悪役令嬢の妹君。〜冤罪で追放された落ちこぼれ令嬢はワケあり少年伯に溺愛される〜

見丘ユタ

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5章.妹君と辺境伯は時を刻む

167.リーゼロッテは夜風に当たる①

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 なんとも気まずい雰囲気のまま食事会は終了し、各自部屋に戻っていった。

 皆に倣い部屋に戻ったリーゼロッテだったが、どうにも落ち着かない。

 フリッツはどうも時の魔力を使わせたくなさそうなのは分かる。

 が、テオも使って欲しくなさそうな様子だった。

 二人の息子に回復を望まれていないようで、国王が気の毒に思えた。

 リーゼロッテの知る限り、国王は基本的に穏やかで義理堅い。

 先の戦争も、水面下で戦争回避のために隣国と交渉していたらしいが、それも突っぱねられていたため、やむを得ず開戦に踏み切った経緯がある。

 そんな国王も子供に対しては寛容ではなかったのか、それとも──。

(……お二人は何か企んでいらっしゃる、のかも)

 その計略が何なのかは分からないが、いずれにしても自分が鍵となりそうなことだけは分かる。

 二人の王子の間でどう立ち回っていいものか、社交場すら得意ではなかったリーゼロッテには考えても答えが出ない。

 ベッドに横になっていた彼女は身体を起こした。

(……少し外の風にあたりましょう)

 リーゼロッテはヘッダに断ると、聖殿の中庭に来た。

 ヘッダもついてくるかと思いきや、「いってらっしゃいませ」と送り出されてしまった。

 聖殿は城の中にある。

 夜間でも兵が警備を怠らない王城だからこそ、ついていく必要がないということなのだろうか。

 一人になりたかったリーゼロッテにはちょうど良かったが、若干無用心な、と思う気持ちもなかったわけではない。

 僅かな月明かりを拾う中庭の噴水が、控えめに飛沫しぶきを上げている。

 心地よい風が吹き、噴水の描く放物線が軽く揺れた。

 その奥に、何か動くものが見えたリーゼロッテは一歩後退る。

 誰かしら、と息を殺して目を凝らす。

「あ…………」

 奥にいたのはピンクゴールドのふわふわの巻毛に、リーゼロッテと同じ純白の長い法衣を身につけた人物──マリーだった。

 赤みを帯びた瞳が、飛沫を受けたように濡れている。

 どうやら泣いていたらしい。

 あまりじろじろ見るのも良くないと思い、リーゼロッテは軽く会釈するとその場を立ち去ろうとした。

「待ってください」

 微かに鼻にかかったような声で、マリーは彼女を引き留めた。

 マリーの方からは月光に照らされたリーゼロッテがよく見えたらしい。

 真っ直ぐに彼女はリーゼロッテを見据えていた。

「あの……少し、お話ししませんか?」
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