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護衛依頼編
4-10 白王狼の襲撃
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サリエさんとソシアさんを帰し、ゆったりと風呂に入った俺は明日の剥ぎ取りを考え早く寝る事にした。だが深夜2時頃、またもや【周辺探索】に魔獣が引っかかった。シルバーウルフ8匹にホワイトファングウルフ1匹……ホワイトファングウルフ?初物だな。
『ナビー、ホワイトファングウルフっていうのが先頭で率いてる感じがするが、ひょっとして上位種か?』
『……マスター、白狼種の王と言われている個体です。頭も良くかなりの統率力を持っています。仲間が帰って来ないので、探しにきたのかもしれませんね。通常なら森の深部に居て警戒心が強い為、街道の方には出て来ません。ランク的にAランクの3級程の強さなので、他のメンバーにはちょっと荷が重いでしょう』
『俺の今の実力で倒せるかな?』
『……何を言ってるのですか? オークキングを余裕で倒せるほどですよ。楽勝に決まってます。でもちゃんと忘れないように各種パッシブは張っておいてくださいね』
ナビーのお墨付きが出たので、皆を速攻で起こして作戦会議を行った。
「リョウマ君無理だ! 直ぐ逃げた方がいい!」
「私もガラさんと同じ意見です。ここは逃げの一手です!」
「マチルダさんも逃げですか。他の人はどうですか?」
フェイ以外は全員が逃げるとの事だ。ホワイトファングウルフ……中々の知名度だ。
「では、フェイを残していきますので、逃げる準備が出来たら逃げてください。俺はちょっくら行って倒してきます」
「逃げる準備なんかいらないよ! このままテントは放置で、とりあえず馬車に乗って全速逃走だ! 命最優先だ!」
「リョウマ君、止めておきなさい。オークキングより個体の強さは強いと噂されています。オークキングがランクの上位なのは千体規模のコロニーを形成して襲ってくるからなのです。単体の実力はホワイトファングウルフの方が数倍上とされています。一緒に逃げましょう?」
「マチルダさんの気持ちは有難いのですが、戦ってもいないので何とも言えませんね。足止めにもなりますし、俺には逃走手段もあるのでヤバいと思ったらちゃんと逃げるのでお構いなく。現在奴らはここから川沿いに4キロって所です。じゃあ、フェイ皆の事は頼んだぞ。無事倒せたらフェイにメール入れますんで、では……」
サリエさんとソシアさんが心配そうにしてくれていたが、俺はさっさと敵の方に向かった。
俺は女神アウラの吸血鬼属性の目のおかげで闇夜でもはっきり見えている。特に今日のように月が綺麗な日は全く支障がないくらいだ。
お互いに向かっていた為直ぐに敵とかち合った。運良く見通しの良い場所で150mほど先の敵を発見できた。俺は先制に【サンダガスピア】を頭に打ち込んでやった。実はこれで片が付くと思ってたのだが……甘かった。先頭を走っていた3匹がレジストしたのだ。どうやら【マジックシールド】持ちがいるようだ。
既に敵との距離は100mを切っている。
近距離が苦手な俺はちょっとドキドキなのだが、あせってしまっては倒せるものも倒せない。
次弾として【サンダラスピア】10連をシルバーウルフに放った。中級魔法にしたのは敵の【マジックシールド】の精度を計るためだ。4発目でシールドが破壊され、5、6発目でシルバーウルフは死んだようだ。
どうやら敵の【マジックシールド】はオーククイーンよりかなり劣るようだ。
これなら問題なく倒せるだろうと思い油断した。近くまで来たホワイトファングウルフはデカかった……狼と言うよりまるで象だ! 50mの距離を2秒ほどで詰められて、前足でいきなり叩かれた。
俺は15mほど吹っ飛んだ後、地面をゴロゴロと5mも転がってやっと止まった。各種バフが無かったら間違いなく死んでいただろう。転がって止まった俺を既に追ってきていた狼はそのまま頭に噛み付いてきた。
とんでもない力が加わっているようで、牙とシールドの間がギャリギャリと激しい音を響かせている。
ナビーさん! こいつめちゃくちゃ強いじゃないですか!
