元厨二病な俺、異世界に召喚される!

回復師

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神竜誕生編

2-12 ガスト村 5 ミルクセーキの伝授

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 宿屋に入るとおかみさんがお礼を言ってきた。どうやらパメラさんからプリンを受け取ったみたいだ。

「リョウマ君、こんなもの頂いて本当にいいのかい? オークの肉まで頂いてるのになんか悪いね。一泊の宿泊費どころか1年分は泊まれるよ。あのプリンとかいうやつのガラスの器、かなりの値打ちもんだろ? 冒険者やるならお金はいくらでもいるだろうに、わたしゃちょっとあんたが心配だよ。人が良過ぎるのも良し悪しで、いつか悪い奴に騙されちゃうよ?」

「あはは、気を付けます」
「お風呂はもう溜めているからいつでも入れるからね。それと夕飯もすぐにできるから声を掛けてておくれ」

「それじゃあすぐにお風呂に行ってからその後夕飯にします。レベルアップ痛が恐ろしいのでなるべく早く寝ることにします」

「めでたい事なんだけど、あれはあまり一気に上がるときついからね。でもレベルが上がって死んだ人はいないから安心おし」

「はい。じゃあ、お風呂行ってきます」



 はぁ~~! お風呂はいいな! やっぱり夏でも俺は湯船に浸かって足を伸ばしたい派だ。極楽じゃ!

 ナビー特製シャンプーでフェイを洗ってやる。
 優しく泡立ててやると気持ちよさそうに目を細めてなすがままになっている。羽毛だけどちゃんとリンスもしてやっている。乾かした後の手触りが極上なのだから、ここで手抜きはできない。洗い終えた後ちょっと悩んだがフェイも湯船に入れてあげた。普通鳥を湯船に入れてたら怒られるだろうが、こいつはドラゴンだしその辺の人間よりずっと綺麗にしているから問題ないと自己中的な結論に至ったわけだが、実際毎日風呂に入る事ができる人はこの世界では貴族や王族のような限られた人たちしかいない。

 ここの宿屋の人も職業的に入れているというだけで、客の入浴の無い日はお風呂は使わない。
 嫌らしい話だが、俺が入浴代を払ったおかげで昨日と今日、パメラさんと宿屋夫婦も俺たちの後に入れているのが裏の実情だ。

 昨日もそうだったが、俺は出る前に火魔法で湯船を少し熱めにして出てきてあげている。
 そうしてあげないと、パメラさんたちが入るころにはかなり温くなっているからだ。火魔法持ちがいるのかもしれないが、配慮ができる人間でありたい。

 俺はゆっくり浸かって湯船でフェイがアヒルのように泳いでいる可愛い姿を堪能し、さぁ出ようかと立ち上がったのだが……ある事を思い出した。

 思い出した理由なのだが、俺がちょうど立ち上がった時にプラプラ揺れている物がフェイの視線のいい位置にあり、それをフェイがロックオンしていたからだ。

 ずっとしゃべっていなかったから、人型のフェイの事を頭の中からすっぽり忘れていたのだ。
 初日に会った時と全く同じ感覚で接していたのだが、フェイの視線のせいでふいに思い出したのだ。

「フェイ、今更だが何ガン見してんだよ」
『えへへ、兄様……ほんとに今更ですね』

「今日は乾かしてあげないから自分でやれ」
『兄様なんで怒っているのですか! フェイ悪くないですよね? 今回は悪くないですよね?』

 確かにフェイは悪くないので、羽をいつものように乾かしてあげたのだが、幸せそうに目を細めているのを見たら凄く虐めたくなってきた。

「フェイはほんと手の掛かる駄竜だよな。戦闘以外では今の所飼い犬並みに手がかかってる」
『兄様酷いです、いくらなんでも犬と一緒にするなんて』

「そうだよな悪い、警察犬や介護犬、救助犬とかお前より役に立ってたな。一緒にしたら犬に悪いな」
『兄様いじわるです!』

「あはは、そこでそんなお前にも、この後役に立ってもらう」
『ほんと? フェイがんばる!』

「ああ、その前にご飯だ」



 まだ4時半ぐらいなのだが、今日は早めに済ませることにした。

「パメラさん、ちょっと早い時間ですがこれから夕飯出してもらっても良いですか?」
「うん、お母さんに聞いてるよ。おめでとうリョウマ君、レベルアップしたんでしょう? お父さんに頼んでくるね」

