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第十六章 〇〇八三記念。題すると『ウメチカ日誌』
第八十三回 まず、プロローグから始めちゃうから。
しおりを挟む――では何故、日誌なのか?
このお部屋で、
例えるならね、物静かな場に於いて……我が書斎。そこで見るものは、宝石のように輝き放つあの日の、二度と戻らぬ、あの時々に触れた出来事その事々……
どれも、かけがえのないこと。
生きているということ、……未だ残る手首の傷跡、その左の手首に残る傷は、血の流れを……心臓が鼓動する同じ時の中で巡り合えた人々、縁するという尊さ。
――初めて、脳に触れた日。
見えるもの、目を伝って脳に触れて、心が感情を動かしたその日はね、
できるだけ静かな場所、それでも陽が照らして、
広い場所……少しでも、人のいる場所。そこで、そこで……大粒の涙。
「お姉ちゃん、どうして泣いてるの?」
と、小さな女の子。五歳くらいかな? 心配そうな顔で僕に声をかけてくれた。
「嬉しいから。
変だね、悲しくないのに、嬉しいのに泣いちゃうなんて……変だね?」
と、泣き顔の中にも、きっと笑顔で僕はそう答えた。
それは去年の夏、入院中の出来事……
初めて梨花のエッセイを読んだ日……涙を零すほどの物語に巡り合えた瞬間だ。
僕も、僕も書きたくなった。
その小さな鼓動は、募る日々の中、運命的な出会いもさることながら、梨花とともに過ごす日々の中で肥大して、やがては一つの物語へと成長を遂げていった。
――それが『ウメチカ物語』となり、新章たる進化も遂げる最中でありながら、今この時をもって、原点に返りたい。……あの日に読んだ『梨花のエッセイ』のように。
それは未来。まだ知らない明日の世界なのだから、僕は『日誌』に書き留める。
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