さくら

くまおやG

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怪奇!半魚人 VS クノイチ

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 二人は、しばらくそのまま夜景を眺めていた。
『そろそろ、ブチューっと行っちゃうかな……』
 すると彼女が少し思い詰めた表情で話し出した。
「あのね、ジョーさん……本当は私……なんでもない、ごめんなさい」
 シリアスな話があったみたいだ。
「ごめんなさい、さっ帰ろ!」
『えっまだブチューってしてないんですけど!』
 彼女は、歩き出した。
 懐中電灯は、彼女が持っているし、こんなところに独りで残されるのは、ゴメンだ。
「ちょっと待って!」
 俺は彼女の後を追った。
 家の前まで来ると「今日はありがとう。」
「今度はジョーさんの家に遊びに行っていい?」
「いいよ」
「じゃまたね。」と言って家に入ってしまった。
『そんなぁ……これから第2ラウンドって思ってたのに……』

 俺は、とぼとぼと駐車場に歩いた。
 車の鍵を開けようとすると……
 助手席側から中を覗いている男がいた。
 俺は、恐怖で凍り付いた。
 そいつは、虚ろな目で俺を見ていた。
 妙にのっぺりとした顔立ちで目と目の間が離れていて。
 鼻は低く、薄い唇の口は大きく、半口を開けていた。

 魚?

 俺は後ずさりすると何かが後ろにも居た。
 振り返ると、同じ顔が立って居た。
 気が付くと右も左も……
 奴等はニヤリと笑った。
 口から覗く歯は歯並びが悪くギザギザとしていた。
「ドスッ」
『やられたー……?あれっ?大丈夫』
 一人が倒れていた。
 背中に光るものが刺さっていた。
「手裏剣?」
 すると、一人の女性が飛び込んで来た。
 空手かカンフーのような技であっという間に全員倒してしまった!スゲー!
「なにボサッとしてる!ずらかるよ!出しな!」
 俺は慌てて車の鍵を開けて、乗り込んだ。
 助手席に例のカンフーガールも乗って来た。
『映画だと大概エンジンかからないんだよね』と思いつつキーを差し込んだ。
『かかった!偉いワゴンRちゃん』
 車を出した。
 しかし、スピードは出せない。
「もっと速く走れよ!」カンフーガールが言った。
「そんなこと言ったって!」
 カンフーガールは、窓から後ろを確認すると。
「大丈夫だな。」と言った。
「私、カレン!仕事は忍者よ!」



「忍者って?」
 なんだか、訳分からない。
「うちの家系は、代々時の権力者を守護する役目を果たして来た」
「俺、なんの権力も無いけど」
「花園刑事に会ったでしょ。私の兄者なの」
「えー……似てない。」
「あはは……兄者は凄腕の忍者だよ」
「えっそんな風には見えなかったけど……」
 すごく、穏やかそうなオッサンだった。
「兄者は、熊尾 晃の方を張ってるの、その間あなたを守る様に言われた」
「晃って?さくらの兄さん?」
「そう。表向きはね」
 表向き?裏があるの?
「本当は、親子なの」
 バカな、年齢から言ってあり得ない。
「なに言っているのそんな訳無いじゃん。どう見たって俺と同じ位だし」
「気を付けな、奴等化け物だよ」
「まさか!さくらもさっきの奴等の仲間なの?」
「違う、さっきの奴等は【隱頭鱒インズマス】さ。奴等もまた熊尾を追ってる」
「インズマス?」
「簡単に言えば半魚人さ」
「半魚人?」
 もう駄目、理解不能。
「インズマスは、ダゴン教と言う邪教徒なんだ。熊尾は、その宗教の教典を盗み、それに書かれた秘法で不老不死の身体を手に入れた。吸血鬼さ」
「なに言ってるの、昼間会ったし」
「そんなの迷信、映画の中の話」
 どこまで迷信か分からなく成ってきた。
「さくらは?」
「本当は90の婆あ」
「えっそんな……」
「正確には70年前に一度死んでいる」
……?

「生ける屍さ」

……
そんな……
そんな……

「お前、さくらに家に遊びに来いとか言って無いだろな」
「えっ?」
「吸血鬼を家に招いちゃったんだ」

「えー!!それは、迷信じゃないの!」

 カレンは悩んだ。
『と言う事は、いつでも来る事が出来るんだよね……』
「しょうがねぇ!しばらくここに居候するぜ!」
「!!??えっ??!!」
 ジョーは思った。
『女の子と一つ屋根の下か~……うふふ』
「あっ!お前、今チョットやらしいこと考えただろ!」
「いやいや滅相もない!」
「言っとくけど、寝込みを襲おうたって無駄、3秒で絞め落とすからな!」
『ヒョエー!!そうだった相手はカンフーガールだった!しかも超強えー……くそっ……』
「相手が、ここに来る事が出来る以上、離れるわけ行かないからな……しょうがねぇ」
『そうか、独りになったらやばいんだ……』
「さっ寝るぞ、明日会社だろ!」
俺は、悶々としたままさほど寝る事も出来ず朝を迎えた。


「さっ行くぞ」
「えっ会社に付いて来るの?」
「車で待機してるさ」
 有り難い、チョット安心。
 玄関を出ると……
 カレンは一言「部屋に入ってな、インズマスの奴等、つけて来てやがった。」
 俺はドアを閉め部屋に入った。
 ドアの外でバトルの音が聞こえた。
 今度は苦戦して居るみたい。
 俺は、ドアスコープから覗いてみた。
 スゲーやっぱり強えーカレン!がんばれー!
 ふいに肩を叩かれた。
「なんだよ、それドコロじゃないの!いいトコなんだから!……って誰?」
 振り返ると、魚顔の男が立っていた。
「ドスッ」
 みぞおちを打たれた。
「ウッ……強い……こんな奴と戦ってるのカレン……」
俺は、一発で気絶した。
男は、俺を軽々担ぐと窓から飛び降りた。

「バタン!」
 カレンが一味を片付けてドアを開けると、部屋はもぬけの殻だった。
「クソッ!」
 カレンは、外に出て辺りを探したが、既に遅かった。
 携帯を取り出し、花園に連絡をした。
「御免!兄者!インズマスにジョーをさらわれた!」
「なに!お前が付いてながらなんて様だ!俺もそっちに合流する。やつらは、ジョーの顔の皮を剥がし、それを被ってジョーに成り済ますつもりだ!」

 その頃……
 意外な人間に俺は助けられていた。
 いやっ助かったと言えるのか……
 熊尾晃は、俺を黒のメルセデスに乗せると車をだした。
 後には、魚男の死体が転がっていた。


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