも途切れず彼氏がいるのか?

 私は気づいてしまったのだ。

「可愛くないと誰にも必要とされない」

 人間一度はこの悩みにぶつかることが
 あると思う。

 私は学生時代にある一人の同級生の男の子に
 こんな言葉を言われたことがある。

「顔くせぇ」

 当時は私が無知だった為
 自分自身からなにか臭っているのか
 体臭に問題があるのかとても怖くなった。

 母に相談をした。
 母からかえってきた言葉は

「そんな言葉は忘れなさい」だった。

 私はその言葉がどうしても気になり
 どういう意味なのかと気になってしまった。

 そして後に知ったのが
 その男子生徒が言っていた言葉は遠回しに




「ブサイク」

 という意味だったと。




 私は心底傷ついた。今でもこの言葉は忘れない。

 どんなに時が経っても私の心の傷は癒えなかった。

 怪我をしたら体に傷ができるが時間と共に治る。


 だけど

 《心の傷は時が経っても治らない。》



 すごく辛かった。それでも頑張って通った。

 父と母が頑張って働いて用意してくれた
 制服と定期代に教科書やその他諸々を考えたら
 通うしかなかったがそれと同時に通う理由が
 一つだけあった。


 勉強も出来ない可愛くもない
 友達もいないこんな私でも
 学生時代に好きになった男性が2人がいた。

 そのうちの1人だけ話そう。

 同じクラスのT君という男子生徒がいた。
 背が高くて顔立ちも良く私に話をかけてくれて
 ちょっとした会話をした。彼は私に対して

「面白い子だね」

 と笑ってくれた。

 それが嬉しかった。


 私はその言葉に気を良くして少しずつ
 挨拶をしたり
 声をかけたりしたこともあった。

 ここまで読んでる方は私の事とても
 根暗な子だから意外だと思うだろう。


 こんな私でも勇気を出して
 コミュニケーションアプリにて告白をしたのだ。


 だが、返ってきたきた言葉は



「ごめん、他に好きな人がいるんだ。
 友達でいられたら嬉しいな」



 この言葉が来た時、私の頭は真っ白になった。

 次の日学校に行くのを躊躇した。



 だが両親には恥ずかしくて相談もできない。
 もちろん友達もいなかったので
 誰にも相談出来なかった。



 私は自分の心に秘めた。悲しみも閉じ込めた。

 足取りの重い中学校へ行った。



 T君も学校に登校していた。
 私は勇気をだしていつも通り彼に挨拶をした。


 挨拶を返してくれたT君は、いつもと違い
 どことなく気まずそうで苦笑いだった。



 その姿を見た時に

 《好きでもない人間から告白されて
 私は、迷惑な人間だから
 話しかけるべき存在では無い》 

 そう思った。


 そしてT君との思い出はその後
 作られることは無くなった。


 次のクラス替えまで気まずい
 毎日を過ごしたのが懐かしい。


 クラス替えをし何かが変わるかと思ったが
 運のいい子達ばかりなのか

 皆仲良し同士で
 クラスで一緒になっていた為
 相変わらず友達が出来なかった。


 季節は巡り修学旅行の時期が来た。



 もちろんの如く、修学旅行の
 組み合わせをしなきゃならない。



 そして私のあるひとつの計画があった。


「修学旅行には行かない」



 そう、父と母に伝えた。


 父と母は

「どんなに嫌でも
 学校の行事だから参加しなさい。」

 だったのだ。


 でも、私はこんな言葉を放った。




「私がもし修学旅行に行ったとしても
 絶対に楽しかったなんて言えない。」




「それに積立金がとんでもない額だって知ってる。自分が稼いだわけでもなく修学旅行から帰ってきた後、楽しくなかった。という言葉は言いたくない。」



 両親は唖然としていたが納得してくれたので
 人生初めてになるはずの「沖縄」には
 行かなかった。




 今でも私は「沖縄」には行けていない。
 本当に好きな人といつか行きたいと
 まだどこかで願っているから。



 私は修学旅行中の
 同学年の皆をSNSでこっそり見ていた。


 皆楽しそうな笑顔で写真を載せていた。
 思い出のような書き込みも見た。
 友人同士、彼氏彼女で記念写真。

 どうして皆こんなに楽しそうなんだろう。

 私は自分の部屋の窓越しに
 月を見ていた。

 同じ世界にいるのに全く別世界。

 私だけがたった独り。

 誰も私を見てくれない。私が修学旅行に
 参加してないことも気づいていないだろう。

 どうしようもないほど虚しくなった。

 そして憎かった。




 私はとうとう孤独に打ち勝てなくなり






 学校へ行けなくなった。

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