たまたま見晴らしの良い場所だったから良かったものの、木々の生い茂る森の中だったら立地的にかなりヤバい事になってたはずだ。
あ! シールドに亀裂が入ってきている。かろうじてシールドの上掛けに間に合い、【サンダラスピア】10連を放った。狼のマジックシールドは直ぐに解けたのだが、強い魔法防御が掛かっているようで、一瞬動きが止まる程度でレジストされてしまっている。奴は一旦距離をとったかと思うと、なんとリバフしやがった。
『ナビー、あいつリバフしやがったぞ! MPも一杯ありそうだしどうすんだよ! めちゃくちゃ強いじゃないか!』
『……クククッ、マスターが油断するからでしょ。呆けてないでマスターもさっさとリバフしてください。マスターの知能は狼以下ですか? ほれ、さっさとリバフ!』
『くっ! ちゃんと勝てるんだろうな?』
『……何寝ぼけた事を言っているのですか? そんなのマスター次第ですよ! 実力はずっとマスターの方が上なのになんで苦戦するのかがナビーには解りません。その女神謹製ボディーは伊達なのですか?』
『なんかナビーが冷たいんですけど……お前なんか怒ってる?』
『……ワンコごときに後れを取ったからって別に怒ってませんよ!』
『やっぱ怒ってるのね……えと、どうやって倒せばいい?』
『うわっ、きたー!』
ナビーと念話中だったが相手には関係ない。牙を剥いて襲ってきた! 横に転がって回避したのだが、奴はいきなり大きな口を開けて咆哮した。
「ふぎゃっ!」
どうやら威嚇を込めた音波攻撃だったようで、俺はその場でへたり込んでしまった。更にそこにまた咆哮したかと思ったら、風属性のエアカッターのような斬撃を至近距離で食らってしまった。
俺は慌ててリバフした……ヤバい、こいつマジで強い!
『……はぁ……マスター、得物を刀に持ち替えて、ワンコのシールドが壊れた瞬間に喉元に突き刺してください。毛皮がめちゃくちゃ高く売れるので、絶対他には傷つけないでくださいね。刺した刀に【サンダラボール】を当てたら勝ちです。それくらいは出来ますよね?』
ナビーさんが怖い!
ワンコって言って俺に犬ごときさっさと倒せって威圧している! しかも話口調は丁寧なのに、それくらいは出来ますよね?ってダメな子を叱ってるみたいにおっしゃる!
『あはは、勿論それくらいは出来ますよ! 見ててくださいねナビーさん! 俺はちゃんとできる子です』
『……マスターごめんなさい。なんか、追い詰めちゃったみたいですね。普通にしてください。変に気張ってミスされて怪我でもされたら、私がユグちゃんにどんなお仕置きされるか判りませんので』
『ここに至って、さらに自己保身かい! 俺の心配しろよ! お前キャラ変わってないか?』
『……エアカッターぽいのは無視していいですが、噛み付きと威圧攻撃は気を付けてください。躱せるなら回避してください』
カリナさんの鋼の剣からナビー作の刀に持ち替え、ワンコが襲ってくるのを待ち構えた。
戦闘再開時に奴はまず大口を開けて威圧攻撃を放ってきたのだが、躱すには範囲が広すぎて少しもらってしまった。俺の体が硬直している所に噛み付いてきて、今まともに頭をかじられてしまっている。フェイのガジガジと違って恐ろしい威力だ。
【サンダラスピア】の10連で奴のバリアを破壊して、こっちのシールドが壊れる前に刀を喉元に刺し込むことに成功した。奴の表皮はかなり固くて、刀が最初入るまでにかなりの力が必要だったが、いざ先っちょが刺さったらすんなり根元の方まで刀が吸い込まれた。ナビー作の刀を初めて使ったが凄い切れ味だ。俺は油断せず、直ぐに【サンダガボール】を刀の鍔部分に放り投げた。
勝負のついた狼はこっちを睨んでいたが、いきなり「ワオーン!!」とどこまでも通る重低音の響く遠吠えを一声あげてガボッと血だまりを吐いてその場に倒れた。
かろうじてまだ息はあったが、こっちを見て数回尻尾を振ってから事切れた。
『ナビー今のはなんだったんだ? 解るか?』
『……遠吠えの理由は、彼の仲間が15kmほど先に居るのですが、『逃げるように!』と死ぬ前に最後の指示を出したようです。死ぬ直前に尻尾を振ったのはマスターへの彼なりの敬意の意思表示です。死ぬ前に仲間を逃がし、全力で戦った敵に敬意を示せる、ワンコながら立派な死に様です』
『そうか……いきなり尻尾を振られたから狂ったのかと思ったが、俺に敬意を払ったのか。彼という事は雄なのか?』
『……そうです。ここから50kmほど先の森の奥ですが、巣には彼の奥さんが居ますね。あ、奥さんの方がヤバいかも……身重のようですので向かってこない事を祈りましょう』
『うわー、それ聞くと倒しちゃったの可哀想だな。他の追手はどうなった?』
『……王の最後の命令に従って巣に引き返したようです。襲ってきた魔獣ですので、倒すのが当然です。負い目を感じる必要はありません』
