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麻友の異世界探訪
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「良い香りですね」
王妃はカップに注がれたお茶の香りを嗅いだ。そして美味しそうに一口飲んだ。
「このお茶は夫も大好きでした」
勿論夫と言うのは前王アルベルトの事だと麻友は察知した。王妃ターニャにとって夫は亡きアルベルトだけなのだと。
王妃は一つ息を吐くと麻友に向き直った。
「もうすぐベアトリーチェが十八才の誕生日を迎えます」
「はい」
「十八才を迎えた新月の夜にあの子は儀式をするのです」
「儀式・・・ですか」
「そう、儀式。あの子は永遠の孕み女に変わるのです」
「永遠の孕み女?」
「マユは女王蜂とか女王蟻を知っていますか?」
「はい。知っています」
「女王蜂や女王蟻はその身が生き絶えるまで生殖器として卵を産み続けます。あの子をその様な生殖だけの物体になってしまうのです」
「!!」
あまりの衝撃的な話しに麻友は言葉を失う。
「獣人は男ばかりで女は居ません」
確かに獣人の女は見たことが無い。城にいる獣人達も男の人ばかりだ。
「ここから話しはかなり昔の事になりますが、聞いてくれますか」
「は、はい、勿論です」
王妃はニッコリ笑うと、視線を遠くへ向けた。
「昔、この世界は人間と獣人が常に覇権を争っていました。身体が大きく力も強い、回復力も早く長生きする獣人に人間はかないませんでした。でも、世界は人間の治る所となったのです。その差は繁殖力でした。獣人には女型が居なく、仲間を増やす事が出来なかったから」
女王の話しは続いた。
人間が勢力を拡大し続ける中、獣人の中で特殊な能力を持つ魔王が現れたと言う。それが魔王にして今、国王を名乗っているグリンダムだ。グリンダムは特殊な力を使い世界を征服しようと企んだ。その魔王を倒そうと現れたのが、白の魔術師フォーリだった。フォーリは神から授かった神剣を、この国の始祖であるアルバンに託し二人で魔王に立ち向かい、後一歩で倒すまで追い詰めたが、深手を負った魔王は逃げたのだ。
「でも、魔王はただ逃げ訳ではありません。魔王にはある策略があったのです」
「策略?」
「魔王はフォーリの妻の元へ向かい、隙を見て自分の血を混ぜた食べ物を食べさせたのです」
「それを食べるとどうにかなってしまうのですか?」
「いいえ、何も」
ほぅと麻友は安堵の溜息を吐いた。
「しかし、悪魔の血は妻ではなく、生まれてくる子供に受け継がれたのです」
生まれた男子は何も無いが、女の子は悪魔の血を受け継いだ者として獣人の子を孕む存在となったのだ。フォーリが気がついたのは大分後になってからだった。フォーリの血を受け継ぐ女子は獣人、魔王の子を孕む事が出来る存在なのだ。
魔王はフォーリの妻が自分の血を体内に取り込んだ事を確認すると、傷を癒すため地下深くに身を沈め、いつか再生する日を待った。だが、フォーリはその場所を突き止め甦る事の無いようにその地を封印したのだ。
「だけど、教皇がその封印を解き魔王を甦らせた。その元凶となったのが私だなんて・・・」
王妃は目を閉じ、涙をこぼした。
王妃の美しさに心を奪われた教皇が、王妃を我が物にしようと魔王を甦らせ、最愛の夫まで毒殺したのだから。
「けど、甦った魔王は私がフォーリの末裔だと気がついたのでしょう。私は魔王に犯され、そして・・・」
そして、魔王の子を生んだ。
「私は娘を産んでしまった」
「ベアは、王女はどうなるのですか?」
「私にも分かりません。分かっているのは、儀式の後、ベアは男の精を糧に獣人を産み続ける存在になると言うことだけです」
「た、助ける方法は無いのですか」
「・・・方法はあります」
「えっ? 本当ですか」
ベアトリーチェを助ける術があるのなら、力になりたいと、麻友は訴えた。
「方法はあの剣です」
「神剣ですか?」
だが神剣は亡きアルベルト王の血筋を引く者しかし扱えないのでは無いのか?
