62 / 67
七
お墓参り.壱
しおりを挟む
「あ、えっと、そうだったらなぁって思っただけよ? 話題性はあるだろうなって思って。でもほら、それは流石に無理があるでしょ?」
「そらまぁ、そうかもしれんけんどねゃ……。もしわしらが他の人間たちに見えるようになったら、それはそれで気味悪がられる方が大きいんやないろうか」
そっか……。違う意味で話題性は出そうよね。あの店には「出る」って話題。
それでも客寄せになるならって考えたけど、長くは続くものじゃないし嫌がる人もいるかもしれないわよね……。
「まぁ、その辺りは私ももう少し考えてみることにするわ」
私は少しだけ残念に思いながらも、彼らのバックアップはあるわけだから私一人で切り盛りしているって思ってもいいかもね。
そう思いながら携帯に目を向けると、そろそろ10時を差そうとしている。
「あ、大変! もうこんな時間」
「何かあるの?」
慌てて机の上を片付け始めた私に、虎太郎が不思議そうに声をかけてきた。
私は手に持った紙を机にトントンと打ち付けて揃えながら口を開く。
「うん。真吉さんに会いに」
「え?」
「真吉殿に会いにって、どうやって……」
私の言葉に目を丸くしたのは虎太郎と鞍馬の二人だけだった。
何を言っているんだろうって思ってる顔だわ。ま、突然そんなこと言われたら驚くのも無理はないか。
「お墓参りよ」
ニッコリ笑いながらそう言うと、虎太郎は「あぁ~、なるほど」と納得したように頷いたものの、鞍馬は何故か目を見張るようにこちらをみてくる。その表情に今度は私が不思議そうな顔を浮かべる番だった。
あれ? もしかして鞍馬は真吉さんのお墓の事知らないのかしら……?
「……真吉殿の墓て……」
「ありますよ。この家の裏手の山の中に」
その話を聞いて、鞍馬は驚きを隠せない様子だった。
鞍馬も知らなかった真吉さんのお墓の存在。それを知って心底驚いたように目を見開いていたけど、すぐに顔をそむけた。
あれ……? どうしたのかしら……。
「……ほうか。真吉殿はちゃんと墓に入れて貰えたがやねゃ……」
ぽつっと呟いた言葉に、彼の思いの全てが籠っているような気がした。だって、鞍馬は幸之助に負けないくらい真吉さんを慕っていたし、彼の全てを見てきた人だもの。
この場にいる誰も知らない事も、嫌な事も、最期も全部その目で見て来たんだもの……。
「ね。皆で会いに行きましょ? 真吉さんが好きだったお酒とお花持って。私、たくさん報告したいこともあるしお礼も言いたいし。何よりきっと皆で会いに行ったら真吉さんも喜ぶわ」
「そ、そうやねゃ。わしも、久し振りに真吉殿に会いたいと思うちょった」
鞍馬の言葉に私はニッコリ笑いながら頷き返した。
土佐鶴の一升瓶とお水の入ったペットボトルと掃除道具。急いで下の店で買って来た仏花と榊、それから生前好きだったって言う落雁も少しだけ持って、私は幸之助の案内で真吉さんのお墓を目指して出発した。
昼前とは言え、日差しは結構きつい。お屋敷の裏手にある山道がなかなか険しい。皆は顔色一つ変えないでさくさくと登って行っちゃうんだけど、私は皆とは違って体力が無くて、中腹近くまで登った辺りで息も絶え絶え状態。
こ、これが皆と私の差だと言われたら、何かちょっと悔しいような複雑なような……。
「大丈夫ですか?」
「う、うん……だ、大丈夫……」
先を歩いていた幸之助が心配して時折戻って来てくれる。その度に皆足を止めて私を待ってくれるの、嬉しいんだけど申し訳ないなぁ。
ヘロヘロになった私を見かねた鞍馬が、ざくざくと足音を立てて戻ってきたかと思うと突然何も言わずに私を横抱きに抱き上げて来た。
私だけじゃなく、それを見た幸之助や虎太郎も突然のことにポカンとしてしまっている。もちろん例外なく、張本人である私もだけど。
「えっ!!??」
「しんどいやろうき、わしが連れて行っちゃる」
「い、いいよ! だ、大丈夫だって……」
そう言うが早いか、何も言わず鞍馬は背中に隠してあった翼をバサッと広げた。
あ、その手があったか……じゃなくて!
「狸奴、真吉殿の墓まで案内してくれ。わしは上空から追うき」
「あ……はい」
唖然としてしまっていた幸之助は、いつになく真面目な顔をしている鞍馬に気圧されたかのように頷き返していた。
「ほんならお嬢さん、しっかり掴まっとうせ」
「ひ、ひえぇえぇ~~~~~~~っ!!」
私の返事を待たずに宙に飛び上がった鞍馬に、振り落とされまいと彼の着物の両襟首をきつく握りしめてしまう。
いや、振り落とされる何てことないだろうけど、本来なら絶対見ないような光景が眼下に広がったことと、命綱がなくて支えてくれてる鞍馬の腕しかないこの状況が怖くないわけがない!!
