さくら

くまおやG

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事件

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「熊尾病院」と門柱に書いてあった。
 さくらの苗字は熊尾なのか?……
「似合わないな」と言いながら、インターフォンを押した。
「はーい。」と明るい声がして、ドアが開いた。
 さくらは駆け寄り門を開けた。
 凄い敷地だ。
『服は着てたか』当たり前だが……
「あのね……じつは連れて行って欲しいところがあるの……」
『まさか……ほっ……ホテル?』
「あのね……ゲーセン!」
『ちがったか……』
「実は行ったこと無いの」
「えー!」
「うん、お兄ちゃんが行っちゃ駄目って……」
「そっか!わかった!」
「いこう!」
 おれは、さっき来た道を戻った。

 ゲームセンターに着いたが、もう閉店間際だった。
「あーもうチョット早く来ないと駄目だったね」
 しかし、さくらの目はキラキラとしていた。
「やってみたかったんだーこれ」
 さくらはUFOキャッチャーにお金を入れた。
「あーだめだー……もう!……つぎアッチ!」
 さくらは、俺の事など目もくれず行ってしまった。
「おい!まてよ!」
 さくらは、別の機械にお金を入れていた。
 すると……
「おねえさん、ひとり?」
 ガラの悪そうな男が、声を掛けて来た。
 さくらは、その仲間2・3人に囲まれていた。
「お兄さんといい事しない?」
 さくらは、目で俺を探しているようだった。
「あっゴメン、この子、俺の彼女なんだ」
「なにー」
 ガラの悪い男が振り返り、睨みつけてきた。
「すっこんでな!」
 男は、殴りかかってきた。
 俺は、殴られれば気が済むだろうと思い、歯を食いしばった。
 バシっ!!!!!
『あれ?痛くない?』
 目を開けると、さくらが男の拳を左手で受け止めていた。
 そして、グッと力を込めて握った。
「いててててて!!!!なんだこの女……くぅ」
 男は、痛みをこらえていた。
 そして、さくらは右手で男の胸を突き飛ばした。
 男は2~3m程宙を舞い、後頭部からUFOキャッチャーに突っ込んだ。
 ガシャーン!!!!
 すさまじい音がした。
「やべ!逃げるぞ」
 俺は、とっさにさくらの手を握り店を出た。
 ワゴンRに飛び乗り、逃げた。

「さくらちゃん凄いね!合気道かなんかやってたの?」
「……うん……まぁそんなところ……あの……ありがとう助けてくれて」
「え?むしろ助けて貰ったの俺なんだけど」
 おれは、笑った。
「さっき……『俺の彼女』って……」
「あっごめんね。迷惑?」
「ううん」
 さくらは、クビを振ってうつむいた。
 そして「うれしい」と言った。
 そうこうしている間に車は、さくらの家に着いた。

 その頃、ゲームセンターでは……
 店の人間にある男が話を聞いていた、花園刑事だ。
「そうですか、男女二人組みで被害者の男に絡まれていたんですね」
「はい」
「そして、さきに殴りかかったのはそこの突き刺さってる男ですか」
「はい」
「分りました、ご協力ありがとう御座います」
 男は、かわいそうに死んでいた。

 数日後、またさくらから電話があった。
「ジョーさん、明日時間ある?」
「うん、大丈夫だけど」
「あのね、私、映画見に行きたい」
「いいよ、いこういこう!」
「じゃ決まりね」
「今度は、喧嘩はだめだよ」
「わかってるってばー」

……こんな具合に俺とさくらは交際を重ねた。
 映画、遊園地、高級レストラン、夜の海……
 俺は、ドンドンさくらに惹かれていった。
 そして、さくらもまたそうだと思っていた。
 だけど『さくら好きだよ』って言葉が言えなかった。
 なんでかな?
 俺が、臆病なのかな……

 また数日後
「今日、これから来れない?」
「えっいいよ」
 もうすっかり、夜の森も慣れてきた。
 幽霊屋敷もいまは、ちっとも怖くなかった。

 俺は呼び鈴をおした。
「はーい」あかるい声がした。
 ドアが開いて、さくらが微笑んだ。
「あのね、ご飯作ったの食べていって」
『ご飯いただいて、その後は……』
「ねぇ?聞いてる?なにさっきからニヤニヤして」
「あっごめんごめん、ちょっと考え事してて」
 これまた、馬鹿でかい食堂に通された。
 一体何人座れるテーブルなのか?
「いつも、ここで食事してるの?」
「そう、無駄にでかいよね。」と言って彼女は笑った。
 いろいろ話した。
 馬鹿馬鹿しい事ばかりだが、彼女は喜んでくれた。
 彼女の事も色々聞いた。
 御兄さんは、大学病院に勤めていて今日は宿直との事。
 この家は、元々老夫婦が住んでいたが、老夫婦は子宝に恵まれず、自分と兄は養子で義父が5年前にガンで亡くなると義母も追うように亡くなったとの事。
 兄は、義父のこの病院を再開する為、今は勉強中なのだとの事。

『まぁ自分には余り関係ないな。』などと思っていると……

「ねぇ」
『来た!!』
「ちょっと歩かない?」
「いいよ」
『まてよ、歩くってあの森を??』
「じゃぁ行きましょう。」
 彼女は、森の斜面を登っていった。
 5分位歩くと急に視界が開けた。
 田舎町の夜景が見えた。意外とキレイだ。
「ここいいでしょ、私の取って置きの場所なんだ。」
 手ごろな岩があったので二人で腰掛けた。
「へぇ、田舎だけどこんなにキレイだったんだ。」
「そう、ここからみると夜景と星空が続いて見えるの」
『本当だ……』
「ほら!あそこが桜のある公園。ここからよく見えるのよ」
「あっホントだ」
「毎年、ここから桜を見てたの……でも、この前すごい嵐だったから……心配で公園まで行ってみたんだ……」
「ああ、この前のこと……でもなんでここから見てたの?」
「私ね、チョット病気なの。だから、兄が外出を中々許してくれなくて……兄の眼を盗んでここに見に来てた」
「へぇそうなんだ」
「私、あの桜をあんなに近くで見れて、この前は凄く楽しかった」
と言いながら彼女が、肩にもたれかかって来た。
『おぉぉぉ……』
俺は恐る恐る肩に手を廻した。
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