『そうか……直接被害が無いのなら、こっちからあえて奥さんの方に攻める必要はないだろう。こいつの奥さんには気の毒だが、巡り合わせが悪かったんだ。こいつは仲間を心配して普段出てこないエリアまで来て、俺を襲ってしまった。俺は襲われたから倒した。それだけの事なんだが、奥さんがいると聞いたり、あいつの最後の死に様を見たりしたら魔獣が相手でも心に引っ掛かるものがあるんだよな……』
『……マスター。フェイがもの凄く心配しています。メールだけでも先に送ってあげてください』
魔獣との戦闘を想い、感慨に耽っていたのだが、ナビーさんにバッサリ思考を中断されてしまった。
『おっと、そうだな。メール送ってから、さっさと回収して帰るとしますか。それからナビー、お前の刀、イイ切れ味だったぞ。試し切りには文句なしの相手だったな』
『……ありがとうございます。不都合な違和感とか何かありました?』
『いや、特に感じなかった。凄く手に馴染んでいたと思う。強いて言うならもう少し長くてもいいかな』
『……マスターの今の身長や手の長さではその長さがベストです。只振るうだけなら後5cmほど長くしてもいいのですが、マスターには抜刀術を覚えてもらおうと思いまして、あえてその長さにしています』
『成程、抜刀か……確かに抜刀するなら長過ぎると上手く鞘から抜けないよな。了解だナビー、この刀で鍛えてみるよ』
『……ふふふ、マスター頑張ってください。それよりはやくメールを……フェイが心配してこっち来ちゃいますよ』
『そうだった。先にメールだな』
フェイに無傷で倒したとメールを送り、安心させてからインベントリにワンコたちを全て回収した。
野営地に戻ったのだが、まだフェイたちは戻っていなかった。
現在時間は深夜3時過ぎ、そういえばレベルアップ痛が2名にきている頃じゃないかなと思いだした。馬車に揺られてさぞかし痛い思いをしているだろうなと思ったのだが、所詮は他人事。
ちょっとお腹が空いているのを自覚した俺は、竈に炭を入れ金網を置き、1cmほどに厚切りしたオークステーキを竈3カ所を使ってせっせと焼き、インベントリにどんどんストックしていった。今日の昼の分にと、ジェネラル肉も10枚ほど焼いた。オークステーキを40枚ほど焼き上がった頃に皆が帰って来たのだが、周りに立ち込めるステーキのかぐわしい香りを嗅いだフェイが詰め寄ってきた。
「兄様だけずるいです! フェイもお肉食べたいです!」
「誰もフェイにやらないと言ってないだろ。欲しかったらお皿出して待ってろ、もう直ぐ焼けるからそれをやる。焼き立てだから美味しいぞ」
お皿を出して嬉しそうに焼けるのを待っているフェイは見ていて超可愛い。
可愛いのだが……フェイの横で同じく可愛くお皿を持って焼けるお肉を見ている女の子が3名。
三名? マチルダさん……あなたまで何してるんですか! そういえばこの人、フェイに一口もらって味を知っているんだったな。
「マチルダさん? お皿持って可愛い顔して待ってますが、食べる気満々ですか?」
「あぅ、ちょっとだけでもいいですので食べたいです」
「ちゃんと1枚あげますよ。ソシアさんもサリエさんも当然食べたいのですよね?」
2人は首をウンウンと縦に大きく振って頷いている。
「他の皆さんも1枚ずつ食べれるように焼いていますから、自分のお皿を持って並んでください。朝飯にはちょい早いですが御馳走します。レベルアップ痛の2人は食べれないようなら取っておいてあげますよ」
野営地に歓喜の声が木霊した。深夜の移動で皆小腹が空いていたようだ。出されたお皿にオークステーキ1枚と焼き立ての柔らかいパンを1枚乗せてあげ、塩味の野菜スープを付けて皆でちょっとした朝御飯にした。
「ところでリョウマ君、服はドロドロだが、見たところ怪我は全く無いようだし、狼はどうなったのだね?」
皆もかなり気になってたようで、ガラさんの質問に一斉にこっちに注目が集まった。
「オーク肉を振るまってごまかそうと思ったのですが、やっぱり無理でしたか」
「兄様、深夜に商隊を移動させたのですよ、オーク肉でごまかせる訳ないじゃないですか」
「そんな事ないぞ。見ろ食べるのに夢中になって半分ほどの人が狼の事なんか記憶から消えてるぞ」
「それは食べてる今だけですよ。食べ終えたら聞いてくるに決まってるじゃないですか。さっさとどうなったか喋ってください。私も早く知りたいです。とりあえず【クリーン】」
フェイがドロドロの俺を綺麗にしてくれた。自分でもできたのだが、戦闘で興奮していたせいで気が回ってなかったのだ。
「フェイありがとな、なんか戦闘でちょい興奮気味なのかいろいろ気が回ってないかもしれない」
「で、どうなのです? 倒せたのですか? それとも逃げ帰ったのが恥ずかしくて隠そうとしているのですか?」
「なんでだよ! ちゃんと毛皮には大きな傷もつけないように配慮して倒してきたよ! あ! しまった!」
そう、倒したのを隠そうとしたのは商人たちに売れとかせがまれるのが目に見えていたからだ。さっきの言葉を聞いたガラさんの目が爛々と輝いてしまっている。
「リョウマ君聞こえたよ、ふふふ毛皮の事まで考えて綺麗に倒したんだね。流石だ! 是非見せてくれ」