「いるのですか? 剣を扱える者が」
「居ます」
王妃の答えは明確だった。
「その人物は・・・」
その時ドアがノックされた。
「王妃様、ターニャ様、わたくしです」
ドアの外から教皇の、嬉しそうな声が聞こえてきた。
王妃は顔を曇らせると、麻友に目で合図してきた。麻友は音を立てない様に立ち上がると、棚の陰に身を隠した。
「どうぞ」
教皇が満面に笑みを浮かべて入ってきた。相変わらずスケベ顔だと、心の中で毒づく。
王妃はカップに注がれたお茶の香りを嗅いだ。そして美味しそうに一口飲んだ。
「このお茶は夫も大好きでした」
勿論夫と言うのは前王アルベルトの事だと麻友は察知した。王妃ターニャにとって夫は亡きアルベルトだけなのだと。
王妃は一つ息を吐くと麻友に向き直った。
「もうすぐベアトリーチェが十八才の誕生日を迎えます」
「はい」
「十八才を迎えた新月の夜にあの子は儀式をするのです」
「儀式・・・ですか」
「そう、儀式。あの子は永遠の孕み女に変わるのです」
「永遠の孕み女?」
「マユは女王蜂とか女王蟻を知っていますか?」
「はい。知っています」
「女王蜂や女王蟻はその身が生き絶えるまで生殖器として卵を産み続けます。あの子をその様な生殖だけの物体になってしまうのです」
「!!」
あまりの衝撃的な話しに麻友は言葉を失う。
「獣人は男ばかりで女は居ません」
確かに獣人の女は見たことが無い。城にいる獣人達も男の人ばかりだ。
「ここから話しはかなり昔の事になりますが、聞いてくれますか」
「は、はい、勿論です」
王妃はニッコリ笑うと、視線を遠くへ向けた。
「昔、この世界は人間と獣人が常に覇権を争っていました。身体が大きく力も強い、回復力も早く長生きする獣人に人間はかないませんでした。でも、世界は人間の治る所となったのです。その差は繁殖力でした。獣人には女型が居なく、仲間を増やす事が出来なかったから」
女王の話しは続いた。
人間が勢力を拡大し続ける中、獣人の中で特殊な能力を持つ魔王が現れたと言う。それが魔王にして今、国王を名乗っているグリンダムだ。グリンダムは特殊な力を使い世界を征服しようと企んだ。その魔王を倒そうと現れたのが、白の魔術師フォーリだった。フォーリは神から授かった神剣を、この国の始祖であるアルバンに託し二人で魔王に立ち向かい、後一歩で倒すまで追い詰めたが、深手を負った魔王は逃げたのだ。
「でも、魔王はただ逃げ訳ではありません。魔王にはある策略があったのです」
「策略?」
「魔王はフォーリの妻の元へ向かい、隙を見て自分の血を混ぜた食べ物を食べさせたのです」
「それを食べるとどうにかなってしまうのですか?」
「いいえ、何も」
ほぅと麻友は安堵の溜息を吐いた。
「しかし、悪魔の血は妻ではなく、生まれてくる子供に受け継がれたのです」
生まれた男子は何も無いが、女の子は悪魔の血を受け継いだ者として獣人の子を孕む存在となったのだ。フォーリが気がついたのは大分後になってからだった。フォーリの血を受け継ぐ女子は獣人、魔王の子を孕む事が出来る存在なのだ。
魔王はフォーリの妻が自分の血を体内に取り込んだ事を確認すると、傷を癒すため地下深くに身を沈め、いつか再生する日を待った。だが、フォーリはその場所を突き止め甦る事の無いようにその地を封印したのだ。
「だけど、教皇がその封印を解き魔王を甦らせた。その元凶となったのが私だなんて・・・」
王妃は目を閉じ、涙をこぼした。
王妃の美しさに心を奪われた教皇が、王妃を我が物にしようと魔王を甦らせ、最愛の夫まで毒殺したのだから。
「けど、甦った魔王は私がフォーリの末裔だと気がついたのでしょう。私は魔王に犯され、そして・・・」
そして、魔王の子を生んだ。
「私は娘を産んでしまった」
「ベアは、王女はどうなるのですか?」
「私にも分かりません。分かっているのは、儀式の後、ベアは男の精を糧に獣人を産み続ける存在になると言うことだけです」
「た、助ける方法は無いのですか」
「・・・方法はあります」
「えっ? 本当ですか」
ベアトリーチェを助ける術があるのなら、力になりたいと、麻友は訴えた。
「方法はあの剣です」
「神剣ですか?」
だが神剣は亡きアルベルト王の血筋を引く者しかし扱えないのでは無いのか?
「いるのですか? 剣を扱える者が」
「居ます」
王妃の答えは明確だった。
「その人物は・・・」
その時ドアがノックされた。
「王妃様、ターニャ様、わたくしです」
ドアの外から教皇の、嬉しそうな声が聞こえてきた。
王妃は顔を曇らせると、麻友に目で合図してきた。麻友は音を立てない様に立ち上がると、棚の陰に身を隠した。
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