 パメラさんと入れ違いに30歳ぐらいの男と女が食堂に入ってきた。カウンターで受け付けをしているおかみさんも入口付近でこっちの様子を窺っている。おかみさん的に歓迎できる客じゃなさそうだ。

 俺を見た男女は探していたと言わんばかりにこっちにやってきた。

「あんたがプリンとかいうやつを配ってる兄ちゃんか?」
「いえ配ってないですよ? 配っている人がいるなら別の人ですね」

 なんとなくピンときたのですっとぼけてやった。
 どれどれ【詳細鑑識】で確認っと……信仰値は男が38、女が42か。犯罪履歴は男の方に『恐喝未遂』って、これでもまだぎりぎり犯罪者じゃないんだな。未遂って事だし犯罪予備軍ってところか。

 犯罪者じゃないなら、無下に扱うのもあれだな。

「あんたにプリンを貰ったって村のやつらが言っててよ、俺ら夫婦はまだ貰ってないから貰いに来たんだ」

 パメラさんとおかみさんがこっちを見て止めに入ろうとしていたので手で制した。
 見た目と違い、中身は28歳の貿易商の営業マンだ。非力ならともかく今のチート仕様の俺なら簡単にあしらえる。

「あーなにか勘違いされてるようですね? 俺は皆にプレゼントなんかしませんよ。慈善活動とかしているお貴族様じゃあるまいし。プリンは剥ぎ取りに参加してくれた人に報酬の一部としてあげたのです。昼過ぎに緊急収集がかかってたはずですよね? 気が付かなかったのですか?」

「村長の家には俺が行ったんだが、今日は体調が悪くてな参加できなかったんだ」
「私は主人の看病で参加できなかったのよ」

 しつこく食い下がってくるな。プリンより器が欲しいのだろう。雑貨屋のおじさんが白金貨数枚とか言っちゃうから。

 ナビーがこいつらの今日の昼からの行動を早送りで網膜に透写してきた。
 ナビー的な拒否アピールだな……了解したナビー。

「それは残念でしたね。でも今は健康そうで何よりです」
「兄ちゃん、俺ら夫婦にも分けてくれないか?」

「俺の村では『働かざる者食うべからず』って言うきつい格言がありまして。何もしてない者にあげては、協力してくれた人に申し訳ないですからね。あげるわけにはいきません」

 後ろで俺たちの会話を聞いてたパメラ親子がくすくす笑い出した……おいおい笑っちゃダメでしょ。

「兄ちゃん、そう冷たい事言わずに、さっさと出した方がいいぞ」 

 ほら~、親子で煽るから切れてナイフなんか出したじゃないか。
 さすがにパメラさんも驚いているようだな……ここまですると思ってなかったんだろう。
 白金貨2枚とか……金が絡むとこんな奴が湧くんだな。

「あなたたちは剥ぎ取り作業に来てなかったから知らないのでしょうが、俺は今日半日でゴブリンのコロニー3つ潰して239体のオークやらゴブリンを殺してきてるんだぞ。プリンはその剥ぎ取りの報酬だ。言っている意味わかるか? そんなナイフで本当に俺を脅せるとでも思っているのか?」

「う、うるせえ! さっさと出しやがれ!」
「あんた! やめときなよ! もうういいよ、帰ろうよ!」

 奥さんの方はヤバいと察したようで、帰ろうと旦那を止め始めている。
 一方旦那の方は、女房の前なので引くに引けなくなっている感じだ……仕方がない、少し脅しておくか。

「焼死・溺死・感電死・裂傷死・圧死どれでもいいぞ? お前に好きな死に方を選ばせてやる」

 俺は順番に右手に火球・左手に水球、次に右手に雷球・左手に風球、最後に右手に土塊を交互に出して男を威嚇した。

「「ヒー!!」」

 悲鳴にもなってない声を出して夫婦揃って逃げ帰った。あれ? ちょっとやり過ぎたかな?

