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麻友の異世界探訪
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一方アルベールは痛む腕を押さえて城内に戻って来た。その姿をいち早く見つけた衛兵が駆け寄って来る。
「王子お怪我されたのですか?」
「大丈夫だ。たいした事は無い」
「し、しかし・・・」
衛兵は怪我を確認すると、大きな声で助けを呼ぶ。
「だ、だれかー、早く医者をーー!」
その声を聞きつけて皆んなが集まって来た。
「酷い怪我だ。早く医務室へ」
大勢の人取り囲まれた王子は医務室へ連れて行かれた。
医者は応急処置で巻かれた布を静かに剥がしていく。それでも痛むのだろう。王子の顔が苦痛に歪む。
「酷い火傷だ・・・」
医者は絶句した。皮膚は焼けただれ、出血も多い。
「うっ!」
医者が傷口を洗い、薬を付けると王子は苦痛の声を漏らした。
「お兄様!」
そんな中、妹のベアトリーチェが駆け込んで来た。
「お兄様! 何故そんな大怪我を・・・」
「大丈夫だ、ベア。たいした事は無いから・・」
それが妹を心配させまいとする兄の虚勢だとは分かっている。
「お兄様・・・」
すがりつきたい衝動をグッと堪える。新しい包帯を巻かれ、痛み止めの薬飲んで少しは痛みが無くなったのか、王子は柔らかい表情で妹を見つめた。
「お兄様・・・」
兄が怪我した事にショックを受け、涙が止まらない妹をそっと抱き寄せた。
「大丈夫、大丈夫だから」
「お兄様・・・」
ベアトリーチェは兄の胸に顔を埋めた。
突然重く暗い声が響いた。
「怪我したのか?」
「国王陛下!」
医務室の扉を開けて入って来たのは魔王だった。
「ち、父上!」
王子以下、全員が頭を下げた。魔王は息子の様子を見ると焼けた髪の毛に触った。パラリと焼けた髪が静かに床に散る。
「なるほど。お前はアレを見つけた訳か」
父王の言葉に王子はうなだれた。
「しかし、見つけてもお前は使えない。手に取ればそう言う事になるのは分かっていたろうが」
「・・・はい」
力なく答える。
「早く火傷を治す事だな」
「はい・・・」
一同を一瞥し王は部屋を出て行った。
王は別室にいた教皇に王子が神剣を見つけた事を話した。
「見つけたのですか?」
「その様だな」
「見つけたとは・・・しかし、見つけたとしても王子にアレを使う事は叶いません」
「そうだ。しかし、触ったのだろう。腕に大火傷して戻って来た」
「大火傷を、それは大変な事ですな」
「あれくらいの怪我。我が息子なら一週間で完治するだろうよ」
「一週間ですか」
魔族の回復力に驚きを隠せない。
「まあ、これで、儂の疑問も消えたな」
「疑問とは?」
「あれが儂の息子に他ならないと言う事だ」
「えっ?」
魔王は王子が実は自分の子供では無いかも知らないと思っていたのだ。
「あいつは人間で言う、月足らずで生まれて来た」
「しかし、あの姿はどう見ても・・・」
あの様な獣人の姿で生まれたのに、前の王アルベルトの子かも知れないと思っていたと言うのか。
「これではっきりした。あいつには剣は使えない。先の王アルベルトの血筋ではない事がな」
そう言うと魔王は楽しそうに、フフフと笑った。
「これで、あとは儀式が済めば世界は儂のものになる」
「待ち遠しいですな」
悪人二人は顔を見合わせて笑った。
数日後。
王妃は自分の部屋で静かに目を閉じて、何かを考えている様だ。
「マユ。王妃様がお茶を運んで欲しいって言ってきたわ」
「わ、私がですか?」
「ご指名よ」
(何だろう)
麻友はワゴン車を押して王妃の部屋の前までやってきた。あれから数日経つが、怪我が重いのか王子とは会ってないし、ベアトリーチェとも会えない。噂ではベアトリーチェは軟禁されてるらしく、誰とも会えないそうだ。
「王妃様。お茶をお持ち致しました」
「どうぞ」
「失礼します」
王妃の部屋には鍵は無いし、侍女らしき者も居ない。
ソファにゆったりと座っている姿はまさに女神。
ワゴンをゆっくりと王妃の側まで押していく。
「マユ。ここへ」
王妃は麻友を自分の隣りを指した。座れということらしい。
真剣な眼差しで王妃は麻友を見た。
「マユには真実を伝えておきたいと思います」
「えっ?」