「絶対見せません! 見せたら売れって騒ぐでしょ?」
「でもリョウマ君、倒した魔獣は商隊のリーダーに采配の権利があるのは知っているかな?」
「ええ、確か出発前に倒した魔獣は倒した人に権利をあげるとガラさんは言ってましたね」
「うー、確かに言ってしまってた! 俺のバカ!……でもそれは通常の魔獣であって、王級の上位魔獣は別の話なんだよ。そう、これは含まれないんだ!」
「なに自分に言い聞かせるように言ってるんですか! じゃあ、俺も最終手段です! 怖かったので倒さずに逃げて来ました! 以上!」
俺の発言に皆があっけにとられて、ポカーンとこっちを見ている。
「あはははは、倒したという証拠はないですし、俺の気分次第でどっちにでもできますね」
「リョウマ君、腹を割って話すから聞いて欲しい。来年この国、ガレリア帝国の第一王子キルア・ガレリア様が16歳の誕生日を迎える。そして来春に帝都にある騎士科の学校に入学することが決まっているそうで、それに伴って誕生祝いと入学祝いを兼ねた誕生会が3月に催されるのだ。そこで帝都の公爵様が俺に王子にふさわしい誕生祝いの品は無いかと打診してきているのだが、次期王になられる第一王子様にとなるとそれなりの物が必要とされる。叔母にあたる公爵様だ……尚更恥をかかすような貧相な物は論外だ。いろいろ探しているのだが正直まだ見つかってないのだ。ホワイトファングウルフとか王種の魔獣の毛皮なら誰の文句も出ないだろう。それどころか、警戒心の強いホワイトファングウルフはここ150年ほど帝都では捕獲されていない。10年ほど前に魔国で討伐されたのがもっとも最近の話だ」
「言いたい事は分かったのですが、王族とか公爵家とか俺の知ったことじゃないですね。かえってその話は俺にとってマイナス要素でしたね。誕生日だからなんだって話です。他人の誕生日なんか知ったこっちゃない」
「うーむ、ぶっちゃけて言うが、私が困ってるから助けてほしい。公爵家には俺が商売を始めた頃に大恩を受けたのでできるだけ返したいのだ」
「最初から素直にそう言えば俄然好感が持てたのに、貴族の話なんかするから売る気にならないんですよ」
「勿論お金の事はどこに卸すより高値で買わせてもらう。是非俺に譲ってくれないか?」
「うーん、少し条件を出します。まずギルドに討伐依頼を100万ジェニーで出してください。そして討伐達成時の報酬の条件に、倒した魔獣の買い取りは魔獣の状態を見て交渉で決めると書き込んでおいてください」
「それだと何もせず、ギルドに依頼手数料として1割の10万ジェニーを持っていかれる事になるぞ?」
「ええ、それが狙いです。ギルドを通さないで商人と直交渉をしてたら、新人の俺は目を付けられちゃいますし、ギルドの討伐達成結果にも記録されるのでランク上げ時に有利に働きます」
「成程、了解した。ギルドを通す事にしよう。他に条件は何かあるか?」
「販売はオークションが一番高値が付くと思うのですがどうでしょう?」
「確かにレア中のレアの品だ、オークションが良いのは間違いないが、それはちょっと待ってくれ。これだけの品だ、時期が時期だけに他家の貴族連中が圧力をかけてきたら金額云々でなく俺が落とせない可能性が高い。下位貴族ならどうにでもなるが、上級貴族に絡まれたら、商人ごときじゃどうにもならん。ギルドを通すのも、こっそり裏でやるつもりだ。依頼はボードに張り出さないで依頼提出と依頼達成を同時に行うつもりだ。要は記録上的なやり取りのみだ」
「じゃあ、買い取り金額はどう査定するつもりですか?」
「まず現物を見せてくれるかな?」
このまま交渉するかどうか迷ったが、ガラさんは商都ハーレンでも2位の商会を持っているとソシアさんが言っていた。交渉相手として悪くない相手だ。個人的に人柄も嫌いじゃない。ならこのまま商談した方が良いと判断した。
『ナビー、交渉で損をしないように、サポート頼むな』
『……了解です、マスター』
少し広くなっている場所に、インベントリからホワイトファングウルフを取り出した。
「「「おおおっ!!! スゲー!!」」」
皆は先にシルバードックとシルバーウルフを見ていたので、ホワイトファングウルフの桁違いの大きさに驚いたようだ。最初見た俺も象並みか!と驚いたのだから同じ反応をしてくれた皆は普通の感性のようだ。若干1名ずれた奴がいる。そいつは狼の首辺りにまたがってこっちを見て一言。
「兄様! この子、馬みたいに乗れそうですよ! うわっ、この子なんかまだ温かいです」
そう、人の感性とずれているのはうちの子のフェイちゃんだ。
早朝4時の野営地に、良く通る澄んだフェイのずれた発言が響くのだった。
『ナビー、ホワイトファングウルフっていうのが先頭で率いてる感じがするが、ひょっとして上位種か?』
『……マスター、白狼種の王と言われている個体です。頭も良くかなりの統率力を持っています。仲間が帰って来ないので、探しにきたのかもしれませんね。通常なら森の深部に居て警戒心が強い為、街道の方には出て来ません。ランク的にAランクの3級程の強さなので、他のメンバーにはちょっと荷が重いでしょう』