「リョウマ君、凄い! 全属性使えるんだ! えーなんで?!」
「今のは生活魔法レベルの子供だましだよ? 神殿じゃフィリア様もサクラもアンナさんも使えてたよ」

「神殿の巫女様たちは別格だよ。でもなんでサクラ様だけ呼び捨て!」
「フィリアも呼び捨てなんだけどね。ちなみに神殿で一番可愛いのはナナだよ」

「リョウマ君、フィリア様を呼び捨てにしちゃだめだよ! それに可愛い子とか聞いてないよ?」


 宿屋のおかみさんが、話に割り込んできた。

「あの夫婦、半年ほど前にこの村に越してきて、あまり評判は良くなかったのだけど、まさかナイフまで持ち出すとはね。わたしゃびっくりだよ」

「雑貨屋のおじさんのせいでプリンより器の価値に目がいったんでしょう。俺もちょっと煽りすぎました。俺は鑑識魔法が使えるのですが、ちょっと特殊で犯罪履歴とかも見れちゃうんですけど、あの夫婦には男の方に『恐喝未遂』が付いていたぐらいで、過去に犯罪とかないんですよ。今回も未遂でしたけどね。根っからの悪人じゃないので、本当の犯罪者にならないように村の方で気遣ってあげてください」

「リョウマ君優しいのね。あんな人たちの事、放っておけばいいのに」

「違うよパメラさん。君たち親子の方が心配なんだよ。さっき後ろでくすくす笑ってただろ? あれしちゃ駄目だよ。逆上したり、逆恨みとかもあるんだから。少ない人口なのだから、村全体で監視しろって意味で言ったんだ」

「さっきの事と、犯罪歴がないけど要注意って事は村長に伝えて皆で気を付けるようにするよ。ありがとうね。おや、旦那の料理ができたようだね。パメラ持ってきておくれ」

「はーい!」

 え? なんか超豪華なんですけど?

「お父さん、ナイスだね。リョウマ君食べてあげて、肉のお礼とレベルアップ祝いだって」
「あらら。うちの旦那もリョウマ君の事気に入ったのか、張り切って作ったみたいだね。たまにこうやって気の利いたことするからわたしゃ惚れちゃったんだよ」

 旨い……豪華にしてくれて気分が良い!

「パメラさんに神竜たちの祝福の簡単な獲得方法教えましょうか? このごちそうのお礼です」
「なになに、どうやるの?」

「難しいことは何もしませんよ。日々の生活の中で感謝するだけです。例えばこの食事、食べる時に作ってくれたご主人に感謝の気持ちをするでしょ? それと同じように、食べ物をはぐくんでくれた大地の象徴の土竜神に感謝を、お風呂や水を飲む時には水竜神に感謝を、亜空間倉庫を使う時にはヴィーネ様に感謝したり、厨房で火を使ったら火竜神に感謝を、という感じに生活の中で関係する属性神に心の中で感謝するだけでいいのですよ」

「私、毎日各属性神様にお祈りしてるけど、あまり効果ないよ?」
「心の無いお祈り1時間と、実際水を飲んでその時に『美味しい、神様ありがとう』という気持ち、どっちが強いと思う?」

「あ!」
「解ったみたいだね。そうなんだよ、1時間の薄い祈りより、心のこもった数秒の感謝の方が神たちの心に伝わるんだよ」

「リョウマ君凄いね! バナムの神官様より神官様っぽいよ」


「ふー美味しかった。お父さん、宿屋の主人なのに料理上手だね」

 食後のデザートにバニラアイスを出しながらそう言ったのだけど、パメラさんは俺の手元をロックオンしている。

「プリンじゃないけど、パメラさんも食べる?」
「いいの? 何かわかんないけど食べたい!」

「じゃあ、これお父さんとお母さんにもどうぞ。融けちゃうのですぐ食べるように言ってね」

 フェイも夕飯を食べ終えたようなので、器に移してアイスを出してあげた。短い尻尾がフリフリされていて上機嫌なのが見て取れる。お風呂で使えない駄竜とか言ってからかったが、なんだかんだ言ってもフェイはめちゃくちゃ可愛いのだ。見ているだけで癒される。

「リョウマ君、初めて食べたけど。甘くて冷たくって凄く美味しい!」
「それもそのうち神殿が孤児院の収入源用に売り出す予定になってるんだ。そのうち町で食べれるようになると思うよ」

