【完結】もう一度君に蒼空を見せたい〜奴隷オークションで高額な処女地下オメガを買ってしまったので借金返済に追われています〜

親鳥たちの物語

145．自殺未遂2（凛空視点）

「凛空！凛空！良かった…。生きててくれて、本当に良かった…。

　っ！どうして自殺なんてしたんだ！
　俺たち、仲良く暮らしていたじゃないか！」


　淫蕩に耽るだけの日々を。あれを仲が良いと評して良いのだろうか…コイツも大概歪んでるな。


　飛び込んで来たのは運命のツガイさまだった。もしかしたら俺は救い出されていて、櫂が入ってくるのではと無意識に期待してしまっていたのかもしれない。まだ痛覚が残っていた俺の心は途端に縮んで、涙が後から後から溢れてきた。
　そう。だよね。外に出られたからと言って、また櫂や蒼空と会えるのかは別問題だ。


　どうやらここは、オメガの匿名出産を扱うＮＰＯ法人らしい。そして驚くべきことに、自分は妊娠していたそうだ。
　抑制剤を大量摂取したが為に、もう失ってしまったが。


　五十歳の自分が、妊娠。確かに不規則ながらもまだ時々発情期が来ていた自分なら、可能性としてはあった。

　ましてや、遺伝子の相性がいいと言われている運命のツガイと毎日毎晩飽きずに避妊なしでセックスしていたら、そりゃあそうか。そういう事もあるか。

　なんだか自分の身に起こった事とは思えない程、他人事だった。
　蒼空そらを懐妊した時は、胎嚢が見えているだけでも泣くほど嬉しかったのに。


　もしかしたら、自分でも知らず知らずのうちに、妊娠中のホルモンバランスの変化で、希死願望が増強されていたのかもしれない。



　医師の診察では、もう生命には別状は無いとお墨付きを貰えた。

　でも、今回抑制剤を大量摂取した事でフェロモンバランスが崩れてしまっている。もうそろそろアガリかな？と思っていた俺の発情期は、もしかしたらこの先もう二度と来ない様になってしまうかもしれないとの事だった。

　まぁ、俺ももう五十だし、コイツとの子供なんて考えられない。別にそれでもいいんだけど、発情期になると一週間時間をスキップ出来るから、楽だったんだよな。
　時間をどう浪費しようか日々考えている俺にとって、それだけは少し残念だった。

　抑制剤に限らず薬の過剰摂取なんて、もう二度とやらないようにと怒られたが、申し訳ないがそれは確約出来ない。
　俺は曖昧に頷くだけに留めた。



　妊娠の影響も多少あったのかもしれない。でも妊娠に限らずとも凛空は鬱病とセックス依存症だと診断された。
　向精神薬やセックス依存症を緩和させる薬の処方を受け、医者がＯＫサインを出すまで三ヶ月も入院する事となった。

　退院したのは二〇二四年三月。季節は真冬から次の春に移り変わってしまっていた。それは奇しくも、蒼空そらが妊娠に気がついた時期と重なっていた。