麻友の異世界探訪

如月はるな

文字の大きさ
24 / 27

麻友の異世界探訪

しおりを挟む
   魔王は身体を小さくし、翼を広げ飛び立つ準備をしていた。このままでは逃げられる。
(逃がさない!)
  アルベールはダッシュすると地を蹴った。まさに飛び立とうとするのを、後ろから切りつけ、その翼を切り裂いた。
「ギャアアアーーー!!」
   間一髪で翼を切り裂き逃亡するのを防いだ。
「ギャウ、ウーーー!」
   魔王は振り向くとアルベールを睨んだ。
「お、おのれぇー、育ててやった恩を忘れたか!」
   そう言えばうろたえると思ったのだろうか。背中から血を流し、憎々しげにアルベールを睨みつける。
「あなたに育ててもらった訳では無い。俺を育ててくれたのは母だ。優しく、愛情深く、時には厳しく、周囲の白い目や、蔑みの中守って来てくれた。あなたに必要なのは妹だけで、跡継ぎとしての修行と称して討伐に派遣して死んでも仕方ないと思っていた。そんなあなたに育てて貰ったと言う恩は感じていない!」
「お、おのれぇーー」 
「母を不幸にし、妹を自分の道具としか考えていないあなた、いや、お前を成敗する!」
   アルベールは魔王に向けて剣を振るう。
「こ、このぉぉーー!」
   魔王は最後の一撃をアルベールに向けて放った。魔王の放つ炎と神剣の炎がぶつかり合う。
「グォォォーー!」
「キェェェーー!」
   互角だった炎は徐々に神剣が押していく。魔王の炎は小さくなり、神剣の神聖な炎が魔王を包み込む。
「ギャアアアーーー!!」
   神剣の炎に包まれた魔王は身体は黒く炭のようになった。黒い物体になった魔王の心臓に剣を打ち込む。そうすると、魔王の身体はバラバラに崩れ、小さな塵となって消えていった。
「ハァ、ハァ、ハァ・・・」
   塵となっ消え行くのを確認すると、訳知らずに涙が出てきて、頬を伝って流れた。
「王子!」
   後を追ってきたアルフォンス達は立ちすくむ王子の元にやって来た。
「王子、魔王は!」
   アルベールは風に吹かれて舞い上がる塵を指差した。
「おおー、魔王を討ち果たしたのですね!  おめでとうございます王子!」
「・・・・」
   王子は無言で涙を流し続けた。
「王子、王妃様の元へ」
   アルベールは我に返った。そうだ、母は?
「は、母上は無事か?」
   その問いかけにアルフォンスは項垂れることしか出来ない。
「急ぎましょう」
「うん」
   報告しなければ、魔王を倒した事を。

   医者が王妃の手当てをしていたが、その表情は浮かない。
「母上!」
   王妃の元に駆け寄るが、その青顔色に言葉を失う。
雪の様に白い顔に血の気は無い。気配を感じたのか、王妃がゆっくりと目を開けた。
「母上!」
「・・・アルベール・・・やりましたか・・」
「はい。魔王は倒しました!」
「・・・そう・・」
   弱々しく手を伸ばし王子の手を握る。
「アルベール・・・ベアを、ベアを頼みます」
「はい。必ず幸せにします」
   アルベールは力強く握り返し頷いた。
「ベア・・・」
「は、はい、お母様・・・」
   王妃は娘の頭を優しく撫でた。
「幸せになるのですよ」
「・・・・」
   涙で声がつまり言葉にならない。
「アルフォンス、ハナ・・後の事は・・・」
「分かっています。後の事はお任せ下さい」
   その言葉に王妃は静かに笑った。
「・・・マユ」
「は、はい」
   麻友は呼ばれて王妃の元へ近寄る。
「・・マユ・・この世界に指輪を運んでくれて・・ありがとう・・・」
「そんな事・・・」
「指輪を・・・」
   麻友は自分の指にはまって取れないので、そのまま手を差し出した。王妃は優しくその手を触ると、指輪は外れ、王妃の手の中に収まる。
   王妃は指輪を握りしめた。握りしめた指の間から優しく光が溢れる。
「・・・愛して・・・」
   王妃は最後まで言えずに静かに目を閉じ、永遠の旅に出た。
「母上ーー!」
「お母様ーー!」
「王妃様ーー!」
   それぞれの悲鳴が上がる。
   これから幸せになれるのに。悲し過ぎる。
   涙が溢れて、溢れて止まらない。


「お母さん、お姉ちゃん、泣いてるよ」
「えっ?  何か悲しい夢でも見てるのかしら」
「テストで赤点取った夢かな?」
   双子の弟と妹が麻友を起こそうと鼻を摘んだ。
「フガッ!」
   呼吸が苦しくて麻友は飛び起きた。
「王妃様!」
   叫んで飛び起きて、そこが自分の家だと気付いた。
「あ、あれ?」
   母と弟と妹がビックリして麻友を見つめていた。
(なんで元に戻るのよ!)
   今の今まで悲しみに包まれていたのに、泣いていた自分が馬鹿の様だ。


(あれからどうなったのかな?)
   指輪が外れた所為なのか、あれからあの世界へ行く事は無くなった。
(気になるじない!)
   アルベールやベアはどうなったのだろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

【魔法少女の性事情・1】恥ずかしがり屋の魔法少女16歳が肉欲に溺れる話

TEKKON
恋愛
きっとルンルンに怒られちゃうけど、頑張って大幹部を倒したんだもん。今日は変身したままHしても、良いよね?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

処理中です...