別に、鞍馬が途中で私をポイっとしたりしないことくらい分かってるけど!! 分かってるけどっ!!!!
「お、お嬢さん……! 首、首ぃ……っ!」
「だ、だ、だだだって、ここ、怖い!!」
「死ぬぅ……」
「え!? やだ! し、死んだらダメだからねっ!!」
あまりにがっちり襟首を掴んでしまった事で、首が絞まってしまったらしい。
ご、ごめん、鞍馬。でも、こんな状況普通体験することないから、下手なジェットコースター何かより比べ物にならないくらい怖いのも分かって欲しい!!
「せ、せめて首の後ろ掴まんか!」
「無理!! 今動いたら落ちるっ!!」
「何があっても誓ってお嬢さんを落としたりせんき、その手の位置変えてくれんろうか!?」
「ううううう……っ」
鞍馬の腕だけを信じろと?! いや、信じるけど!
私は鞍馬の襟首から恐る恐る手を離し、急いで彼の首の後ろに手を回した。で、後襟をがっちりと掴む。同時に彼の肩口に爪を立てるかのようにしてしがみついた。
何だか異常に驚いている猫みたいだなって自分で思ってしまうと、内心ちょっとだけ笑えて来る。
「何ぞ、猫になった気分やねゃ……」
襟首を掴まれている鞍馬がため息交じりに鞍馬がぼやいた。
「ぷっ……」
「な、何ぞね」
「ううん。何でもない」
まるで私の思っている事が読めたかのように同じ事呟くもんだから思わず笑ってしまった。
「そらまぁ、そうかもしれんけんどねゃ……。もしわしらが他の人間たちに見えるようになったら、それはそれで気味悪がられる方が大きいんやないろうか」
そっか……。違う意味で話題性は出そうよね。あの店には「出る」って話題。
それでも客寄せになるならって考えたけど、長くは続くものじゃないし嫌がる人もいるかもしれないわよね……。
「まぁ、その辺りは私ももう少し考えてみることにするわ」
私は少しだけ残念に思いながらも、彼らのバックアップはあるわけだから私一人で切り盛りしているって思ってもいいかもね。
そう思いながら携帯に目を向けると、そろそろ10時を差そうとしている。
「あ、大変! もうこんな時間」
「何かあるの?」
慌てて机の上を片付け始めた私に、虎太郎が不思議そうに声をかけてきた。
私は手に持った紙を机にトントンと打ち付けて揃えながら口を開く。
「うん。真吉さんに会いに」
「え?」
「真吉殿に会いにって、どうやって……」
私の言葉に目を丸くしたのは虎太郎と鞍馬の二人だけだった。
何を言っているんだろうって思ってる顔だわ。ま、突然そんなこと言われたら驚くのも無理はないか。
「お墓参りよ」
ニッコリ笑いながらそう言うと、虎太郎は「あぁ~、なるほど」と納得したように頷いたものの、鞍馬は何故か目を見張るようにこちらをみてくる。その表情に今度は私が不思議そうな顔を浮かべる番だった。
あれ? もしかして鞍馬は真吉さんのお墓の事知らないのかしら……?
「……真吉殿の墓て……」
「ありますよ。この家の裏手の山の中に」
その話を聞いて、鞍馬は驚きを隠せない様子だった。
鞍馬も知らなかった真吉さんのお墓の存在。それを知って心底驚いたように目を見開いていたけど、すぐに顔をそむけた。
あれ……? どうしたのかしら……。
「……ほうか。真吉殿はちゃんと墓に入れて貰えたがやねゃ……」
ぽつっと呟いた言葉に、彼の思いの全てが籠っているような気がした。だって、鞍馬は幸之助に負けないくらい真吉さんを慕っていたし、彼の全てを見てきた人だもの。
この場にいる誰も知らない事も、嫌な事も、最期も全部その目で見て来たんだもの……。
「ね。皆で会いに行きましょ? 真吉さんが好きだったお酒とお花持って。私、たくさん報告したいこともあるしお礼も言いたいし。何よりきっと皆で会いに行ったら真吉さんも喜ぶわ」
「そ、そうやねゃ。わしも、久し振りに真吉殿に会いたいと思うちょった」
鞍馬の言葉に私はニッコリ笑いながら頷き返した。
土佐鶴の一升瓶とお水の入ったペットボトルと掃除道具。急いで下の店で買って来た仏花と榊、それから生前好きだったって言う落雁も少しだけ持って、私は幸之助の案内で真吉さんのお墓を目指して出発した。
昼前とは言え、日差しは結構きつい。お屋敷の裏手にある山道がなかなか険しい。皆は顔色一つ変えないでさくさくと登って行っちゃうんだけど、私は皆とは違って体力が無くて、中腹近くまで登った辺りで息も絶え絶え状態。
こ、これが皆と私の差だと言われたら、何かちょっと悔しいような複雑なような……。
「大丈夫ですか?」
「う、うん……だ、大丈夫……」
先を歩いていた幸之助が心配して時折戻って来てくれる。その度に皆足を止めて私を待ってくれるの、嬉しいんだけど申し訳ないなぁ。
ヘロヘロになった私を見かねた鞍馬が、ざくざくと足音を立てて戻ってきたかと思うと突然何も言わずに私を横抱きに抱き上げて来た。
私だけじゃなく、それを見た幸之助や虎太郎も突然のことにポカンとしてしまっている。もちろん例外なく、張本人である私もだけど。
「えっ!!??」
「しんどいやろうき、わしが連れて行っちゃる」
「い、いいよ! だ、大丈夫だって……」
そう言うが早いか、何も言わず鞍馬は背中に隠してあった翼をバサッと広げた。
あ、その手があったか……じゃなくて!