『俺の今の実力で倒せるかな?』
『……何を言ってるのですか? オークキングを余裕で倒せるほどですよ。楽勝に決まってます。でもちゃんと忘れないように各種パッシブは張っておいてくださいね』
ナビーのお墨付きが出たので、皆を速攻で起こして作戦会議を行った。
「リョウマ君無理だ! 直ぐ逃げた方がいい!」
「私もガラさんと同じ意見です。ここは逃げの一手です!」
「マチルダさんも逃げですか。他の人はどうですか?」
フェイ以外は全員が逃げるとの事だ。ホワイトファングウルフ……中々の知名度だ。
「では、フェイを残していきますので、逃げる準備が出来たら逃げてください。俺はちょっくら行って倒してきます」
「逃げる準備なんかいらないよ! このままテントは放置で、とりあえず馬車に乗って全速逃走だ! 命最優先だ!」
「リョウマ君、止めておきなさい。オークキングより個体の強さは強いと噂されています。オークキングがランクの上位なのは千体規模のコロニーを形成して襲ってくるからなのです。単体の実力はホワイトファングウルフの方が数倍上とされています。一緒に逃げましょう?」
「マチルダさんの気持ちは有難いのですが、戦ってもいないので何とも言えませんね。足止めにもなりますし、俺には逃走手段もあるのでヤバいと思ったらちゃんと逃げるのでお構いなく。現在奴らはここから川沿いに4キロって所です。じゃあ、フェイ皆の事は頼んだぞ。無事倒せたらフェイにメール入れますんで、では……」
サリエさんとソシアさんが心配そうにしてくれていたが、俺はさっさと敵の方に向かった。
俺は女神アウラの吸血鬼属性の目のおかげで闇夜でもはっきり見えている。特に今日のように月が綺麗な日は全く支障がないくらいだ。
お互いに向かっていた為直ぐに敵とかち合った。運良く見通しの良い場所で150mほど先の敵を発見できた。俺は先制に【サンダガスピア】を頭に打ち込んでやった。実はこれで片が付くと思ってたのだが……甘かった。先頭を走っていた3匹がレジストしたのだ。どうやら【マジックシールド】持ちがいるようだ。
既に敵との距離は100mを切っている。
近距離が苦手な俺はちょっとドキドキなのだが、あせってしまっては倒せるものも倒せない。
次弾として【サンダラスピア】10連をシルバーウルフに放った。中級魔法にしたのは敵の【マジックシールド】の精度を計るためだ。4発目でシールドが破壊され、5、6発目でシルバーウルフは死んだようだ。
どうやら敵の【マジックシールド】はオーククイーンよりかなり劣るようだ。
これなら問題なく倒せるだろうと思い油断した。近くまで来たホワイトファングウルフはデカかった……狼と言うよりまるで象だ! 50mの距離を2秒ほどで詰められて、前足でいきなり叩かれた。
俺は15mほど吹っ飛んだ後、地面をゴロゴロと5mも転がってやっと止まった。各種バフが無かったら間違いなく死んでいただろう。転がって止まった俺を既に追ってきていた狼はそのまま頭に噛み付いてきた。
とんでもない力が加わっているようで、牙とシールドの間がギャリギャリと激しい音を響かせている。
ナビーさん! こいつめちゃくちゃ強いじゃないですか!
たまたま見晴らしの良い場所だったから良かったものの、木々の生い茂る森の中だったら立地的にかなりヤバい事になってたはずだ。
あ! シールドに亀裂が入ってきている。かろうじてシールドの上掛けに間に合い、【サンダラスピア】10連を放った。狼のマジックシールドは直ぐに解けたのだが、強い魔法防御が掛かっているようで、一瞬動きが止まる程度でレジストされてしまっている。奴は一旦距離をとったかと思うと、なんとリバフしやがった。
『ナビー、あいつリバフしやがったぞ! MPも一杯ありそうだしどうすんだよ! めちゃくちゃ強いじゃないか!』
『……クククッ、マスターが油断するからでしょ。呆けてないでマスターもさっさとリバフしてください。マスターの知能は狼以下ですか? ほれ、さっさとリバフ!』
『くっ! ちゃんと勝てるんだろうな?』
『……何寝ぼけた事を言っているのですか? そんなのマスター次第ですよ! 実力はずっとマスターの方が上なのになんで苦戦するのかがナビーには解りません。その女神謹製ボディーは伊達なのですか?』
『なんかナビーが冷たいんですけど……お前なんか怒ってる?』
『……ワンコごときに後れを取ったからって別に怒ってませんよ!』
『やっぱ怒ってるのね……えと、どうやって倒せばいい?』
『うわっ、きたー!』
ナビーと念話中だったが相手には関係ない。牙を剥いて襲ってきた! 横に転がって回避したのだが、奴はいきなり大きな口を開けて咆哮した。
「ふぎゃっ!」
どうやら威嚇を込めた音波攻撃だったようで、俺はその場でへたり込んでしまった。更にそこにまた咆哮したかと思ったら、風属性のエアカッターのような斬撃を至近距離で食らってしまった。
俺は慌ててリバフした……ヤバい、こいつマジで強い!
