君を追いかけて。

第二部 -赤い傘と三度目の再開。-

第4話

どしゃ降りの雨。
私の涙のようにそれは濁っていて、汚い大人達の欲を具現化しているようで。
どうしても傘を差す気になれなかった。

まるで雨から、汚い欲から逃れるように傘を差し、疎らになっていく人の通りを嘲笑いながら私は
濡らしてと言わんばかりに自らその涙に、欲のなかに身を置いている。
廃れた公園のブランコに
濡れるのも構わず腰をかけ、空を見上げる私はさながら生き場をなくした家出少女だろうか
家出をしたいのは本心だが、それを実行できる勇気も、力も私にはない。

雨に打たれていくうちに冷たくなっていく体温で思い出していた


___いつだったか、私は家に帰りたくなくなった。
ドアノブを回す、ただいまと声をかける。おかえりと声が帰ってくる、そんな日々。いつからか、

ただいま、の声も

おかえり、の声も、

聞こえなくなった。玄関にはいつも母と自分の靴しか見かけなくなり
出される食事は3人から、2人分になり、余った青いお椀や箸は使われなくなった。
いつ、だっただろうか

家にいれば寂しいと感じるようになり、学校にいてもひとりだと感じるようになり。

いつ、だっただろうか
居場所がなくなってしまったのは

雨に濡れていく私。涙で濡れていく私。欲に溺れていく私。足りないと渇きが増すようになった。


もっと、…愛して。
私を、ひとりにしないで

ﾄﾞｻｯ…

傘を落とした音が背後から聞こえ、力なく振り向いた私は目を見開く

「なんで、   …泣いてるの、」

そこには、私の感情を具現化したような悲しく、切なく、複雑な表情で涙を流す

綺麗な蒼い瞳の彼がいた。