「長くなりますが、聞いてくださいね」
「は、はい」
麻友は王妃の話に耳を傾けた。
「王子お怪我されたのですか?」
「大丈夫だ。たいした事は無い」
「し、しかし・・・」
衛兵は怪我を確認すると、大きな声で助けを呼ぶ。
「だ、だれかー、早く医者をーー!」
その声を聞きつけて皆んなが集まって来た。
「酷い怪我だ。早く医務室へ」
大勢の人取り囲まれた王子は医務室へ連れて行かれた。
医者は応急処置で巻かれた布を静かに剥がしていく。それでも痛むのだろう。王子の顔が苦痛に歪む。
「酷い火傷だ・・・」
医者は絶句した。皮膚は焼けただれ、出血も多い。
「うっ!」
医者が傷口を洗い、薬を付けると王子は苦痛の声を漏らした。
「お兄様!」
そんな中、妹のベアトリーチェが駆け込んで来た。
「お兄様! 何故そんな大怪我を・・・」
「大丈夫だ、ベア。たいした事は無いから・・」
それが妹を心配させまいとする兄の虚勢だとは分かっている。
「お兄様・・・」
すがりつきたい衝動をグッと堪える。新しい包帯を巻かれ、痛み止めの薬飲んで少しは痛みが無くなったのか、王子は柔らかい表情で妹を見つめた。
「お兄様・・・」
兄が怪我した事にショックを受け、涙が止まらない妹をそっと抱き寄せた。
「大丈夫、大丈夫だから」
「お兄様・・・」
ベアトリーチェは兄の胸に顔を埋めた。
突然重く暗い声が響いた。
「怪我したのか?」
「国王陛下!」
医務室の扉を開けて入って来たのは魔王だった。
「ち、父上!」
王子以下、全員が頭を下げた。魔王は息子の様子を見ると焼けた髪の毛に触った。パラリと焼けた髪が静かに床に散る。
「なるほど。お前はアレを見つけた訳か」
父王の言葉に王子はうなだれた。
「しかし、見つけてもお前は使えない。手に取ればそう言う事になるのは分かっていたろうが」
「・・・はい」
力なく答える。
「早く火傷を治す事だな」
「はい・・・」
一同を一瞥し王は部屋を出て行った。
王は別室にいた教皇に王子が神剣を見つけた事を話した。
「見つけたのですか?」
「その様だな」
「見つけたとは・・・しかし、見つけたとしても王子にアレを使う事は叶いません」
「そうだ。しかし、触ったのだろう。腕に大火傷して戻って来た」
「大火傷を、それは大変な事ですな」
「あれくらいの怪我。我が息子なら一週間で完治するだろうよ」
「一週間ですか」
魔族の回復力に驚きを隠せない。
「まあ、これで、儂の疑問も消えたな」
「疑問とは?」
「あれが儂の息子に他ならないと言う事だ」
「えっ?」
魔王は王子が実は自分の子供では無いかも知らないと思っていたのだ。
「あいつは人間で言う、月足らずで生まれて来た」
「しかし、あの姿はどう見ても・・・」
あの様な獣人の姿で生まれたのに、前の王アルベルトの子かも知れないと思っていたと言うのか。
「これではっきりした。あいつには剣は使えない。先の王アルベルトの血筋ではない事がな」
そう言うと魔王は楽しそうに、フフフと笑った。
「これで、あとは儀式が済めば世界は儂のものになる」
「待ち遠しいですな」
悪人二人は顔を見合わせて笑った。
数日後。
王妃は自分の部屋で静かに目を閉じて、何かを考えている様だ。
「マユ。王妃様がお茶を運んで欲しいって言ってきたわ」
「わ、私がですか?」
「ご指名よ」
(何だろう)
麻友はワゴン車を押して王妃の部屋の前までやってきた。あれから数日経つが、怪我が重いのか王子とは会ってないし、ベアトリーチェとも会えない。噂ではベアトリーチェは軟禁されてるらしく、誰とも会えないそうだ。
「王妃様。お茶をお持ち致しました」
「どうぞ」
「失礼します」
王妃の部屋には鍵は無いし、侍女らしき者も居ない。
ソファにゆったりと座っている姿はまさに女神。
ワゴンをゆっくりと王妃の側まで押していく。
「マユ。ここへ」
王妃は麻友を自分の隣りを指した。座れということらしい。
真剣な眼差しで王妃は麻友を見た。
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「えっ?」
「長くなりますが、聞いてくださいね」
「は、はい」
麻友は王妃の話に耳を傾けた。
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