『……はぁ……マスター、得物を刀に持ち替えて、ワンコのシールドが壊れた瞬間に喉元に突き刺してください。毛皮がめちゃくちゃ高く売れるので、絶対他には傷つけないでくださいね。刺した刀に【サンダラボール】を当てたら勝ちです。それくらいは出来ますよね?』
ナビーさんが怖い!
ワンコって言って俺に犬ごときさっさと倒せって威圧している! しかも話口調は丁寧なのに、それくらいは出来ますよね?ってダメな子を叱ってるみたいにおっしゃる!
『あはは、勿論それくらいは出来ますよ! 見ててくださいねナビーさん! 俺はちゃんとできる子です』
『……マスターごめんなさい。なんか、追い詰めちゃったみたいですね。普通にしてください。変に気張ってミスされて怪我でもされたら、私がユグちゃんにどんなお仕置きされるか判りませんので』
『ここに至って、さらに自己保身かい! 俺の心配しろよ! お前キャラ変わってないか?』
『……エアカッターぽいのは無視していいですが、噛み付きと威圧攻撃は気を付けてください。躱せるなら回避してください』
カリナさんの鋼の剣からナビー作の刀に持ち替え、ワンコが襲ってくるのを待ち構えた。
戦闘再開時に奴はまず大口を開けて威圧攻撃を放ってきたのだが、躱すには範囲が広すぎて少しもらってしまった。俺の体が硬直している所に噛み付いてきて、今まともに頭をかじられてしまっている。フェイのガジガジと違って恐ろしい威力だ。
【サンダラスピア】の10連で奴のバリアを破壊して、こっちのシールドが壊れる前に刀を喉元に刺し込むことに成功した。奴の表皮はかなり固くて、刀が最初入るまでにかなりの力が必要だったが、いざ先っちょが刺さったらすんなり根元の方まで刀が吸い込まれた。ナビー作の刀を初めて使ったが凄い切れ味だ。俺は油断せず、直ぐに【サンダガボール】を刀の鍔部分に放り投げた。
勝負のついた狼はこっちを睨んでいたが、いきなり「ワオーン!!」とどこまでも通る重低音の響く遠吠えを一声あげてガボッと血だまりを吐いてその場に倒れた。
かろうじてまだ息はあったが、こっちを見て数回尻尾を振ってから事切れた。
『ナビー今のはなんだったんだ? 解るか?』
『……遠吠えの理由は、彼の仲間が15kmほど先に居るのですが、『逃げるように!』と死ぬ前に最後の指示を出したようです。死ぬ直前に尻尾を振ったのはマスターへの彼なりの敬意の意思表示です。死ぬ前に仲間を逃がし、全力で戦った敵に敬意を示せる、ワンコながら立派な死に様です』
『そうか……いきなり尻尾を振られたから狂ったのかと思ったが、俺に敬意を払ったのか。彼という事は雄なのか?』
『……そうです。ここから50kmほど先の森の奥ですが、巣には彼の奥さんが居ますね。あ、奥さんの方がヤバいかも……身重のようですので向かってこない事を祈りましょう』
『うわー、それ聞くと倒しちゃったの可哀想だな。他の追手はどうなった?』
『……王の最後の命令に従って巣に引き返したようです。襲ってきた魔獣ですので、倒すのが当然です。負い目を感じる必要はありません』
『そうか……直接被害が無いのなら、こっちからあえて奥さんの方に攻める必要はないだろう。こいつの奥さんには気の毒だが、巡り合わせが悪かったんだ。こいつは仲間を心配して普段出てこないエリアまで来て、俺を襲ってしまった。俺は襲われたから倒した。それだけの事なんだが、奥さんがいると聞いたり、あいつの最後の死に様を見たりしたら魔獣が相手でも心に引っ掛かるものがあるんだよな……』
『……マスター。フェイがもの凄く心配しています。メールだけでも先に送ってあげてください』
魔獣との戦闘を想い、感慨に耽っていたのだが、ナビーさんにバッサリ思考を中断されてしまった。
『おっと、そうだな。メール送ってから、さっさと回収して帰るとしますか。それからナビー、お前の刀、イイ切れ味だったぞ。試し切りには文句なしの相手だったな』
『……ありがとうございます。不都合な違和感とか何かありました?』
『いや、特に感じなかった。凄く手に馴染んでいたと思う。強いて言うならもう少し長くてもいいかな』
『……マスターの今の身長や手の長さではその長さがベストです。只振るうだけなら後5cmほど長くしてもいいのですが、マスターには抜刀術を覚えてもらおうと思いまして、あえてその長さにしています』