 宿屋の主人がアイスをもってお礼を言いにきた。

「リョウマ君、こんな貴重な物食べさせてくれてありがとう。初めて食べたが衝撃的だった。こんな旨いモノが人の手で作れるのだな」

「あはは、大げさですね。ご主人の作る料理も美味しいじゃないですか」
「良ければこのプリンとアイスの作り方を教えてくれないかな?」

「あー残念ですけど、神殿主催で孤児院の収入源にするために考え出されたデザートですので。俺が勝手にレシピを公表できないのです」

「そうか、それじゃあ仕方ないな。あまりに美味しいものだから。村のやつらに定期的に食べさせてあげられればと思ったのだが残念だ」

「そのうち神殿が一般向けに販売を始めますのでそれまで待ってもらうしかないですね。あ、そうだかわりに簡単でお手軽な飲み物を教えましょうか?」

「どんなものだい?」
「ミルクセーキと言って、材料は卵と牛乳、砂糖とバニラエッセンスです」

「バニラエッセンスが分からないが、甘い香りのするバニラビーンズの事だろうか?」

 インベントリからウォッカに漬け込まれているバニラビーンズの瓶づめを取り出して店主に説明してあげた。

「これはウォッカに一か月以上漬け込んであるバニラビーンズです。匂いをかいでみてください、とてもいい香りがするでしょう? 強いお酒に漬け込むことでそこに成分が溶け出していい香りがするモノが作れます。一杯作ってあるのでこれは差し上げますね。無くなる前に自分で漬け込んで作ってください」

 主人にミルクセーキを作るための道具として次の物を用意してもらった
 ・エールというビールを入れている木製のジョッキ
 ・混ぜ合わせる為の器を2つ
 ・牛乳
 ・卵
 ・砂糖
 ・バニラエッセンス

「まず器にジョッキで人数分の牛乳を入れます。今回5人分なのでジョッキ7分目の量を5杯です。そしてもう一つの器に卵の黄身だけを5つ泡立てないように溶かします。本当は卵の方は布で裏漉しすると口当たりがなめらかになって美味しいのですが、栄養面や高級品という事を考えて今回そのまま使います。牛乳の方に砂糖を好みで入れて溶かします。俺はあまり甘くない方が好きなので一杯分に対して小さじ2杯分ぐらいを入れます。子供とかならもっと入れてあげてもいいですね。次にその牛乳を溶き卵の方に入れて混ぜていきます。全体がきれいに混ざる程度でかまいません。そしてバニラエッセンスですが一杯に対して2~5滴ほどでいい香りがします。入れすぎるとかえって美味しくなくなるので注意してください。何滴が最良かはバニラビーンズの漬け込み度合いで変わってきますのでいろいろ試してみてください。最後に氷を入れて冷やせば完成です。俺はちょっと氷の破片が混じってるのが好きなので砕きます」

 ジョッキに皆の分を入れて渡してあげた。フェイの分もちゃんと平皿の方に用意してあげている。

 うん、ミルクセーキだ! 旨い!

「どうです? お口に合うでしょうか?」

「リョウマ君、美味しい! 私、今日、何度目の驚きかしら!」
「確かに旨い! リョウマ君、これ宿屋で売り出してもいいのだろうか?」

「ええ良いですよ。でも卵も牛乳も砂糖も結構高いでしょう? 子供向きなのに採算をとるなら子供のお小遣いじゃ買えないような値段になるのが残念ですよね」

「うちは牛も鶏も裏で飼っている。一杯200ジェニーぐらいで出せると思うがどうだろう?」

 200ジェニーは安過ぎないか? 原価の安い日本でももっと高く売られていたよ?

「もっと高くてもいいと思いますが、値段の方は家族で決めてください。エールと同じ値段でもいいと思いますしね。家族で食事に来てもいつも旦那さんだけがエールを飲んで他の者は水ですよね? そこで子供と奥さんはミルクセーキを注文するようになれば売上アップなんですけどね。旦那もエールと同じ値段なら文句も言えないでしょう。子供が遠慮しないような値段設定でもいいです。500ジェニーぐらいが理想かな? その辺はおまかせします」

 夫婦で卵や砂糖や牛乳の原価から、値段を幾らにするか話し合っている。

「さてそろそろ部屋に行って寝る準備をしますね。アイスの器は差し上げますので使ってください」
「いろいろ貰ってしまって悪いな。この器は貴族が来た時にでも使わせてもらうとするよ」

「はい、ではおやすみなさい」

「リョウマ君、おやすみなさい。いろいろありがとう」
「おやすみ、痛いだろうが頑張るんだよ」


 さて部屋に戻って、もう一仕事だ。
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