「狸奴、真吉殿の墓まで案内してくれ。わしは上空から追うき」
「あ……はい」
唖然としてしまっていた幸之助は、いつになく真面目な顔をしている鞍馬に気圧されたかのように頷き返していた。
「ほんならお嬢さん、しっかり掴まっとうせ」
「ひ、ひえぇえぇ~~~~~~~っ!!」
私の返事を待たずに宙に飛び上がった鞍馬に、振り落とされまいと彼の着物の両襟首をきつく握りしめてしまう。
いや、振り落とされる何てことないだろうけど、本来なら絶対見ないような光景が眼下に広がったことと、命綱がなくて支えてくれてる鞍馬の腕しかないこの状況が怖くないわけがない!!
別に、鞍馬が途中で私をポイっとしたりしないことくらい分かってるけど!! 分かってるけどっ!!!!
「お、お嬢さん……! 首、首ぃ……っ!」
「だ、だ、だだだって、ここ、怖い!!」
「死ぬぅ……」
「え!? やだ! し、死んだらダメだからねっ!!」
あまりにがっちり襟首を掴んでしまった事で、首が絞まってしまったらしい。
ご、ごめん、鞍馬。でも、こんな状況普通体験することないから、下手なジェットコースター何かより比べ物にならないくらい怖いのも分かって欲しい!!
「せ、せめて首の後ろ掴まんか!」
「無理!! 今動いたら落ちるっ!!」
「何があっても誓ってお嬢さんを落としたりせんき、その手の位置変えてくれんろうか!?」
「ううううう……っ」
鞍馬の腕だけを信じろと?! いや、信じるけど!
私は鞍馬の襟首から恐る恐る手を離し、急いで彼の首の後ろに手を回した。で、後襟をがっちりと掴む。同時に彼の肩口に爪を立てるかのようにしてしがみついた。
何だか異常に驚いている猫みたいだなって自分で思ってしまうと、内心ちょっとだけ笑えて来る。
「何ぞ、猫になった気分やねゃ……」
襟首を掴まれている鞍馬がため息交じりに鞍馬がぼやいた。
「ぷっ……」
「な、何ぞね」
「ううん。何でもない」
まるで私の思っている事が読めたかのように同じ事呟くもんだから思わず笑ってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
後宮の偽花妃 国を追われた巫女見習いは宦官になる
gari@七柚カリン
キャラ文芸
旧題:国を追われた巫女見習いは、隣国の後宮で二重に花開く
☆4月上旬に書籍発売です。たくさんの応援をありがとうございました!☆ 植物を慈しむ巫女見習いの凛月には、二つの秘密がある。それは、『植物の心がわかること』『見目が変化すること』。
そんな凛月は、次期巫女を侮辱した罪を着せられ国外追放されてしまう。
心機一転、紹介状を手に向かったのは隣国の都。そこで偶然知り合ったのは、高官の峰風だった。
峰風の取次ぎで紹介先の人物との対面を果たすが、提案されたのは後宮内での二つの仕事。ある時は引きこもり後宮妃(欣怡)として巫女の務めを果たし、またある時は、少年宦官(子墨)として庭園管理の仕事をする、忙しくも楽しい二重生活が始まった。
仕事中に秘密の能力を活かし活躍したことで、子墨は女嫌いの峰風の助手に抜擢される。女であること・巫女であることを隠しつつ助手の仕事に邁進するが、これがきっかけとなり、宮廷内の様々な騒動に巻き込まれていく。
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
後宮なりきり夫婦録
石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」
「はあ……?」
雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。
あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。
空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。
かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。
影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。
サイトより転載になります。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる