麻友の異世界探訪

如月はるな

文字の大きさ
16 / 27

麻友の異世界探訪

しおりを挟む
   教皇は入ってくるなり、王妃の隣に腰を下ろし、ニヤついた顔を王妃の顔に寄せて来た。
「実は国王から良い話を頂きました」
   教皇にとって良い話しは王妃にとって良い話しだとは思えない。
「今度新しい王妃を迎えるにあたって、ターニャ様を私めに賜われると申して下さいました」
   ターニャ様を王妃の位から外し、教皇の元へやると言う事だ。
「そうですか」
「これで晴れて貴女は私の物。嬉しい限りです」
   まだ、自分の物でも無いのに、その手は王妃の胸をまさぐり、首元にいやらしい唇を近づけてキスしそうな勢いだ。
「詳しくはお話はこちらで・・・」
「おー、話が早いですな」
   教皇は王妃の腰を抱き、寝室へと消えていく。
(王妃様・・・)
   麻友は二人が寝室の中に消えていくのを確認すると、静かに部屋から退室した。しかし、心の中は怒りで煮えたぎっていた。
「あのスケベヒヒジジイめ!  何様のつもりなんだ!
教皇も国王も馬に蹴られて死んじまえ!!」
「儂が何だと?」
「⁈」
   急に後ろから声をかけられ、その声に覚えのある麻友は恐る恐る振り向いた。
   麻友の後ろにはいつのまにか魔王がいて、上から麻友を見下ろしていた。
「ギ、ギャャャーーー!!」
   麻友は思い切り叫ぶと脱兎の如く逃げ出した。
「何なんだ、あの娘は?」
   国王は訝しげに首を傾けると、何事も無かったかの様に奥に進んで行った。
   魔王の見えない所まで走ってくると、壁に身を隠しそっと後ろを確認する。どうやら魔王は追っては来ない様だ。
「危ない、危ない」
   麻友は指輪を覆っていた手を離した。深呼吸を一つ吐くと、厨房に向かって歩き始めた。
「王子様!」
   途中、アルベール王子に出くわした。
「ああ、マユ」
   王子の腕の包帯は取れていた。
「お怪我は大丈夫ですか?」
「ああ、すっかり」
   王子は利き腕をグルグルと回してみせた。
「これから何処かへ出かけるのですか」
「父の命令で、国境近くの村で野党が暴れてるらしいから、その討伐にむかえとの事だ」
「そうですか。ベア様はまた寂しがるでしょうね」
「・・・」
「王子?」
   返事が無いので不審に思い、顔を見ると何故か項垂れている。
「王子・・・」
「・・・今、ベアとは面会謝絶だ」
「えー!」
「ベアは隔離されてる。私は会うことは許されないが、マユなら会えるだろうから慰めてやってくれないか」
「は、はい」
   少し寂しげに微笑むと、王子は討伐に出掛けて行った。その姿を見送ると厨房に戻った。
「おや、ワゴンは?」
「あ、教皇がいらしたので、慌てて戻って来ました」
「あの女好きの教皇がまた来たのかい。王妃様も嫌な奴に見込まれたもんだね」
「蛇の様に執念深いですね」
「蛇と言えば、今度の儀式に向けて、蛇、蜘蛛、蜥蜴、蛙を各百匹捕まえろって命令が来たんだよ」
「えーー!  キモイ!」
「命令だからね。マユも協力してよ」
(ゲッ!)
   儀式に使うって。何する気なのだろう?
「マユ。王女がお茶とお菓子を運んで欲しいって、お達しだよ」
  別の給仕係の女性から声を掛けられた。
(助かった)
   麻友は立ち上がると早速お茶の用意をする。兄と会えないベアトリーチェを慰めたいも思っていたのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...