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5章.妹君と辺境伯は時を刻む
207.王子は暗躍する②
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リーゼロッテはフリッツとヘッダに連れられ、聖殿の奥へと進んでいた。
ヘッダに案内を頼んでいたはずだが、先導しているのはフリッツだ。
監視されてるかのように、リーゼロッテのすぐ横に無表情を貫くヘッダが付き従っている。
手足を拘束されているわけではないが、二人に常に見張られているような感覚に居心地の悪さを感じていた。
(一体どこへ向かっているのでしょうか……?)
部屋を出てからしばらく経つ。
取り調べや牢などという物騒な言葉に驚き考えが及ばなかったが、よくよく考えてみれば聖殿内から滅多に出る事ができない時点でもう、リーゼロッテは捕らえられているも同然だ。
事あるごとに今回のように難癖をつけて外出させないようにすればいいだけだ。
今更わざわざ牢に入れる必要もないだろう。
牢というのも怪しい。
ヘッダに案内された時、そんなものの説明は無かった。
(……何が目的……なのでしょう……?)
前を行く王太子の背を見つめる。
脇目を振らず進む彼が、何故か独りよがりな独裁者にリーゼロッテには見えた。
やがて、黒く重厚な扉の部屋の前に彼は立ち止まった。
案内の時に唯一、中を見ることができなかった場所──廟所だ。
ヘッダの機械的な声を思い出す。
その部屋だけは簡単な説明だけで、中は覗けなかった。
以前は屈強そうな女性兵が仁王立ちしていたはずだが、今は誰もその扉の前にいなかった。
「見張りは……まあいい。開けろ」
「はい」
命じられたヘッダが扉を開く。
ぎいぃ、と金属の軋む音が響いた。
広い、広い空間だった。
外から続く一面白亜の空間に、フリッツの背丈ほどあろう立派な墓石が画一的に並べられている。
締め切った空間だというのに、夜のひんやりとした空気が漂う外よりも肌寒い。
想像していたよりも簡素で、どこか畏れ多い雰囲気がひしひしと感じられる。
「これが……廟所……」
「……こちらへ」
呆然と呟くリーゼロッテを見ることなく、フリッツは先へと促した。
一番奥の墓石の前に立ち止まると、彼は中央部分に触れた。
かち、と小さな音がしたかと思うと、奥の一部の壁がゆっくりと開き始める。
やがて人ひとり通れそうな、先の見えない暗い通路が現れた。
(こんな仕掛けが………)
驚き声をなくしたリーゼロッテを他所に、「この中だ」とフリッツが先に進む。
リーゼロッテもまた、ヘッダに促され中へと入った。
薄暗い道をフリッツの背を見失わないよう進む。
ヘッダが背後にいるため、引き返すこともできない。
しばらく進むと、開けた場所に出た。
天蓋付きの大きめのベッドがある他は何もない。
仄暗く、鉄格子こそはまっていないが牢獄のような雰囲気にリーゼロッテは身震いする。
(ここが……聖殿の牢?)
ベッドがあるということは、少なくともここで眠る人間がいるからだろう。
しかしそのベッドには微かな膨らみがある。
「あの……取り調べる、というのは……?」
恐る恐るフリッツに尋ねるが、冷たい表情のまま彼女を見つめるだけで正しい答えが返って来る気配がない。
押し寄せる不安に眉をひそめると、彼は思いがけず口を開いた。
「…………そこにいるのは誰かわかるか?」
彼の指差す方向はこの場に不釣り合いな白の天蓋つきベッドだ。
微かな膨らみがあるのは分かるが、何層かの薄い天蓋に阻まれ、その人物の人相までは分からない。
「……いえ」
「国王陛下だ。もう長くはない」
(陛下が……ということは……テオ様がおっしゃっていた幽閉はここ……?)
驚くリーゼロッテをしたり顔で見つめたフリッツはさらに続けた。
「長く臥せっているせいか、うなされる事が多い……もう長くないだろう。時の聖女の力でどうか安らかに逝かせてくれないか?」
ヘッダに案内を頼んでいたはずだが、先導しているのはフリッツだ。
監視されてるかのように、リーゼロッテのすぐ横に無表情を貫くヘッダが付き従っている。
手足を拘束されているわけではないが、二人に常に見張られているような感覚に居心地の悪さを感じていた。
(一体どこへ向かっているのでしょうか……?)
部屋を出てからしばらく経つ。
取り調べや牢などという物騒な言葉に驚き考えが及ばなかったが、よくよく考えてみれば聖殿内から滅多に出る事ができない時点でもう、リーゼロッテは捕らえられているも同然だ。
事あるごとに今回のように難癖をつけて外出させないようにすればいいだけだ。
今更わざわざ牢に入れる必要もないだろう。
牢というのも怪しい。
ヘッダに案内された時、そんなものの説明は無かった。
(……何が目的……なのでしょう……?)
前を行く王太子の背を見つめる。
脇目を振らず進む彼が、何故か独りよがりな独裁者にリーゼロッテには見えた。
やがて、黒く重厚な扉の部屋の前に彼は立ち止まった。
案内の時に唯一、中を見ることができなかった場所──廟所だ。
ヘッダの機械的な声を思い出す。
その部屋だけは簡単な説明だけで、中は覗けなかった。
以前は屈強そうな女性兵が仁王立ちしていたはずだが、今は誰もその扉の前にいなかった。
「見張りは……まあいい。開けろ」
「はい」
命じられたヘッダが扉を開く。
ぎいぃ、と金属の軋む音が響いた。
広い、広い空間だった。
外から続く一面白亜の空間に、フリッツの背丈ほどあろう立派な墓石が画一的に並べられている。
締め切った空間だというのに、夜のひんやりとした空気が漂う外よりも肌寒い。
想像していたよりも簡素で、どこか畏れ多い雰囲気がひしひしと感じられる。
「これが……廟所……」
「……こちらへ」
呆然と呟くリーゼロッテを見ることなく、フリッツは先へと促した。
一番奥の墓石の前に立ち止まると、彼は中央部分に触れた。
かち、と小さな音がしたかと思うと、奥の一部の壁がゆっくりと開き始める。
やがて人ひとり通れそうな、先の見えない暗い通路が現れた。
(こんな仕掛けが………)
驚き声をなくしたリーゼロッテを他所に、「この中だ」とフリッツが先に進む。
リーゼロッテもまた、ヘッダに促され中へと入った。
薄暗い道をフリッツの背を見失わないよう進む。
ヘッダが背後にいるため、引き返すこともできない。
しばらく進むと、開けた場所に出た。
天蓋付きの大きめのベッドがある他は何もない。
仄暗く、鉄格子こそはまっていないが牢獄のような雰囲気にリーゼロッテは身震いする。
(ここが……聖殿の牢?)
ベッドがあるということは、少なくともここで眠る人間がいるからだろう。
しかしそのベッドには微かな膨らみがある。
「あの……取り調べる、というのは……?」
恐る恐るフリッツに尋ねるが、冷たい表情のまま彼女を見つめるだけで正しい答えが返って来る気配がない。
押し寄せる不安に眉をひそめると、彼は思いがけず口を開いた。
「…………そこにいるのは誰かわかるか?」
彼の指差す方向はこの場に不釣り合いな白の天蓋つきベッドだ。
微かな膨らみがあるのは分かるが、何層かの薄い天蓋に阻まれ、その人物の人相までは分からない。
「……いえ」
「国王陛下だ。もう長くはない」
(陛下が……ということは……テオ様がおっしゃっていた幽閉はここ……?)
驚くリーゼロッテをしたり顔で見つめたフリッツはさらに続けた。
「長く臥せっているせいか、うなされる事が多い……もう長くないだろう。時の聖女の力でどうか安らかに逝かせてくれないか?」
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