『成程、抜刀か……確かに抜刀するなら長過ぎると上手く鞘から抜けないよな。了解だナビー、この刀で鍛えてみるよ』
『……ふふふ、マスター頑張ってください。それよりはやくメールを……フェイが心配してこっち来ちゃいますよ』
『そうだった。先にメールだな』
フェイに無傷で倒したとメールを送り、安心させてからインベントリにワンコたちを全て回収した。
野営地に戻ったのだが、まだフェイたちは戻っていなかった。
現在時間は深夜3時過ぎ、そういえばレベルアップ痛が2名にきている頃じゃないかなと思いだした。馬車に揺られてさぞかし痛い思いをしているだろうなと思ったのだが、所詮は他人事。
ちょっとお腹が空いているのを自覚した俺は、竈に炭を入れ金網を置き、1cmほどに厚切りしたオークステーキを竈3カ所を使ってせっせと焼き、インベントリにどんどんストックしていった。今日の昼の分にと、ジェネラル肉も10枚ほど焼いた。オークステーキを40枚ほど焼き上がった頃に皆が帰って来たのだが、周りに立ち込めるステーキのかぐわしい香りを嗅いだフェイが詰め寄ってきた。
「兄様だけずるいです! フェイもお肉食べたいです!」
「誰もフェイにやらないと言ってないだろ。欲しかったらお皿出して待ってろ、もう直ぐ焼けるからそれをやる。焼き立てだから美味しいぞ」
お皿を出して嬉しそうに焼けるのを待っているフェイは見ていて超可愛い。
可愛いのだが……フェイの横で同じく可愛くお皿を持って焼けるお肉を見ている女の子が3名。
三名? マチルダさん……あなたまで何してるんですか! そういえばこの人、フェイに一口もらって味を知っているんだったな。
「マチルダさん? お皿持って可愛い顔して待ってますが、食べる気満々ですか?」
「あぅ、ちょっとだけでもいいですので食べたいです」
「ちゃんと1枚あげますよ。ソシアさんもサリエさんも当然食べたいのですよね?」
2人は首をウンウンと縦に大きく振って頷いている。
「他の皆さんも1枚ずつ食べれるように焼いていますから、自分のお皿を持って並んでください。朝飯にはちょい早いですが御馳走します。レベルアップ痛の2人は食べれないようなら取っておいてあげますよ」
野営地に歓喜の声が木霊した。深夜の移動で皆小腹が空いていたようだ。出されたお皿にオークステーキ1枚と焼き立ての柔らかいパンを1枚乗せてあげ、塩味の野菜スープを付けて皆でちょっとした朝御飯にした。
「ところでリョウマ君、服はドロドロだが、見たところ怪我は全く無いようだし、狼はどうなったのだね?」
皆もかなり気になってたようで、ガラさんの質問に一斉にこっちに注目が集まった。
「オーク肉を振るまってごまかそうと思ったのですが、やっぱり無理でしたか」
「兄様、深夜に商隊を移動させたのですよ、オーク肉でごまかせる訳ないじゃないですか」
「そんな事ないぞ。見ろ食べるのに夢中になって半分ほどの人が狼の事なんか記憶から消えてるぞ」
「それは食べてる今だけですよ。食べ終えたら聞いてくるに決まってるじゃないですか。さっさとどうなったか喋ってください。私も早く知りたいです。とりあえず【クリーン】」
フェイがドロドロの俺を綺麗にしてくれた。自分でもできたのだが、戦闘で興奮していたせいで気が回ってなかったのだ。
「フェイありがとな、なんか戦闘でちょい興奮気味なのかいろいろ気が回ってないかもしれない」
「で、どうなのです? 倒せたのですか? それとも逃げ帰ったのが恥ずかしくて隠そうとしているのですか?」
「なんでだよ! ちゃんと毛皮には大きな傷もつけないように配慮して倒してきたよ! あ! しまった!」
そう、倒したのを隠そうとしたのは商人たちに売れとかせがまれるのが目に見えていたからだ。さっきの言葉を聞いたガラさんの目が爛々と輝いてしまっている。
「リョウマ君聞こえたよ、ふふふ毛皮の事まで考えて綺麗に倒したんだね。流石だ! 是非見せてくれ」
「絶対見せません! 見せたら売れって騒ぐでしょ?」
「でもリョウマ君、倒した魔獣は商隊のリーダーに采配の権利があるのは知っているかな?」
「ええ、確か出発前に倒した魔獣は倒した人に権利をあげるとガラさんは言ってましたね」
「うー、確かに言ってしまってた! 俺のバカ!……でもそれは通常の魔獣であって、王級の上位魔獣は別の話なんだよ。そう、これは含まれないんだ!」
