白兎は、赤い瞳で空を見るか。

Rico.

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白兎編

4-2.白兎は糸を垂らす

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今の季節のこと。
秋。もうすぐ冬になる。冬になると、雨が雪に変わるらしい。
雪は白くて、冷たくて、恐ろしく綺麗なものらしい。

猫の名前が雪、になった。
私は名前をつけるということを知らなくてずっと猫と呼んでいたから、少し申し訳ない気持ちになった。

寒くなるとお正月というものが来て、もっと忙しなくなるという。
楽しみだ。とても。
ああでもまた、襖を開けると怒られるのかな。

先のことは訊ねることが出来ないから、椿が話してくれることがとても楽しい。
女中さんたちは私の問いかけには丁寧に答えてくれるけれど、それ以上の話はあまりしてくれない。

「椿はお正月も此処にいるのかい?」
「と、いうか、正月が多分本番だな。今回は何日かしたら帰るが…正月が来る頃にはずっと此処に居ることになってるさ」

またよくわからなかったので、私は曖昧にふぅん、と返した。

そこで一旦話が終わったので、部屋の中は僅かばかり沈黙になった。
昼間とは打って変わって何の音もしない。

「なぁ、うさぎ」

椿の声はきっと心地好いものなんだろう。
沈黙の中に溶けて消えず、その存在感を匂わせる。

「なんだい?」
「旦那様は此処に来るのか?」
「旦那様?あの人は来ないよ。最初に会ったっきり、此処に来るのは女中さんだけだ」

今日の様子を見ていたら屋敷には他にも人がいるようだけれど、私が知っているのは若い女中さんと、年のいった女中さんと、いつでも不機嫌そうな女中さんだけである。

「…そうか。その甲斐性はないわけだ」
「なに?」
「いいや、何でも。うさぎが、何も知らないってことを確認しただけさ」
「それはさっき私が言ったじゃないか。やっぱり椿の言うことはよくわからないよ。私にも分かるように教えておくれ」

--そうかい。わかった。

椿はそう言っただけなのだけれど、椿のその言葉はどうしてか私の耳の底にこびりついて低く低く響いた。

見上げた深い瞳の中に私しか見えなかったからだろうか。
ゆっくりゆっくり椿が近付いてきたからだろうか。
私の頭を丸ごと包むように掴んだ両の手のひらが熱く熱を持っていたからだろうか。

乾いた感触。
椿の唇が私の唇に触れて、僅かに離れた。
鼻先が触れ合う場所で、私たちは見つめ合った。

「…これは、なに?」
「名前が知りたいのか?それとも、この行為の意味?」
「どちらも」
「欲張りだな。一つだけだ」
「…それなら、この行為の、意味を」
「ふ…そんなもの、無いよ」

そんな答え、卑怯じゃないか…。

私が不満を漏らすのを分かっていたかのように、そしてそれを咎めるように、椿は私の下唇に噛み付いた。

引っ張るように吸い上げて、何度も硬い歯で押し潰される。
下唇が十分にしっとり湿って柔らかくなると今度は上唇を舌で持ち上げ、裏側をゆっくり辿る。
自分でも触れることの無い箇所を探られて、私は震えた。

ああ--椿は、どんな顔をしている?

そう思って初めて私が目をきつく閉じていることに気が付く。
思わず呼吸が恋しくなって、開こうとした顎の隙間から熱いものが滑り込んで私の舌を巻き込んだ。

「……っ、ン…」

ちゅ、く、ち、く、じゅ、る、り。

ああ、ああ、何だこれ。なに、これ。
どんどんどんどん頭の中が溶けていく。
目は開いているか?--見えない。
耳は聞こえているか?--聞こえない。
私の掴んでいるものはなんだ?--多分椿の手首。熱い。強い。

舌先が触れ合って離れる。
次は上顎。歯の裏を撫でて、下まで。舌の裏。私の形をなぞるように動いて再び絡み合う。
開いたままの口の端から唾液が溢れ落ちそうだ。一体それはどちらのもの…?

「っ、つば、き」
「は…泣いた目も綺麗だな…、月明かりが透けて見える」
「ぁ、う…」
「そのまま口開けて舌、出せ」
「ん、ぁ……っ」

ざら、り、ぬる、ん。

「目を閉じるなよ」
「い、あ…」
「赤らんだ頰もまた…煽るね」

目の端にちらちらと赤が映り込む。
視界は霞んでいるはずなのに、椿の顔だけはよく見える。
恥ずかしくて、いやらしくて、でも止められなくて。
じわりじわりと腰の辺りが疼き出して、気がついたら私は押し付けるように腰を動かしていた。

「ン、ん…っ」
「うさぎ…」
「これ、なに…?つばき、教えて…」

はやく、はやく。
急かすように椿の首筋を引っ掻いた私を優しく退けて、椿は慣れた手付きで私の帯を解いた。

「もう堪らないんだな。此処も、震えて泣いてる」
「なに…っ」
「気持ち善かったんだろう?うさぎ」
「きもち、いい…?」
「それでいいんだ。意味なんてそれだけでいい」

椿は着物を脱いで、その上に私を寝かせた。
身体が熱くて、じりじり疼く。

「お前の布団を汚すわけにはいかないからな。少し痛いかも知れないが、許せよ」
「椿…?」
「そのまま足を開いて。そう…膝を離すなよ」

寝転がされたまま、ぐいと広げられた足を自分で支える。
何故だか分からないけれど酷く恥ずかしい。
固くなった下腹部のものが反り上がって、呼吸に合わせて私の腹に触れるたび、透明な滴が垂れて糸を引いた。

私の身体はすべてをさらけ出されているのに、椿の顔は暗くて見えない。

「お前は俺に全部任せていればいい。俺が一つずつ教えてやる」
「わかった…」
「声は抑えろ。夜だからな」

私が頷くと、椿の手が、私に触れた。
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