「なに自分に言い聞かせるように言ってるんですか! じゃあ、俺も最終手段です! 怖かったので倒さずに逃げて来ました! 以上!」
俺の発言に皆があっけにとられて、ポカーンとこっちを見ている。
「あはははは、倒したという証拠はないですし、俺の気分次第でどっちにでもできますね」
「リョウマ君、腹を割って話すから聞いて欲しい。来年この国、ガレリア帝国の第一王子キルア・ガレリア様が16歳の誕生日を迎える。そして来春に帝都にある騎士科の学校に入学することが決まっているそうで、それに伴って誕生祝いと入学祝いを兼ねた誕生会が3月に催されるのだ。そこで帝都の公爵様が俺に王子にふさわしい誕生祝いの品は無いかと打診してきているのだが、次期王になられる第一王子様にとなるとそれなりの物が必要とされる。叔母にあたる公爵様だ……尚更恥をかかすような貧相な物は論外だ。いろいろ探しているのだが正直まだ見つかってないのだ。ホワイトファングウルフとか王種の魔獣の毛皮なら誰の文句も出ないだろう。それどころか、警戒心の強いホワイトファングウルフはここ150年ほど帝都では捕獲されていない。10年ほど前に魔国で討伐されたのがもっとも最近の話だ」
「言いたい事は分かったのですが、王族とか公爵家とか俺の知ったことじゃないですね。かえってその話は俺にとってマイナス要素でしたね。誕生日だからなんだって話です。他人の誕生日なんか知ったこっちゃない」
「うーむ、ぶっちゃけて言うが、私が困ってるから助けてほしい。公爵家には俺が商売を始めた頃に大恩を受けたのでできるだけ返したいのだ」
「最初から素直にそう言えば俄然好感が持てたのに、貴族の話なんかするから売る気にならないんですよ」
「勿論お金の事はどこに卸すより高値で買わせてもらう。是非俺に譲ってくれないか?」
「うーん、少し条件を出します。まずギルドに討伐依頼を100万ジェニーで出してください。そして討伐達成時の報酬の条件に、倒した魔獣の買い取りは魔獣の状態を見て交渉で決めると書き込んでおいてください」
「それだと何もせず、ギルドに依頼手数料として1割の10万ジェニーを持っていかれる事になるぞ?」
「ええ、それが狙いです。ギルドを通さないで商人と直交渉をしてたら、新人の俺は目を付けられちゃいますし、ギルドの討伐達成結果にも記録されるのでランク上げ時に有利に働きます」
「成程、了解した。ギルドを通す事にしよう。他に条件は何かあるか?」
「販売はオークションが一番高値が付くと思うのですがどうでしょう?」
「確かにレア中のレアの品だ、オークションが良いのは間違いないが、それはちょっと待ってくれ。これだけの品だ、時期が時期だけに他家の貴族連中が圧力をかけてきたら金額云々でなく俺が落とせない可能性が高い。下位貴族ならどうにでもなるが、上級貴族に絡まれたら、商人ごときじゃどうにもならん。ギルドを通すのも、こっそり裏でやるつもりだ。依頼はボードに張り出さないで依頼提出と依頼達成を同時に行うつもりだ。要は記録上的なやり取りのみだ」
「じゃあ、買い取り金額はどう査定するつもりですか?」
「まず現物を見せてくれるかな?」
このまま交渉するかどうか迷ったが、ガラさんは商都ハーレンでも2位の商会を持っているとソシアさんが言っていた。交渉相手として悪くない相手だ。個人的に人柄も嫌いじゃない。ならこのまま商談した方が良いと判断した。
『ナビー、交渉で損をしないように、サポート頼むな』
『……了解です、マスター』
少し広くなっている場所に、インベントリからホワイトファングウルフを取り出した。
「「「おおおっ!!! スゲー!!」」」
皆は先にシルバードックとシルバーウルフを見ていたので、ホワイトファングウルフの桁違いの大きさに驚いたようだ。最初見た俺も象並みか!と驚いたのだから同じ反応をしてくれた皆は普通の感性のようだ。若干1名ずれた奴がいる。そいつは狼の首辺りにまたがってこっちを見て一言。
「兄様! この子、馬みたいに乗れそうですよ! うわっ、この子なんかまだ温かいです」
そう、人の感性とずれているのはうちの子のフェイちゃんだ。
早朝4時の野営地に、良く通る澄んだフェイのずれた発言が響くのだった。
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